奈良市環境部は永遠に“清美”されないのか!?(前編)

三品純 By 三品純

昨年、奈良市環境部職員が病気休暇中に県営プールの売店で働くという不祥事が発覚した。「また奈良市環境部?」そう思った人も少なくないはずだ。自治体に限らず企業、各種団体が過敏なまでに「コンプライアンス」を掲げる中で、なぜ奈良市環境部の不祥事は続くのだろうか。本稿は現地取材、内部資料を通して、「奈良市環境部」と「不祥事」について検証していく。

トレーニング室設置、病気休暇中のバイト 続く不祥事

もはや不祥事という言葉が枕詞になった感すらある奈良市環境部。環境部とは、主に生活ゴミ、粗大ゴミなどを収集、また犬猫の死骸などの処分まで行う部署だ。自治体で名称は異なるが、おおかた「環境」を冠している。彼らがいなければ私たちの日常生活にも大きな支障が生じるのは言うまでもない。仕事だからとは言え彼らには感謝している。ただそれと問題点を考えることは、また別の話だ。特に奈良市環境部の暗部を語る上で欠かせない事件がある。2006年の「奈良市部落解放同盟員給与不正受給事件」だ。

奈良市環境清美部収集課(当時の名称)の職員で部落解放同盟奈良県連合会古市支部長だった中川昌史氏が5年9か月のうち8日あまりしか勤務していないにも関わらず2700万円の給与が満額支給されていた。この当時、中川は、公共事業の入札への不当な介入をしたこと、さらにポルシェを所有し、市道の段差で傷がついたと訴え市に補償を求めていたことも発覚。これが由来しネット上では“ポルシェ中川”という異名も付けられた。このことは、旧聞に属するだろう。この一件は、MBS(毎日放送)『VOICE』によって詳細に報道されたが、まるで任侠映画、アウトロー漫画から飛び出てきたような当時の中川の風貌は、部落=怖いというイメージそのものであった。

また同時期は、関西地方の自治体のごみ収集担当職員の処遇、勤務状況が問題視された。その背景は、同和問題が関係していることもあり、特に京都市は顕著だった。環境局など現業職の同和地区出身者の優先雇用枠の存在について桝本ますもと頼兼よりかね市長(当時)が明言したほど激しいものだった。その京都市環境局職員が起こしたトラブルを列記してみる(出典:『京都同和「裏」行政』村山祥栄)

  • 消費者金融のATMをゴルフクラブで破壊する。窃盗未遂で逮捕(28歳)
  • 女子中学生2名へのわいせつ行為(30歳)
  • 上記2名に覚醒剤を譲渡(25歳)
  • 犬猫の死骸収集業務で市民から受け取った手数料の着服した4名(53歳、50歳、48歳、45歳)
  • 無免許運転で3年間自動車通勤していた2名(54歳、49歳)
  • 免停中に公務で運転(57歳)

後に奈良市環境部のケースを紹介するが、個人的には京都市のトラブルの方がよほど悪質な印象を受けた。それでも「不祥事」という点については、奈良市環境部のイメージが強いのも偏にポルシェ中川事件によるものだろう。それほどインパクトがある事件だった。

次いで一昨年7月、奈良市環境部収集部門・処理部門合同の職員安全衛生委員会では、環境清美センター内の職員用立体駐車場にトレーニング施設が設置されていたことも明らかにされた。この一件については本誌も取り上げている。このトレーニング施設は、2000年に50万円の予算で市が購入したものだ。一方、かつて京都市でも同様の問題が起きていた。同市内、三条コミュニティセンター(東山区)などの施設にボクシングジム、トレーニング施設が設置されており、職員が私的に利用していた。

たいして奈良市環境部のトレーニング施設は、職員駐車場の一角をべニアで仕切ったものでお世辞にも立派なものとは言えない。器具を見ても一世代、いや二世代前の古いマシーンばかり。どちらが“マシ”という話でもないが、少なくとも同種の問題は、奈良市環境部だけではない。ただ京都市の場合、一連の不祥事の根底に同和問題が存在していることを認め、2006年に「信頼回復と再生の為の抜本的改革大綱」を発表し、これ以降、少なくとも“新聞沙汰”になりそうな不祥事は聞かなくなった。

ところが奈良市環境部はポルシェ中川事件以降も問題は続いている。そしてもうご存知の方も多いだろう。昨年、環境部職員の不祥事が再び発生したのである。昨年9月、奈良市環境部の職員が病気休暇中に県営まほろば健康パーク「ファミリープール」(大和郡山市)内の売店で働いていたことをMBSが報じた。まさに“奈良市環境部キラー”だ。もちろんこの報道については、本誌も注目した。特に興味深かったのが、事件そのものよりも番組内でインタビューに応じた仲川なかがわ元庸もとのぶ奈良市長の

「不祥事がゼロになる状況、未来永劫ゼロであることは不可能」

という発言だった。これが報じられるやSNS上では「不適切だ」「ありえない」という反応が起きた。つまり仲川市長は、不祥事に対して諦めている、対策を講じない、と受け止められてしまったのだ。奈良市にこの発言について問うと、市長発言については、誤報としてMBSに抗議したとの説明を受けた。

これについては仲川市長の「仲川げんのブログ」(9月6日)が詳しい。

2日目の報道の中で、いかにも私が不祥事対策を諦めているかのような表現がありましたが、これについて述べておきたいと思います。当日のインタビューでは、「不祥事が一切ないという組織は逆に疑ったほうが良い。行政だけでなく民間も含め、組織という組織には必ず不祥事の種があると私は思う。これはイジメ問題も同じ。無くて当たり前と考えるのではなく、あってもおかしくないと考えるべき。学校も役所も無謬性の神話があり、問題は絶対にあってはならないという暗黙の了解がある。だから問題が起きても見て見ぬフリをしたり、闇に葬ることになる。大事なことは問題が起きた時にどう対応するかだ。」という主旨で答えました。その話題の流れの中で「不祥事をゼロにするのは不可能である」と匙を投げたように伝わってしまったことについては反省しています。当然、不祥事はゼロにしなければならないし、ゼロの状態を維持するために最大級の努力をするのは当然のことだと考えています。

報道は得てして特定の文脈だけ取り上げがちだ。だから仲川市長の言い分もよく理解できる。ただ「不祥事がゼロになる状況、未来永劫ゼロであることは不可能」という発言が本当に発せられたものだったとしても、何ら問題はないと思った。要するにもうこの奈良市環境部は手に負えない、それほど深刻だから、そこは“忖度”してくれ、という風にも裏読みできるから。そしてこの根底に「同和」があることは明白だ。しかし仮にインタビューで「同和」の名を出した場合、市長の立場も苦しくなる。かと言って「遺憾」という常套句では物足りない。もちろん職員を擁護するわけにもいかない。非常に難しい立場なのだ。

「森嶋企画」売店事業を請け負うための会社!?

問題となったこの職員、奈良市環境部まち美化推進課に勤務する森嶋という職員である。刑事事件でもないため実名を明かすのは、さすがにはばかられるのだが、名字だけは出さざるをえない。というのも以下の事情があるからだ。ファミリープールは、「奈良新県営プールPFI株式会社」に委託されており、さらに売店の経営を株式会社森嶋企画(北葛城郡河合町)が請け負っているが、この職員の妻が代表を務める会社だ。ネットでもこの名で検索すれば会社情報が出てくる。市関係者によると森嶋の病気休暇は「適応障害」で7月末から8月末日までだった。彼の症状がどの程度だったのか分からない。しかし売店のアルバイトができて、本業の環境部の仕事はできない、というのも妙な話だ。休暇期間を見ると、プールの開園時期に合わせたようにも思えてしまう。適応障害は、夏季になると悪化するというなら話は別だが、症例を調べてみたが、そのような傾向は確認できなかった。

同社の設立は、2011年12月1日となっている。業務内容は労働者派遣、一般廃棄物の収集・運搬、古物商、土木工事業、飲食店の経営、介護関連サービス業務と多岐に渡る。もっともこうした会社目的はとりあえずやれそうな事業は列記しておくもので、この業務の全てを行っているわけではないだろう。ではプールの運営母体となる奈良新県営プールPFI株式会社はどうか?

県営プールの事業契約が議会で可決されたのは、同じく2011年9月の定例県議会だ。当時のプールの名称は「浄化センター公園ファミリープール」で、まほろば健康パーク「ファミリープール」と名称変更したのは2013年のリニューアルオープンからだ。奈良新県営プールPFI株式会社の設立は、2011年7月26日となっている。この時系列を見ていくと森嶋企画は、プールの売店経営を行うために設立されたかのようだ。

ちなみに奈良新県営プールPFI株式会社の設立は、複数の会社が関わっておりジョイントベンチャー(JV)のような形態を取る。「新県営プール施設等整備運営事業」として建設されたファミリープールは、建設費等全て含めて69億6924万9546円の大事業。共同企業体という形をとるのは不思議なことではない。会社の所在地は、奈良市高天町で近鉄奈良駅前にある。ビルには、奈良新県営プールPFI株式会社という名はない。調べてみると株式社会奥村組(大阪市阿倍野区)奈良支店が登記上の住所になっていた。同社奈良支店の社員に聞いてみると、確かに登記上は同社が所在地になっているが、特に専用の事務所はないと言う。

森嶋企画がプール内売店の経営に関わったのは2012年からのこと。この年の管理期間は7月14日から9月2日。使用料(家賃)は33万6600円。プール内には2つの飲食店があり、食堂は「たこ半」という事業者、また売店は森嶋企画に業務委託された。こんなメニューだ。

①フローズン(200円)②フランクフルト(200円)③ラーメン(500円)④たこ焼き(400円)⑤アメリカンドッグ(200円)⑥ポテト(200円)⑦からあげ(300円)⑧カキ氷(200円)⑨ドリンク(200円)⑩ソフトクリーム(200円)⑪ビール(400円)⑫焼きそば(500円)

*番号は公園施設管理許可申請書の別紙資料「販売品目と価格」にふられていたもの。下記も同様。

ファミリープールはこの地域の行楽地で夏は家族連れで随分と賑わうそうだから、場所としては手堅い商売だ。ただアルバイト店員を使うよりも当然、身内で経営した方が実入りは大きいだろう。そんな理由から森嶋が働いたというのは想像に難くない。この翌年は、リニューアル工事のためプールは休業。2014年から現在の名称になり、飲食店も森嶋企画の売店のみとなった。なお昨年の店舗情報を見ると、使用料は34万1380円と若干高くなっていた。これに伴いメニューも値上がりしている。

①焼きそば(600円)②ラーメン(600円)③フランクフルト(300円)④たこ焼き串(2本・500円)⑤フライドポテト(300円)⑥から揚げ(7ヶ・400円)⑦かき氷(300円)⑧ジュース(300円)⑨ビール(500円)⑩ソフトクリーム(300円)

以上がファミリープールの概況と森嶋企画の売店の経営状況である。来年、森嶋企画がこのまま売店を継続できるかは未定だ。奈良県と奈良新県営プールPFIとの契約自体は平成23年から平成41年になっている。西暦だと2029年ということになる。もともとこの一件を最初に取材した時は、奈良県公園緑地課の対応だった。森嶋の不祥事については、事業委託しており、責任問題として県は関知しないという立場だ。またファミリープールの管理事務局に尋ねたところ「市の方で処分されるんじゃないですか」と当惑気味だった。ここで言う森嶋に対する市の処分とは、11月20日に下された停職6カ月の懲戒処分のことだ。(続く)

奈良市環境部は永遠に“清美”されないのか!?(前編)」への5件のフィードバック

  1. .

    穴闇の森嶋組(指定暴力団六代目山口組の三次団体)と関係があるんでしょうか。

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  2. 通りすがり

    奈良市はいいですね。一般的なごみ処理手数料は0円ですね。引越ししてみてビックリ!
    有料の指定ゴミ袋もなければ、有料のごみ処理ステッカーの貼付も要らない、彼らのいつものいい仕事のおかげです。市外在住の民からすれば、奈良市民の皆様は彼らの仕事ぶりに感謝すべきです。
    まぁ、一般的な市民感覚ならこんな奴等の仕事に手数料払えるかってなんですけどね。

    返信
    1. 通りすがり2

      彼らが良い仕事をすることと、処理費用が無料なことに因果関係はありません。

      まず、ゴミ処理には必ずコストがかかっています。表面上は無料かもしれませんが、間接的には市民税から賄われています。

      次に、今般の社会情勢の中で、未だに直営でゴミ処理をしているのは少数派です。同規模の中核市における決算書を比較すれば一目瞭然ですが、奈良市はゴミ処理に関し高コスト体質です。原因は人件費です。
      報道によれば、1日のうち4時間が休憩時間だそうです。そんな彼らの平均給与月額は平成28年度給与公表によると515,094円。週5勤務として実働時間で換算すると、およそ時給6000円ですね。3大商社並とは羨ましい限りです。なお、対応する民間類似職種の平均給与月額は290,300円です。

      加えて、奈良市の環境部職員がそんな高給取りに見合うほど優秀かと言われれば決してそうではないと奈良市民として申し上げます。
      これは私個人的な感想のみならず、当該事件の報道時に山本浩之アナも述べておりましたね。
      リサイクル至上主義による複雑怪奇なゴミ事典による分別の強制と、そのゴミ事典を根拠に行われる回収拒否。回収車の交通マナーの悪さ等、枚挙にいとまがありません。

      言いたいことはまだまだたくさんありますが、このサイトの趣旨とは離れてしまいますのでこの辺でやめときます。

      返信
      1. 三品純三品純 投稿作成者

        いえサイトの趣旨なんて関係ありません。
        大事な問題だから有意義な議論の場としましょう。
        思う存分ご活用ください。

        ゴミ処分は政治、行政ともろに直結するし、利権も
        絡みますからね。本誌としては注目に値すると思っています。

        返信

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