「人口増加の好循環を止めるわけにはいかない」。交野市・山本景市長は6月29日、再選を目指し交野市長選(8月30日告示、9月6日投開票)に立候補することを表明。また30日には美好かおる大阪府議が日本維新の会公認で立候補を表明した。元維新の山本氏にとっては古巣との対決になる。維新王国・大阪にあって、交野市はいわば〝山本人民共和国〟のような地域。しかも山本陣営は現職の立場をフル活用して水面下で着々と有権者へアピールしてきた。(写真=山本市長のXより)
高齢者票狙いがミエミエ

市長選の表明以前から意欲は満々だった。日々、「本人」と書かれたのぼりを自転車に立て市内を回る。しかも維新カラーの緑だから事情を知らない住民にすれば維新系の市長と勘違いするだろう。また市議補選に立候補するとみられる岡本まゆみ氏と街頭演説は「事前運動」と指摘を受けたが、本人はどこ吹く風。

しかも山本氏は水面下で巧みに有権者に向けてアピールを続けてきた。
「Webサイト上でもPDFで閲覧できる『交野市おりひめバスのご案内』を印刷して各世帯に配布しているのです。冊子は全26ページですが、高齢者等に向けた「交野市外出支援制度」や「交野市高齢者運転免許証自主返納支援事業」の紹介など明らかにシルバー世代を意識した内容です」(市関係者)
時刻表ならネット上でも確認できる。もちろんインターネットを前提にした情報発信は、若年層には便利でも、高齢者にとっては必ずしも身近なものではないのは分かる。だがこのペーパーレス化の時代に紙で配布することにどれぐらいの効果と需要があるのか不透明だ。
山本氏のコア支持層は高齢者。おりひめバス利用者の年齢別内訳は示されていないが、高齢者がコアユーザーだ。おりひめバスについて、年間経費は約2億円、運賃収入は推計約5千万円で、単純計算では約1億5千万円の赤字になると、山本氏自らが説明している。つまり、運賃収入で回収できるのは約25%、残り約75%を公費などで支える仕組みだ。
今年2月27日のタウンミーティングでおりひめバスの運行状況について質問された際、山本氏はこう回答した。
「補助金分を加味しても赤字だが、そもそも黒字化を目指している事業ではないため、費用面より公共交通の維持継続や利用率の向上が重要である。多様な施策により、年間3億円以上の財源確保もできているところであり、1億5千万円程度の支出は許容範囲だと考えている」
1億5千万円程度の支出は許容範囲とあっさり語るが、もちろん交野市の財政にとって大きな負担だ。もっとも市長の懐が痛むわけでもないし、住民サービスの一環で収益目的ではないという大義がつく。市長の実績と感じる高齢者も少なくないだろう。
だが同バス事業を単純に住民サービスと受け止めることはできない。
バス事業は山本氏にとってもう一つのメリットがある。
政治献金した野村工務店の物件とバスルート
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これまで山本氏に対して多額の政治献金を行ってきた野村工務店についてレポートしてきた。特に星田エリア全体事業についてはまるで「野村工務店ありき」のような入札方式だ。

同社は星田・南星台、河内磐船/河内森周辺、私部南、森北・森南、寺、妙見坂で宅地開発、住宅販売を手掛けてきた。オーベルジュコートを冠した分譲地の看板が散見される。
単なる1〜3区画のミニ分譲ではなく、森北2丁目=約2.6ヘクタール・67区画、私部南4丁目=約1.8ヘクタール・36区画、星田8丁目=約1.1ヘクタール・60区画といった、街区形成レベルの開発を複数手がけているのが特徴的だ。
市長に政治献金した企業が、市内で大規模工事を手掛けているとは、あまりに分かりやすい構図ではないか。
そして問題はバスルートだ。「交野市駅南星台循環ルート」を見てもらいたい。

⑭全現堂池というバス停がある。山本氏と関係が深い野村工務店が埋め立て造成工事をしたエリアで今後、大型分譲地が見込まれるためバス停を新設したのだろう。
このエリアは非常に細かくバス停が配置されているのが特徴的だ。
昨年11月18日、南星台地区の住民に向けたタウンミーティングで山本氏はこう説明している。
「星田駅〜南星台ルート」を45分に1本とする増便方向で調整中であり、バス停も南星台1・2丁目付近への増設を検討中である。3丁目付近にもバス停が必要と考えていたが、歩道がないため、警察協議に時間を要しており保留中である。市はバスを公共交通として必要と判断しており、「継続・拡充・利用促進」 を来年度方針とする」
南星台では、野村工務店が関与する開発・建売販売計画があり、同じ地区で、おりひめバスの増便やバス停増設が検討されてきたことが分かる。
野村工務店の開発予定地周辺で、バス増便、バス停増設、新集会所整備が同時進行している構図は、市民から見れば「公共交通の充実」なのか「住宅開発の側面支援」なのか疑問を持つ市民が出ても不思議ではない。
ところが星田駅コモンシティ星田往復ルートと比較するとある疑問が生じる。赤く囲った星田山手に注目してほしい。星田山手は交野市の東側・生駒山系寄りの高台住宅地だ。地元住民はこう憤る。
「交野市はもともと松下電器(パナソニックグループ)の企業城下町で、星田山手は〝松下住宅〟と呼ばれたほどでした。現在は昭和風の住宅が目立ち、人口減少と住民の高齢化が進んでいます。高台にある住宅街だからここに行くまでは非常に急な坂があります。ところがバス停といえば麓にあるだけなんです。そこまで歩けというのでしょうか。本当に交通難民のためのバスなら星田山手エリアを充実させればいいのに南星台などの新興住宅街だけバス停が増えるのはおかしいですよ」

今後、新住民が増える地域にバスを拡充すれば新しい支持層の拡大にもなる上、野村工務店の事業のサポートにもなり得る。顧客に住宅を販売する際にも交通の利便性は説得材料になるはずだ。
しかも山本氏は同社から政治献金を受けた。バス拡充は癒着を疑われても無理からぬことだ。
また市内の事業者からはこんな疑問も寄せられた。
「野村工務店をめぐっては、過去に補助金申請上の不正も報じられています。『リフォーム産業新聞』によれば2024年4月、国の補助事業「先進的窓リノベ事業」で、同社が2件の交付申請で計7カ所の窓の性能を偽装。不当に補助金を受けようとしたとして、交付決定の取り消しと事業者登録停止処分を受けています」
同氏はこう続ける。
「問題は先進的窓リノベ事業が2023年12月末で交付申請受付を終了し、後続の「先進的窓リノベ2024事業」は2024年3月29日から受付が始まったことです。つまり全現堂池を埋め立てる「星田エリア全体事業と時期がほぼ同じということ。こんな不正があったのに交野市は問題視しなかったのでしょうか」

2024年7月31日付けの野村工務店の経営規模等評価によれば売上60億円に対して固定負債(借入)240億円となっており、財務状況は芳しくない。
「つまり新しい宅地を作り続けなければいけないということ。自転車操業のような状況ですよ」(同前)
そんな状況の中で同社が手掛けた新興住宅街でバス停が拡充されることは、格好のセールスプロモーションとなるだろう。支援企業のフォローと高齢者対策を同時に実現したのがおりひめバスなのだ。



