福岡県議会の金銭授受問題などで「県議会議員」への信頼が揺らいでいる。そんな中、愛知県議会副議長の成田修県議が、通行許可証のない自家用車で愛知・名古屋アジア大会会場へ強行突入した。しかも、警備員の制止を振り切ってだ。入場ルールや警備員の指示を守らなかった成田氏に批判が殺到し、副議長を辞任する意向を示した。しかし、その背景には責任問題だけでなく、知事選を見据えた思惑があるとも囁かれている。(写真=アジア大会開会式)
大村知事の側近県議が暴走

「国会議員並みの給料に政務活動費でしょ。国会のように東京都と地元の往復がないし、県議選は中選挙区制だから落選のリスクが低い上に、実質的な議会開会期間は年間で90日〜100日程度。それに住民からの直接的な意見や頼み事、国政選挙や知事選の実働部隊は市区町村議任せだし、県議は本当にコスパがいい仕事ですよ」(自治体職員)
熱心な県議には申し訳ない話だが、問題が起きればこうした不満が出てしまう。アジア大会会場に無許可のマイカーで強行突破した成田氏へも当然、バッシングが起きた。
「もともと成田氏が副議長になったのもアジア大会が開催されるからなんです。大会期間中に〝皇族とメシを食うんだ〟とウキウキで周囲に吹聴していましたよ」(県関係者)
完全に舞い上がった様子が目に浮かぶようだ。また成田氏は大村知事の側近県議でもある。強行突破したのもそんな慢心があったからだろう。
だが、その資質について内部からも疑う声も上がる。愛知自民党のドン、水野富夫県議はこう話す。
「僕も万博(愛・地球博)で皇族の方もお迎えしたんだ。するとあるお方が〝名古屋城のシャチホコはどちらがオスですか、メスですか〟と質問されたから一同、仰天してしまってね。そんなこと考えたこともないから。やはり(皇族は)教養が深いのでどんな質問をされるのか全く予想がつかない。彼(成田氏)にお相手ができたのか分からんね」
議員生活の中でも最高潮を迎えたのだが、なにしろアジア大会は失態続き。大村知事への批判も強い。
アジア大会の運営をめぐっては会場設営・運営業務を担うフランス系企業「GL events」と大会組織委員会(大村秀章会長)との契約の透明性が問われている。組織委は、GL events Japanに約630億円の業務を随意契約で委託。県議会での説明によれば、親会社が大会の最上位スポンサー「プレステージパートナー」であることから、随意契約の候補者として選定された。
GL eventsから契約額を184億円上回る814億円の計画が提出されたが、まだ確定額ではない。また組織委は2025年5月、同社に189億円を前払いした。同年12月には、愛知県が同社への業務委託に関する約206億7000万円を前倒しで予算化。一方、その時点で同社側からの協賛金22億円は全額受領されていなかったというのだ。
またGL eventsは前田建設工業と共同で「Aichi Sky Expo」(愛知県国際展示場)を運営する。非常に愛知県と関係が深い企業だ。不可解な金の流れを含めて癒着が疑われても仕方がないだろう。
しかも大会中は競技用具・会場環境の不備など問題が相次いだ。その上、側近県議までもがトラブルでは大村知事も頭が痛いだろう。そして成田氏は自由民主党愛知県議団からの離団も表明した。
本人はやる気満々だが…

だがこの離団も来年の統一地方選の前哨戦という見方が強い。
「成田氏の副議長辞任と離団はトラブルの責任ではなく、アジア大会にミソをつけ大村知事にも迷惑をかけたことへのペナルティでしょう」(前出県関係者)
現在、4期目の大村知事は次期県知事選にも意欲を示しているという。アジア大会の成功を弾みに統一地方選を迎えたかったが、目論見が外れた。その上、知事派の県議がアジア大会でトラブルとあってはさらに恥をかかされたというものだ。
しかも大村知事は多選の上、周辺では「もう大村ではダメだ」という声も出ているという。
ある地元議員の話。
「愛知の財界人の間で一宮市の中野正康市長を県知事選に推す声が出ています。中野氏は総務省出身で主に情報通信の分野で活躍しました。政策通でもあり非常にスマート。また本人も非常に上昇志向が強い人物だと聞いています。有力候補と目されていたものの、9月の一宮市議会で〝続投します〟と宣言しました。これで大村陣営としては安心したのですが、アジア大会で失態が続いて状況が一変。この状況は中野氏にとっては追い風だと思いますよ」
一宮市といえば神田真秋・前知事も同市長の経験者。こうした背景からも中野氏は有力な県知事候補と言えそうだ。
逆にマイナス要素しかないのが大村知事。10月6日の記者会見で、食事への不満をSNSに投稿したテックボールのタイ代表関係者を批判。「再生回数を稼ぎたいのか知りませんけれども」「タイの選手団の監督・コーチは何しに来たんだろうなと」「あまりこういう人は来てほしくなかったなと」などと批判した。
しかし投稿に誤解があるなら事実を説明すれば済む話。参加者を拒むような言葉は、大会組織委員会会長として不適切ではないか。これも〝焦り〟から出た失言だろう。
2023年の県知事選では、自民党県連、立憲民主党、公明党、国民民主党がそろって大村知事を推薦した。ただし、2023年の得票は2019年より約32万票減り、知事選4回のうち最少である。となるとアジア大会の失態がどう影響してくるのか興味深いところだ。



