コロナ禍で神真都Qが勃興して以来、陰謀論系団体が増殖した。参政党の元ボードメンバーで歯科医の吉野敏明氏が率いる日本誠真会はその一つだ。吉野氏は昨年の参院選で45選挙区に候補者を立てると宣言し約2億円の政治資金を集めた。ところが実際に擁立したのは10選挙区と比例代表2名、計12名にとどまった。元支援者らは2億円の使途の公開を求め吉野氏に抗議中だ。(写真=4月25日に都内で開催されたデモ)
「寄付金2億円の使途を説明せよ」とデモ

(トラブルメモ)参政党の元ボードメンバーで現在は日本誠真会の党首を務める歯科医の吉野敏明氏が昨年の参院選で集めた寄付金2億円の使途が不明だとして元支援者から提訴された。1月には吉野氏は医師法違反で告発を受けた他、疑似科学的、陰謀論的な言動が批判されている。
「参院選において45の選挙区に候補者を 立てることを前提として2億5000万円の資金が必要であるとの説明が繰り返され てきました。 その説明を信じて多くの方が寄付や党費の支払いなどの形で支援を行ってきました。しかし最終的に立候補者は12名に留まり、当初示されていた人数との間に大きな差が生じています」
4月25日、木原功仁哉弁護士の呼びかけで開催された「日本誠真会の病を治すデモ」で支援者たちはこう訴えた。木原氏は日本誠真会の地方組織作りに尽力してきたが昨年12月に除名処分。木原氏は除名理由が明確ではないとして、除名処分の無効確認訴訟を起こした。また吉野氏が昨年の参院選で莫大な寄付を集めたことは欺罔行為(欺いて錯誤させること)だとして木原氏らが原告となり損害賠償請求訴訟に踏み切った。
デモでは吉野氏が歯科医の立場で「腰のレントゲンを撮った」といった医療行為、「国会議員の多くが帰化人」「メロンパンを食べて死んだ人をたくさん見てきた」といった言動も批判された。
古巣の参政党と同様に吉野氏は非科学的、根拠不明な主張が目立つ。「小麦」「砂糖」「乳製品」「植物油」の4つを「毒」と定義した「四毒抜き」なる食事方法はその最たるものだ。
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そして元支援者らを怒らせたのは昨年の参院選。45選挙区に候補を立てるための約2億円の寄附金を集めたが僅か10選挙区に留まり寄付金の使途についても説明がないという。ネット上では知名度が高く信奉者もいる吉野氏だが現職の国会議員でもないし、政治家としてのキャリアは皆無、地方組織もない。45選挙区に候補を立てるなど最初から無理な話であった。
「足りません」「必要なんです」寄附募集が目的化?
昨年2月28日、都庁で開催された記者会見で吉野氏は、候補者について「北海道から沖縄まで45ある選挙区に各選挙区に1名」「全国比例は5名以上」と説明。ただしこの時点ではまだ努力目標というニュアンスである。
ところが4月に入ると積極的に擁立と寄附を呼びかけていく。YouTube「吉野敏明政経医チャンネル」から発言をたどってみよう。
4月22日「これじゃあ。なんとしても2億5000万は集めたいんです。なんとしても北海道から沖縄まで立候補してもらいたいんです。もう供託金だけで2億近くかかってしまう」
4月30日 「本当に皆さんありがとうございます。でも全然これでも足りません。全然これでも足りません。僕は何としてでも45選挙区で候補者を全員立てたい。理由は何でかって言うと私、全国比例で立候補する予定なんですけど全国比例はポスターが出せないんですよ」
5月2日 「寄付金額は3000万円を突破しました。ですが全然足りません。何とか北海道から沖縄まで45選挙区全員立候補させたいんです。その為には供託金が300万円必要です。その為には供託金だけで1億3500万円も必要です。何としてでも全員立候補させたい、なぜ。私は比例で出ます。比例で出るんですが比例は何と皆さんポスターがないんですよ」
5月3日 「ウグイス嬢、これに法定のちゃんと報酬を払わないといけない。街宣車も買わなきゃいけない、借りなきゃいけない。事務所も借りなきゃいけない。2億5000万円は絶対必要なんです。ですから選挙が、選挙期間が18日ですから後実際選挙まではなんと61日しかない。その61日までに何とか2億5000万円集めなきゃいけない。ですから皆さんの温かいご支援を本当によろしくお願いします」
5月4日 「本当に心より感謝申し上げます。が、全然足りないです。全然足りないです。2億5000万ほど必要なんです。この選挙に立候補するのにですね、北海道から沖縄まで45選挙区あるんですけど、供託金を300万円払わなきゃいけない。(中略)。1億3500万円のまず供託金と全国比例で5名出すとすると、全国比例は600万もするんですよ、皆さん。6×5=30で3000万円。1億3500万円足す、6000万円でもうこれで2億弱でしょ。でそれにえーとポスターを、ポスターは公費で出ますけどノボリを作ったりとか、それからウグイス嬢をね雇ってねウグイスね、アナウンサーしてもらったりとかね。あと街宣車です、高いのは。これ考えたら本当は3億5000万くらい必要なんですけどもギリギリなんとか、歯を食いしばって頑張るにも2億5000万はどうしても必要なんです」
供託金として「選挙区45名×300万円=1億3500万円」「比例5名×600万円=3000万円」、合計1億6500万円が必要という説明だ。当初の「単なる目標」から「その実現のために資金を出してほしい」という勧誘文脈へ移っている。寄附の呼びかけというよりも金の無心とすら思えてならない。
5月17日の発言については筆者も疑問を感じた。
「選挙を戦うために2億5千万も必要です。東京都議会議員選挙も供託金が60万円。参議院議員選挙では、なんと300万円。全国比例は600万円。参議院議員選挙を戦うだけでも1億6500万円を国に払わないと立候補すらさせてくれないんですよ。その他にもポスター、幟、街宣車、ウグイス嬢に支払うお金、そして選挙事務所、どう考えても普通は5億円が必要です。しかしながら、日本誠真会は優秀なボランティアの方がたくさんいます。なので何とか2億5000万円を命がけでかき集めています。皆さんの協力を本当にお願いします。」
1億6500万円を国に払わないと立候補すらさせてくれないという主張はおかしい。あたかも「45選挙区+比例5名の全員を揃えなければ立候補すらできない」と支援者たちに印象付けているかのようだ。
5月30日 「でもね全然足りないの。選挙まであと52日。ね、で、9000万円突破したんですけども両方併せても1億1000万円。立候補するだけで1億6500百万円かかる、戦うには2億5千万が必要なんです。だから本当に皆さん寄付の方よろしくお願いします」
6月4日 「寄付金額は9980万7872円でもうちょっとで1億円です。でも全然足りないと。もう立候補するだけで1億6500百万円。そして、いいですか。ポスター代別ですよ。のぼり代も別ですよ。ウグイス嬢にお支払いする料金も別ですよ。事務所も借りなきゃいけない。街宣車も借りなきゃいけない、場合によっては買わなきゃいけない。どう考えても2億5千万は必要です。というわけで今、千円の輪募金をしてるわけです。ありがとうございます。立候補する人も続々と来ています。面接中です。もう本当に優秀な人に来ていただきたい。優秀な人に来ていただきたい。いいですか。優秀な人はその能力は自分のためには使ってはならん。国難を救うために使うというに聖徳太子から言っておられるわけです。いいですか、優秀な皆さん。あなたが必要なんですよ」
立候補する人が続々と来ているという割に結果は10選挙区に終わった。
6月6日 「寄付金額は1億円を昨日突破しましたけど、1億312万2372円、誠にありがとうございます。なんですけど全然足りないと。立候補するだけで1億6500万円供託金を払わなきゃいけない。そして選挙戦を闘う為にはこの供託金以外でもポスターを刷らなきゃいけない。のぼり、これはミニチュアですけど本物の幟、一人20本から30本くらい作らなきゃいけない。ね、ポスターを印刷する、ウグイス嬢もいる。えーがいせん、がい、街頭演説車もいる。事務所も借りなきゃいけないというと最低でも2億5000万以上は必要です。じゃ、もしお金が余ったらどうするんですかって言ったらそれはそうですよ。そうなったらどうするのかって言ったら候補者立てます、もう。うん。なのでぜひ皆さん、よろしくお願いします。千円の輪運動をしています。えー、候補者募集中です。えーもう参議院議員の方でよろしくお願いします」
そして7月2日に「2億ちょっと超えました、ありがとうございます。ま、この大切な大切なお金で、えーこの12人で頑張ってやりたいと思います」と目標額に達したことを発表した。
しかし45選挙区に候補を立てるという約束は果たされていない。吉野氏自身も一連の発言は不都合だと感じているのだろう。訴状によれば5月24日から6月6日までの吉野氏の動画が非公開になったという。
書面の質問状も受け付けない吉野事務所

これまでの発言からして日本誠真会側は少なくとも1億円超の政治資金を集め、最終的には2億円超に達したようだ。さらに訴状によれば昨年9月7日の対話集会で吉野氏が「9000万円ほど残っている」と説明したとも指摘しており、集めた資金の使途説明が争点になりそうだ。
「寄付金狙いというわけではなく、本当に候補者の目標が達成できなかったのでしょう。まあよしりんだから(笑)」と妙な擁護する日本誠真会の党員もいた。まるで〝天然キャラだから許される〟といったニュアンスだ。
だがそんな理由で原告や元支援者が納得するはずがない。吉野氏は単に夢や目標を語ったのではなく、45選挙区+比例5名を擁立するために供託金1億6500万円、最低2億5000万円が必要だと具体的な数字を提示した。そして寄附・党費・グッズ購入・政治資金パーティー券購入を呼びかけた。
つまり支援者たちにすれば「自分たちが寄附すれば、全国45選挙区に候補者が立つそれによって吉野氏や日本誠真会の知名度が全国で上がる国政進出の可能性が高まる」と感じたに違いない。
資金の使途と候補者擁立方針が直結しているのは見逃せない。ならば実現できなかった以上、説明責任が必要だがそれもない。
また全国に候補者を立てるということは当然、地方組織が必要になる。
日本誠真会は2024年10月に設立されたばかりで、2025年7月の参院選まで約9か月程度しか時間がなかった。もちろん地方組織も十分ではなく、訴状によれば吉野氏自身も地方での政治活動をほとんど行っていなかった。また地方組織を担当していたのは木原氏だったが、45選挙区擁立に向けた具体的な会議や相談がなかったという。
本気で45選挙区擁立を取り組んだのか疑わしいのだ。
吉野氏に寄附金の使途、動画の非公開理由について取材を申し込んだ。党本部に連絡してみたが自動音声のみの対応だ。そこで院長から「最高顧問」になった銀座エルディアクリニックに連絡してみたところ「ここは病院なので秘書が対応します」という。
そして秘書に政治資金問題について吉野氏の取材、コメントを求めたが「本人に確認します」と繰り返す。事前にメール、FAXで質問状を送りたいと告げたがやはり「本人に確認します」との返答だけだ。そして結局、吉野氏から説明を聞くことはできなかった。
YouTubeでは勇ましく政治、医療、食料問題を語るが一方で自身の不都合な言動は説明しない。吉野氏は既存の政治を批判するがその実、既存政党よりも悪質であることを自覚しているだろうか。



