習近平による独裁体制が進み、強権・強大化する中国。長年、日本国内では「中国崩壊論」も取り沙汰されてきたが、「崩壊」どころか国際政治、経済、軍事、テクノロジー分野など存在感は高まっている。まさにもう一つの「超大国」に変貌しつつある中国が国際的発言権を向上させるための一手が国際連合を牛耳ることだ。ある専門家を介し韓国・中国の外交筋から入手した情報があるので紹介しよう。
中国JPO5年で800人の脅威
2000年代初頭からの経済成長、東アジアからアフリカを陸路、海路でつなぐ経済圏構想「一帯一路」の提唱、 国際的な貿易ルールを無視した商取引、著作権侵害などなんでもアリ国家・中国。高度な経済力を持ち、なおかつ自国の論理と利益を押し通す強引な態度はもはや歯止めがきかない。また新疆ウイグル自治区に対する弾圧、当サイトでもお伝えしている通り、香港民主化闘争に対する介入など「力の支配」も強めている。そして中国の世界戦略上、注力しているのが「国連活動」なのだ。
昨年12月、2019年から2021年の国連分担率は中国が日本を抜き世界2位になったことが報じられた。日本の16~18年の分担金が9・680%から8・564%に減少したのに対して、中国は7・921%から12・005%に上昇。日本の国際的な発言力の低下と中国の影響力増加が懸念されている。
国連における発言権を拡大するためには分担金の増額はもちろん中国出身のスタッフを送り込まなくてはならない。外務省が紹介している「国連事務局における望ましい職員数」というデータによると現在中国の国連事務局の職員数は89人で7位。ここから上位進出を狙おうというわけだ。そこで中国は国連職員になるための育成制度というべきJPO派遣をターゲットにしたという。
国連事務局に勤務経験を持つ政府関係者は韓国、中国の外務省筋との懇談の中で「中国が国策として今後5年間のうちに800人のJPO派遣を目指す」という内部情報を入手した。
補足をするとJPO とは「Junior Professional Officer( JPO )派遣制度」のことだ。正確な説明のために外務省の国際機関人事センターの説明文を引用したい。
外務省では,将来的に国際機関で正規職員として勤務することを志望する若手日本人を対象に,日本政府が派遣にかかる経費を負担して一定期間(原則2年間)各国際機関で職員として勤務していただくことにより,国際機関の正規職員となるために必要な知識・経験を積む機会を提供し,ひいては派遣期間終了後も引き続き正規職員として派遣先機関や他の国際機関に採用されることを目的として,JPO派遣制度を実施しております。ただし,自動的に国際機関の正規職員となることが保証されるものではありませんので派遣期間終了後に正規職員となるためには,通常の手続きに従って空席ポストに応募して採用される必要性があります。
https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/seido.html (外務省の国際機関人事センター )
日本の場合、「年間でだいたい40人前後。語学はもちろん専門スキルなど選考試験のハードルは高い」(国際NGO職員)という。参考に2018年の合格者内訳を掲載しておく。
中国は5年で800人を目指すというのだ。年平均で160人だから日本の約3倍の派遣数に当たる。なおかつ数字の開き以上の難題があると情報提供をしてくれて前出の政府関係者は話す。
「日本の志望者が個人のスキルアップや職務経験を重視しているのに対して、中国は国策です。建前とは言え国際協調、国際平和に貢献する人材の育成が目的の制度だが、中国の場合、自国の権益と発言権の拡大が狙いであるのは明白でしょう」
仮に派遣されたとしても国連職員として本採用されるとは限らない。しかし国際経験も身につくから決して損ではない。対してなにしろ日本には悪しき「国連至上主義」というものがある。日本側が国連に夢と幻想を抱くのに対して、中国側はまさかそんな“絵空事 ”の論理はないだろう。ただ、かといって数だけ集めて、能力がなければ意味がない。中国側はただ頭数だけを揃えるだけ? と思ってしまったのだが…
「とんでもない。語学、IT知識、テクノロジー分野に通じたエリート揃いです。国際連合食糧農業機関(FAO)、国連産業開発機構(UNIDO)、国際電気通信連合(ITU)などの重要な機関は中国人が事務局長を務めています」(同前)
というからまさに脅威だ。なにしろ「国連」というだけでまるで恋する乙女ではないが“ ぽわ~~ん”とうっとりするのが日本の政治家・行政職員。むしろ現実的に国連を活用する中国にある種の敬意すら覚えてしまう。加えて中国人にとって「国際連合」の概念は我々日本人と全く異なることも認識すべき。中国語で「国際連合」は联合国(連合国)だ。つまり国連憲章1条に掲げる平和の実現、国際協調、人権の尊重というよりも第二次世界大戦の「戦勝国」という認識で臨んでいるのだ。こういう認識の中国に対し国際舞台で日本が台頭に渡り合えるとは到底思えない。軍事、領土問題、貿易問題だけではなく国連における中国の膨張に対しても注視すべきである。
その国際連合の訳と意味合いに於いてはケント・ギルバート氏、倉山満氏、上念司氏、小谷賢氏、茂木誠氏などの地政学を実践する事を推進している日本の主要な論陣は国際連合=連合国であり、現在の国際連合の敵国条項には現在でもドイツと日本が明記されており、戦後の国際連合の呼び掛け人は連合国軍を統括していたアメリカ合衆国大統領のルーズベルトであったことを著書や講演会にてのべられていますが、彼らの解釈が習近平同様に間違っているのでしょうか?元倉山塾生として気になります。
もちろん歴史的経緯や解釈の研究も大事だと思います。が、やはり重要なのは中国が国連で存在感を高めていることにどう向き合うかだと思います。