総裁選候補に 浮上した小林鷹之氏 擁立の狙いは「高市氏 けん制」「二階派の 結束強化」

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By Jun mishina

秋の自民党総裁選に向け周辺が慌ただしくなってきた。岸田首相の再選か、または石破茂、高市早苗、河野太郎3氏が有力視されてきたが、加藤勝信元官房長官、茂木敏充幹事長の名も挙がる。若手の間では小林鷹之衆院議員(二階派)を推す動きがあるが、「刷新」「若返り」というよりは二階派の事情が影響しているという。

二階氏重篤には 騙された

当サイトでも4~5月に二階俊博元幹事長の重篤をお伝えしてきた。ところが集中治療室入り、昏睡状態など危険な情報が飛び交った二階氏だったが先月末、公務に復帰して復活。一時は政治資金問題で特捜部の捜査が幹部に及ぶとの噂も流れ、結果的には捜査逃れの入院という見方もでたほどだ。

今月21日には故愛知和男元防衛庁長官のお別れの会の実行委員長を務めた。この間に三男、伸康氏が次期衆院選に立候補を表明し和歌山県連も擁立に動いており全て二階氏の狙い通りに進んだ。重篤情報にしてやられたという関係者は少なくないだろう。

しかも地元、自民党和歌山県連では着々と二階派人脈が固められようとしている。

森県議と二階氏。

衆院2区にはすでに二階伸康氏の擁立が決まり、衆院1区は公募で候補を決める方針だが「和歌山出身の弁護士らが応じた他、鶴保庸介参院議員に近い男性市議も意欲的だといいます」(地元記者)という状況だ。

もとは鶴保氏が鞍替えの意向だったが頓挫。次に二階氏の子飼い、森礼子県議(和歌山市選挙区)が一区候補に挙がったという。森県議は昨年の統一地方選でトップ当選を果たした。老舗料亭を経営していた父親は二階氏と旧友ということもあり、目をかけられてきた議員だ。

しかし現職、林佑美衆院議員が相手では分が悪く、難色を示した。

そこでガン治療を発表し次期は勇退とみられる尾花正啓和歌山市長の後釜として市長選の候補が有力視されている。従来から二階氏と懇意の岸本知事、新2区に三男、そして県庁所在地の市長が森氏となれば政界引退しても二階王国が維持できるということだ。だが中央政界になるとまだドン二階にとっても悩ましい問題がある。

自派閥の結束と 高市氏のけん制

地盤強化は固まった二階氏だが、今度は自派閥の継承問題が残る。政治資金パーティー問題で二階派は派閥解散の意向で今月24日、千代田区平河町の二階派事務所を閉鎖した。

派閥自体を解散するからこそ現状のメンバーを結束したい。そこで出てきたのが二階派の若手ホープ、小林鷹之前経済安全保障担当大臣を総裁選候補に擁立する動きだ。

若手グループから小林氏を推す声が起きたが、これに乗じたのが二階氏の側近または大番頭と言われる、林幹雄元幹事長代理だ。

二階本を手がける作家、大下英治氏も林氏に注目?

「小林さんの擁立論は“党内から待望論 ”と報じられましたが少し事情は違います。解散を明言した二階派ですがこのままだとバラバラ。そこで林さんや二階派重鎮が若手ホープの小林さんを推すことにしました。一見は若手グループからの待望論という体にして、実際は小林氏を担ぐことで派内の結束を固めているというわけです」(党関係者)

小林氏を擁立すれば有権者に対しても新鮮さ、刷新感がアピールできる。しかも別の効果を生む。

小林擁立論を聞いた高市派議員は「総裁選を考えて(高市氏に)当ててきたな」と警戒感を露わにした。もちろん高市氏も総裁選を狙う有力者の一人。

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小林氏のFacebookより。

2019年の総裁選に出馬した高市氏の推薦人になったのが小林氏。また2年前の内閣改造で高市氏は岸田首相へ経済安全保障担当大臣の人事について小林氏の留任を求めたが最終的に後任を引き受けたという経緯がある。この通りの盟友関係にある両者。これまでの関係を考えた場合、もし小林氏が総裁選を決断した場合、高市氏にとっては苦渋の選択となる。つまり小林氏擁立は同時に高市氏けん制の意味も出てくるのだ。

マスコミ報道では総裁選候補として高市氏と小林氏を同時に掲載する場面も散見されたが、実は簡単に並び立つことはできない。

6月29日放送の『正義のミカタ』より。高市氏と小林氏は並び立たない。

昨年、統一地方選で高市氏ら奈良県連が元総務官僚の平木省氏を擁立したにも関わらず、候補者一本化を阻み当時現職の荒井正吾前知事を推したのは二階氏だ。なにしろ自身の引退をかけ政敵、世耕弘成参院議員を排除した。高市氏の総裁選妨害も十分、考えられる。

その役目を側近、林氏に託したことになる。

この戦略は二階氏主導で考案されたとすればさすが老獪としか言いようがない。しかし一見、派閥強化+高市排除という一挙両得のようだが、火種を残しかねないという。政治記者が解説する。

「林さんがキャスティングボートとなると二階派事務総長、武田良太元総務大臣との兼ね合いがどうなるか、ですね。というのは二階氏が発作を起こして“武田さんが東京医科歯科大学病院に担いで運んだ ”という話が広まりました。二階氏の危機に寄り添ったということで次の後継者をアピールしたという説もあります」

当然、武田氏は派閥幹部でポスト二階を意識するはずだ。そこで小林擁立というのは実は林氏が存在感を増すことを意味し、武田氏にすれば決して愉快な話ではない。このシナリオ通りにいけば二階派が正式に解散してもグループをまとめ領袖になるのは林氏の可能性が高い。

「車椅子の行動も目立ってきた」(先の政治記者)と最後の力を振り絞るかのような二階氏。なんとか地盤の継承に道筋をつけたが、二階派のその後はまだ一波乱ありそうなのだ。

しかし当の二階氏といえば先月30日、和歌山市内で記者団の取材に応じて「総裁選の開幕が早過ぎる」と苦言を呈したことが報じられた。

二階派に限っていえば早いどころかすでに権謀術数が張り巡らされているのだ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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