「艮幸浩副市長が5月14日付で辞任する」。4月末、驚きの情報が入った。艮副市長は山本景市長の側近。そして昨年、発覚したパワハラ問題の加害者・職員H氏とは盟友関係だ。そんな重要人物が新年度早々に副市長が辞任するという事態には、ただならぬ気配を感じる。取材を進めると、艮氏はパワハラ問題の責任を自らに転嫁されることを恐れ、辞職に踏み切った可能性が浮かんできた。
山本市長の側近、H氏とは盟友
(トラブルメモ)交野市で幹部職員によるパワハラ、暴言等が2年近く放置されてきた問題。昨年、被害者自身が記者会見に立って被害を告発して、マスコミでも大きく報道された。議会でも討議された末、今年1月、パワハラ問題を検証する特別委員会が設置。現在、検証作業を進めている。

パワハラ問題で揺れた交野市。筆者のもとにも内情についての情報が寄せられたが、市役所全体に蔓延する閉塞感が伝わってきたものだ。昨年11月21日、関西テレビ『ツイセキ』のインタビューに応じた交野市職員は「中で突き詰めても最終てっぺんのところで限界がくる」と内部事情を明かした。「てっぺん」とは誰を指すのか、職員は明言していないが、パワハラ加害者H氏の一派というのが関係者の一致した見方だ。
辞任する艮氏をはじめ、てっぺんグループの面々は山本市政になってから昇進した職員たちだ。艮副市長は特にH氏と懇意にしてきた。
「被害者がH氏のパワハラについて艮氏に相談したのですが動く気配がありません。それならばと山本市長に直訴してみたものの、同様に有耶無耶になったのです」(市関係者)
パワハラ放置の裏にはH氏を擁護する雰囲気が市上層部にあったからだろう。そこで被害者らは昨年10月、記者会見を開きパワハラを告発。これによって社会的な関心事となり、議会も紛糾。今年1月に交野市はパワハラ問題に関する第三者委員会を設置した。
ところが第三者委員会は〝てっぺん人事〟だったことをご存知だろうか。それでもH氏を擁護する意図が透けて見えるのだ。
西井氏個人情報の漏洩とも連動か

【交野市】報復?山本市長に揶揄われた中学生一家の個人情報を交野市職員が寝屋川市に持ち込んだ!
本題に入る前に、過去に報じた山本市長と女子中学生をめぐる問題に触れておきたい。
体調不良で嘔吐した三女を山本景市長に揶揄われるなど因縁を持つ地元住民、西井氏。交野市生活福祉課の職員らが西井氏の個人情報を寝屋川市役所に持ち込んだ一件を報じた。報復的な意図があった可能性も高い。
個人情報には家族構成、生活、経済状況などのいわゆるセンシティブ情報が含まれたもの。作成には交野市・K福祉部長、福祉課・N課長も関与したとみられる。ところが4月の人事異動で異変が起こった。
「福祉課のN課長がパワハラ問題に関する第三者委員会の事務局に異動になったのです。この人事は艮副市長がK福祉部長に要請して実現しました」(前出市関係者)
K部長はてっぺんグループには含まれていないが、艮氏に近い職員だ。その子飼いのN課長をパワハラ委員会の事務方に入れることで、艮氏側が情報を把握しやすい体制を作る狙いがあったのではないか。そんな疑念も生じる。
「実は事務局の前任者(女性)が早期退職してしまったのです。能力がある職員でしたので適任者に困ってN課長が選ばれた可能性もあります」(市職員)
パワハラ問題の対応に当たる職員が早期退職という内情も交野市らしいのだが、何らかの意図を感じさせる人事だ。それも艮氏自身、H氏、そして市長を擁護するという意図があったのだろう。
山本市長が艮副市長の梯子外しへ
ところが艮氏には山本氏からの〝梯子外し〟が待っていた。これは予想だにしなかっただろう。先の市関係者がこう明かす。
「3月に交野市の部局長会が開かれました。ここでは幹部によって職員の年度末評価が行われます。艮氏はこの席上でパワハラ加害者のH氏を〝Sランク〟と評価したのです」
艮氏とH氏の関係を考えれば、Sランク評価はあり得る話だ。しかしここで意外な人物が異を唱えたのだ。
「山本市長が〝なんで(H氏を)S評価にするんや〟と艮氏を叱責したのです。もともと山本市長はH氏を評価しておりSランクにすることは既定路線でした。ところがパワハラ問題が発覚して、市長に対しても批判が殺到。つまりH氏のせいで自分にも火の粉が飛んできたからS評価など許さないというのでしょう。艮氏にすれば梯子を外された格好です」(同)
H氏がパワハラ問題で批判されてきたことは間違いないが、仕事についての評価は高い。だからこそ山本氏も重用したのではないか。もちろん現在の状況でH氏を擁護するのは相当、無理筋な話。そんな状況にあってS評価をつけることに異を唱えるのは首長として当然かもしれない。だがそれはH氏、艮氏に反省を促す意味での異議だったのだろうか。それも考えにくい話だ。
これまで山本氏は協力者たちを厄介払いし政治活動を続けてきた。H氏の高評価に反発したことは〝保身〟や〝自己弁護〟と受け止められても仕方がない。
異例の日曜日の辞職願い
そして4月末に筆者の元にも艮氏が辞職するとの情報がもたらされた。先の部局長会の一件で艮氏は決意を固めていたという。周辺では「パワハラ問題の責任を押し付けられる危険性を察知したのではないか」との見方が強い。
新年度になって早々、副市長が辞任するとは異常事態だ。内情に詳しい市OBはこう話す。
「私のところにも先週ぐらいに〝艮君が辞めるらしいで〟と話がありました。書面上は4月28日付けになっていた? 私は26日(日)に辞職願いを提出したと聞いたから〝またえらく急やな〟と話していたところです。ただ不思議なのは届出から受理まで早すぎないかということ。普通なら市長が〝何があったんや。ワケを言ってくれんか〟と慰留するものですよ。特に艮君は山本市長を支えてきた職員なのに簡単に辞職を認めたのは理解できません」
山本氏にとって艮氏は最も頼りになる職員だ。それでもあっさり退職を認めたというのは「H氏を擁護したから俺が顔を潰された」という逆恨みの可能性も十分に考えられる。
艮氏辞職の事実関係について交野市人事課に質問すると「情報マーケティング課広報担当が対応する」とのことだ。例によって同課は筆者からの取材について拒否を貫いている。
「その件(艮副市長の人事)については今、お答えできません」(情報マーケティング課広報担当)
案の定の回答だ。
いずれにしても山本市政を支えてきた艮氏の離脱は少なからずダメージになるだろう。同時にH氏にすれば唯一の後ろ盾を失ったことになる。パワハラの検証作業にどう作用するのか注目だ。また艮氏という有力者な協力者が去ったことは9月に控える市長選にも少なからず影響するだろう。



