【熱海市 土石流】百条委員会 参考人証言レポート 熱海市長「同和の話は 内密にしてほしい」 

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By Jun mishina

3月3日、熱海市議会「第6回特別委員会」(百条委員会)で初の参考人招致が行われた。参考人は地元住民、報道関係者、伊豆山売買に関わった不動産業者ら5名。参考人からは赤井谷付近を歩いた際、靴が溶けたなど異常な事例が報告。また事件の裏にある「同和」についてタブーなく指摘されたのも印象的だった。

土石流から8か月が経ったが

土石流のシンボル化した通称“赤いビル ”丸越酒店。

昨年7月3日の土石流。3・11の大津波を再現するかのように家屋を飲み込んだ。SNS上で拡散された赤いビルこと丸越酒店周辺は通行規制も解除され往来できる。整備が進むが泥がついた建物は土石流の傷跡だ。

百条委員会と並行して、岸谷きだにバス停付近で土石流遺族らが黙とうを捧げていた。土石流から8カ月が経つが検証・解明は進んでいない。公開文書は黒塗り、本来は一般市民にも公開されるべき百条委員会は報道関係者に限定だ。参考人名は実名報道禁止で肩書きのみ。録音禁止で撮影は冒頭のあいさつだけ可。参考人の陣容とスケジュールは以下の通り。

①10時30分から「伊豆山を面白くする実行委員会相談役」(略称、相談役)
②11時から「伊豆山地区住民」(略称、住民)
③11時30分から「記者」(略称、記者)
④13時から「静岡県宅地建物取引業協会職員」(略称、職員)
⑤13時30分から前土地所有者と現土地所有者の土地売買に関わる不動産業者元代表(略称、代表)

最後の⑤の参考人については当サイトでも接触した人物である。①から④氏までは終了後、メディアの囲み取材に応じるが参考人⑤は個別取材NG。前所有者‐現所有者双方に通じており、なおかつ伊豆山温泉開発にも関与した業者である。この日、最も注目された参考人かもしれない。

証言①相談役「伊豆山盛り土付近を 歩いたら靴が溶けた」

最初に証言した相談役は土石流発生後から被災者、住民への情報提供、周知を行ってきた人物だ。

すでに昨年9月、同市議会でも質問があった伊豆山を大規模開発する熱海プロジェクト「熱海伊豆山総合開発計画」(仮称)。当時、齊藤栄市長は「計画の存在を確認できなかった」と答弁。この計画も長らく疑問視されてきた。同実行委員会にある開発業者が計画話を持ち込んだ点について

「開発業者は、後で分かったことだが現所有者、名古屋から来られた方たちと通じていたようで私のところに接触してきた。2006年当時、某市役所の次長をしていた人を通じて接触があり、伊豆山にリゾート施設のような大規模な公園を作りたいんだという話があった。引っかかりを感じたのは計画の核となるのが世界中に暮らす華僑の霊園ということだった」(相談役)

華僑の霊園というのも何やら“香ばしい ”話。しかし実行委員会として現所有者との接触はなかったそうだ。

「計画とは現所有者の土地を利用することだと思う」(相談役)

いずれレポートしたいが現在、被災者の間で「分断」が起きているのだ。それは現所有者の事業と無関係とはいえない。また宗教法人も重要になってくる。

そして話は土砂の危険性に向けられた。危険とは土砂崩れという意味ではなく「汚染土」という意味である。相談役が2007年に土砂流出現場を調査した際に「靴が溶けたのは事実か?」と委員から質問を受けた。靴が溶けるとは凄まじい話。相談役は伊豆山の模型を交え説明した。

「靴が溶けたのは事実。土砂に有害物質が含まれてたのは共通の認識だった。地元市議には実行委員会のメンバーから知らされ、熱海市長にも報告してある。市長も困った様子だった(相談役)

つまり市側は汚染土の存在を把握していたことになる。靴が溶けた場所は伊豆山本宮付近だという。また土石流が発生した付近には「現所有者」の表札がかかった家屋があったとの証言も。相談役は口調こそ穏やかだが静岡県や熱海市の対応について苦言した。

「県と市の情報公開が進んでいるとは思えない。土石流は8か月も経つが不安を感じている。今後も問題提起していくが加害者と思われる前所有者と現所有者は刑事告訴されている。静岡県と熱海市の不作為については明らかになっており、いずれ追及されるだろう。被災者不在の復興委員会、復興検討委員会に議員で来たのはたった一名。学者や学識経験者が非公開にしろとか、さっさと結果を出せとか主導をして進めているし、市長が勝手に決めているように感じる。きちんと解明されないことには私たちも次に進めない」(相談役)

8か月経っても完全な情報公開に踏み切れないのは被災者、地元住民も苛立ちが募るだろう。

証言②住民「某局が前所有者工事を 放映見送り」

続く地元住民。参考人席に向かう途中、ある委員に向けピストルを撃つ仕草をしたのが面白かった。理由については住民から資料が提供されたが、今回は省略し証言に移る。驚いたことに住民は全く臆することなく同和の背景を語ってくれた。

まず話題に挙がったのが先の汚染土。同住民も伊豆山盛り土付近で「靴が溶けた」現象を経験しており、状況を詳しく説明した。

「靴が溶けたのは事実である。2010年9月だと記憶している。晴天の日に岩戸山に向かうと(開発現場には)怪しい黄色いダンプカーが走ってきて赤井谷に黒い土砂を落としていった。さらに山の上に行くと洗濯機、テレビ、エアコン、車など不法投棄の山になっていた。歩いてみるとコンクリートのように固かった。雨の日はどうなるのだろうと思った。最初の行動は不法投棄を発見して、すぐに伊豆山交番に行って交番長に不法投棄物を伝えた。警察だから日程を調べることは簡単と思う」(住民)

次第に語気を強めていく住民。一方、報道陣たちのパソコンのキーボードの打鍵音が「カタカタ」と鳴る。しかし次の瞬間、打鍵音が鈍くなった気がした。

「法のグレーゾーンで一時保管として県に出していると、交番長から聞いたが、お互い同和のやることだから埋めてごまかすだろうということで一致した。それから一週間ほど後、ホームセンターで長靴を購入して雨の日に今回の土石流地点を歩いた。時間にすると10分程度。泥が底沼なしのようで一歩進めばグシャという土砂だ。不法投棄場所までたどり着けないのでUターンして切土があるあたりの水道で長靴を洗うと表面が剝れた。この盛り土は危険だ。雨になったら大変だとすぐ気がついた」(住民)

相談役と同様に靴が溶けた場所を示したが、ほぼ同一の地点である。付近には開発業者のものであろう「見張り小屋」があった。住民は見張り小屋の住民と接触。異様な様子を感じたという。

「玄関からピンポン(呼び鈴)をした。男が出てきて応対した。雰囲気から夫婦を装っているようだ。いつから開発をしているのかと聞いたら最近、こちらに越してきたから分からないと答えた。市長には長靴を見せている。行政はこの時点で前所有者を刑事告訴していたら良かったんだよ」(住民)

行政の反応は鈍い。そこで報道で伊豆山工事を世に知らしめようと画策。

「今回の件は同和問題。メディアを動かそうと考えた。テレビ番組を動かした下請け会社(テレビスタッフ)と熱海駅で待ち合わせをした。当時はユンボが動いていたから同和の工事(現所有者の工事)を撮影したが『別の案件で面白いネタがあり放映はボツになりました』と連絡がきた。また熱海市の経済は立ち直り始めた頃だから、熱海市長から同和問題がメディアに出ては熱海の観光経済に影響が及ぶので「内密にしてほしい。きちんと対応する」という連絡がきた」

TBSはこのタイミングで報道していれば、盛り土の危険性について早期に注意喚起できたはず。残念な結果だった。

ともかく前所有者企業が「同和系列」であるのは住民らも認識していたようだ。今時、共産党系の人権連ですら同和に対して後手に回る。ところがこの住民は果敢で、開発業者と対峙した。

「(盛り土現場付近には)ヤクザ風の見張り役が2人いた。当時、前所有者企業、同和の下請けによる再開発工事の説明会があって町内団体役員より参加協力依頼がきた。開発工事の場所は赤井谷と違う。相手は同和のため交番の交番長と私も参加。日程は警察に聞けば分かる。当日は行政から職員が来ており、溶けた長靴を見せた。職員は(土石流起点付近の)写真を持参していた。亡くなった宗教関係者も参加していたが、現在のP地の開発工事に異議を唱えていた。宗教関係者はP地の下にも廃棄物が埋まっているといっていた」(住民)

「私が職員に対して前所有者企業の工事現場から流れ出る水に有害物質はないか『私が水分分析調査の許可を取ってある」と伝え調査した結果、有害物質は発見できなかったと聞いた。前所有者企業の負債はZ社のX氏が買い取り前所有者企業は清算された。2年間は長靴を保管していたが廃棄してしまった。また12年か13年前、同和関係の企業が違法な開発を行っていたことが議事録に掲載されているとある雑誌で知った。当時の市議は知っていた様子だ。チェックする立場の議員が何も行動を起こしていないのは納得いかない。今回の問題は熱海市、市長、市議会、政治家にも責任がある」(住民)

そして再び矛先は高橋市議に。

「私は東日本大地震の発生後、(市議の)現地視察の説明会が開催されて私も参加。私が『●●さん、このままでは伊豆山でも同じことが起きるぞ。あなたの自宅が最初に被害を受けるぞ』といったが●●は沈黙しただけで、対応していない」(住民)

●●と地元の評価についてはいずれレポートしよう。

証言③記者「マスコミは同和を 報道できないなら うちに来るな」

同記者は数年前から前所有者周辺を取材してきた。前所有者の取材では草分け的な存在だ。

2015年、伊豆山崩落の危険性を訴えた記者である。

「情報提供者が刺し違えてもよいと決心して県に訴えかけたにもかかわらず県が動かなかった」

公開文書で最も有名な記録の一つである。

「(行政に対して)あなたたちのいうことは聞かないのだから警察にいって刑事告訴するしかないという話をした。刑事告訴しそうな話をしたがやらなかった」(記者)

批判は前所有者だけではなく同和団体にも向けられた。

「同和団体は某党と関係が深い。部落出身などではなく関係がない人間がやっている。大会を見れば分かるが関係者はほぼ暴力団関係だ」(記者)

またこんな苦言も。

「私のところにも(マスコミが)取材にきたが、同和団体は特定政党の関係だといえないなら取材するなといった。語れないならやめろ、うちに来るなといった」(記者)

同記者によれば前所有者は行政と交渉するにあたり自由同和会の名刺を渡したという。前所有者にインタビューをした際、「同和利用」を否定したが、記者氏の取材では異なる実情が見えた。

証言④職員「不動産の 専門家なら 盛り土は見抜ける」

職員からは土砂災害のリスクを含む土地取り引きについての説明があった。委員からはC社は現所有者企業、A社は前所有者企業との前置きがあった。「双方は弁護士を通して面識がなく盛り土は知らない」という事実確認をした上で、面談なしの土地取引について質問があった。

「当事者同士が顔を合わす可能性について「宅建業法では土地の売買をしたら購入者は土地に瑕疵があればそれだけ造成費用がかかるので買主はその物件を確認すると思う。また売主も瑕疵があったら後々追及されるから売主買主が顔を合わすのが一般的である」(職員)との見解を示した。

重要事項説明書に盛り土が記載されるかについては「作為的な盛り土の場合は不動産取引上、瑕疵になる可能性があるから売主は買主に告知しなければ契約不適合責任に相当することになる。盛り土が取引の対象地外にある場合は他人の土地に調査することは宅建業法上は求めていない。しかし土砂災害警戒区域があれば取引地の対象外であっても土砂災害の危険性について説明することになっている(宅建業法35条)」(職員)と解説。

現所有者は土地造成についても専門的知識を有しているはずだが、当該土地を見れば問題点(盛り土)認識できたのか、について「それを見ていれば認識できた」(職員)と指摘した。

つまり不動産業に関わる者ならば盛り土を見抜ける可能性が高いということだ。

証言⑤元代表者「前・現所有者は 面識があった」

温泉開発の話も聞きたかった。

元代表は昨年、赤井谷地区の不動産取引の資料やメモは静岡県警に提出しているので、詳細部分は答弁できないことがあると前置きした。その上で

「土地の調査は当然行った。調査については熱海市の業者がやったが私も何度も足を運んだ。重要事項説明書の作成に関しては内容についてよく協議して重要事項を作った」(元代表)

と述べた。熱海市の業者とはV社だと委員から指摘が入る。再三、指導を受けていたが市当局から盛り土について説明はあったのか、という質問。これには意外な反応が待っていた。

「重要事項説明書に盛り土という表現はしていなかった。土採取等条例について重要事項説明書に記載した。記載内容は『静岡県土採取等条例届出について 本物件の伊豆山●●●熱海市役所指摘事項(土の処分場)沈砂池に対しひな段根幹部分を成形し硬化剤にて固めることを引き渡しまでに売主は買主に対して確約する。なお工事終了後、遅滞なく完了届を提出することを引き渡しまでに売主は買主に確約するものとする』という形で記載している」(元代表)

市側は「盛り土」という認識がなかったことになる。

「その当時の熱海市の指摘で盛り土という言葉を使っておらず、ひな段の形状はできていて熱海市は
土の処分場という表現をしていた。熱海市はひな段を成形して硬化剤や凝固剤で固めれば工事完了届を
出す方針だった」(元代表)

次いで新旧の所有者の関係については「面識はありました」(元代表)とした。

全体的に元代表は言葉に力がないが、現所有者が個人名義で購入したのは「責任回避」が目的ではないか、という指摘にはやや語気を強め反論。

「責任回避の意味が分からないが当時、(現所有者は)全国で山林を購入しており山林王という表現を使っていた。このため個人で広い土地を所有することは疑問はなかった」

両者との関係についての質問が続く。

当サイトでも指摘したが、H市の造成地は令和元年に前所有者企業から現所有者に不動産売買、令和2年に現所有者企業に移っている。この点について問われたが「H市の件は分からない」(元代表)というに留まった。

また委員から「現所有者の造成の仕事を請け負った業者A氏はご存じか」との質問が。

「知っている。同業者だからお付き合いはある。現所有者が競売で落としている土地があるが(A氏とは)そこからのご関係だと思う」(元代表)

先の重要事項説明書には「工事完了届の提出を確約する」との記載あったが、実は完了届は提出されていない。この点も委員から指摘が入る。

「現所有者からはとにかく完了届を出してくれといわれた。私とB社も何度も前所有者にお願いした。当初、売主側は6億5千万円といったが、前所有者は3億円といった。金額の開きがあった。だから1年ぐらいかかった。現所有者がOKしたのは22年11月で、この時に買い付け証明を出した。
産業廃棄物の処分や境界線の決定などの条件があったが(その条件が果たされていないから)土地代金として300万円の残金を残して決済した」(元代表)

しかし委員でなくても6億円の土地が3億円に値引きされるのは不思議である。そこで委員から「差額の3億円で(現所有者が)土地造成を完了してくださいという意味なのか?」との質問が出た。

「それは違う。だから残金を残した。前所有者企業の方でやるべきものだと思う」(元代表)とした。

その他、前所有者との関係が続く中で印象的な元代表の証言は「非常に杜撰な工事だった」と本音を覗かせた。どちらかといえば現所有者寄りの証言に思えてならない。

次回の百条委員会参考人招致は3月17日。前所有者にインタビューした際、参考人応じる構えを見せたが果たして。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【熱海市 土石流】百条委員会 参考人証言レポート 熱海市長「同和の話は 内密にしてほしい」 」への5件のフィードバック

  1. 丸山由香里

    ありがとうございました。おそらく、が、やはり、に変わりました。
    メディアの重要性を痛感します。
    同様の被害が各地で起こらないことを祈ります。

    返信
    1. 三品純 投稿作成者

      非常に有意義な百条でしたよ。
      委員さんたちに期待しましょう。

      返信
  2. M

    三品様、ご無沙汰しております。
    新幹線ビルディングの前の所有者は名古屋地区で名高い旧Hグループ一族だったようですね。ゴルフ場にでもするつもりだったのでしょうか。番頭のT氏は現在も大須に本拠地のある貸しビル業で現役ですが、どのようなツテで新幹線ビルディングに当該土地を売却したのか非常に興味があります(当該土地の登記情報をとれば名古屋財界の名士、FT氏の相続未納で国税に抵当権を付けられていた過去が丸わかりです)。それにしても億単位の抵当をどうやって解消したのでしょうかね。現在も某企業の監査役に名を連ねている孫の女史は関係あるのか個人的に興味があります。

    返信