川崎市同和相談事業の謎(3) 同和会の事務所は川崎市にはない?

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By 宮部 龍彦

前回は部落解放同盟川崎支部の実態について説明したが、今回は全日本同和会について調査した。

全日本同和会は解放同盟ほど目立たず、その活動の実態は一般にはあまりには知られていないが、意外にも主要な同和団体の中では最もオープンである。何より「同和」と直球な看板を掲げているし、Youtubeで「全日本同和会」で検索すると、集会の様子を撮影した動画がいくつも公開されている。

たまたま、過去の全日本同和会の集会で配られた資料を持っていたので、改めて確認してみると、全日本同和会川崎支部の住所がしっかりと書かれていた。住所は川崎市宮前区野川で、支部長は近藤さんという人らしい。

早速、現地に行ってみると、トランクルームと作業場のような建物があるだけだ。

しかし、これは驚くべきことではない。全日本同和会は同和団体というよりは、“土建屋の組合”と評され、会員には自営業者や企業経営者が多い。自治体から仕事を請け負っている業者も多く、そのために「同和団体」という看板をある意味利用していることを隠す素振りを見せない。ただ、それでも一応部落に事務所が置かれていることもあるのだが、川崎のトランクルームのある場所は明らかに部落ではない。

「全日本同和会の支部長さんはいますか?」

トランクルームの事務所に家族と思われる女性がいたので聞いてみると、支部長は高齢のために既に支部長は止めて、同和会の活動からも離れているとのことだった。今は別の人が支部長になっていると思うが、よく分からないという。

神奈川県内の団体関係者に聞いてみると、それこそ20年位前までは全日本同和会には胡散臭い人が多く、ヤクザの集まりかと思われるような状態だったという。これは、当の全日本同和会の関係者もしばしば認めていることだ。実際、暴力団も関わっていたのではないかという声も聞かれる。

しかし、2003年に同和地区の企業向けの貸付金を巡る出資法違反事件をきっかけに、そのような人は一掃されたという。興味深いのは、同時期に全日本同和会から抜けた怪しげな人が解放同盟に入会を申し込んでいたこともあったそうだ。

一方、最近は全日本同和会から分裂した団体である自由同和会の動向も見逃せない。先日、三品純がお伝えしたとおり、ここ神奈川県でも自由同和会が巻き返しを狙う動きがあるという。従来、神奈川県は解放同盟、人権連、全日本同和会の3団体を行政の交渉団体としてきた。それ以外の団体は言わば蚊帳の外だったわけだが、部落差別解消推進法が出来たことで、自由同和会からの交渉の求めに対して、県が無視することができなくなっているという。

さて、全日本同和会川崎支部のことに話を戻そう。筆者が持っている集会資料には、川崎市の全日本同和会の会員として「塘地さん」という別の名前の人物が登場する。電話帳で調べてみると、横浜市鶴見区に同じ名前の人が存在する。

早速電話して、「全日本同和会の川崎支部について聞きたい」というと、特に否定はされなかったので間違いないようだ。ただ、取材を申し込むと「そのことについてはお受け出来ません」と拒否され、さらに電話も着信拒否されてしまった。

ただ、分かったのは解放同盟も全日本同和会も、少なくとも住所からすると部落とは直接関係なさそうで、全日本同和会に至っては川崎市内ですらないことだ。
(次回に続く)

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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