【深層レポート】三重県津市の闇 相生町自治会長問題(5)

示現舎取材班 By 示現舎取材班

※アイキャッチ画像はNPOフードバンク三重の事務所。この事務所を建てる際にも市の職員が駆り出され、市役所の資材が使われたという。

津市では多数の市職員が相生町の田邊自治会長の小間使いのようにされていた。市職員の私物化はどのように行われていたのか。そして、ずさんな公金の支出が行われた疑惑についても真相を取材した。

人権担当理事が「JAZZ」へ職員を動員

田邊会長が市役所職員や市議会議員を自身が実質的に経営する「JAZZ」に通わせていたと、誰もが口を揃える。具体的に、それはどのように行われたのか?

これは2018年10月に行われた「津まつり」に、田邊会長が実質的に経営する「JAZZ」が出店するので、利用するように市職員らの前で要請している様子である。声の主は当時の橋本英樹人権担当理事だ。

田邊会長の店への市職員の動員を取りまとめる役目は、歴代の人権担当理事がやってきたと関係筋は証言する。これは、遅くとも現在は文化振興担当理事となっている南勇二氏の頃からだという。

「JAZZ」で市職員を飲食させることは2015年頃から始まっており、当初は市の幹部職員だけで、年に数回ほど「幹部会」をする程度だった。しかし、すぐに幹部職員以外も動員されるようになり、さらにエスカレートしていった。

例えば市役所の幹部職員の「誕生日会」が開催されるようになった。当然、幹部職員は多数いるので、毎月のように誕生日会が行われることになる。それだけでなく、何かあれば必ず「JAZZ」を使うようにされていたため、毎週末になると「JAZZ」は市職員で大盛況であった。

人権担当理事は各部署の管理職に、「JAZZ」に部下と共に行くように要請する。しかも、例えば誕生日会であれば1回あたり一万円前後の会費が設定される。職員は上司から頼まれれば嫌々ながらも参加することになる。無論、全ての職員が言うとおりにするわけではなく、ヒラ職員であれば会費を安くしてもらったり、時々「JAZZ」とは別の店を使うこともあった。

しかし、人権担当理事が橋本氏になると、役職に関係なく会費を支払わされるようになった。そして、田邊会長の意に背くような発言をしようものなら、すぐに田邊会長に報告される。まさに部下職員は吊し上げに合うのである。

当然ながら反発して参加を拒否する職員も出た。そうすると、その職員の上司が、あるいは管理職であれば部下が「JAZZ」に呼びつけられ、そこで田邊会長から恫喝されるなど、露骨な嫌がらせを受けるのである。そして、参加を拒否した職員は上司や部下に懇願されて、「JAZZ」で田邊会長と同席した市役所幹部の前で謝罪させられることになる。

謝罪とは無論土下座であり、自ら丸刈りにすることを強要された。理不尽ではあるが、謝罪の理由は、市職員を店に通わせることに異議を唱えたことが「営業妨害だ」といったものである。そして、このことが原因で、退職を余儀なくされた職員もいたという。

それにしても、なぜ市職員を「JAZZ」に動員するのが人権担当理事の役目だったのか? 関係者の話を総合すると、その理由は「相生町が同和地区だから」の一言に尽きる。本来は地域連携課が自治会の担当なのだが、同和地区に限っては人権課や男女共同参画室といった人権関係の部署も「奉仕」させられてきたのだという。

相生町自治会のずさんな会計

示現舎は、情報公開請求で平成27年度以降の相生町自治会の収支決算報告書を入手した。上はその一部だが、ひと目見ただけでも不審な点がある。

市から掲示板設置補助金19万5000円が自治会に支払われているが、掲示板設置費用の支出が13万円しかない。そもそも、市の要綱によれば掲示板設置費用は半額が補助される決まりなので、支出は補助金の2倍以上なければおかしい。

さらに市からゴミ収集箱補助金が135万円支払われているが、これはゴミ収集箱の設置にかかった費用の3分の1が補助される決まりである。補助金額と設置費用が同額というのはあり得ないことだ。

特にゴミ箱については金額の大きさからして異常である。実は補助金の限度額は1つあたり15万円なので、最高限度額が支払われたとすれば9つものゴミ箱が設置され、それぞれのゴミ箱は45万円以上ということになる。

相生町のごみ集積所
大井町のごみ集積所

なお、相生町の隣の大井町の場合、最近では写真のごみ集積所の設置費用が50万円程度で申請され、15万円の補助金が支払われたという。こちらはしっかりした物で、確かに50万円以上かかっているだろう。

収支に矛盾がある旨を地域連携課に問い合わせると、収支決算書の内容があり得ないものであることを認めた。そして、収支決算書の内容を精査していなかったことも認めた。

地域連携課が所管する掲示板設置補助金については、要綱に従った扱いがされたことを別途証憑書類等から確認したということだが、仮にそうだとしても、田邊会長は虚偽の収支決算報告書に押印して市に提出したということになる。

ゴミ収集箱補助金について、所管する環境事業課に問い合わせたところ金額の矛盾について特にコメントはなく「情報公開請求して欲しい」ということであった。現在関係書類を取り寄せているので、動きがあり次第報告する。

平成28年度決算の「防犯灯設置補助金」も本来であれば半分(LED防犯灯であれば3分の2)補助であるのだが、収入と支出が同額になっている。

疑惑の環境パトロール

田邊会長に関わる疑惑の中で、多くの人が必ず話題にする事柄が「環境パトロール」である。これは平成27年から行われており、市内複数地区の資源ごみの持ち去り監視業務が相生町自治会に委託されている。

そのために、毎年1000万円近い金額が相生町自治会に支払われているのだが、なぜか前出の収支決算報告書には記載がない。

当初、環境パトロールは環境政策課の職員が行っていた。その頃に職員が相生町内をパトロールすると、当然田邊会長にも鉢合わせることになる。しかし、職員からは環境パトロールをボランティアで手伝ってくれる自治会のおっちゃんという認識だったという。

ある時、相生町の場合はこの事業をボランティアではなくて正式に自治会に委託しようという話が出た。これについては、職員の負担が軽減されるということで歓迎する職員もいた。しかし、当時の経緯を知る人物によると、委託金額が決まるまでの過程があまりにもおかしかったという。

前述の通り、環境パトロールの費用は効果に見合うのか疑問を持たれるほどに高額である。通常なら、このような高額な事業が認められることは難しい。しかし、それとは逆のことが起こった。

当初はもっと低い予算で、しかも相生町に限定して委託することが提案されていたのだが、なぜかそれが却下された。そして、委託先は相生町自治会であるのに、相生町以外にも範囲が広げられ、はるかに高額な案が通された。

市役所の関係筋は、まず田邊会長の意向による金額ありきで、市の幹部によって対象範囲が広げられたのではないかと言う。そう言える根拠は、当時から市の主要な幹部が田邊会長の言いなりだったからだ。

「それでも環境政策課は法令スレスレのところでやったつもりでしょう。真っ黒なのは環境事業課の方ではないですか」

事情を知る関係者はそう言い「ゴミ箱の件」の方がもっとまずいことをほのめかした。

なぜ職員や議員は言いなりになったのか

相生町自治会の収支決算報告書には書かれていないが、市から相生町自治会に支出されている金は他にある。例えば以下の相生町公園の清掃及び管理業務委託だ。

この業務委託の問題点は、実際のところ相生町自治会は何もやっていないのではないか、という点である。例えば、中央市民館職員が公園の草刈りをやっていたという証言がある。実は疑惑のゴミ収集箱の設置も中央市民館職員がやっていたという。つまり、市の職員を働かせ、その上業務委託費用を受け取っているのではないかということである。無論、勤務中の職員を働かせたのなら、それに相当する人件費もまた税金である。

なお、田邊会長は津市大門商店街商業共同組合としても、大門にある観音公園の清掃・管理業務を市から委託されている。

市職員が田邊会長の言いなりにされているという事例は他にもある。例えば田邊会長の知り合いの生活保護の申請を通すために、援護課の職員が相生町自治会の事務所を訪れていたという証言がある。

そして、前回の記事でも触れた「NPOフードバンク三重」については興味深い動きがあった。ごく最近、田矢議員の妻である田矢香理氏が理事から外されたという。

実は今年の2月にも同様の動きがあり、一度田矢香理氏の辞任の届けがNPOを管轄する三重県町に出されたという。これを主導したのは荒木総務部長等の一部の幹部であると見られているが、なぜか直後に盆野副市長の指示で届け出が取り下げられた。

しかし、今回は市幹部が何とかして田矢香理氏を理事から外すために動いたこと、そして弊舎の報道で様々な事実が明るみになったことから田邊会長も抵抗できなかったのだろうということだ。

そもそも田矢香理氏がフードバンクの理事とされた理由は分からなかった。関係者も「あくまで想像」と前置きして「有力議員の妻を入れることで権威付けをしたかったのでは」と答えるのみだ。一方、田矢香理氏を理事から外そうとした時に「お前は俺と縁を切ろうとしているのか」と田矢議員が田邊会長から叱責されていたという証言もある。

フードバンクの一件から見れば、市役所内では盆野副市長が一番の黒幕だとの見方もあるが、そう単純でもないようだ。そもそも盆野副市長がなぜ田邊会長の意向に沿うような行動をしたのかまでは分からない。

田邊会長から金を受け取った職員もいたが、いずれもごく少額で、小間使いにさせられた「お駄賃」として受け取った程度だ。明確に賄賂と取れるような金を田邊会長が市職員に渡したというようなことは確認できなかった。だから、金の力で市職員が動かされたとも考えにくい。

関係者が語るところによれば、田邊会長のターゲットとされる前に、市役所内であれば上司や部下、市役所外なら親戚というように、まず周辺の人物を田邊会長が動かし、田邊会長に従うしかないように追い込んでいくのだという。例えば、自分自身が田邊会長に反抗したとしても、しばらくすると上司や同僚が田邊会長の意向に沿うようなお願いをしてくるので、結局逆らえなくなってしまうのだ。

今年3月19日、新入学児童に文具セットを寄贈し前葉市長と記念撮影する中川理事長と田矢副理事長(当時)。市長活動日記より。

さて、フードバンクの事務所とされる住所を訪問し、中川理事長を直撃した。理事長は事務所前の炊事場で作業をしており声をかけるが応答はせず。

「入らんといてください」

こちらの足が敷地に入るとこう牽制した。事情を聞きたい旨を告げる――

「忙しいんで・・」

一顧だにせず事務所隣のピンクの家屋に入っていった。

さらに同団体の関係資料を見ると最新の名簿には田邊会長の長男とされる人物の名前がある。なぜ突如、親族まで事業に関わらせようとしたのかというと、関係者によれば単に頭数を揃えたかったのではないかということだ。

長男宅を訪ねるとご本人が応対してくれた。

「本当に父親とは話さないから分かりません。今、どうしてここに来られたのかも分からんし。理事にされていることも今、初耳です」

―ではフードバンクに関わっていない?

「一回かどこかに荷物を運ぶのを手伝っただけです。場所、行先、もう忘れました」

一時は前葉市長とも記念撮影をしてスポットライトを浴びたフードバンク三重だがもはや疑惑のバンクになった感すらある。

一方、弊舎の報道以降、フードバンクの食材や関連文書の処分をしているといった情報も漏れてくる。そしてつい先日の10月12日に市役所で緊急幹部会が開催されたという情報が入ってきた。

「現在、インターネット上で、事実かどうかはともかく、市民活動に関する情報が流れ、津市役所、津市議会への指摘や批判が拡散しています」

コメントをまとめた文書によれば幹部会で冒頭、前葉まえば市長はこんな風に切り出し実態調査を進めるという。

同市秘書課によればこの文書の内容は事実ということで「職員の公正な職務のためにも(問題があれば)この機会に聞き取り調査をして市長あてに封緘して直接届けて欲しい、という趣旨のコメントでした」(同課)と説明した。おそらく市側が相生町問題について見解を示したのは初めてのことだろう。さすがにこれ以上は看過できなくなったということか。

【深層レポート】三重県津市の闇 相生町自治会長問題(5)」への7件のフィードバック

  1. アバター一読者

    津市公衆浴場「さくらゆ」の指定管理者が相生町自治会なのかと
    思いますが、そちらは正常でしたか?

    返信
    1. アバター鳥取ループ

      詳しくはまだ調べていませんが、市議会でいろいろと言われていたようです。

      返信
  2. アバターブルー将軍

    昭和の大阪市のようですね。
    時代を経たにも関わらず隔世の感のなさに驚きです。
    自治会だけにとどまっているあたりはまだ飛鳥地区あたりとくらべるとマシかもしれません。

    返信
  3. アバター無名

    津は生まれ変わる必要があります。今までこのようなことを皆が見て見ぬ振りをしてきました。退職をしていった職員も何人もおり、悔しい思いをした職員の姿も見てきました。その人たちの無念を晴らし、新しい津市になるよう心より願っています。どうか問題解決するまで徹底的に取り上げてください。よろしくお願いします。

    返信
    1. アバター鳥取ループ

      情報公開請求した文書がまだ届いていないので、届いたらご報告します。
      なお、ゴミ箱問題は確実です。

      返信

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