前回は、石丸伸二前安芸高田市長が二期目に出なかった理由と、現在の安芸高田市長選挙の背景についてレポートした。
今回はメディアでも話題となった「恫喝裁判」と、石丸氏の政策の中身について触れることにする。
市長就任 早々に起こった 恫喝問題
奇しくも、筆者が取材している最中の7月3日、広島高裁で石丸氏に関する裁判の判決が下された。石丸氏がSNSで、山根温子議員から恫喝されたという趣旨の発信をしたことについて、山根議員が提訴したものである。結果は、山根議員が石丸氏を恫喝した事実は認められず、石丸氏の発信は山根議員の評価を貶めるものだったとして、“安芸高田市”に賠償を命じた。
一応は、石丸氏側が上告して最高裁の判断を仰ぐことも可能だが、最高裁は憲法違反等の重要な争点がなければ、ほぼ扱うことはないので、事実上裁判の結果はこれで確定であろう。山根議員も全面勝訴というわけではないのだが、山根議員側には上告する意向はない。そもそも、山根議員によれば、裁判は不本意なものであったという。
山根議員が恫喝したという話は石丸氏が発信したものなので、山根議員は石丸氏個人を提訴するつもりであった。しかし、石丸氏はSNSでの発信は市長の職務として行ったことなので市に責任があると言い出した。確かに、法律上は公務員の職務上の行為は原則として個人の責任を問えないので、裁判所が石丸氏個人の責任を認めない公算が高く、山根議員はやむなく石丸氏と安芸高田市の両方を訴えることになった。
そして予想通り、裁判所は石丸氏個人の責任を認めなかった。裁判の判決は、安芸高田市が山根議員に賠償をするというものだ。当然、市から賠償を受けるのは山根議員の本意ではないので、山根議員は市が石丸氏個人に請求するように動くということである。
山根議員は、最初から石丸氏を批判的に見ていたわけではない。
石丸氏と言えば2019年の河井夫妻選挙違反事件で、児玉浩元安芸高田市長が現金を受領した責任をとって辞職したのを受けて実施された市長選挙で当選した。当時は学歴も職歴も完璧な若い人が安芸高田市を救いに来たとして、多くの市民から好意的に見られていた。山根議員も、好意的に見ていた1人であったという。
ただ、当選した後は地元の支持者と疎遠になるなど、政治家らしくない行動が目立った。そして、違和感が決定的になったのがこの恫喝問題である。
「石丸さんが恫喝されたと言われて、誰がそんなことをしたんだと思っていたら、私が名指しされて、彼の思い違いだろうと誤解を解くように対応していたら、(市議会議員)選挙の告示日に山根が言ったとツイッターで言われて…」
その後、フェイスブックとツイッターで山根議員と石丸氏が応酬するような形になってしまった。
ネットでは市議会議員と石丸氏の対立について、利権議員とそれを打ち破る若手市長との対立、というような文脈で語られる。しかし、石丸氏が当選したのが2020年8月9日、山根議員が立候補した市議会議員選挙の告示日が2020年11月8日である。利権問題にしては、あまりにも超特急でこじれてしまっている。
そして、裁判の結果を見れば、これは石丸氏側に非があったと言わざるを得ない。
同和関連施設の 譲渡・廃止の裏側
それでは、石丸氏の政策の中身についてはどうか。石丸氏が何か「創造的」な成果を出したという声は聞かれない。もっともこれは、一期だけで辞めてしまったのだから成果を評価しようもないということもあるだろう。一方、不採算事業の切り離しや箱物の廃止を進めたのは事実である。
不満が起こっているのはそのやり方で、地元との話し合いをせずに数字だけ見て突然決めたと言われることもあるが、そうでない事業もある。
高宮町川根の島根県との県境近くに「エコヴィレッジかわね」「淡水魚養殖施設」という施設がある。またもや本サイトらしい話になってしまうが、これらはもとは同和対策事業の予算で整備されたもので、長らく市が運営費を負担していたという。石丸市長は2022年にこれらの施設の廃止を決め、「同和のドン」の身内に有償譲渡されたという情報が寄せられた。
そして、同和事業と言えば石丸市長のもとで、4つの人権福祉センター(隣保館)のうち、隣保事業は甲田人権福祉センターのみに統合した。
実はこれらのことについて、例のT氏に聞いてみた。
「石丸さんは、同和問題については何も考えがない人だよ。市長になって最初に会った時に、部落差別について話をしたけど、石丸さんは一言も言わなかった。ずっと黙って聞いているだけだった」
安芸高田市 石丸市長 議会との 対立の原因は 同和行政?(後編)の記事で触れた、石丸氏、熊高議員、T氏の3名の話し合いの様子がこれである。
そして、「エコヴィレッジかわね」「淡水魚養殖施設」は、石丸氏の方から廃止を決めたのではなく、コロナの影響で運営が厳しくなったことから、市から切り離すようにT氏側から提案したことなのだという。
しかし、隣保館の統合については、本当に石丸氏が突然決めたことなのだそうだ。
「自分から、市に対してああしろこうしろとは一切言うておらんですよ。部落差別で困っている人のために残してもらいたいという気持ちはあるけどね。あれは石丸さんの考えですよ、あの人がトップじゃけえ」
これはあくまで筆者の想像に過ぎないが、石丸氏なら「差別だ」と言ったところで「じゃあ、差別しないように、ほかの施設も閉鎖しますね」と言いそうである。
実は不採算事業の切り離しや箱物の廃止という政策自体については、意外と批判は少ない。実は筆者は、藤本氏陣営を訪れた時に、そのことについても聞いていた。
「6町が合併したのが20年ほど前ですが、各町にあった施設や事業の整理統合はその時から進めてきたことです。石丸さんが進めて、藤本になったらやめるということではなくて、20年前からずっと進めていて、これからも進めることです。そこでちゃんと対話して地元のコンセンサスを得るということです」
そして、あくまで「対話不足」であって、石丸氏が全く対話しなかったというわけでもない。石丸氏が多少強引に事業の整理統合を進めても、先の恫喝問題のような奇行がなければ、ここまで議会とこじれることはなかったかも知れない。
“対話不足”とは何か
石丸氏の対話不足とはどのようなことなのか、かねてから、石丸市政下の市役所では“恐怖政治”が行われていると噂されていた。市政関係者によれば、例えばこのようなことがあったそうだ。
「市長に何か聞きたいとすると、職員からそれを紙に書いてくれと言われます。それで、市長が回答すると言えば回答するし、しないと言えば回答がない」
「ある事業について、過去の経緯を説明して、こうした方がいいじゃないかと職員が提案したとします。それを市長が気に入らなかったら飛ばされます。幹部会議で市長に逆らおうものなら、さらに飛ばされます。何人もそんなのを見ましたよ」
これらの点について確認しようとしたが、何を職員に聞いても、決まって「みんなで決めている、市長の独断ではない」という型通りの答えが返ってくるばかり。もう市長が辞職したのに、未だにこのような調子である。
しかし、特別に石丸氏を擁護したいわけではないが、最後に議員側の対話不足の問題も指摘しておきたいと思う。本サイトでは公人について重要な事柄は原則実名を出したいところだが、今までの経緯からこれは本当に攻撃対象になってしまいそうなので、ある議員とだけしておく。
ある議員に名刺を渡したところ、「あんたはこの世で石丸伸二の次に会いたくない人物だ!」と突然怒りだし、指さして「差別者」と言われた。聞いてみると、本サイトの曲輪クエストが気に障ったようである。
「私は同和教育に携わってきたし、私も部落の人間だから、差別だと分かる」
何が差別なのかと聞くと。どこが部落だとサイトに書いたことが、差別をしようとする者にその対象を教える行為なのだそうだ。しかし、現に集会所があって、それが同和対策目的であることは調べれば分かるし、地名も国立国会図書館等で検索すれば出てくるし、分からないから余計に怖がられるのではないかと言っても、聞く耳を持たない。
「部落の人間は、昔は土下座しないと屋敷に入れなかった」
それが事実かどうかは分からないし、今の世代の人間に何の関係があるのかは分からないが、そのような話をされた一方、
「お前は家に来るな」
そんなことも言われた。そして、石丸氏のことになると、私も知らなかった石丸氏の両親の出自や、石丸氏の出生後の経歴を一通りまくしたてて、「石丸は母親の実家が高宮なだけで、生まれも育ちも吉田の人間だ」と強調した。
部落差別をするなと言いつつ、やたらと地縁血縁にこだわるところに、面食らってしまった。そして、これはなおさら石丸氏との対話は無理だろうと感じた。
そんな議員でも、特に石丸氏の政策が悪いということではなくて、「石丸はただのお調子者で何も無い人物」という評価であった。
フサホみたいな最近流行りのポピュリストが石丸でそんな考えなしだから平等に同和も切れたっちゅうこと?
悲願の平等が達成されたら困るってのも因果な商売やね同和ビジネスって
公人でも論点の石丸氏以外は役所側、議員側通して匿名にしたのは公平性の観点から良い。
制度としての同和政策が2002年に終わっているのにいまだに言うのは懐古に囚われてる。なんなら議員の発言で先祖がやられたことと同じ様な差別を石丸氏の親族に対してしている、発言しているのに無自覚なのは開口物だ。
濃い内容で為になりました。
取材活動お疲れ様です。
PS 部落訪問、曲輪と言うのですね。注釈ないので???でした。
#c329e56d7ca1a9cee5432a9f564d29f7
「本サイトでは公人について重要な事柄は原則実名を出したいところだが、今までの経緯からこれは本当に攻撃対象になってしまいそうなので、ある議員とだけしておく」
ここの文意がよくわかりませんでした。攻撃対象になるのは「ある議員」ですか? 宮部さんですか?
#a5ffb4e7a86a923f13e824732cc7d20b
その可能性のある対象は「ある議員」だと思います。
ある議員です
差別の幻想から抜け出られない人か・・・面倒くさいな。
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「石丸伸二スペシャル」と仰られますが、当の石丸伸二さん本人に取材はされたのでしょうか。それともこれから出てくるのでしょうか。
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示現舎にそこまでの取材力はかりません
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