自民に推薦願いを出した “解放のふるさと ” ドンの本音(後編)

カテゴリー: 政治 | タグ: , , | 投稿日: | 投稿者:
By 三品純

「解放のふるさと」と言えば奈良県御所市。当地の解放運動のドン、部落解放同盟奈良県連委員長で奈良県議の川口正志氏が先の統一地方選で自民党に推薦願いを出していたのは事実だった。そしてさらに深層部分に立ち入っていくと解放運動と政治、そしてリアルな地方政治の顔が見えてきた。後編となる本稿はまず推薦願いの舞台裏から話を進める。

川口氏の揮毫による。

首相側近議員も「ドン」の年賀に参加

取材の出発点が間違っていた。それは川口氏が左派・革新側と思っていたことだ。単純に元社民、同盟員ということで判断してしまったが、「あの人(川口)が革新? 元社民党というだけ。少なくとも県議会では保守系の会派だよ」(共産党関係者)というのが地元の大方の見方。だから川口氏の立場からすれば推薦願いは“出しましたけど何か? ”という程度にすぎない。

逆に奈良の自民党は解放のドンの推薦願いをどう処理したのだろうか。このところ各県議会を見ると自民党が分裂しているケースが目立つ。そして奈良もその一つである。

奈良自民党の特徴として挙げられるのは奥野一族が強いことだ。御所市は文部大臣、法務大臣、国土庁長官を歴任した奥野誠亮の長男で自民党奈良県連会長、奥野信亮衆議院議員の地元だ。 その父、誠亮氏は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の初代会長でなおかつ国土庁長官時代は“ 国士庁長官”と揶揄された保守右派、タカ派の政治家である。

信亮氏は県連会長だが比例近畿ブロックからの当選。民主党政権発足の2009年の総選挙では落選した。選挙も圧倒的に強いわけでもなくまた国士と呼ばれた父ほどのアクもない。ただ名門・奥野家の後継者であり県連会長である以上、県内の発言権は大きい。さてそんな奥野氏にも近く統一地方選を知る自民党関係者に話を聞くことができた。

同氏のホームページより。

「川口さんへの推薦願い。うん来てたよ。私は『公認願い』ということで聞いているけどまあ推薦願いであることも間違いないね。ただ相手(丸山和豪候補)からも公認願いは来てたよ。だけど新聞記事や選挙公報を見てもろたら分かる通りどっちも公認はついてないでしょ」

SNS上にアップされていた丸山候補の選挙事務所に自民党議員の檄文が貼られていた。この点について尋ねてみると

「それは各議員のお付き合い上でやっていること。党でやっているわけじゃないよ」

同氏も川口氏が推薦願い(公認願い)を出していたことを把握していた。ただ川口氏からは「周囲の支援者が(川口に)気を遣って自民党に出した」という説明があったこと。この点について確認してみた。すると

「アンタ、そりゃおかしいやろ。矛盾してるやん。『じゃあ川口さんを公認します』って自民党が公認証書や推薦状を本人に渡すとなった時に“ほんなもんわしゃ知らん。周りが勝手にやったことや”なんて話にならへん? そんなことが起きたら新聞沙汰だよ。公認なり推薦でも例えば党が面談したり連絡をすることもあるわけでね。本人が知っていないとおかしいことになる。それはもうちゃんと本人から出たものだ」

逆に丸山氏に対して公認しなかったのは「勝てる候補」ではなかったとの判断らしい。ただそれにしても丸山氏はかなり善戦したのではないか。御所市で圧倒的な力を持つドンに対してである。

「確かに予想以上の接戦だった。やっぱり相手は若いし(49歳)、もう川口さんは何期もやっているから80をすぎて体は大丈夫かという有権者の判断があったんじゃない?」

少し余談だが丸山氏の立候補について地元では妙な噂があった。本来、無投票で決まるドンの「解放の議席」になぜ丸山氏が挑めたか? その噂というのは裏の取りようがないため控えるが、まあどんな中身であったのかは想像に任せたい。

話を戻そう。川口氏が今さら自民党にすがるのも「筋道」が違うのではないか? こう同氏に問うた。

「そりゃ筋違いや。だから奥野さん(県連会長)が公認なんて絶対に許すわけないしね。あの人は御父さんの時代からの保守本流の政治家だから」

ただこんな意外な実態を教えてくれた。

「確かに川口さんは解放運動をやっていて元社民党だけど、地方政治の場合、党や主義主張ではなくて人間関係でつながることもあるよ。川口さんはやっぱり地元では影響力があるし、幅広い人脈があるからね。年賀なんかには自民党の議員もたくさん行くよ。有名な議員で言えば高市早苗元総務大臣もいた。意外? いやいや。やっぱり川口さんは奈良で影響力があるし、自民党だろうが保守議員であろうが、そこはお付き合いだから。地方議会というのは党派や主義主張を超えての付き合いがあるよ。単純に人の好き嫌いとかね」

地方政治の場合、政党イデオロギーだけではなく「地域交流」も大きいようだ。川口氏の自民党推薦願いもその流れの中で出されたものだろう。

大安寺前の石碑。川口氏のポエムがある。

ダイドーの顧問、ドンは上級国民!?

解放同盟の県連委員長でベテランの県議会議員、地元の商工会にも顔が効く、だから自民党議員もドンにご機嫌伺いをする。こう思っていた。しかし奈良県内の会社役員はこう漏らす。

「解放同盟の役員で県議会議員ぐらい他の自治体でもおるでしょ。あの人はそんなのよりもっと大きな役職を持っているから(笑)」

御所市というのは特に有名な地場産業も名産品もない。しかし御所市はとある有名飲料メーカーの発祥地なのだ。1956年、御所市に大同薬品株式会社が設立された。そして1975年、同社の飲料品部門が独立し「ダイドー株式会社」ができた。現在のダイドードリンコ株式会社である。赤文字の「DyDo」のロゴでお馴染み。実は川口氏、同社の顧問を務めている。

ダイドードリンコ杯少年野球大会HPの大会役員より。

当地で開催されるダイドードリンコ杯少年野球大会の大会会長で「ダイドードリンコ㈱顧問・奈良県議会議長」として紹介されている。また2015年3月9日、奈良県予算審査特別委員会の議事録を見るとこうも発言している。

私はダイドードリンコ株式会社の顧問をしているのです。自動販売機を利用した場合には幾ばくかのカンパをお願い をしている。

2003年5月21日の四国新聞によれば「故高松冨男氏(高松富博ダイドードリンコ社長の父、5月7日死去)をしのぶ会 6月4日正午から大阪市天王寺区上本町6の1の55、都ホテル大阪で。しのぶ会委員長は川口正志ダイドードリンコ顧問」とある。少なくとも2003年には顧問に就任していたようだ。

「おそらく人権絡みのトラブルや労働問題になった時の用心棒的な顧問やろうな。だから労働組合もいわるゆ御用組合だ」(前同)

御所市が本社だけに万一、地区住民ともめた時の防波堤なのか。あるいはこうも考えられる。実は飲料メーカーは意外と同和関係のトラブルが少なくない。例えば自販機に補充するドライバーが「あの地域は同和地区うんぬんと同僚に話し差別事例になる」という筋の話だ。そんな時にドンが「おうおう」と出てこればこれほど頼もしいものはない。それにしても行政、政治も黙らせる解放同盟の委員長、県議会のベテラン、そして大手飲料メーカーの役員。これって当節流行りの「上級国民」というものではなかろうか。ダイドーと川口氏関係についてはまた別の機会で語りたいものだ。

ダイドードリンコHPより。あの方が顧問だけに別の「D」まで想像してしまう。

同和事業こそ土着型保守の権化

大手企業の顧問を務め、高齢で多選、事実上の保守会派。肩書こそ解放同盟の県連委員長だが、ある意味、自民党員以上に自民党らしいステータスだ。

考えてみればそもそも同和事業自体が自民党政権で成立したもの。それを社会党支持の解放同盟が事業の受け皿になった。体制批判の一方で最も体制の恩恵に被ってきたのは他でもない解放同盟である。そして今、自民党との交流も全く否定しない。また自民党も同和を利用しようとする傾向もある。保守化・体制化する「解放運動」の状態だ。

かといって普段、「反自民」を鮮明にする野党、左派団体が川口氏のような動きを批判するわけでもないだろう。人権、平和、反戦、脱原発、どれか一つでも唱えれば全てOK、無問題。こういう緩い「仲間主義」が今日の左派不信につながっている点も無自覚だ。

そして大阪府内の建設業者はこんな話をした。

「ここ数年、大阪の自民党支持の業者は“ IRや夢洲開発、万博で忙しくてかなわん”とこんな話をしていた。ところが面白いことに維新の支持者や解放同盟員の経営者も“仕事が回ってきた ”と景気のイイことを言っていた。結局、あの三団体はなんだかんだ根っこのところが似ているんや」

これも面白い実態だ。かつては“アンタが(同和事業で)金持ちになってどうするんだ ”と仲間からも批判された川口氏。公共事業に関してはいわゆる土着型保守政治家よりもよほどノウハウや経験があるはずだ。

解放同盟県連会長だからいかにも革新側のイメージがある。だがその実像は人権問題をベースにした利益誘導型の保守政治家だ。こう考えれば自民への推薦願いなど全く不思議ではなかった。逆に言えば利権型の政治家であっても「人権尊重」「差別撤廃」を掲げさえすれば免罪符になる。ドンはその免罪符を活用し抜いたからこそ名士になれたのだ。ならばドンには「人権基本法」などと平凡な主張ではなくこう言ってほしい。

「自民党寄りで金持ちで何が悪い!」と

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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自民に推薦願いを出した “解放のふるさと ” ドンの本音(後編)」への5件のフィードバック

  1. A

    ダイナミックに(Dy)どんどん(Do)同和利権を漁りまくる(Dri)ウンコおやじ(nco)にキンタマを握られた会社。ダイドードリウンコ。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      松本Dドラゴンもありますからね。Dはキーワードです。ワンピースみたいな

      返信
  2. CC

    こういうルポを読むと、自分たちの権益を守るためなら手段を選ばないのがよく伝わってきます
    差別が無くなると困るんでしょうね

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      これなんて川口さんは堂々としたものだからいいですよ。
      本当の汚い権益は表にもでないし、行政も政治も必死に守ります。

      返信
  3. 奈良県民

    ① 丸山和豪氏は元御所市議会議員であり、丸山土木(奈良県御所市/土木・産廃業)の実質的な経営者。そして、その父親もまた元御所市議会議員であり、この父親は暴れん坊にして警察のお世話にもなった、地域ではちょっとした“有名人”です。
    もちろん、この親子は川口県会議員の子飼いだったような気がしますが…
    “同じ穴のムジナ”が選挙で闘った理由は、やっぱり利権がらみなんでしょうか? 記事ではぼやかしていましたが…

    ② 川口氏が自民党に推薦を依頼したという話ですが、驚くことはありません。吉野郡選出の県会議員の国中憲治氏も自民党公認ですが、川口氏と同じ経歴ですよ。
    同和の最大のキーワードは「差別(反対)」ではなく、「利権」なんですから、驚くことはありません。

    返信

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