石川博紀・大阪市議に向けられたパワハラ被害の訴えは自民党大阪府連の頭痛の種。被害を訴えるA氏は現在も府連に対応を求め、また府連所属の議員らの間でも、石川氏への反発が強い。9月13日、来年の統一地方選に向け大阪府連選挙対策本部は公認候補予定者を決定。関係者によれば石川氏について「条件付き公認」だという。早く問題解決して維新との決戦に備えたいところだが、騒動の取材を通じて大阪府連が維新に勝てない理由が見えてきた。(写真=松川るい・大阪府連会長)
石川氏の公認問題、大阪府連は条件付き公認
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「話すことはありません。後が面倒だから…」
石川市議についての取材を申し込んだ際のある自民議員のリアクションである。内心はモヤモヤしているが、表立った発言を控える地元議員、党関係者は少なくない。
大阪市議団で石川氏は自国くらし会派から出入り禁止処分。府連の次期青年局長の選定をめぐってはすでに年齢制限により就任資格を失っていたにもかかわらず石川氏は次期青年局長への就任を希望して自薦し、選定を混乱させた。決して個人攻撃というわけではないが、府連内で腫れ物扱いされていることが、関係者の証言からうかがえる。
石川氏に対する不満が高まる中、迎えた9月13日の選対会議。党関係者によれば、公認には条件が付され、無条件での公認決定には至らなかったという。あるいは「保留」という見方もある。
しかし大阪市議会では維新が単独過半数を占めている。本来ならば現職の石川氏に公認を出したいところだろう。そこで選対本部の判断を飛び越えて、府連本部が石川氏を公認すると一部で囁かれている。
ある役員は「ありえません。合議制で決めていることですし、会長(松川るい参院議員)であってもそんな権限はありません」と否定した。
ただでさえ石川氏への反発が強い中で特別扱いというのは確かに無理がある。しかし、問題を棚上げしたまま公認するわけにもいかないだろう。
元をただせば「(石川氏と)付き合うのが大変だから根負けしてしまう」(元市議)という証言からしてもこれまで石川氏に向き合ってこなかった府連上層部の責任も大きい。そして石川氏に関する取材を通して、自民党大阪府連の別の問題が浮き彫りになったのだ。
忌み数「4万円」を持参した陣中見舞いの理由

石川氏に対しては申し訳ないが、やはり言動の異様さが目立つ。
2025年7月の大阪市議会議員補欠選挙の話。東成区選挙区から立候補していた「自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団」元幹事長、川嶋広稔・前大阪市議の選挙事務所に石川氏が陣中見舞いを持参した。それ自体は問題ないのだが、石川氏は4万円を持参し、その模様を動画にして関係者へ送信していたというのだ。
「4」は「死」を連想させるため忌み数と考えられ、祝い事や激励の場では避けられることがある。しかも関係者に動画を送りつけるのも公人がやることではない。
大阪自民府連に詳しい記者は内情を説明する。
「2023年の統一地方選で市議団の幹事長だったのが川嶋氏です。当時から石川氏の評判が悪く〝公認するな〟という意見が寄せられていました。ところが地元から〝さすがに現職を公認しないのは具合が悪い〟ということで石川氏にも公認を出すことになったのです。ところが何度言われても石川氏が公認申請書を提出しません」
前回の統一地方選から〝要注意人物〟というわけだ。
「そこで党活動をすること、党員を集めること、選挙区で会議を開催することなどといった条件付きで公認することになりました。明らかに非は石川氏にありますが、川嶋氏を逆恨みして4万円を持参したというわけです」(同前)
まさかの部落解放同盟人脈が出てきた
川嶋氏に遺恨を抱くのはどう考えても筋違いというもの。石川氏らしい話である。しかし話はまだ終わらない。
古参の地元支援者は「その話には別の事情もあるんや」と漏らす。
「前回の統一地方選で大阪府連は東淀川区選挙区に表西貴文氏を推薦したんやけど、この人がよりにもよって部落解放同盟日之出支部長だった。知らんかったの?アンタらの方が詳しいと思っていたよ。すると石川氏は〝川嶋が自分の公認には文句をつけて、部落解放同盟員を推薦した〟と怒り出した」
そして石川氏はさらにエスカレートする。
「川嶋氏が解放同盟から3万円を献金してもらったんだけど、そのことを石川氏がSNSに投稿して、批判した。つまり陣中見舞いは本来、1万円だったのが、嫌味の意味も込めて解放同盟からの献金3万円分を付け加えたから4万円。縁起だけではなく、献金を皮肉った意図もあったんやろうね」(同前)
石川氏への取材が、大阪府連と解放同盟の関係を探る話に発展するとは思わなかった。他県でも、解放同盟員が自民党会派に所属する例はある。奈良県の解放運動のドン、部落解放同盟奈良県連合会常任顧問で元県議の川口正志氏も旧社会党所属だったが自民党会派に移った。
解放同盟は旧社会党系であり、旧総評と連帯してきた。そうした歴史的経緯を考えると違和感を抱いてしまう。
「認識が古いですよ。この辺りは大阪の特殊な事情です。それを言ったら市議会の自民会派(自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団)の森山禎久幹事長(浪速区)はもともと部落解放同盟の組織内候補。もう昔の解放同盟とは違うし、反維新ということで結束しなければいけません」(元党役員)
つまり維新に対抗する上では解放同盟とも共闘が必要というわけだ。様々な団体、人物を引き込み巨大化してきたのが自民党の強みである。ならばなぜ大阪自民は維新の後塵を拝しているのか。この4万円のエピソードから見えてくるのは、反維新で結束しようとする府連が、その足元では所属議員の不満や対立を収められていないという姿だ。
他団体と共闘でオール大阪 それでも勝てない


部落解放・人権研究所理事、谷口真由美 大阪府知事候補が オッサン政治自民と『連帯』に 疑問の声
現在、国政で自民党は日本維新の会と連立を組む。中司宏幹事長が入閣したことでさらに連立は深化するだろう。ところが大阪は事情が違う。大阪維新の会が与党のため、自民党は反維新の立場に立つ。大阪自民はこれまで、反維新を掲げて他党や各種団体と協力してきた。
沖縄ばりの〝オール大阪〟のような状況なのだ。それは過去の選挙からも見てとれる。
2019年のW選挙では府知事選候補に小西禎一元大阪副知事、市長選候補に柳本顕氏を擁立。自民党候補の街頭演説に部落解放同盟、立憲民主党、連合が参加したことは当時、大きな話題になった。結果は維新の圧勝。
また2023年のW選挙でも興味深い現象が起きた。
部落解放・人権研究所理事、谷口真由美氏が経済人らが設立した政治団体「アップデートおおさか」からの要請を受け、無所属で出馬した。この時、自民党がとったのは谷口氏への自主支援。そして同年3月26日に岸田首相(当時)の後援会が決起集会を行ったが、岸田首相ら自民党の要人に交じって谷口氏も登壇。「ガンバロー」と気勢を上げた。
谷口氏の自主支援についても保守層から落胆の声が起きたのを覚えている。SNS上ではライバル・維新議員からも疑問視する投稿があった。
谷口氏がこれまで自民批判を繰り返してきたのは党幹部も知らないはずがない。しかも左翼文化人による〝罵倒劇場〟『サンデーモーニング』(TBS)の常連コメンテーター。特に故・安倍晋三元首相に対しては辛辣な発言を繰り返してきたものだ。
そんな人物が臆面もなく自民党が用意した舞台に立ったのは滑稽ですらあった。もちろん自民大阪府連も、だ。谷口氏の擁立は大阪財界の意向であって、保守層が支持するとはとても思えない。2019年のW選から何を学んだのだろう。
そして反維新という一点だけで解放同盟出身者まで陣営に引き入れる。同団体が戦後、一貫して「反天皇制」という方針をとってきたことをご存知ないのだろうか。そんな団体と「昔とは違う」という理由で共闘してしまう〝国民政党〟の政治センスに驚いた。
かといって大阪自民の票が伸びたという話は聞かない。
維新に代わる大阪の将来像を十分に示せず、理念の異なる団体とも「反維新」で結束する大阪自民。その足元では、所属する一人の市議への対応すら難航している。府連は「反維新」で結束を訴える前に、党内の問題に向き合う必要があるのではないか。でもなければ来年の統一地方選も、厳しい戦いになりそうだ。



