【深層レポート】三重県津市の闇 相生町自治会長問題(3)

示現舎取材班 By 示現舎取材班

田邊会長は市役所のみならず、市議会にまで影響力を持つようになった。本来、議会は一般人が介入することがあってはならない。しかし津市議会は田邊会長という特定個人によって議会活動までが左右されるようになった。

今回は田邊会長による市議会への介入について詳細にレポートする。

前回、田邊会長の手本になった松下という人物を紹介した。関係者は語る。

「ある職員が退職したことで松下を市役所から排除できたのです。しかし今度は田邊に手を貸す職員がいるから呆れる他ないですね」

田邊会長が役所に貸しを作ったのもクレーマーのS氏排除がきっかけだが、これ以来、とにかく田邊会長への「忖度」だらけになっていく。

「最近、津市は随意契約が多すぎへんか? と業者仲間と噂してた。そうしたところでアンタらの記事を見たもんやから、やっぱり“あの人(田邊) ”の影響なんやなと思ったわ」

当サイトを読んだ市内の業者がこんな意見を寄せてきた。同氏によれば随意契約が増えたのはカラクリがあったという。

「津市の場合、50万円以下の工事は随意契約なんや。しかし例えば200万円の工事があったとするとこれは入札をせないかん。ところが目的、用途、条件など少し変えた4つの工事に分割するわけや。これで特定の人の息がかかった業者に回せるってこっちゃね」

こうした抜け道はむしろ役所側から耳打ちされることもあるというから驚きだ。もちろん不透明な公共工事は全国的にあるもの。この点については津市だけを責めるわけにはいかないが、津市の場合は市役所のみならず議会にまで、単に一自治会長に過ぎない人物の介入を許した。

環境パトロールの質問を根に持つ

以前取り上げた「環境パトロール」。この不透明な事業は当然市議会でも問題とされることがあった。そしてこれが田邊会長の議会介入の象徴的な案件だ。

実はそれ以前は「田邊というちょっと面倒な人がいるらしいという認識だった」(元市議)という程度。しかし田邊会長肝いりの環境パトロールにメスが入ろうとすると議会に圧力をかけ始めた。

「環境パトロール」とは換金可能な資源ごみの持ち去りを防ぐ目的で収集日前に車で巡回し見張りをするというのだ。田邊に業務委託されている。しかし「資源ごみも値崩れしていてむしろ持って行ってほしいぐらい」(市内業者)という。一時、マンホールの蓋が盗まれる事案があったが、最近はあまり聞かない。盗難対策が進んだという以上に「銅も以前のようには売れない」(同業者)という状況。

そこに資源ごみのパトロールをする意味が分からない。しかも予算は膨大。収集費用を合わせたら二重の予算だ。そこで議会で取り上げたのは共産党の藤本智子市議。平成28年3月定例会(第1回)でのこと。

資源物持ち去り防止パトロール業務委託料1434万5千円について質問した。市の職員が見回りしていたものが自治会のパトロールに至った経緯などを聞いた。普通に考えればたかが資源ゴミの見回りに1千万円以上もの予算執行されるなど異常だ。

市議会における、当時の環境部長の説明によればパトロール業務は7エリアの自治会連合会に委託する想定で予算を計上したという。

「平成28年度におきましては、この持ち去りパトロール業務を、津地域におきましては17の収集エリアに分かれておるわけなんですが、そのうちの7つのエリアを地区自治会連合会に委託をするということの想定で予算を計上させていただいております。パトロール業務の内容といたしましては、収集エリア内の収集量や集積所の数、収集範囲などによりまして調整をすることとしまして、古紙類や金属の資源物の収集日の前日の夜間、当日の早朝に2時間から4時間程度、2人1組になっていただきまして車3台から4台の車両によりまして、資源物の収集エリアを巡回していただいてそのとき出されております古紙類を集めていただくということでございまして、これに係ります人件費、車両借り上げ代、燃料費、消耗品等、あと損害の保険料等を含めまして、7エリア分ということで1434万5千円を計上させていただいております」(津市議会会議録より)

平成30年度の決算資料より

冷静に考えてたかがゴミの見回りに予算を付けるのが不思議。他自治体で同様の取り組みをしている自治体があればぜひ教えてほしい。またこの時の質問では環境パトロールは補正予算ではなくて、余った予算からの流用であることも明らかになった。

市側は十分な答弁ができなかった上、環境パトロールの運営の不透明さだけが際立ってしまった。このため

「担当している職員が左遷されたが、これが田邊の仲間だったのです」(元市職員)

というのだ。それ以来田邊会長は「藤本憎し」で固まった。同市議はその後、平成30年(2018年)から副議長に就任。すると

「複数の議員と協力して、岡幸男議長(前、当時)と藤本副議長体制を降ろそうということになりました」(前同)

結局、藤本氏は現在も副議長職にとどまっているが、岡氏は2年で議長職を降りた。これについては不可解な経過があったという。

津市議会では議長は2年交代という慣習はあったが、明文化はされていないため制度上は議員の任期である4年間務めることができる。岡氏は2年以降も議長職を続けることを希望し、他の議員からも特に異論はなく、一度は継続が決まったはずだったのだが、後で唐突にそれがひっくり返された。

フードバンクの質問の事前通告に激怒

津市だけではなく全国的にフードバンクの立ち上げが進められている。品質には問題がない余剰食品を生活困窮者などに配布する取り組み。津市では「特定非営利活動法人フードバンク三重」が活動している。

お菓子の贈呈を伝えるリリースを見ると副理事長に「田矢香理」という名があるがこれは田矢議員の妻である。とにかく地元では「フードバンクは田邊が中心」という認識で一致している。もちろん取り組み自体は悪いことではない。事情を知らなければ「素晴らしい活動」と評価する議員がいてもおかしくない。市職員の話である。

「昨年、ある会派の方がフードバンクは素晴らしいからぜひ議会で話を聞きたいと事前通告したんですよ。ところがなぜか田邊がフードバンクを議会で追及すると勘違いして怒鳴り込んできたのです。

「すごかったですよ。議会事務局の“ 一般人禁止の部屋”に担当の議員を呼びつけたのです。そこには市の部長クラスがズラリ並んでいたのです。私が姿を見たのは総務部長でしたが、とにかく幹部職員クラスが集められたのは間違いありません」

すると田邊会長が議員に詰め寄る。

「俺らがなんか悪いことしたんか」

そうではなく単純に活動に興味を持ったと説明するが全く聞き入れられない。

「お前らも悪いと思っとるんか!」

今度は市職員たちにも怒り出した。「すみません、すみません」一人一人が詫びを入れさせられる。証言によっては「土下座」だったとする人もいる。ではなぜここまで田邊会長は怒ったのか。

以前の記事でも触れた通り、このフードバンク活動は予想を超えた食品類が集まり市の施設でも保存されていたという。そして、集めた食品の一部が横流しされていた疑惑が取り沙汰されている。

そのことをもしや議会で取り上げられると思い、このような暴挙に出たというのが専らの見方である。

傍聴席から議員に罵声を浴びせる

まずこの動画をご覧いただきたい。これは津市議会のインターネット中継だが、桂三発議員が傍聴人と思われる人から大声でヤジを飛ばされている音声がはっきりと聞こえる。それも一度や二度ではなく、最初は桂議員は無視していたものの、最近の7月の会議では明らかにヤジに怯えている。

これらは明らかな議事妨害だが、議長が毅然と対処しているようには見えない。なぜこのようなことになってしまったのか。

まず、関係者から明かされたのは、桂議員が最近田邊会長に謝罪したということである。取材する中で、他にも田邊会長に謝罪をしたことがある議員の名前が複数挙げられた。名前を挙げられたのは岩脇圭一、青山昇武、福田慶一、辻美津子、佐藤有毅。そして今は県議会議員となっている小林貴虎である。

謝罪させられた原因は非常に些細なもので、例えば「初めて会った時に挨拶をしなかった」という理由だ。そして、謝罪したから田邊会長の言うとおりになっているかと言えば、そうでもないようである。

桂議員は、大門で田邊会長が実質的に経営する「JAZZ」には何度か顔を出して以降は長らく店を訪れておらず、田邊会長に従わない人物と見られていた。しかし、2018年の初め頃、桂議員は突然所属会派である「一津会」を離れて一人会派となった。事情を知る人物によれば、これは田邊会長から会派への圧力があったからだという。

そして、それと同時期に前掲の動画のように、田邊会長本人や親戚と思われる人物から、議場でヤジを飛ばされるようになった。ヤジの内容はほとんど意味不明だが「落語」「差別発言」「市民を冒涜」といった言葉が聞き取れる。読者の方はお察しかも知れないが、桂議員は落語家でもあり、桂文枝の弟子である。

桂議員は、ある時落語のネタで当時未婚だった田矢修介議員をいじって、「もしかしてオカマ?」といった趣旨の発言をしたことを理由に、田矢議員から司法書士を通じて慰謝料を請求されてしまった。この件は、桂議員が弁護士を通じて田矢議員に妥当な額の慰謝料を払うことで決着しており、議場でヤジを飛ばされていた時期には既に終わった話のはずだったのだが、その弱みに付け込まれ蒸し返されたというわけだ。

そして今年の3月、桂議員は「JAZZ」が閉店した後に、実質的に田邊会長によって新しく開店した「小梅」で、当時議長だった岡幸男議員をはじめとする複数の市議会議員、そして市役所の幹部がいる前で、謝罪をしたということである。

しかし、前掲の動画の最後にヤジを飛ばされている場面を見る限りでは、それ以降もヤジは収まっていない。実はこの場面では田邊会長の意向によるものとされる藤本副議長への不信任動議に、桂議員が反対してるところであり、ヤジられたのはそのためと考えられる。それでも桂議員が怯えているのは前述の経緯が関係しているのだろう。

(次回に続く)

【深層レポート】三重県津市の闇 相生町自治会長問題(3)」への6件のフィードバック

  1. アバター

    素晴らしいリポートですね。
    桂議員を守ってくれる団体はないのでしょうか?
    田邉会長の続報も知りたいですね。

    返信
    1. アバター鳥取ループ

      団体というものはないですね。
      田邊会長にはまた取材したいと思っています。

      返信
  2. アバターワクワクさん

    >最近の7月の会議では明らかにヤジに怯えている。

    これは傍聴席ではなく議員からのヤジですね。確かに藤本副議長への不信任動議に、桂議員が反対してるところですが、主にある議員の前日の言動を「攻撃」と言って、それに対してヤジられたのを「言い過ぎた」と謝っている場面と思われます。
    またこの日の動画全部見ましたが、桂議員のこの反対討論がなんかピンとがずれている気がしました。そういう言動(ピンとがずれていること)へのヤジでして、藤本副議長不信任動議に反対したからヤジが飛んでいる状態では無いと思います。

    返信
    1. アバターワクワクさん

      そのすぐ後、共産党の長谷川議員が、同じく藤本副議長不信任に反対討論発言しているのですが、こちらには一切ヤジは飛んでいませんでしたし。

      返信
    2. アバター鳥取ループ

      最後の「謝れコラ」も議員からのものなのでしょうか。
      にしてはガラが悪すぎですが。

      返信
  3. アバターしんしん

    桂議員のヤジする人間に対する視線の角度は上を少し見上げるようで、傍聴席を見ている感じがするのですが?

    返信

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