法的根拠なし・非公開 「人権侵犯」認定という 法務省と メディアの 無責任

カテゴリー: 行政 | タグ: , , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

昨今、自民党の杉田水脈衆議院議員が、アイヌや在日コリアンについてのSNSの投稿を巡って、法務局から「人権侵犯」認定されたとメディアが報じている。しかし、それがどのように決められ、何を意味するのか、ほどんど知られていないだろう。メディアの報道から「何か権威のある機関が現職の国会議員の行為を不当なものと認定した、前代未聞の事件」との印象を受けた人も多いのではないだろうか。

しかし、法務局の「人権侵犯」認定は、法務省が内規により密室で行っている“活動”に過ぎない。その内容は非公開であり、第三者が検証する手段はなく、法務省はその結果に責任を負わなければ、説明もしないというのが実態だ。

法務局の「お気持ち表明」

実は筆者は2009年から同和地区の地名掲載を巡って、繰り返し法務局による「人権侵犯事件処理」の調査対象となっている。最初は、『滋賀の部落』という部落解放同盟滋賀県連合会が出版した本に掲載されている滋賀県の部落の地名をブログに掲載したところ、大津地方法務局か「啓発」を受けた。

「啓発」とは何をされるのかというと、筆者の実際の経験では法務局から電話がかかってきて「『人権の擁護』という冊子を送るので、送付先を教えてください」と聞かれるものだ。筆者が断ると、インターネットに掲載されているものを紹介された。

『人権の擁護』。筆者が希望すれば、この冊子が郵送されてきただろう。

2016年には「説示」というのも受けたことがある。東京法務局に呼び出されて、言ってみれば法務局の「お気持ち」が書かれた紙を渡されるものだ。

上の文書を法務局長から、何人かの法務局の職員が見ている前で、まるで表彰状のように渡された。

その場にいた職員に「これに対して異議申し立てや訴訟は出来るのですか?」と聞くと「いえ、処分性のあるものではないので出来ません」と返された。「それでは行政指導なのですか?」と聞くと、「行政指導でもありません」と言う。怪訝に思ったので、「じゃあ、この紙を渡しただけで終わりということですか?」と聞くと「そうです」ということだ。冗談や皮肉ではなく、文字通りの「お気持ち表明」なのである。

筆者の場合は実際のところこれで終わりではなく、後に別件で再び東京法務局に呼び出された。しかし、ただ紙を渡されるだけの用事に何度も都心まで呼び出されたらたまらないので、「交通費は出ないのですか?」と聞いたら「出ない」と言われた。話しているうちに、「(筆者の自宅に近い)厚木の法務局でもいいです」と妥協されたが、それも断った。

しかしその後も、年に1~2回の頻度で筆者に東京法務局から電話がかかってきている。特徴は、毎回電話をかけてくる人物の声が違うということだ。定期・不定期の人事異動でたまたま赴任してきた職員が対応しているものと推測する。

質問への回答を断っても、まるで悪質業者のセールスのごとく、延々といろいろなことを聞かれてしつこいが、「録音している」と言うと向こうの方から切るようである。

そして、説示文書が一方的に郵送されてくるといった具合だ。

人権侵犯認定の 法的な 位置づけは?

一度、筆者に電話をかけてきた職員に、筆者にあれこれ求めてくる法的根拠は何なのか聞いてみたら、「法務省設置法」という答えだった。各省庁に設置法があるのは当然のことで、確かに法務省の業務として「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること」とあるが、それは省内の組織体制の規定であって、一般国民に何かを出来るというものではない。

「人権侵犯事件」の処理は「人権侵犯事件調査処理規程」という法務省の「訓令」により行われている。訓令というのは、言わば役所の職員向けの内規であって、「法律」ではないことはもちろん、「省令」ですらない。国家行政組織法によれば省令ですら「法律委任なければ罰則設け又は義務課し若しくは国民権利制限する規定設けることできない」とされているので、内規に過ぎない訓令で、国民に対して何かをさせるということはできない。

そのため、法務局に誰かを「人権侵犯」と認定をする権限など、もちろんない。法務局の職員がそのような「お気持ち」を抱くのは勝手だが、それを公表すれば個人の名誉権を侵害し、実質的に国民の権利を制限することになってしまうだろう。だから人権侵犯事件調査処理規程には「この規程に定める事務を行う場合においては、関係者の秘密を守らなければならない」と定められており、少なくとも建前上は人権侵犯事件処理の内容は非公開で、職員が「人権侵犯」というお気持ちを抱いたとしても、それを「事件」の当事者に表明するだけに留まるわけである。

毎日新聞によれば10月19日に松野博一官房長官が「関係者のプライバシーに関わる事柄で、答えは差し控える」と答えたのを始め、政府側が詳細を説明しないのは、そのような事情が関係しているのであろう。つまり、下手なことを言って法務局に何らかの責任が生ずる事態を避けたいわけである。

前述の通り、法務局の職員が「処分性」がないと筆者に言ったのは、法律用語でいうところの「処分」は特定の誰かに権利や義務が生ずるような行為を言うからである。そうでないと、法務局が法的根拠もなしに国民の権利を制限し、義務を課すという越権行為を行ったということになってしまうからだ。

そして、処分に該当する場合は行政不服審査法や行政訴訟法の対象となり、審査請求や行政訴訟という手続きで、法務局側の責任が追及される可能性が生じる。

また「行政指導」は行政が国民に任意の協力を求めるもので、明確な法的根拠を必要とするものではないが、行政手続法により法務局側に文書での説明責任が生じ、中止の求めがあれば応じないといけなくなる可能性があることから、行政指導に該当するとも言いたくないのだろう。

つまり、少なくとも建前上は人権侵犯事件処理は法務局の「任意の活動」という位置づけになっている。

前述の通り、個別の人権侵犯事件の内容はほぼ全て非公開なので、その内容が明るみに出るとすれば、関係者がそれを公表した場合である。杉田水脈衆議院議員の件は、法務局に通報した側がメディアに情報提供したということが考えられるだろう。法務局側が直接メディアに詳細な情報を提供するということはあまり考えられない。

なお、人権侵犯事件の調査対象になった側も、法務局に「個人情報開示請求」(「情報公開請求」でないことに注意)することで、事件処理の内容を知ることが出来る。

筆者が大津地方法務局に個人情報開示請求をしたら開示された、人権侵犯事件の報告書類。

上の書類からメディアが言うところの「人権侵犯」認定の一端が垣間見える。識者による審議会なり委員会なりがあるわけではなく、物品の購入や何らかの許認可の決裁のごとく、庁内で職員が書類をまわして、はんこを押して決めていることがわかる。

暴走(迷走?)する 人権擁護局への 対抗策はあるか

筆者は部落の地名を書いたことで何度も人権侵犯事件として調査されているが、法務局は地名の公表を問題にするのみで、それによって具体的に誰かが不利益を受けた事例を問題にしたことは一度もない。法務局が同和問題に関係した人権侵犯を扱った事例は2015年に100より少し多い程度で推移していて、筆者が『全国部落調査』を公開した2016年はむしろ減った。

「同和問題に係る人権侵犯事件」の件数。赤い点線が『全国部落調査』が公開された年、青い点線は法務省が人権侵犯の基準を変えた年。

このことが、よほど都合が悪かったのか、2018年12月に法務省が人権侵犯の基準を変えてしまった。従来は、啓発や研究目的なら部落の地名の公開することは問題ないとしていたものを、理由に関係なく人権侵犯として扱うことになった。ガバガバの基準に変えてしまったので当たり前だが、部落差別の事例はまさに「爆増」状態で、もはや法務省の統計は何の役にも立たなくなっている。

東京法務局が蓄積している筆者に関係する人権侵犯人権記録の束。

法務局による人権侵犯事件の調査は任意的なもののはずだが、実情はそうではなく、少なくとも筆者に対しては、いくら断っても繰り返し行われているのが実情だ。試しに現状で東京法務局にある人権審判事件記録の内容を個人情報開示請求したところ、上の画像の書類の束が小包で送られてきた。もはや1つのファイルに収まらず、ワゴン1杯くらいの量になっている。東京法務局分だけでこれなので、各地の法務局にあるものを合わせると、もっと凄いことになるだろう。

上記が開示された書類の一部。「関係行政機関からの通報」とあるが、おそらく東京都のことだろう。なぜなら同時期に、解放同盟が東京都に対して、何度も法務局に削除要請依頼をさせているからだ。

解放新聞ウェブ版より。
東京法務局が、法務省人権擁護局と緊密に連携していることも分かる。

特に、最近の法務局の対応は、ますます常軌を逸したものになっている。

例えば2019年末には上の文書が筆者が契約するインターネットプロバイダから送られてきた。なんと、人権擁護局がプロバイダに契約者情報の開示要請をしたというのである。任意の活動のはずなのに、プロバイダの業務に支障が出るまで対応を求めている。本サイトは運営者の連絡先を明示しているのだから、全く不必要な行為であるばかりか、たとえ官庁の要請であっても、契約者情報を他人に教えるのは電気通信事業法違反で、これは刑事犯罪にもなり得る。

プロバイダには、「法律違反を理由に今度は電気通信を所管する総務省から干渉を受けることになるから、拒否するように」とに伝えてことなきを得た。

また、2021日の年初頭に鳥取で講演会の開催(コロナの感染が広がったため中止)を予定していたのだが、その直前にも東京法務局から「講演の内容を教えてほしい」という電話があった。講演会を事前チェックするというのは、まるで戦中戦前の治安維持法下の警察のような行為で、筆者もさすがに耳を疑い「自分で何を言っているか分かっているのか?」と返したが、職員はしつこく講演の内容を答えるように繰り返してきた。

後に、オンラインで実施した講演会。

もはや法務省の人権擁護活動は、暴走とも迷走とも言えるような、異常なものになっているのだが、それでも法務省としては、あくまで任意的な活動で、審査請求や行政訴訟の対象とはならないと考えているようだ。

ただ、これらの行為に対して、何も法的手段が取れないわけではない。例えば人権審判事件記録は個人情報に該当するので、個人情報保護法による利用停止を請求することができる。筆者は実際に何度か利用停止を請求しているが、法務局は応じないことが通例になっている。これに対して訴訟を提起することは可能である。

また、先述のプロバイダに対する要請のように、行き過ぎた行為には国家賠償請求訴訟を提起することも可能ではある。

しかし、知る人ぞ知ることではあるが、法務省の幹部は裁判所との人事交流があり、実際に筆者が被告となっている全国部落調査の裁判では、元法務省人権擁護局長が解放同盟側の公証人として裁判に関わっている。そのため、筆者は個人的には公正な裁判を期待していない。

解放同盟員が「全国部落調査と関わりがある」と公証したとする公正証書の署名。

法務局が、強制的な措置をする法律上の権限を持っていない以上、無視すれば大した実害はない。このまま異常な行為を繰り返して、行き着くところまで行けばよいのではないかと思っている。

法務省人権擁護局帳の経歴のある裁判官の例(弁護士山中理司のブログより)。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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法的根拠なし・非公開 「人権侵犯」認定という 法務省と メディアの 無責任」への14件のフィードバック

  1. 匿名

    法務局、司法がどうのこうのと言うより、示現舎の活動が当事者たる赤の他人の部落民に迷惑をかけてるか?、嫌がっているかどうか?どうかが問題であると思います。
    部落を訪問のおりに、部落の人に無作為に「わたしはこういう活動をしてます。どう思いますか?」と」聞いて回ればよいかと思います。同和団体に所属する人なんてほんのわずかですので、生の声を聴いてみてはいかがでしょうか。宮部さんは、部落で顔を広く知られてると思ってるでしょうが、そんなことはありませんよ。私もここ1.2年で知ったくらいですし、あなたのことや示現舎を知らない人が大半ですよ。宮部さんでは意見を取るのがむつかしいと思ったら第三者に任せる手もあるでしょうし、、、
    要は、あなたが題材としているのは法務局でも解同でも他団体でもなく、部落と部落民そのものなのですから。
    数多く、聞いてください。そこに真実が見つかると思います。

    #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

    返信
    1. 匿名

      >赤の他人の部落民に迷惑をかけてるか?、嫌がっているかどうか?どうかが問題であると思います。

      「赤の他人に迷惑をかけてるか?、嫌がっているかどうか?どうかが問題であると思います。」→だから、やめろというのか?(呆)なら、他人が嫌がっている行為は止めろと禁止できるのか?(呆)

      「あなたのことや示現舎を知らない人が大半です」→なら、実害はないんでは?(笑)(呆)

      返信
      1. 匿名

        宮部龍彦さま、次回法務局から「人権侵犯」について話があったなら、同じ法務省の特別機関に地検特別捜査部の特捜検事の「人権侵犯」について大抗議してください!
        最近では「プレサンス元社長(※山岸忍氏)冤罪事件」や「大川原化工機事件」(逮捕された者のうち、癌治療ができず死亡者あり)があり、少なくとも(最初からかも)途中から、特捜検事たちは「無実」と判明していながら、「無罪」の人たちを「人質司法」で追い込み、あらゆるテクニックでハメて、有罪に持っていく、「人権侵犯」を追及してください。なお、担当した特捜検事たちは、その後栄転している!(怒)
        約十年前の「障害者郵便制度悪用事件」(厚生労働官僚・村木厚子氏の「冤罪」で無罪、後事務次官)らより検察大改革が行われたはずなのに、まったーく反省も改革も行われていない。山岸氏や村木氏はカネもあり、人脈もあり、特捜検察の「冤罪」を跳ね返せたが、普通の人では絶対に無理!特捜検察の有罪率は99%以上と検察は胸を張っているが、かなりの数の「冤罪」が含まれていると思われる。

        返信
        1. 徒然なるままに

          「冤罪」と疑われる、具体的な事件名がわからないと動きようがないのでは??
          また、「冤罪」と思われる事件は既に弁護士会、各種団体などが後押ししているだろうし。
          私的には特捜検事は極悪な人達だとは思いませんが、、、法を逸脱した行為や人権侵犯があれば特捜も裁かれるでしょう。具体的にあげないと、、、
          「思う」だけでは裁きようがありません。マスコミとて根拠のない推測だけの案件では?????
          「取調べの適正化」のための法案成立させるのも手でしょうが???もろ刃の剣かな?有罪の人が無罪になってしまう可能性もあるし、、、

          免罪は無くなって欲しいという気持ちは誰もがいっしょです。
          適当で失礼。
          #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

          返信
        2. 宮部 龍彦 投稿作成者

          身内だから、反省させることは難しいでしょう
          それよりも、司法をもっとオープンにすることが必要です
          それには国民の覚悟もいります

          返信
      2. 匿名

        君 間違ってるよ!
        君になんの危害も加えてない赤の他人なんですよ。
        その赤の他人が迷惑がってたらやめるべきでしょうね。
        宮部氏や示現舎の事は知らなくても、その活動を知ったら迷惑でしょうね。
        実害が出てるから裁判になったのでは?示現舎の活動を」知らずともその活動で差別を受けた言う人も多くいると思いませんか?
        実害が無くても、こういった活動があると言うことだけで精神的にまいってしまう人のことを考えたことがありますか?

        #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

        返信
          1. 匿名

            >裁判では実害は一切認められておりません。

            なんの賠償金???
            #bf00db9553fe0df632c0cc54513ef802

          2. 宮部 龍彦 投稿作成者

            部落差別の不安を感じたことに対する慰謝料だそうです。
            この理屈なら部落民と結婚したら親戚に慰謝料を払わないといけなくなります。

      3. 匿名

        >他人が嫌がっている行為は止めろと禁止できるのか?(呆)<

        人権侵犯を肯定する発言そのものですね。
        #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

        返信
    2. 宮部 龍彦 投稿作成者

      部落探訪してますと部落住人に言うことは何度か言ったことがありましたが、別に特段不快感を持たれることはありませんでした
      ただ、解放同盟に対する恐怖や役所による税金の無駄遣いを告白されることが多くありました

      返信
      1. 匿名

        宮部さん 誇張しすぎ、、、
        アンチ解同はわかるけど、、、
        ほとんど、解同と無縁の人が多いですよ。
        数多くあたってない証拠ですよ(笑)
        部落訪問だって、その場で聞けばわかることを聞かないから難しい苗字の呼び名を間違ったり、間違った情報も流すこともあるじゃないですか?

        また、部落の人に事細かに話したのですか?
        ここの部落の紹介を全国に流すとか、記事の内容はこうだとか、、マッチポンの話とか、、、

        私の部落の人は、どの同和団体にも加入してませんが、示現舎が訪問した記事を見せたら、みなけしからんと言ってましたよ。
        #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

        返信
        1. 匿名

          部落を見つけて
          「勝利だ、勝利だ」とはしゃいでいる人に部落民の気持ちがわかるはずが無いですよ。
          #5b8a5e381c8fea139fdf063a746b66a2

          返信
          1. 匿名

            示現舎が解放同盟は横におくとして、
            部落の人達に実損のある無いに関わらず、迷惑をかけているのは事実です。
            しかし、ほとんどの人は訴えることはしません。表舞台に立ちたくないと、思ってるからです。
            何故なら、
            1.自分が部落民だと知られたくない
            2.親族、ご近所に迷惑かからないだろうか?

            このような人が、わたしも含め大半でしょうね。騒げば騒ぐほど差別的されるかもと言う恐怖かも。
            寝た子を起こすな精神は、自分で起こすことはしないのでしょう。宮部さん、静かにしといてください。
            迷惑です。

            #cf251bc7e2fdbd273986c219286811ec