部落差別解消推進法で
存在感増す自由同和会!?

三品純 By 三品純

昨年12月に成立した「部落差別の解消の推進に関する法律」(部落差別解消推進法)の意義や成果を部落解放同盟はじめ関係団体、関係人物たちが機関紙、シンポジウムなどで喧伝している。同法をめぐっては一見、解放同盟のイニシアティブで立法されたと思われがちだが、実は自由同和会、そして自民党の存在も無視できない。周辺を取材すると、推進法に乗じて自由同和会が“巻き返し”を図ろうとする意図が透けて見えるのだ―――――。

自由同和会は1986年、全日本同和会から一部県連が離脱し結成した保守系の同和団体だ。民進党(旧民主党)、社民党(旧社会党)系の部落解放同盟、共産党系の全国地域人権運動総連合(人権連)と異なり自由同和会は自民党と関係が深い。このため全国大会になると自民党の議員が来賓として招かれている。一概にカテゴライズできないが独断も交えて表現させて頂くと、解放同盟員がいかにもな「活動家」、人権連の場合、どこか憂鬱な“文学青年的”であるのに対して、自由同和会の面々は絵に描いたような“土建屋”な風体だ。実際に土木・建設業者が多く、全国大会などでの要求には公共事業の増加などが盛り込まれる。

「部落解放」という理念や哲学というよりは、行政、政治とも融和的で“実利”への意欲がありありと伺える。だから解放同盟や人権連のように反体制色を出さない(実際に解放同盟が反体制的か否かは別にして)。その主張もイデオロギー色が薄く人権啓発映画や教材にありがちな“お手本通り”といったものだ。こういう性質のせいか一般メディアで部落問題が扱われる時に、朝日新聞や毎日新聞あたりが自由同和会の活動家にインタビューをしたというのをあまり見たことがない。

しかし推進法立法に向けた自由同和会の動きは活発だった。

推進法の成立直前、昨年11月24日、自民党本部会議室で自由同和会の中央本部幹部研修会が開催された。幹部らは午前中、4つのグループに分かれ、法務省、国交省、文科省、厚労省に「同和問題の早期完全解決に向けた要望書」を提出。そして午後は、二階俊博幹事長、山口壯つよし衆院議員、門博文衆院議員の3氏出席のもと研修会が開催された。山口氏は元民主党議員で離党後、二階氏の支援を受ける形で自民党入り。いわば“隠れ民主党”というべき存在。そして山口氏は「部落問題に関する小委員会」委員長の職にあった。また門氏も同じく二階氏の子飼い議員。2015年、中川郁子農水政務官と路上キスが報じられた人物と言った方が分かりやすいだろう。推進法は二階グループの手で進められたことがよく分かる。

そして12月9日、部落差別解消推進法は成立に至るわけだが、そこで自由同和会はこう声明を発している。

 本日「部落差別の解消の推進に関する法律」が参議院本会議で可決され成立した。同和問題は解決の過程にあるものの、同和問題を解決するための人権教育・啓発について、昨今、同和問題に関する内容の質・量において後退している感が拭えず、この後退傾向に歯止めがかかることに大きな期待をするものである。
 一方、被害者の救済に関しては、この法律では一言も触れられていないことから、これまでと何ら変わることはないと思われるので、私ども自由同和会は、同和問題を始めとするあらゆる人権問題の被害者を簡易・迅速・柔軟に救済できる新たな人権救済機関として、国家行政組織法の第3条委員会としての「人権委員会」の設置を含む内容の「人権擁護法案」の成立を求め続けていく。
 また、参議院法務委員会での付帯決議にあるように、過去の民間運動団体の行き過ぎた言動等、そして、これらから派生した乱脈不公正な同和行政が部落差別の解消を阻害してきたことを踏まえ、行政と連携しながら法律を拡大解釈することなく適正な運営に協力していく。

「民間運動団体の行き過ぎた言動等」というのが面白い。同和団体が”行き過ぎた言動”をしていたのは自覚している模様だ。むしろ同和対策特別措置法自体が拡大解釈の権化のような存在だったことを認識してほしい。それから長年“ゾンビ法案”と言われてきた人権擁護法案の制定を求めているのも特徴的である。これも自民党二階派の方針とさほど乖離はないだろうし、今後も要求活動が続くことだろう。推進法のような理念法ではなく、罰則規定付きの人権擁護法案を求めているようだ。

それにしてもここにきて活発に動く自由同和会。その目論見は? 長年、同和行政に関わった自治体OBはこう解説するが、その証言に核心部分を感じた。

「これまで解放同盟や人権連の後塵を拝してきた自由同和会が推進法を契機に巻き返しを図ろうとしているのです。法律という錦の御旗もある上、何しろ自民党がバックにいるため自治体も無碍に扱えない。陳情、交渉、要求なども配慮せざるをえないでしょう」

一方、現役の自治体職員はこんな実態を明かす。

「地方の財源不足や事業仕分けなどの影響で公共事業が厳しくなったが、今、揺れ戻しが起き公共事業を増やせとの声が強まっています。特に地域振興施設、育児支援施設、女性支援施設などの建設計画をめぐっては地元議員、運動家や地元銀行が連名で自治体に要望書を提出することもあります。実例を挙げれば児童支援の『子供食堂』などが最たるものでしょう」

さすがにこの時代、解放運動のための施設というのも考えにくい。そこで子供、女性、高齢者対策といったいかにも“メディア受け”しそうな事案を前面に出したハコモノならば通りやすいというわけだ。議員やオンブズマンたちも弱者救済というタテマエに反対しにくい。そこで「児童、女性、高齢者支援のハコモノ事業の恩恵に預かろうというのが自由同和会の狙いではないか。自治体職員からすれば解放同盟や人権連よりも与し易い相手でしょうしね。団体、政党、行政の思惑が一致します」(前OB)という話もまんざらでもない。何しろ公共事業と言えば二階氏の得意分野。この辺り政治家とも相性は良さそう。

推進法成立で小躍りする人権好きな左派の面々。ところが利するは自身らが嫌悪する自民党とその仲間たちという可能性を自覚してもらいたい。

部落差別解消推進法で
存在感増す自由同和会!?
」への3件のフィードバック

  1. 名無しのプログラマー

    多数の不祥事を起こして自民党から見捨てられたのに、なぜ全日本同和会はなくならないんですか。全日本同和会じゃないとできないことがあるんですか?

    返信
    1. 鳥取ループ

      全日本同和会が続いたのは、やっぱり松尾さんのカリスマ性にあったのではないでしょうか。松尾正信の地元では彼を悪く言う人はいません。地元の名士です。

      返信
  2. 三品純三品純 投稿作成者

    >多数の不祥事を起こして自民党から見捨てられたのに、なぜ全日本同和会はなくならないんですか。全日本同和会じゃないとできないことがあるんですか?

    これは弊社編集長が言う通り、松尾氏の影響が大きい気もします。

    それからある県の全日本同和会の方を取材した後のことですが
    「これから自民党の候補者の応援に行く」と言って中座されました。
    やっぱり全日本同和会もそれなりに自民党と関係を保っているのかな、と。
    団体が存続しているのはその辺りじゃないかと推察します。

    返信

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