実録・淡路島5人殺害事件(2)医療保護入院、そして措置入院

アバター By 鳥取ループ

※写真は、平野達彦が措置入院させられていた「明石こころのホスピタル」(措置入院当時は明石病院)

平野達彦による殺人事件がリタリンが原因であることは裁判で否定されているが、一時期、平野達彦がリタリン依存症のようになっていたことは間違いないようである。そして、ついに事件を起こして強制的に精神病院に入院させられてしまう。

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精神保健福祉法には自傷あるいは他人に危害を加える可能性が高い精神障害者を強制的に入院させることが出来る旨が定められている。1つは措置入院で、都道府県知事または政令指定都市の首長に権限があるとされ、2人の精神科医が措置の必要があると診断することが要件である。もう1つは医療保護入院で、精神病院の権限で、家族の同意があることを条件に行うものだ。

措置入院は比較的まれだが、医療保護入院はそれなりに多い。例えば淡路島がある兵庫県のデータでは、2005年度の実績で措置入院は55件だけだが、医療保護入院は5055件もあった。

さて、自身がADHDだと思い込んだ平野達彦は、新淡路病院からリタリンの処方を断られても「俺にはADHDだからリタリンが必要なんや」と家で机を蹴る、病気のふりをして薬をもらって来てと母親に頼む、「医師を殺す」「家を爆破する」等の暴言を吐いて暴れまわるようになった。そして、2005年9月、ナタで父親のバイクを壊そうとして警察沙汰になった。

この後、平野達彦は新淡路病院に強制的に入院させられた。父親が警察に頼んで措置入院してもらったのだ。暴力的な言動はリタリンが原因と見られたが、入院中は大人しく過ごし、症状は回復したとして1ヶ月後に退院した。

しかし、退院した後、帰りの車の中で平野達彦の態度は一変する。「お前らが(入院に同意する)判を押したからや」と両親を責め、「早く退院したくて病院ではいい子を演じた」と告白した。

平野達彦の退院後、金の要求はエスカレートし、平野家はさらに地獄のような状態となった。平野達彦を恐れた母親は、2006年2月まで一時的に家を出て避難した。

祖父の死と妄想の悪化

2006年7月、平野達彦にとって大きな転機となる出来事が起こる。祖父の首吊り自殺である。平野達彦は当時実家の離れで暮らしており、祖父は母屋にいた。そのため、平野達彦は祖父の自殺現場を直接見ることになった。

このことについて、平野達彦は「工作員が電磁波兵器で祖父が自殺するように操作した」と主張し始めた。その理由は、ロープが祖父の首に何重にも均一に巻かれていた、祖父の遺体を検死した警察官が笑っていた、というものである。

なお、実はそれより前に祖母も自殺している。平野達彦は、そのことも殺されたものだと考えており、自分や両親も含めて親族が工作員から攻撃されていると思い込むようになった。

平野達彦は「電磁波攻撃」「集団ストーカー」といった類のことはずっと前から話していたのだが、祖父の自殺をきっかけにさらにエスカレートするようになった。

さらにその翌年にもう1つの変化があった。2007年9月18日名古屋市でリタリン依存症になっていたと見られる25歳の男性が自殺した事件があった。自殺とリタリン依存症の因果関係は明白ではないが、この事件以来、リタリンへの世間の風当たりがつよくなった。そのため、2007年10月31日以降はADHDの患者にはリタリンは処方されなくなった。

それに伴って、平野達彦は自動的にリタリンを止めることになった。平野達彦がリタリン以外の薬物を使ったことも確認されていない。

そのことによって平野達彦の暴力性や妄想は全く収まることはなく、むしろ悪化していった。

実家の離れでインターネットに入り浸るのは相変わらずで、SNSで自衛隊、創価学会、新淡路病院、 洲本伊月病院等を中傷した。さらに、この頃から後に平野達彦に殺害される隣人の平野毅の孫娘を中傷するようになる。

なお、平野達彦に殺害された被害者も全て平野姓であるが、平野達彦と親戚関係にはない。おそらく、地形に由来して近隣の家が同じ姓を名乗ったものと考えられる。

また、この頃から「音声送信」を受けていたと平野達彦は主張している。平野達彦が精神障害を負っていたとすれば、それは幻聴であり、それを脳に音声送信されていると解釈していたと考えられる。また「電磁波攻撃」は身体の幻痛やかゆみのことであり、平野達彦や周囲の人物の証言が本当であるなら、それらの症状は祖父自殺のかなり前からあったことになる。

そして、 「音声送信」や 「電磁波攻撃」 は隣人である平野毅の家にある「送信装置」から発せられるものと平野達彦は思い込んだ。

そして、事件の約6年前の2009年7月29日、平野達彦は隣人の平野家と衝突する。とは言っても、先に手を出したのは平野達彦ではなく、平野毅の孫が平野達彦を鉄パイプで殴ったとして、傷害容疑で警察に逮捕され、翌日釈放された。

事件の前兆は2009年4月にあった。 平野達彦が平野毅の孫の前に突然バイクに乗って現れて、「悪口を言っている」「 生長の家の信者だろう 」と言いがかりを付けてきたという。その場に平野毅と、後に殺害事件の被害者となる毅 の妻の平野恒子も現れ、警察と平野達彦の父親に連絡した。

平野達彦は執拗にデジカメで撮影していたが、そこに現れた平野達彦の父親に殴られてその場を去っていった。

しかし、その頃から平野毅の家に、不審な電話がかかってくるようになった。ネットに「売春宿を経営している」といったことが書かれていると言うので孫がネットで検索すると、「平野毅オフィシャルブログ」というウェブサイトが現れた。

無論、高齢であった平野毅が作ったわけではなく、平野達彦が作ったものだ。そこには平野毅の顔や家の写真が掲載され、売春宿を経営している、生長の家の信者であると言ったことが書かれていた。

しかし、前出の鉄パイプ殴打事件の直接の原因はこれとは別のものである。当日の午後6時頃、平野達彦がマフラーを外したバイクで何度も平野毅の家の前を往復した。一向に止める気配がないので、止めさせようと孫が平野達彦の前に鉄パイプを持って立ちはだかったところ、ひかれそうになったでなったので殴ったというのが孫の主張である。

孫も喧嘩っ早いところがあるが、経緯を聞けば多くの人は同情してしまうだろう。

無論、隣人を中傷するウェブサイトを作っていた平野達彦もただでは済まなかった。事件の直後に孫の被害届を受けて名誉毀損容疑で警察が捜査。そして、2010年12月に平野達彦はついに触法精神障害者として明石病院(現在の明石こころのホスピタル)に措置入院となった。

明石病院で平野達彦は、四六時中「五感情報を盗聴されている」と怯え、ライトにアルミホイルを巻いて過ごした。入院させられたのは「防衛庁の陰謀」と思いつつ、ここでも早く退院したいために、大人しく過ごした。

そして、2011年6月、平野達彦は明石病院から退院した。

(次回に続く)

実録・淡路島5人殺害事件(2)医療保護入院、そして措置入院」への20件のフィードバック

  1. アバター

    この類の病にはどうすればいいのでしょうかね。早期対処してきちっと投薬続ければ
    おさまることは知ってますが、その段階で難しかったり。
    昔のように屋敷牢に入れておくとか、できるわけないですしね。

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    1. アバター鳥取ループ 投稿作成者

      入院を強制する制度はあるものの、投薬を強制する制度がないので、そこを法整備するしかないでしょう。
      しかし、医者の技能の問題もあるし、向精神薬は悪という風潮もあるので、難しいところです。

      返信
  2. アバター遠州屋

    リタリンと同じ成分(メチルフェニデート)のコンサータを飲んでます。劇的に効いてきます。人によって効き方や効きの度合いは違うと思いますが、私の場合は飲んで20~30分で”あれ?”てな感じで意欲が出てきます。一方で不自然な”怒り”もわいてきます。そして不自然な”怒り”を押さえるためにアリピプラゾールを飲む。だけど、ADHDにはストラテラをベースに適度な集中力と気分の安定を得ている。烈しい易怒性にはリスパダールなんかが表現はおかしいが物理的に怒りにともなう暴力性は抑えてくれると思う。他にも症状や性別、体力、年齢などによって様々な向精神薬や抗精神病薬をとっかえひっかえ織り交ぜながら座敷牢の代りにしてゆく。だましだまし。私は医師ではないし、薬剤師でもないので参考にはなりませんが、軽度(たぶん)な患者としては社会性を維持しやすい方法で精神科医と相談しながら多彩な投薬でなんとか生きております。 

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    1. アバター鳥取ループ 投稿作成者

      失礼ながら、部落絡みで私に関わってくる方は、精神障害を抱えている方の割合が非常に多いように感じています。なぜかは分かりませんが。

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      1. アバター遠州屋

        なるほど!そういえば、私の友人、知人にはうつ病・双極性障害・自閉症スペクトラムなどを抱えた者が多いです。これらの友人は適度な間隔を維持できるので比較的楽で、持続可能な人間関係を構築できます。しかし、統合失調症はいないですね。

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      2. アバター豆太郎

        >なぜかは分かりませんが

        それは「類は友を呼ぶ」ということではないでしょうか。

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        1. アバター遠州屋

          そのようなものかもしれません。しかし、鳥取ループさんのような頭の良さ、賢さのようなものを私は持ち合わせていないのが残念です。
          私には本質を見定める、その先へ進む、思考する、また先へ進む、このような強靭さを持ち合わせていない自分が情けないです。

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          1. アバター豆太郎

            確かに知能指数は高そうですね(分野によって偏りが激しいかもしれませんが)。これほどの人がなぜ鳥取西高校でも高専でもなく、偏差値45の工業高校に行ったのかよくわかりません。

          2. アバター鳥取ループ 投稿作成者

            知能指数は確かあまり高くなかったです。根性で強行突破するのみです。

          1. アバター豆太郎

            そうすると、具体的には何が原因で自閉症を疑われたのですか。

          2. アバター鳥取ループ 投稿作成者

            一審の精神鑑定資料をもとにした二審の鑑定人によるものです。
            資料は非公開なので、具体的に何が原因でそう診断したのかは分かりません。

          3. アバター鳥取ループ 投稿作成者

            それでしたら、特に医者に診断されたわけではなくて、保育所の保母にそう思われていたのです。

  3. アバター遠州屋

    頭の良さ、賢さなどと知能指数、学歴などそれぞれ相関関係は薄いように思います。私の拙い経験からですが。

    返信
  4. アバター灰色の月

    隣人に精神障害者と思われる症状を呈している方がかつていて、父に「いたずら電話をするな」「部屋を覗くな」と一時期ひどかった。

    誤解を恐れずに発言すれば、こちらの生活がままならなくなる(余計なトラブル回避/迷惑を被る)から避けたいのは当然ですが、精神障害者への差別と混同される昨今では対応が難しいと思うのが本音です。もちろん人にもよりますが、以前職場にいらした精神障害者の皆さんは会話内容(朝から下ネタや誰かの悪口)、人との距離感、清潔感、易怒性が社会生活を送る上では最大の問題になるわけで、社会側または企業側と精神障害者側の問題は分けて考えなければならないと強く思うようになりました。

    もちろん、そこに至る(発症)までには大変なご苦労もあったと思うのですが、危害が加えられる可能性がありながら、優しく見守るなどできるはずはないとも思います。思い込みの激しさや攻撃的な態度は、生活を破綻させることにしか役立たない、と私は思ってしまいます。

    返信
    1. アバター灰色の月

      忌々しき問題で「鶏が先か卵が先か」に非常に煮ている部分があるように思います。
      もともと性格的、気質的に粘着傾向にあって、そのことが原因で社会生活が思うように送れないと本人は当然のことストレスに感じます。しかし、「自分の中にも問題がある」ことにはすべての人が気付けるわけではないので、うまくいかないことの積み重ねがいつしかトリガーになって、病気の発症という結果、回復に支障をきたすことも十二分にありえると思えてしまうのですが、皆さんはいかがお考えになるでしょうか。

      知人はうつ病ですが、すべての問題は「外」にあり、「内」にはないと考える時点で私はとても不思議に思います。しかし、それが病気である以上、どのように本人に気付きを与えるのか、自分を俯瞰させるのかは容易ではないとも思います。

      社会が悪いのは政治の影響を無視できないため、ここ触れません。しかし、「親が悪い」「会社が悪い」「近隣の住民が悪い」「幼稚園が悪い」「子どもが悪い」「友達が悪い」とあくまで悪いものは「外」でしかない。であれば、その「悪」から距離を置くとか状況によっては逃げるという方法もあるかと思うのですが、そうした発想や経験に基づく知恵や洞察力の欠如が、思考の偏りや傾向に顕著になってしまう。それが原因で周囲は距離を置く。悪循環に陥るのも無理はありません。

      精神障害者の中には高学歴者も多数含まれていて、一方では薬物乱用などが原因である場合も少なからずある。日本のお金の流れや自由な言論を許さない問題(タブー)を追うと、同和問題が無視できなくなります。私の興味関心の根源はそこからですが、不幸にも事件が明るみになることでタブーを無視できなくなることは、知る、知ろうとするきっかけを得ることにもつながり、決して悪いことではないと考えています。

      もちろん社会的な問題や時代の影響を受けずに生きられる人はこの世にはいないので「外」に問題がないとは言いません。しかし、です。だから議論の余地があり大切さがある。だから、「隠す=寝た子を起こすな」という例の考え方には違和感しか持たないのかもしれません。長文失礼しました。

      返信
      1. アバター豆太郎

        >知人はうつ病ですが、すべての問題は「外」にあり、「内」にはないと考える時点で私はとても不思議に思います

        それは不思議でも何でもないでしょう。自責型の患者なら自殺しているでしょうから。生き残っているのは他責型の患者ばかりというわけです。

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  5. アバター遠州屋

    「内」「外」についてはさまざな精神科医や哲学者が論じており不肖私もその幾つかの書物を読んだことはありますが難解な内容ですね。理解不能です。それでも漠然と発達障害を抱えるわが身をもって検証すると「内なる自己」と「外なる自己」が多彩に複雑に絡まっているように感じます。「内なる自己」とは自己が受けている感覚が他者と同一なものかどうか覚束なくなる時です。私は甘いと感じ、Aは味がないと主張し、Bはしょっぱいと主張する。また、私もAも甘いと主張するが果たして同一の感覚なのかは検証の方法がない時。
    結論めいたことに飛びますが、発達障害を抱える者として云えるのは自己と他者が時によりひどく曖昧になる。それの原因も分からないし、是正の術も分からないし、できない。そこはそこであきらめている毎日です。

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