森山栄治「人権研修」のカギは福井県庁!?

三品純 By 三品純

台風被害、ラグビーW杯日本代表の大健闘、神戸市教員いじめ事件そして即位礼、注目ニュースが相次ぐ中、関電問題がトーンダウンしてきた感も否めない。しかしまだ関電の闇は深く、解明できていない問題が多い。いわくつきの「人権研修」ですらその実態がつかめていない。そこで人権研修について関電に直撃してみたが、研修の内容については「無回答」だ。しかしいくつか興味深い事実は浮かび上がったのでレポートしたい。

今回、取材に対応したのは福井県美浜町の関電原子力事業本部地域共生本部広報グループだ。知りたいのはズバリ、森山の人権研修の中身である。同社を訪問したところ回答は後日ということでメールにて回答があったので、Q&Aでまとめてみた。

Q.関西電力が実施した人権研修とはどのような内容ですか?
A.報告書に記載している人権研修は、企業の社会的責任と人権について人権行政、人権教育の取組み状況などを含めた内容となっています。

Q.研修を実施した場所は?
A.当社の本社(大阪)や京都支社、原子力事業本部で実施。また、福井県人権研修センター等の福井県関連施設でも実施しています。

Q.森山氏を講師とした人権研修はいつから実施していましたか?
A.昭和63年以降、平成29年までの間、概ね1~2年に1回のペースで実施してきました。

Q.具体的にどのような研修を実施した?
A.人権問題に関する今日的課題や行政の取組みについて理解を深めるため、福井県の職員等を講師にお招きして講義をいただいた上で意見交換を実施しました。

Q.森山氏への報酬額は?                       A.講師として適正な金額をお支払いしていますが、具体的な金額につきましては回答を差し控えさせていただきます。

Q.人権研修を受講した対象者は?
A.回によって参加者が異なるため、一概には言えませんが、主に原子力事業本部や各原子力発電所の幹部が参加しています。

Q.研修を受講した幹部社員は、研修内容を部下や職場に水平展開していましたか?
A.本研修から得た知見を社内の人権研修や人権が尊重される組織風土の醸成等に役立てていました。

これでは「分からないことが分かった」という状態だ。再度、確認してみたが

「人権研修の内容ですが「今日的課題や行政の取組み」をテーマに講師から講義をしてもらい、その後意見交換を行ったということしか記録に残っていませんので、それ以上の詳細が確認できないのが実情です。また、研修会後の予定につきましても記録がありませんでした」

との返答だ。

かなり苦心したのが伝わってくる。口が裂けても「同和」と言えないのはよく分かる。人権と言ってもその定義はとても広い。だが森山が同和以外の人権問題を講演したものだろうか。妙な夢想をしてみる。「今なお根強い差別に置かれる “えるじぃいびぃてぃい ”が 」などと言ったとは到底思えない。言えないからこそ逆に「同和絡み」であることの証明かもしれないが。

研修は関電と福井県の施設で行われていた。県内に多数の原発を有する福井県が関電と意見交換、交流の場を持つのはあり得る。しかし気になったのは「福井県の職員等を講師にお招きして」という点だ。県職員といっても決して人権問題の専門家ではないし、特に同和問題ともなればステレオタイプな部落論をぶつのがせいぜい。そんな者を一企業の研修にねじ込むとは、逆に森山と福井県の関係の強さを物語っている。

同和奨学金の滞納2200万円

福井県は隠れ同和大国?

森山取材を通していくつか分かったことがあるが、その一つが福井県の同和事業だ。福井と同和はあまり馴染みがないが、実はとても熱心な地域であることが分かった。福井県は1969年から「 人権教育地区推進事業補助金 」を開始しているが、これは同和対策事業特別措置法(同特法)と同じ年。福井県下で同補助制度が実施されたのは高浜町、美浜町、おおい町の3町。原発立地と符合することが分かるだろう。福井県にとって同和対策事業とはまるで原発立地の功労金のようだ。

他にも検証すべき問題があるので紹介しよう。福井では「地域改善対策奨学資金貸付金」という制度がある。いわゆる “ 同和奨学金” というものだ。同和地区住民を対象にした奨学金をめぐって京都市や大阪市では滞納が問題になり、訴訟に発展した。

福井県でも同様に滞納が問題になっている。福井県教育委員会高校教育課によれば「昭和58年から始まった制度で、平成16年度に終了しました。現在は回収だけ行っています」と説明する。対象者は48人で債務残高は3900万円、滞納分が2200万円(残り1700万円は返済期限前)という。

この奨学金問題に限らず福井県の事業は同和が抱える矛盾を凝縮したように思える。福井県議会2008年11月13日「厚生常任委員会」の谷口忠応県議と人権室長とのやり取りを見てみよう。

◯谷口委員  関連。決算審査資料5ページの地域改善対策事業で5,000万円以上、上がっているが、これは毎年継続的に出ている問題か。「同和地区住民の生活環境の改善と同和問題に対する正しい理解を深める」という目的の事業である。同和地区というのは、福井県では特定されているのか。
◯人権室長  平成5年の調査では4市6地区となっている。
◯谷口委員  毎年これだけのお金をこの対策事業に出しているのか。
◯人権室長  同和地区に隣保館という施設がある。これは、地域におけるコミュニティセンターであり、いわゆる公民館みたいなものであるが、そこに相談機能があって、相談を受けるために人がいる。そういう人件費を含めて、1館当たり600万円か700万円の国庫補助金があり、それを各市町に下ろしているというものである。
◯谷口委員  5,057万9,000円は全部国庫ということか。
◯人権室長  隣保館運営費の国庫負担割合は、国2分の1、県4分の1、市町負担4分の1となっている。
◯谷口委員  県は幾ら負担しているか。
◯人権室長  県の負担は4分の1であり、金額にして、1,724万円である。
◯谷口委員  この1,724万円が、この4市6地区に毎年払われているということか。
◯人権室長  この1,724万円は、隣保館の運営費として市町へ補助するものと、それ以外に、先ほど負担金の質問があったが、それも含めての金額である。
◯谷口委員  国でもいろいろ問題になっているが、同和というのはもちろん特定してはいけない。ところが、こういう形で同和という特定をすると、矛盾が出てくる。そこに住んでいる人は同和だと、逆にいうと差別することになるのではないか。今、福井県では4市6地区というが、どこか。
◯人権室長  平成5年の調査では4市であるが、地名で申し上げると、もともと敦賀、美浜、小浜、おおい、高浜にある。
◯谷口委員  人口的にはどれぐらいか。
◯人権室長  平成5年の総務省調べによると、773世帯2,636名となっている。
◯谷口委員  これは平成5年のデータであるが、最近の資料はないか。
◯人権室長  その調査自体がなかなか難しくて、平成5年の国の調査以降、調査はしていない。
◯谷口委員  調査してなくて、どうして同和とわかるのか。
◯人権室長  同和地区というのは、もともと差別されて歴史的に形成されたものである。そして、昭和40年に同和対策審議会答申が出され、昭和44年から同和対策事業特別法ができて同和対策が実施されるようになった。そのときに、当時の総務庁が、同和対策を行うための対象地域ということで、その範囲と同和対策を行う地域を、各県を通じて照会した。そのときに、福井県からは5市7地区が同和地区として手を挙げたということである。それを受けてずっと事業が行われてきたが、平成5年の調査では、調査に協力したのが4市町だったということである。

福井県人権施策基本方針用語集より。「同和問題はこわい問題であり、できれば避けたい」とは誤った意識という。同和が怖くて避けたいと一番考えているのは実は行政ではないか?

「部落とはどこで部落民は誰か」。基礎的な話だが問題の本質に触れたそんなやり取りだ。こうした核心部分が曖昧にも関わらず行政は同和事業を実施してきた。逆に大阪や奈良などの議会でこんな根本的な議論は起こらなかったかもしれない。調査なしでなぜ同和地区の現状が分かるのか、という質問に対して人権室長も明確な答えを出していない。これも行政や司法にありがちな態度である。

逆にこんな程度の認識しかない福井県職員が関電幹部の前で講演したのは驚きだ。有益な話ができたとは到底思えない。関電の「人権研修」への興味がさらに湧いてくる。森山が関電研修で何を企画し、何を語ったか? これを突き止めるには関電内部よりもむしろ「福井県庁」に答えがあるかもしれない。

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三品純

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

森山栄治「人権研修」のカギは福井県庁!?」への4件のフィードバック

  1. アバター.

    もともと原発を推進していたのは自民党ですから、美浜の同和会にも原発利権のボスがいた可能性が高いですね。山名ルポにおける「福井県同和会県連合会長N氏」は仲嶌繁治でしょう。

    森山栄治も本来は野中広務と交際があった人ですので、解放同盟の中では自民党寄りだったのでしょう。

    返信
    1. 三品純三品純 投稿作成者

      いつも有益なコメントありがとうございます。野中との関係も調べているのですが足取りがなかなかつかめなくて。

      返信

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