沖縄の反基地闘争は日本基督教団、日本聖公会などのキリスト教団体が目立つが、真宗大谷派など仏教界からも参加している。そんな背景があってか新潟県・金宝寺の住職が辺野古で抗議船に乗船していたとの情報がXで拡散された。ところが住職によれば乗船したことも、辺野古に行ったことすらないというのだ。(写真=宜野湾市の東本願寺沖縄別院)
日本基督教団と同じく糾弾された過去

【日本基督教団】隣保館化した教会 政治集会と化した礼拝 平和・博愛を説く一方で暴力容認の原点とは
国内最大級のキリスト教団体、日本基督教団は1970年代に部落解放同盟から糾弾を受けて解放運動への取り組みを強化した。仏教界でも同様に、真宗大谷派や曹洞宗が糾弾を受け、解放運動に関わる僧侶も少なくない。
大谷派は解放運動推進本部を設置してシンポジウム、講演会を開催してきた。また反原発、反ヘイトスピーチで強いメッセージを出し、死刑が執行された場合には、宗務総長名で抗議と死刑廃止を求める声明が出される。日本基督教団と同様に左翼色が強い。
また戦争責任という点でも共通する。日本基督教団が第二次世界大戦で戦争に協力したことについて「戦責告白」したのと同様に、大谷派は1987年に懺悔告白を行った。
このことは単純に「反省」と言えるのか疑問だ。むしろ外部の左派勢力が介入しやすい状況を生み出したとしか思えない。
大谷派は反戦、平和、人道を訴える一方で、2014年から2019年の間、同本部の職員2名によるパワハラ行為が発覚。東京教区同和協議会元会長による暴言問題も過去報じた。人権問題に取り組む宗派でありながら、組織内の人権・労務問題も少なくない。
内部での労働問題も起きている。大谷専修学院の職員異動をめぐる労働問題では2025年7月、法廷闘争に発展。東本願寺・御影堂門前で労働組合によるデモが行われたことも印象的だ。
要するに国に対しては「抗議者」だが、大谷派自体も、巨大組織であるがゆえに追及される側になることが少なくない。
沖縄でも活動する大谷派
沖縄問題でも大谷派は反基地闘争に理解を示す。今年4月に「沖縄平和ネットワーク」などを講師として非戦・平和沖縄研修会を実施。転覆事故を意識したとみられ、プログラムには「※ 今回は辺野古ゲート前での座り込みは行いません」と注意書きがあった。
また「宗教者核燃裁判」沖縄キャラバン2025では集会の呼びかけ人には東本願寺沖縄別院の岸本雄志氏が名を連ねる。故・金井創氏や島しづ子牧師など反基地闘争でも名うての宗教者がズラリ、だ。
他にも興味深い人物がいる。1987年、沖縄県で開催された第42回国民体育大会ソフトボール競技会の開会式で掲揚台から国旗を下ろし燃やした知花昌一氏は現在、真宗大谷派何我寺の住職だ。


こうした背景があってか辺野古沖転覆事故をめぐっては真宗大谷派に対してもヘリ基地反対協議会の活動に協力していたのではないかという疑念が持たれている。
そんな中でトラブルが起きた。
住職「乗船したことも辺野古に行ったこともない」

ここ数日、X上で辺野古沖に停泊中と思しき抗議船の写真が拡散されてきた。船には寄せ書きが書かれた幕が掲げられており「真宗大谷派 金宝寺」とある。一見しただけでは判別がつかないが、拡大すると同寺の住職、朝倉奏氏の名があった。
転覆事故とは無関係とはいえ宗教者が抗議船に乗船していたのは行き過ぎではないか。そんな意見が殺到したのだが、同寺は5月11日にWebサイト上で反論した。
辺野古沖転覆事件について、転覆した船には、金宝寺と書かれていたとSNSに情報があると、教えてもらいました。情報源を見せてもらったところ、船の画像は6、7年前のもので、転覆した船とは色も構造も違うことが、調べたらすぐにわかりました。明日、警察が相談にのってくれることになっています。デマや誹謗中傷には毅然と対応します。ご心配いただきありがとうございました。
この写真自体が「デマ」「捏造」と訴えているようにも読み取れる。あるいは全く違う船を転覆事故に関わった『不屈』『平和丸』のように発信していることがデマなのか。それとも全く別の金宝寺なのか。反論の趣旨が分かりにくい。
朝倉住職に確認すると予想外の説明が返ってきた。
「もともと私は抗議船に乗船したこともありませんし、辺野古に行ったこともないのです。確かに基地問題については関心があって、私の寺でも詳しい方に講演してもらったことはあります。私の名前があるのも過去、どこかで応援メッセージを書いたことはあったかもしれません。ですが抗議船で使用するものとしてサインしたものではないです」
朝倉住職は乗船したこともなかったというのだ。ならば勝手に名前が使われた可能性もあるのか。
「最初は生成AIを疑いましたが、詳しいことは分かりません。ともかく警察に相談する予定です」(同)
仮にAIによる捏造写真だとしても、なぜ金寳寺がターゲットになったのかは謎だ。朝倉住職は抗議船の乗船を否定しており、別の目的で作成された幕を参加者が勝手に船に掲げた可能性もある。
あるいは抗議船に掲げるという目的を住職に説明せずに署名を求めたかもしれない。
転覆事故以来、野党議員、著名な報道関係者が抗議船に乗船した映像・写真が続々と公開された。残された写真からすると乗船当時は鼻息も荒かったに違いない。
ところがそんな面々は事故後、沈黙を貫く。逆に辺野古にすら行っていない金宝寺住職がなぜかバッシングされてしまったのはとんだ災難だ。
逆にヘリ基地反対協議会関係者からはどこ吹く風といった態度を感じずにはいられない。



