【特集】証言偏重で「犯人視」に疑問!疑惑追及の一線を越えた週刊文春「木原事件」報道を検証(第1回)

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By Jun mishina

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『週刊文春』は2023年7月13日号で木原誠二氏の妻の元夫・安田種雄さんの不審死を報じて以来、「木原事件」として継続的に取り上げてきた。「新証拠」「新展開」といった見出しが躍る一方、それらが具体的に何を裏付けるのかは、慎重な検討が必要だ。関係者の証言や元刑事の見立てが、いつの間にか特定人物への「犯人視」に置き換わっていないか。一連の報道を検証する。(写真=安田種雄さん)

冤罪に敏感なはずの左派メディア関係者が小躍りする

自民党・木原誠二衆院議員の妻X子さんの元夫、安田種雄氏が2006年4月9日に不審死したことをめぐる週刊文春の一連の報道。大きな反響があったが、多くの疑問を抱かせる内容だ。

当初、安田氏は「自殺」として処理された。だが遺族側はX子さんが事件に関与した疑いがあると主張。2018年に再捜査が始まった。警視庁が「事件性なし」と発表したものの、木原氏が捜査に介入したとして週刊文春が長期的に特集してきた。

第一報は2023年7月13日号「岸田最側近 木原副長官衝撃音声『俺がいないと妻がすぐ連行される』」だ。当時、岸田首相の側近だった木原氏をめぐる報道は社会的にも衝撃だった。

そして今年9月17日号『木原事件遺族に重要参考人が謝罪した!「あの時通報していれば事件は解決していた」「なぜ親友を“見殺し”にしたのか』まで約3年間の長期シリーズで掲載されてきた。

ターゲットになった木原氏は東大を卒業後、1993年大蔵省入省、2005年の総選挙で初当選し、キャリアを積んだ。典型的なエリート政治家である。岸田首相の下で内閣官房副長官兼内閣総理大臣補佐官を務め政権を支えたが、文春報道の影響があり2023年9月の内閣改造で退任した。

権力監視を標榜するメディア関係者の中には、木原報道に快哉を叫んだ者もいたことだろう。週刊文春の記事をまるで「真相」のように取り上げている。普段は「冤罪事件」を指弾する左派メディアが週刊誌の報道を即事実として同調するのが不思議だ。

いわば文春親衛隊記者といった存在で、なぜか「自分たちも報じた側(文春側)」のように振る舞う。このことは他社記者が週刊文春に強く依存していることの証左だろう。だがこれまで数々のスクープがあったとしても文春が全て真実ということではない。

ところが昨今のマスコミ、野党議員は週刊文春の記事を追及材料にする傾向が強い。「新証拠「新証言」と銘打たれる度に、文春親衛隊が騒ぎ出すという現象が2023年から続いてる。一連の流れを時系列でまとめてみた。

安田種雄氏の不詳の死と「木原報道」の時系列

2006年4月 安田種雄氏が東京都文京区の自宅で死亡。遺族は、ナイフが整然と置かれていた、靴や携帯電話の状況が不自然だった、不審な人物とすれ違ったなど、現場に違和感を抱く。

2018年 警視庁が再捜査を開始。女性捜査員が、ナイフに付着した血液の状態や、血痕が拭き取られた可能性に疑問を持ったとされる。

2018年の再捜査中 捜査員が宮崎刑務所に収監されていたY氏を聴取。Y氏は「X子さんに呼ばれて自宅へ行くと、安田氏が血だらけで倒れていた」などと説明したとされる。

2018年中 木原氏の妻らへの事情聴取が行われたが、再捜査は事実上終了。警察は後に「証拠上、事件性は認められない」と説明する。

2023年7月13日号 『週刊文春』が初報。2006年の現場に対する遺族の疑問と、2018年の再捜査を「木原事件」として報じる。記事によれば、Y氏はX子さんから連絡を受けて現場へ行ったことを認めたとされる。

2023年7月20日号 2018年の再捜査で、Y氏が「X子さんに呼ばれて家へ行くと、安田氏が血だらけで倒れていた」と供述したと報道。

2023年7月27日号 ナイフの置かれ方、靴や携帯電話の状態など、遺族が事件直後から抱いていた現場への疑問を報じる。

「2023年7月28日 元警視庁捜査一課の佐藤誠氏が、『事件性はある』と主張する記者会見を開く。

2023年8月10日号 現場の血痕、ナイフの移動、遺体の体位変換などを記したとされる捜査メモを掲載。文春は、X子さんによる証拠隠滅の可能性を示唆した。

2023年以降 文春と遺族側は、現場に不自然な点がありながら再捜査が終了したことを問題視。木原氏の政治的影響力が捜査に及んだ可能性を継続的に追及する。

2026年3月 安田種雄さんの遺族(父・母・長姉・次姉の4人)はX子さんを相手取り、約1億円の損害賠償を求める民事訴訟を東京地方裁判所に提起。

2026年8月13・20日号 文春が「木原事件に新展開」としてY氏の長時間インタビューを掲載。Y氏は事件当夜、X子さんに呼び出されて現場へ行ったと証言した。同インタビューでY氏は、軍手を着けて刃物の柄に巻かれた両面テープを剥がして捨て、血痕をバスタオルで拭いたなどと説明。これらの内容は2018年の再捜査でも話したと主張した。

2026年8月以降 文春は、Y氏の証言やX子さんから送られた手紙、獄中ノートなどを「新証拠」として報道。遺族側は再捜査を求める。

X子さんが犯人という結論ありきで進んでいないか

『週刊文春』の「木原事件」報道を読むと、繰り返し登場するのが、安田種雄氏の遺族、死亡当夜に現場へ入ったと語るY氏、そして2018年の再捜査でX子さんの聴取を担当した佐藤誠元警部補だ。

三者はいずれも重要な取材対象である。しかし、発言者が複数いることと、その主張が独立した証拠によって裏付けられていることは同じではない。それぞれが何を直接知り、何を他人から聞き、どこから推測しているのか。報道を検証するには、この区別が欠かせない。

まず遺族が語る、刃物の置かれ方や現場の状況への違和感だ。家族を突然失い、死亡の経緯について説明を求めることは当然である。ただし、発見時の現場に不自然な点があることから、直ちに他殺や特定人物の関与が導かれるわけではない。

文春によれば、Y氏は刃物の柄に巻かれた両面テープを持ち去るなど、現場に手を加えたと証言している。そうであれば、遺族が見た刃物の状態を、安田氏の死亡直後の状態として評価することはできない。従来、他殺を疑わせる材料として報じた痕跡のうち、どこまでがY氏の行動によって生じた可能性があるのか。

次にY氏の証言である。X子さんから「種雄君を刺しちゃった」と電話で告げられたという話は、彼女の関与を疑う報道の核心になっている。だが、確認できる記事では、Y氏は刺す場面を目撃したとは語っていない。電話で何を聞いたかという証言と、実際に誰が何をしたかという事実は、区別して検討しなければならない。

しかもY氏は、現場の証拠に手を加えたと自ら述べる当事者でもある。自分に不利な行為を認めた点は、証言の信用性を考える材料になる。一方で、自分の役割を限定して説明する可能性についても検討が必要だ。証言を疑うことと、Y氏を別の犯人として扱うことは違う。求められるのは、供述の変遷や客観的な記録との照合である。

ここで注意したいのは、証言が繰り返されることで、裏付けが増えたように見える問題だ。仮にY氏の話が捜査員に伝わり、その内容を元捜査員や遺族が語ったとしても、出発点が同じなら独立した証拠が増えたことにはならない。

文春が報じたY氏の獄中ノートも、本人が当時どのように考えていたかを検討する資料にはなる。しかし、本人の証言と本人のノートの一致だけで、証言内容が事実だと確定するわけではない。

佐藤氏の証言にも、本人が直接経験した取調べの経緯と、死亡状況や関係者についての推測が含まれる。

2023年7月28日の会見で、佐藤氏はZ氏を怪しいと見る根拠を質問され、「感触ですよね。はい。勘」と答えた。これは事件性全体の根拠を問われた回答ではなく、Z氏への疑いについての発言だ。その文脈は正確に扱うべきである。それでも、特定人物を疑う理由として具体的な事実を示せなかった点は、厳しく問われてよい。

捜査経験に基づく違和感は、調べるきっかけにはなる。だが、読者に他殺や特定人物の関与を確信させるには、他人が検証できる根拠が必要だ。「伝説の取調官」という肩書や断言の強さで、その不足を補うことはできない。

再生回数狙いのYouTuberの草刈り場

さらに問題は尽きない。「有力政治家の木原氏が妻を守るために警察に圧力をかける」「X子さんの父、Z氏が元警察官ということから組織ぐるみの隠蔽という陰謀論」というストーリーはYouTubeの題材に最適だろう。明らかに再生回数狙いのYouTuberらによって疑惑があたかも「真実」のように拡散されていく。中には普段は「冤罪問題」に敏感であろう一般メディアの記者までが取り上げてきた。

もちろんそこに独自調査、独自情報は皆無といってもいい。全て週刊文春、あるいは佐藤氏が動画で語ったことの引用、受け売りである。

特に佐藤氏は本事件で社会的に最も名を馳せたと言ってもいいだろう。

元警視庁捜査一課 佐藤誠刑事のぶっちゃけライブ(登録者数 8.81万人)

元警視庁捜査一課 佐藤誠の警察OBチャンネル(登録者数 5.2万人)

事件系のYouTuberとして人気を博している。また現在でも木原事件について発言し続けている。しかし初期の週刊文春記事、記者会見から少しずつ内容、証言に変化がみられる。そこで佐藤誠 相談室に質問状を送った。

遺族はX子さんを訴え、週刊文春も彼女の関与を示唆する記事を掲載している。一方、佐藤氏は2023年の会見で、X子さん本人による実行は考えにくいとの見立てを示していた。その根拠は何か。現在も同じ見立てなのか。まず、この点を尋ねた。

【1.X子さんを実行者とみるか】

2023年7月28日の記者会見で、佐藤様は、X子さんを重要参考人として取り調べた一方、本人による実行については「考えにくい」との個人的見立てを示されました。その理由として、刺突には相当な力が必要と考えられること、刃物を使用した者に生じやすい手の傷がX子さんにはなかったこと、取り調べ時の反応などを挙げていたと理解しています。

現在も「X子さん本人による実行は考えにくい」という見立てを維持されていますか。

【2.「相当な力が必要」とした根拠】

刺突に「相当な力が必要」と判断した根拠は、創傷鑑定、再現実験、使用された刃物の性状、法医学者の見解のうち、具体的にどれでしょうか。

また、記事でY氏が説明する「全長30センチ弱で、ギザギザの非常に鋭利な刃」と、この「相当な力が必要」という判断は整合するのでしょうか。

【3.X子さんの手の傷】

佐藤様が2023年の会見で述べた「X子さんの手に刃物使用時の傷がなかった」という点は、事件直後の診察記録や写真などで確認された事実でしょうか。それとも2018年の取り調べ時に確認した範囲での話でしょうか。

事件から約12年後の状態を見て、事件当時に傷がなかったと判断したものではない、という理解でよいでしょうか。

【4.Z氏についての見立て】

2023年の会見では、X子さんやY氏を消去していく過程でZ氏が「引っかかった」と述べ、その根拠は「感触」「勘」「消去法」による個人的な見立てであり、捜査本部の共通
認識ではないと説明されていました。

現在もZ氏が実行者である可能性を考えていますか。現在はその見立てを撤回または変更している場合、理由をご説明ください。

また、週刊文春2026年8月13日・20日号がX子さんによる刺突を強く示唆する内容である一方、Z氏の可能性をほとんど検討していないことを、佐藤様はどのように評価されていますか。

【5.2018年におけるY氏の供述内容】

今回の記事でY氏は、事件当夜について、概ね次のように証言しています。

・X子さんから「種雄君を刺しちゃった」と電話で聞いた
・現場でX子さんから「刺せるなら刺してみろと言われて、ナイフを握らされた」と聞
いた
・2階の血痕を清掃した
・刃物の柄の両面テープを剥がした
・X子さんや子供と現場を離れた
・その後、京都や大阪方面へ移動した

Y氏は、これらの内容を2018年の事情聴取でも供述していたのでしょうか。

供述していなかった事項がある場合、今回初めて加わった内容はどれでしょうか。また、佐藤様は、その追加・変化をどのように評価していますか。

【6.「刺しちゃった」という発言】

Y氏がX子さんから「種雄君を刺しちゃった」と聞いたとする点について、録音、通話直後のメモ、メール、第三者への同時期の相談など、Y氏の約20年後の記憶とは独立した裏付けは存在しますか。

存在しない場合、この部分は現時点ではY氏単独の回想証言である、という理解でよいでしょうか。

【7.電話および死亡時刻】

Y氏は電話を受けた時刻を「夜9時頃」と説明しています。電話の発着信時刻は、当時の通話履歴などによって客観的に確認されているのでしょうか。

また、その時刻は、司法解剖などによる死亡推定時刻と整合していますか。死亡推定時刻にはどの程度の幅があったのでしょうか。

【8.刃物の特定】

今回の記事に掲載された発泡スチロールカッターの写真には、「凶器と似た型」との説明があります。

実際に安田さんの致命傷を生じさせた刃物は特定・押収されているのでしょうか。Y氏が見たとする刃物と、創傷の形状・深さ・幅などが鑑識上符合したのでしょうか。また、Y氏が両面テープを剥がしたという説明は、現場写真、指紋・DNA、テープ片などによって裏付けられていますか。

【9.2階の血痕】

Y氏は、現場2階に血痕があり、自分が清掃したと証言しています。

2006年の現場写真、鑑識記録、血液反応検査などに、2階の血痕または清掃の痕跡は記録されていますか。記録されている場合、それが安田さんの血液であることは確認されていますか。

今回の記事に掲載された間取り図は「取材をもとに作成」とされていますが、警察の現場見取図や鑑識写真と一致しているのでしょうか。

【10.写真やノートの証拠価値】

今回の記事は、Y氏とX子さんの写真、手紙、ノートなどを重要な新資料として掲載しています。

これらの資料は、両者が親密な関係にあり、事件前後に接触していたことを補強するものではあっても、X子さんによる刺突、血痕清掃、政治的介入を直接証明するものではないように見受けられます。

佐藤様は、各資料が具体的にどの供述のどの部分を裏付けると評価されていますか。

【11.「第一級の証拠」との評価】

今回の記事では、佐藤様が新資料について「事件性があることを補強する第一級の証拠」と評価した趣旨の記述があります。

「第一級の証拠」と評価した対象は、具体的にどの写真、手紙、ノートまたは供述でしょうか。

また、ここでいう「事件性を補強する」とは、

・自殺ではない可能性を高める
・Y氏の関係者性を裏付ける
・X子さんによる刺突を裏付ける
・証拠隠滅を裏付ける
・政治的介入を裏付ける

のうち、どの意味でしょうか。

【12.Y氏の供述の信用性】

Y氏の供述について、2018年当時、捜査側はどの部分を信用できると判断し、どの部分を裏付け不足または信用性に問題があると評価していたのでしょうか。

約20年の時間経過、薬物使用歴または逮捕歴、供述の変化、自己の関与を軽減する可能性などは、信用性評価においてどのように考慮されていますか。

*なお、薬物使用歴や逮捕歴そのものを理由に証言全体を否定する趣旨ではなく、通常の供述信用性評価として質問しています。

【13.政治的圧力について】

佐藤様は2023年の会見で、政治的介入を直接確認したとは述べず、上層部で何があったかは分からないと説明されていました。

木原氏、官邸、政治家またはその関係者が警察に対し、捜査の縮小・終了を求めたことを示す文書、録音、メール、指示記録などを、佐藤様自身が確認したことはありますか。

確認していない場合、「政治的圧力によって捜査が終わった」という点は、捜査終了の時期や状況からの推測にとどまる、という理解でよいでしょうか。

【14.国会召集日と事情聴取の終了】

「臨時国会の召集日までに聴取を終わらせる」という要求について、佐藤様は誰から、どのような言葉で聞いたのでしょうか。それは佐藤様が直接受けた命令でしょうか。それとも上司や他の捜査員から聞いた伝聞でしょうか。

また、国会召集日までの聴取終了と、その後に本格的な捜査が再開されなかったこととの間に、直接的な因果関係を示す資料はありますか。

【15.捜査の「異常な終わり方」】

佐藤様が「通常とは異なる」「異常だった」と評価する具体的な警察実務上の基準をご説明ください。例えば、

・捜査終了の決裁や指示の形式
・終了理由の説明の有無
・未処理の捜査事項
・捜査員の配置解除
・遺族への説明
・通常の未解決事件との比較

のうち、どの点が特に異例だったのでしょうか。また、佐藤様は遺族担当ではなかったとのことですが、遺族に説明がなかったことを、どの資料または担当者の報告によって確認されましたか。

【16.「事件性がある」の意味】

佐藤様のいう「事件性がある」とは、

①自殺と断定できない
②第三者が関与した可能性がある
③他殺である可能性が高い
④特定人物による殺人を立証できる

のどの段階を意味しますか。

2023年の会見では、他殺や犯人を立証する物証は固まっておらず、逮捕状請求の段階には達していなかったとの趣旨を述べていました。この評価は現在も変わりませんか。

すると次のような回答があった。

忙しくしておりまして、取材に応じ兼ねます。ご質問の内容は、過去複数のYouTube動画でほとんど話しておりますのでご参考にて、引用して頂けたらと存じます。

だが筆者が確認した動画では、質問への具体的な回答を確認できなかった。佐藤氏の動画のコメント欄には、X子さんやZ氏を犯人と断定する投稿も多数だ。中には実名を挙げたコメントもある。

だがもし自分たちが同じ立場に置かれたらどう思うだろう。週刊文春に〝書かれた〟のならば真実なのだろうか? 次回は安田氏遺族がX子さんを訴えた裁判を検証する。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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