トランプ政権がUSAID閉鎖で利権にメス? 資金提供疑惑に対してNHKは質問を〝スルー〟

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By Jun mishina

米国内で過激なポリティカル・コレクトネスを次々にぶった斬るトランプ大統領。加えて対外援助事業を担う米国際開発局(USAID)についても閉鎖の方針を打ち出した。米版事業仕分けという評価もあるが、政権の狙いは左派団体やメディアの利権潰しとも囁かれる。関係が疑われるNHKに対しても質問をぶつけたが…。

トランプ&マスクが大ナタをふるう

日本でもトランプ支持者は少ない。

トランプ政権がアメリカ政府の対外援助機関、国際開発局(USAID)の閉鎖を打ち出したことは日本のメディアも大きく報道。27日、解雇された職員たちがワシントンの本部ビルから姿を去った。USAIDの国内職員1600人の削減と全世界で1万人以上の職員の大半に休職を命じたという。

USAIDは60年代に人道支援事業を目的に設立。60か国以上に拠点がありUSAIDの資金提供を受けた活動団体が社会事業を行ってきた。事業内容は広く食料問題やウイルス予防、または現地ジャーナリストの資金援助というケースもある。

2023年のデータではアメリカ政府は国際援助のために680億ドル(約10兆円)という莫大な予算が投入されており反発は根強い。加えて民主党色が強いことも保守層から批判されてきた。

そこでトランプ政権入りしたDOGE=「政府効率化省」のトップ、実業家のイーロン・マスク氏がUSAIDの運用が不透明だとして閉鎖を進言。トランプ大統領が閉鎖に同意したというからトランプ・マスクコンビの大ナタというわけだ。

興味深いのは閉鎖を受けての日本の反応だ。一時期はマスコミが閉鎖を報じないという言説が流布したが逆でむしろ閉鎖を批判する報道が目立つ。人道上、国際貢献の観点から必要というわけだ。

2月25日、東京新聞社説「USAID閉鎖 速やかに援助再開せよ」は最たるもの。

米国が対外関与政策を抜本的に転換して海外援助を縮小すれば、代わりに中国などの権威主義国が豊富な資金力で影響力を強め、米国の国際的な指導的立場を損ないかねないとの指摘もある。

普段は国際社会でアメリカが政治介入することに苦言を呈する左派メディアがまるで超大国アメリカの権威を追認しているかのようだ。しかも「中国脅威論」まで持ち出す辺りマスコミ的にはよほどUSAIDの恩恵が大きいのだろうか。

逆に日本の保守層はUSAIDが極左勢力の資金源だったとして好意的な意見が目立つ。次いで反ワクチン・陰謀論系諸氏も興味深い反応を示した。

反ワクチン運動に関わるNPO法人Zenの山本貴子代表は味の素、USAID、JICA(国際協力機構)によるガーナの栄養改善プロジェクトについて「食べ物に毒を入れる企業はそもそも犯罪組織だよ」と中傷とも思える投稿。反ワクチン団体、あるいは参政党も同様に自然食、反添加物を信奉する面々でUSAID以上に味の素を敵視するものだ。

USAIDが絡む同プロジェクトに対して反発が強い。自民党・三谷英弘衆院議員がXで諫めたが火に油を注いだ格好。コメント欄は荒れた。

味の素に対しては何らかの抗議活動はあったのか。「特に確認できておりません。(USAIDの閉鎖は)プロジェクトはすでに終了しており、影響はありません」(味の素広報部)

反USAIDであってもスタンスは様々だが共通するのはメディアとの関係。「NHKがUSAIDから資金提供を受けている」との言説が広まった。ここ最近、特にマスコミ批判の風は強まっているが、USAID閉鎖の一件でさらにマスコミへの風当たりは強まったようだ。

BBCのメディアネットワークに参加

2022年11月15日、NHK広報局のニュースリリースより。

2019年、BBCの呼びかけで設立された「Trusted News Initiative(TNI=トラステッド・ニュース・イニシアティブ)」はUSAIDから資金提供を受けている。欧米の主要メディアも名を連ねる中で、NHKが2022年11月からTNIに参加した。

TNIは世界各地の偽情報・誤情報の具体的内容や対応事例を世界のメディアと共有するという。マスコミ自身が誤情報を流す昨今、TNIの効果や社会的意義が見えてこない。伝わるのはマスコミ=善、SNS=悪という居丈高さ。

BBCはBBCメディア・アクションがUSAIDから320万ドル(約4億9000万円)を提供されたことを明らかにした上で「編集権は別」と説明。

また2月5日のBBCニュース「解説】 米国際開発局(USAID)とは? なぜトランプ政権の標的に?」によれば

BBCの国際慈善団体BBCメディア・アクションは、外部からの助成金や寄付を資金源としており、USAIDからも資金提供を受けている。2024年の報告によると、USAIDは320万ドル(約4億9000万円)を寄付し、BBCメディア・アクションにとってはUSAIDが2024年度、2番目の大規模寄付者だった。

と報告している。USAIDから資金提供を受けるBBC主導のTNIに参加するNHK。同局も外国政府の影響を受けているのではないか?こうした疑問が噴出するのは当然のことだろう。

そもそもBBCの編集権は独立、別といった説明も疑問だ。途上国のジャーナリスト支援という大義だが、それを米国資金で行うこと。権力の監視といったお題目はどこに消えた。公権力の資金であってもマスコミが受け取る場合は「浄財」に化けるという意味だろうか。

NHK放送文化研究所メディア研究部・斉藤正幸氏の論文「対外発信力を競う国際ニュースチャンネル」によるとBBCメディア・アクションの項目ではこう説明されていた。

発展途上国のメディア関係者の育成など、メディアに関する国際協力を行う慈善団体で、イギリス政府のほか、外国政府、個人や団体からの寄付を財源として運営されている。

英国政府や海外政府から資金援助を受けているというのだ。普段、「報道の独立」などという大手メディアがメディア関係者、ジャーナリスト育成に公権力の財布に依存するのは不思議でならない。身銭を切るか篤志家の寄付のみならばまだ筋は通るだろう。BBCメディア・アクション自体がとても「独立」した存在とは思えない。

日本支社に相当する「BBCスタジオジャパン株式会社」に聞いてみた。

お世話になります。
この度はご連絡いただきありがとうございます。
お手数をおかけしますが、お問い合わせ頂いた件につきましては、
以下イギリスのBBC広報まで直接ご連絡いただけますでしょうか。
英語にてお願いできればと存じます。

何卒よろしくお願いいたします。

BBC 広報担当

英語にてお願いできればという返答は鼻で笑った態度と受け止めた。

またNHKも同様に海外政府の恩恵を受けたという指摘にどう答えるのか。

  • TNIでの具体的な活動を教えてほしい。
  • 誤情報の情報共有ということだが、NHKの中国籍の外部スタッフが 「尖閣諸島は中国の領土」長崎・端島(通称・軍艦島)の番組「緑なき島」が韓国内で政治利用されたことなどの誤情報についてはTNIと共有したのか。
  • 貴局の研究員がBBCメディア・アクションはイギリス政府のほか、外国政府から資金提供を受けていると主張している。報道機関の独立とは?
  • 元NHKの立岩陽一郎氏は2月13日のABEMA Primeの中で「アメリカ政府からお金を受けている活動に参画しているとなると、NHKは把握した時点で議論になるだろう」と発言。これに対して貴局の反論、説明をお願いしたい。

このような質問を2月18日、同社広報部へ送付。質問数が多いのと確認作業に支障がないよう回答期限は翌週の26日に設定した。ところが同日に返答はない。確認してみたが「担当者は席を外している」(広報部)とだけ残した。

普段は無関係の家族にさえ執拗に追い回すマスコミだが、都合が悪いと「無視」「逆ギレ」というのが定番だ。これではNHKがUSAIDマネーの恩恵を受けていると言われてもやむを得ない。USAIDとNHKの関係―――マスコミや連帯仲間の野党風にいえば「これで疑惑は深まった」といったところだろう。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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