朝鮮学校集会で見た 親北文化人の黄昏【和田春樹】

カテゴリー: 社会 | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

11月2日、東京・日比谷野外音楽堂で朝鮮幼稚園の無償化を求める集会が開催された。今年10月1日より3~5歳児クラスの幼稚園、保育所等が無償化したことを受け、朝鮮幼稚園にも適用を求め全国から朝鮮学校関係者、支援者、学生らが集まった。集会の主張自体は目新しいものはなく特に見るべき事柄もない。ないが、集会終わりに目撃した“ とある人物”に親北文化人、進歩的文化人のなんたるやを痛感させられた。
東京大学名誉教授・和田春樹氏である―――。

いつもの顔触れが朝鮮学校を支援…だが

演説する社民党・福島みずほ参議院議員。
ビビンバレンジャー と幼児のパフォーマンス。

集会の模様については示現舎または神奈川県人権啓発センターのYOUTUBEアカウントで一部を紹介しているのでご参考に。

すでにご承知の通り、朝鮮学校の無償化をめぐって政府はすでに適用しないという方針で一貫している。このため各地で朝鮮学校側が無償化を求め、国や自治体に訴訟を起こしているが「勝訴」という話は聞かない。今回は幼児という性質上、人道的な措置を求める声もあるが、法律論からしても幼稚園だけ適用というのも難しいだろう。旧民主党政権で高校無償化が導入されて以来、適用を求め朝鮮高校がデモや集会を開催してきたが、今回は「幼稚園版」というわけである。

朝鮮語のシュプレヒコールによって日比谷野外音楽堂はもう一つの「北」になった。

「関東をはじめ新潟、茨城、群馬、栃木、山梨、愛知、大阪、広島からもたくさんの仲間が駆けつけてくれました」

学生らも多数動員された。

と司会者が呼びかけ開始すると、朝鮮幼稚園幼保無償化中央対策委員会の南昇祐ナンスンウ委員長は「集会とパレードは在日同胞に新しい勇気と希望を与え、日本政府には大きな圧力になると確信します。幼保無償化の権利を獲得するまで一歩もひるむことなく戦い抜く決意を表明します」と挨拶した。

幼稚園の無償化を求め保護者が訴えた。例によって泣き芸も。

また国会議員からは冒頭の動画で紹介した福島氏をはじめ

「幼保無償化の財源は消費税です。みなさん、高校生のみなさん、お子さんたちも消費税を払っていますよね。みんなが負担する消費税を財源にしているのに、もらえる人ともらえない人を作るんですか」 (立憲民主党・初鹿明博衆議院議員)

「 全国で数百の幼稚園、類似施設、朝鮮幼稚園など89の各種学校の幼稚園に通う子供たちは対象外のままこの制度はスタートしました。法の下の平等に反するじゃありませんか」( 共産党・宮本徹衆議院議員)

と各議員が訴えた。また元文部官僚の寺脇研氏も登壇し「文科省にいた頃、みなさん方とおつきあいがあり、大学入試資格について取り組んだ。1987年10月に重大な閣議決定があり、これからの日本は生涯学習社会を目指すと決定した。この社会に住んでいる人は生涯にわたって学ぶ権利を保障しようということになりました。学習するのはどこの場所だろうが学習することになる」として国の責任を問うた。

登壇した国会議員。左から立民・初鹿明博氏、共産党・宮本徹氏、社民・福島みずほ氏。

それから壇上に目をやると永住外国人の地方参政権運動の“旗振り役 ”一橋大学名誉教授・田中宏氏らが座っていた。

登壇した支援者&有識者。右から二番目が元文部官僚の寺脇研氏、その隣が田中宏一橋大学名誉教授。和田氏がここにいても不思議ではないのだが・・。

和田氏「自分の意志で来たのだけど…」

言いようもないパワーを感じる。

集会が終了すると今度は日比谷、銀座周辺でデモを行う流れだ。三々五々と人が去っていく中、野外音楽堂の外で一人トボトボと歩く年配の男性がいる。髪型がとても特徴的、前世代的な「知識人・文化人」といった風体とその独特なフォルムで「東大名誉教授・和田春樹」だとすぐに判別できた。このお方、北朝鮮の支援集会、国交正常化集会、在日コリアンの人権問題などでは常連であり、旧ソ連の研究を含め北朝鮮問題については理論的支柱だった。悪い言い方をすると「あちら側」の御用学者という存在だ。

本来は来賓として壇上に上がり、なんであったらスピーチしても不思議ではない人物。また学者としても田中宏氏よりも格上のはずだが(東大>一橋という意味ではなく)一般席にいたようだ。 かつては「遊撃隊国家」と北朝鮮を論じ、朝鮮戦争も北朝鮮による侵攻を否定し、拉致問題も北朝鮮の関与を否定してきた。そんな北の守護神・和田氏だから花を持たせても良さそうなもの。

「先生も壇上に上がってスピーチしても良かったのではないか。過去の関係からして失礼ではなかったか」 と持ち上げる体で和田氏に話をふってみると

「そんなことはありません。普通に参加しただけですよ。学校関係者から挨拶? そりゃ知り合いがいたから声をかけてくれましたが。(朝鮮学校側は)僕が参加していることを知らないでしょうから」

専門家やゲストという立場ではなく一般参加というのだ。

「私は普通にこういう運動に参加しますから、重要だと思ってきただけです」

御年81歳の和田氏が地下鉄を乗り継いで日比谷まで来るとは何やらいじらしさすら感じた。高齢者なのだし、これまでの親北活動を考えれば“ お見送り”ぐらいあってもバチは当たらない気もするが…。それとも高齢で活動の一線から引いている和田氏だからとの配慮なのか? ただ集会の盛り上がりに対して一人、帰宅する姿は「黄昏」という雰囲気に満ちていた。

写真中央が和田氏。長年、北朝鮮擁護、在日朝鮮人の人権問題に関わってきた。

元総連活動家「本音は馬鹿にしてるよ」

南北朝鮮、旧ソ連のプロパガンダに一役買った日本の学者、マスコミ人、政治家は少なくない。和田氏もその一人である。先述した通り「朝鮮戦争は韓国が始めた」「拉致はない」長年、こうした主張を続けてきた。北朝鮮賛美の言説を作り出してきた中心人物だ。北朝鮮プロパガンダがどれだけ残酷だったのか? こんなエピソードを紹介しよう。

11月17日、早稲田大学で公開シンポジウム「帰国事業開始から60年 北朝鮮で在日どのように生きたのか その「生」を当事者に聞く」が開催された。登壇した一人、石川学さん(1958年東京出身 1972年に朝鮮中学在学時に帰国 東京在住)は家族で北朝鮮に渡った。石川さんの姉は日本在住時に『朝鮮新報』の記者として北朝鮮の喧伝に関わった。「共和国では老若男女問わず誰でも学びが保障される」こんな記事を書いていたそうだ。

帰国事業を語る在日二世たち。司会はアジアプレスの石丸次郎氏。左から4番目の男性が石川さんだ。

そしてこの姉を含め石川さん一家は北朝鮮に行く。そして姉は現地で世話人のような人物に大学入学したいと告げる。ところが「あんたのような年の女性が大学に行く必要はない」と否定されてしまう。石川さんによれば姉はかなりショックを受けたという。当然だ。自分が「地上の楽園」と信じた祖国の実態があまりに違う。

その後、精神を病み入退院を繰り返し91年に亡くなったという。彼女はとても気の毒ではあるが、しかしこの女性の記事によって北を信じ過酷な人生を送った人もいるはずだ。だから残酷な言い方かもしれないがある意味、その報いを受けたのかもしれない。だが、日本の北朝鮮シンパたちは過去の発言を顧みることもなく、マスコミからは今でも「善導者」の扱いを受けている。

和田氏の話に戻ろう。氏はもともとソ連の研究が専門だ。それが北朝鮮、韓国、中国といった東アジアの国々も論じ、またシンパとなった。もっともその活動の根源は

「二七年前に発生した金大中氏拉致事件のさい、氏の原状回復を求めて声を挙げた私として、その認識にいまも変化はない」(2001年1月号『世界』「日本人拉致疑惑」を検証する)

韓国軍事政権を批判して金大中を支援することだった。その時代に応じて、シンパシーをソ連、中国、北朝鮮、韓国と変えていくので、論壇では「変節漢」と揶揄されていた。ただ和田氏を擁護するわけではないが、おおかた日本の左翼文化人、進歩的文化人はそんな程度であろう。しかしこうした主張スタイルは北朝鮮や韓国にとっては利用しやすく、またマスコミにとっても便利な存在だったのは言うまでもない。。

だから北朝鮮、朝鮮総連からすれば「和田様様」のはずなのだが…。

この一件について朝鮮総連に参加経験を持つ在日コリアンに聞いてみると苦笑していた。

「アンタ、何を今さら言っとるの。朝鮮総連は、あの手の学者や政治家を実はめちゃくちゃ馬鹿にしているんだよ。そりゃそうでしょ。言うことを右から左に流してくれるんだから。アイツは言うことをホイホイ聞くやつだって。本人たちは誇らしく思っているんだろうけど、総連からしたら都合のいい存在だよ。だって現に今回もむこう(和田氏)が頼まれもしないのに来たんでしょ」

そういえば90年代の金丸訪朝でも自民党とパイプができたと思いきや北朝鮮側は長年、交流があった旧社会党・田辺誠委員長を蚊帳の外にして金丸信と密談したのはあまりに有名な話。南北朝鮮ともにこういう「梯子外し」はよくやるものだが、なんだかそんなエピソードとダブって見えてしまう。

また北朝鮮問題に詳しいベテラン編集者はこんな見方をする。

「他の親北派とか進歩的文化人が“北朝鮮は地上の楽園 ”とか“ 米も肉も山のように食べられる”といって音頭取りをしたでしょ。和田さんも北朝鮮を擁護してきたのは変わりません。ただあの人は“ 北朝鮮には強制収容所がある。社会主義国には収容所があるものだ”って都合の悪い話もあっさり言ってしまうんです。他の人なら絶対に強制収容所なんて言わないから。あの人は妙に率直で、飄々としたところがありますよ」

こういうパーソナリティが逆にプロパガンダ活動とマッチしたのか、やはり北朝鮮側に利用されてきた感は否めない。学者として見た場合、北朝鮮研究で和田氏の文献にもはや価値はない。強いてその存在意義があるとすれば「東大名誉教授」という肩書ぐらいか。メディアへのコメント、あるいは活動の呼びかけ人といった時には使い勝手がいいかもしれない。「親北文化人・進歩的文化人」として報道機関、言論界ではもてはやされた存在だが、和田氏を見るに踊ったつもりが実は踊らされたと言っては失礼だろうか。一人、日比谷公園を去る姿に「親北派」という存在の空虚さを感じてしまった。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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朝鮮学校集会で見た 親北文化人の黄昏【和田春樹】」への2件のフィードバック

  1. ななし

    貴社のようなメディアの存在には正直驚きました。多くのメディアが尻込みするような切れ味鋭い記事の配信を楽しみにしております。応援してます。

    蛇足
    反対勢力の方々のコメントは想定範囲内でしょうが、拝見する側としては閉口してしまいます。左翼主義者たちは美辞麗句をならべて自己主張する一方で、反対勢力の主張に対しては冷静な議論を始めることをせず、脅迫めいたスタンスで臨むのですね。このような様子を見れば、どちらがまともな議論を望んでいるのか、どちらの主張を信じるべきか自明だと思うのですが。。

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