【世田谷区】統一地方選を前にビビった? 保坂区長が自民党会派と共闘した民泊緩和策がとん挫

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By Jun mishina

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今や社会問題になった民泊。推進派・規制緩和派の東京都世田谷区の保坂展人区長が、民泊の営業日数を年間180日まで拡大する方針を撤回した。しかし、住居専用地域で民泊を認める方針まで取り下げたわけではない。年間120日までの営業は残り、対象となる「家主居住型等」の範囲も注意が必要だ。民泊から旅館業に転業する施設への対応など、営業日数の修正だけでは解決しない課題が残る。(写真=決算特別委員会で挨拶する保坂区長)

昔は機関紙「砦」、今は民泊施設が「砦」?

都内の各区が民泊規制を強める中、世田谷区の保坂展人区長は、一定の条件を満たす民泊の営業日数を増やそうとしていた。しかし、区民や議会の反発は強い。

このため保坂氏は10月15日の区議会決算特別委員会で、旅館業と住宅宿泊事業に関する2つの条例の改正素案について、見直しを表明した。

パブリックコメントでは、寄せられた意見の9割以上が修正を求めるか反対の内容だったという。保坂氏は、一定の条件を満たす事業者に年間180日までの営業を認める方針を撤回した。

見直し後は、住居専用地域で新規の家主不在型を認めず、家主居住型等で一定の条件を満たす場合に限り、年間120日まで認める方針だ。

新規の家主不在型を認めない点では規制が強まる。しかし、家主居住型等の営業は引き続き認められる。180日への拡大を取り下げただけで、住宅地の民泊問題が解決するわけではない。

民泊の制度化を進めたのは安倍政権。2013年成立の国家戦略特区法により、旅館業法の特例を利用した「特区民泊」の仕組みが設けられ、次いで2015年には大阪府が関連条例を制定した。

さらに、2017年には住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法が成立。2018年の施行により、全国で年間180日を上限とする届出制の民泊が制度化された。今回の世田谷区の見直しは、この民泊新法に基づく営業をめぐるものだ。

国政では自民党、維新、公明党などが推進してきた民泊政策を、革新系の支持を受ける保坂氏も後押ししている。世田谷区では、民泊をめぐって保坂氏と自民党会派の利害が重なっているという。

世田谷区関係者は裏事情を明かす。

「保坂氏は多文化共生、国際交流という観点から民泊を重視していますが、それ以上に重要なのは票。業界団体、商店街、民泊協会の票が欲しいのです。民泊の関係団体は自民党の支持団体なのですが、そうした団体を取り込んだことで保坂氏は4期目という長期政権になりました。自民党にとっても区長が支援団体の声を聞いてくれるのでありがたい存在。つまり保坂氏と世田谷自民は共闘関係にあります。その証拠に保坂氏は新規の届出分について家主居住型に限るという方針を打ち出しています。これは自民党の主張と同じです」

ところが来年は統一地方選挙を迎える。

「パブリックコメントには反対意見が殺到して、保坂氏も自民党も動揺しました。規制緩和の見直しは住民の安全というよりも選挙事情によるものですね」(同前)

かつて機関紙「砦」を発行した革命少年、保坂氏がどうやら民泊という〝砦〟を得たようだ。関係者の証言どおりなら、反体制、反権力を掲げてきた保坂氏が、票を求めて民泊政策で自民党と共闘したことになる。支持する区議や有権者は、これをどう受け止めているのだろうか。

苦情対策と営業拡大を組み合わせた区の判断

※10月15日の見直し方針は、成立済みの条例ではない。具体的な要件や適用範囲は今後の改正案で確認する必要がある。

結局、区は何を目指していたのか。

9月の説明資料では、施設の増加に伴い、騒音やごみなどの相談・苦情が急増したとする。同時に、宿泊事業には地域経済や文化交流への利点があるという考えだ。そのため、一律の抑制ではなく、適正な事業者を支え、不適正な事業者への対応を厳格化する見通し。

当初素案は、管理ルールを厳しくし、家主居住型等への転換を促す一方、条件を満たす事業者には平日を含む年間180日の営業を認める仕組みだった。

現行の運用では、平日営業の制限を解除した事業者にも、年間120日程度にとどめるよう行政指導で求めている。当初素案のうち、これを180日まで認める部分が規制緩和だ。

ところが、適正な事業者を選別すれば、営業を増やしても住環境を守れるという判断には説明が足りない。

ごみの適正処理や苦情対応は、事業を営む上で必要な責任だ。それを果たすことと、宿泊者の入れ替わりや夜間の出入りによる影響がなくなることは別問題。

家主が住んでいても、人や車の往来をすべて防げるわけではない。複数の施設が集中すれば、一施設ごとの管理だけでは捉えられない負担も発生するだろう。

家主居住型と不在型で苦情の発生率はどう違うのか。営業日数や宿泊人数との関係はどうか。資料には、営業拡大を判断するための検証が十分に示されていない。

区が9月24日に公表した説明資料は、規制緩和ではないかという疑問に、国の上限が180日であることや、制限解除の要件と管理義務を厳しくすることを説明した。

しかし、国の上限内であることは、従来より営業機会が広がるかどうかへの答えにはならない。管理の強化と営業期間の緩和は同時に存在する。

180日案を取り下げた後も、問われるのは「何日ならよいか」だけではない。年間120日でも、立地や宿泊人数、管理体制によって近隣への影響は変わる。180日より短いという理由だけで、住環境への配慮が十分になったとは判断できない。

120日営業は残る 曖昧な「家主居住型等」の範囲

集合住宅を転用した民泊施設の一例。

「家主居住型等」の「等」も、曖昧なままにできない。

この間、民泊問題を取り上げてきた会派「改革無所属の会」の桃野芳文区議が「等」について説明を求めた。

区担当者は「家主が二世帯住宅等の同一の建物内、同一敷地内、隣接する建物にいる場合で宿泊者の様子が家主居住と遜色なく分かる範囲を想定している」と説明する。

つまり、区が想定する対象は、家主が宿泊者と同じ住宅で暮らす場合に限らない。同じ建物や敷地内の別の住戸、さらには隣接する建物に家主がいる場合も含まれる。

問題は、「宿泊者の様子が家主居住と遜色なく分かる」という条件を、誰がどのように確認するのかだ。家主が近くに住んでいても、日常的に長時間不在となる場合はどう扱うのか。

最終案では、対象範囲に加え、居住実態や管理状況をどのように確認するのかも明示する必要がある。

また住民への事前説明も具体的で実効性がある内容にしてもらいたい。

区は、開業前の周知や、求めに応じた説明会、緊急時の駆けつけ、苦情対応の記録保存などを義務化する方針だ。これらは改善策である。しかし、説明会を開いた事実だけでは、住民の懸念が解消されたことにはならない。

ごみ置場や防音対策に問題があると指摘された場合、誰が改善を確認するのか。苦情が続けば、いつまで指導し、どの段階で処分するのか。制度を動かす人員や手順まで示す必要がある。

旅館業への転業にどう対応するのか

もう一つ、営業日数の議論だけでは見落とす問題がある。旅館業への転業だ。

住宅宿泊事業には年間180日という法律上の上限があるが、旅館業には同じ日数制限がない。旅館業の許可を得れば、住宅宿泊事業に課される年間180日の日数制限を受けずに営業できる。

ただし、どの民泊でも、そのまま切り替えられるわけではない。旅館業には用途地域や建築・消防などの条件があり、住居専用地域では原則として営業できない。

住居専用地域の民泊規制と、旅館業が可能な地域での転業対策は、分けて考える必要がある。

その上で、転業によって住宅地やその周辺の宿泊営業の負担が増えないかという検証は欠かせない。転業の件数や立地、近隣への影響を把握せず、民泊の日数だけを抑えても、区内全体の問題を捉えたことにはならない。

区は旅館業についても、標識の掲示、宿泊者への説明、本人確認のための設備などの対策を盛り込んでいる。

しかし、これらは主に営業時の管理対策だ。公表された説明資料からは、転業による営業日数の増加や、無人で運営する施設への対応について、どのように負担を抑えるのかが十分に読み取れない。

民泊と旅館業を一体的に検討するとした以上、転業を含めた実態と対策も示さなければ意味がないだろう。

報道によると、区は協議会で改めて意見を聞き、2027年2月の区議会への改正案提出を目指す。現時点で条例の内容が確定したわけではない。

180日案の撤回は重要な変更だが、議論はまだ続く。120日営業を認める条件、「家主居住型等」の範囲、住民の声を改善につなげる手続き、旅館業への転業への対応。次に示される案に〝抜け道〟がないかチェックが必要だ。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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