新・同和と在日文献の旅(3)
同和地区精密調査報告書が
“フリー素材”に

By 鳥取ループ

『全国部落調査』は昭和初期の部落の分布と人口、職業を網羅的に記録した貴重な歴史資料である。そして、もう1つ部落を知る上で同じくらい貴重な史料がある。それが今回紹介する『同和地区精密調査報告書』である。これは『全国部落調査』と異なり、政府の調査機関選りすぐりの部落を、狭く深く調査したものである。

実は、最近になってこれら史料が事実上パブリックドメインとなり、誰もが自由に利用できる、いわば“フリー素材”となった。

『同和地区精密調査報告書』がフリー素材に!

そのことを説明するために、少し著作権法について触れておこう。

日本の著作権法では、出版物は著作者の死後50年の間著作権保護の対象となる。ただし、著作者が自然人ではなく、企業等の法人であれば、保護期間は公表後50年ということになる。

また、出版物の全てに対して著作権が主張出来るわけではない。単に事実を記述したもので、そこに創造性がなかれば著作権による保護の対象にはならない。新聞記事に書かれた事実のみをまとめたものを出版したり、あるいは電話帳の内容をそのまま電子化して販売したりできるのも、それらは著作権保護の範囲外であるからだ。また、創造性があるものであっても、政府や地方自治体による条例や規則、裁判所による判決や決定に類するもの、行政機関の裁定等にも著作権は存在しない。

ただし、見方を変えれば、条例や規則、判決や決定、裁定に類するものでなければ、政府機関による文書にも著作権が存在することになる。

今回取り上げる『同和地区精密調査報告書』は、政府が一部の同和地区の状況を精密に調査した報告書である。この報告書が著作権保護の対象となるかは、グレーゾーンである。行政機関による文書ではあるのだが、条例や規則、判決や決定、裁定に類するものではないので著作権が存在することになるが、「報告書」とある通り単に事実を記述した文書と見れば著作権保護の対象にはならないとも言える。

個人的には著作権という制度が知的財産権を保護するためのものであるという趣旨に鑑みれば、『同和地区精密調査報告書』はおおよそ知的財産として活用される見込みがないし、政府による政策に関わるものに「著作人格権」を主張するというのも変な話なので、『同和地区精密調査報告書』が著作権保護の対象になるものではないと思う。

しかし、ごく最近になって劇的に状況を変えさせる出来事があった。

まず、『同和地区精密調査報告書』には3つのバージョンが存在する。

1つは1962から1963年にかけて作成されたものである。これは1965年の同和対策審議会の答申の付属文書として公表され、複製物が様々な団体によって広く頒布された。内閣府の同和対策審議会による文書であり、2015年に公表後50年が経過したため、明らかに著作権切れの状態になっている。

もう1つは同和対策事業特別措置法が制定される直前の1968年3月に公表された、内閣総理大臣官房審議室による『全国同和地区実態調査結果』である。この文書には全国の同和地区の統計資料(あくまで都道府県別のもので個別の地区のものではない)に付せて、「抽出地区精密調査結果」が含まれている。この文書は2018年3月末日をもって著作権保護の対象から外れたと考えられる。

そして、最後のバージョンが同和対策事業特別措置法の延長が検討されていた時期であり、なおかつ「部落地名総鑑事件」の直前である1975年に3月に出されたものだ。これはアメリカのスタンフォード大学に所蔵されていたものが、グーグルによってインターネットで公開されている。前述の通り著作権の問題で言えば日本国内ではグレーゾーンだが、アメリカの著作権法では政府刊行物は著作権による保護の対象とはならない。グーグルの所在地であるカリフォルニア州では、同州と同等の言論・表現の自由が保障された国のものでなければ、言論・表現の自由に関わる外国の司法機関の判断が認められることはないので、政府刊行物に著作権を認める日本の著作権法が、グーグルに対して適用されることは現実的にはまずあり得ないと考えられる。

このような経緯から、3つの『同和地区精密調査報告書』は著作権による保護の対象ではなく、事実上のパブリックドメインに置かれた状態となった。

それぞれ、次のリンクから見ることが出来るので、興味のある方は読んでみるとよいだろう。

同和地区精密調査報告書 昭和37年及び昭和38年

全国同和地区実態調査結果 昭和43年3月

同和地区精密調査報告書 昭和50年3月

部落の分類を研究する上での一級資料

この史料は、対象となった部落の当時の状況を知る上で貴重であることは間違いない。それとは別に筆者が注目したのは部落の分類である。

例えば2つ目の『全国同和地区実態調査結果』では、部落を「スラム型」「伝統産業型」「労働・出稼型」「農魚山村型」に分類している。3つ目の『同和地区精密調査報告書』では「大都市地区」「中小都市地区」「農山漁村地区」という分け方をしている。

1つ目の『同和地区精密調査報告書』には明確な分類というのは書かれていないが、「関東農村型」「先進型」「単一型」「農山村地区」「地方都市型」「混住型」「伝統産業型」「地方農村型」「市街地と農村地区との接触地帯」といった記述が見られる。

たしかに、このような分類の仕方は筆者が各地の部落を見た結果からしてもしっくりくる。ただ、実際はもっと複雑で、いくつかの型が複合した部落も見られる。また、「市街地と農村地区との接触地帯」という表現があるように、明確に分類できない境界型の部落もある。

「混住率」という用語にも注意する必要がある。これは、同和地区内の「同和関係者」の割合を表す数字だが、これがその部落が「単一型」なのか「混住型」なのかということを判断する上での指標となるとは限らない。混住率は「同和関係者」をどのような判断するのか、同和地区の範囲をどのような基準で線引きするのかによっても変わってくる。

血統を考慮せずに、同和地区に住んでいれば「同和関係者」だという考え方をすれば、当然混住率は常に100%となる。また、伝統的なコミュニティが残っている部落で、そのコミュニティに属している人を「同和関係者」とみなし、そのコミュニティの区域を同和地区と認定した場合も、混住率は100%に近くなる。

逆に、混住率が低くなるのは、文字通り血統であったり、一定数前の代から部落に居住しているといった基準で「同和関係者」であるか判断している場合だ。また、その地域で認識されている「集落」とは無関係に、行政区画で機械的に同和地区を区切った場合も混住率が低くなる。

つまり、混住率はその地域の住民がどれだけ「純粋」かという指標というよりは、その地域での政策を反映したものと見ることもできる。

『同和地区精密調査報告書』は貴重な史料であるが、その読み方には注意が必要だ。

新・同和と在日文献の旅(3)
同和地区精密調査報告書が
“フリー素材”に
」への2件のフィードバック

  1. .

    示現舎が『同和地区精密調査報告書』を復刊した場合、やはり解放同盟のようなえせ同和団体から嫌がらせ訴訟を起こされることになるんでしょうか?

    返信

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