津市相生町自治会長事件から再び――。自治会のごみ箱設置の補助金を津市から詐取したとして、詐欺罪を問われていた津市港中路町自治会元副会長、前田紀行被告に対して26日、津地裁は懲役1年4月(求刑1年6月)、執行猶予3年を言い渡した。ごみ箱補助金詐取事件は同市相生町元自治会長田邊哲司氏に次いで2件目。裁判では「手の込んだ悪質なもの」と非難されたが、補助金に関する申請書等に決済印を押した市職員の責任は問われていない。
田邊氏の開示請求が きっかけだった
本題の前に津市以外の方、また本件を初めて知る方のために同市の「ごみ箱補助金」について補足をしておく。正式名称は「津市ごみ一時集積所設置等事業補助金交付要綱」で津市相生町自治会長事件を象徴する問題である。
一つのごみ箱設置工事に対して、事業費の3分の1、15万円を限度とした補助金を交付する制度だ。これを悪用した事件である。その手口は、ごみ箱の購入費を実際にかかった費用より多めに見積もり市に請求し、その差額分を着服するというもの。
本日の『伊勢新聞』によると2020年6月10日頃から翌月22日まで前田被告が副会長を務めていた津市港中路町自治会内に設置するごみ収集庫3基の工事代金が135万3千円と内容虚偽の見積書を市に提出。8月6日、自治会名義の口座に補助金45万円を振り込ませた。
ごみ箱補助金詐取については田邊哲司氏に直撃インタビューで田邊氏本人がその他自治会でも同様の手口が行われていると示唆していた。
前田被告は以前、田邊氏と親交があったが、その後反目したという。前田被告の名は【報道】津市における官製えせ同和音声(2日目)フルでも浮上した。田邊氏と対立関係にあることを匂わせる発言が相次いだ。
田邊氏は何らかの事情でその他、自治体でもごみ箱補助金詐取が行われていることを知りえ、独自に開示請求をして前田被告らを刑事告訴した。
市職員はおとがめなしという謎
いずれの事件も行為としては悪質に違いない。しかし問題は市職員は“お咎めなし ”という点だ。町内に防犯灯を設置する補助金で元津市人権担当理事、逮捕当時は津市中央市民館(隣保館)管長だった松下哲也氏は有罪判決(懲役1年2月、執行猶予3年)を受けている。松下氏は申請に関わった職員の一人に過ぎない。なぜ松下氏だけが共犯扱いなのか謎である。また防犯灯補助金詐取が問われるならばごみ箱設置に関与した職員も起訴されるべきだ。
いわば松下氏は“人身御供 ”。本来は市上層部が負うべき責任を松下氏一人に転嫁されたとしか思えない。
補助金詐取に至るプロセスは田邊氏の著書『津市役所の闇』が詳しい。
当時の岡野吉秀事業課長(兼環境部事業担当参事)からは「高洲町もゴミ箱集積場を作って戸別収集をやめるので、相生町でもゴミ箱集積場を作ってほしい」と言われた。補助金についても「四十五万円の見積と領収書を出して貰ったら、三分の一の補助で十五万円出します」と言った。私は、三分の二の負担金である三十万円は、相生町にはないので無理だと言った。すると岡野事業課長は「十五万円で良いものを見つけてもらったらいいじゃないですか」とアドバイスしてくれた。元々お金のない自治会だ。何とか自治会からカネを出さんとゴミ箱をいくつも設置したかった。補助事業の話は、渡りに船やった。書類の作り方を丁寧に教えてくれたが、字を書くのは苦手やと伝えると、「判子だけ持ってきてください」と笑って答えてくれた。
もちろん本書に記載されている事実関係は疑わしい箇所もあるが、少なくとも補助金の仕組みについては大方、関係者の証言通りだ。つまり事実上、補助金申請も職員による“ 代行”である。
注目すべき記述はもう一つ。
ゴミ箱の問題は詐欺事件として立件された。三月の収監中に、家のものに頼んで他の自治会のゴミ箱補助金について市役所に開示請求した。私がやったのと全く同じケースを令和二年の橋南地区のある自治会で見つけた。定価十万円のゴミ箱を四十一万円で三基設置したとして補助金請求して決済がおりている。私がやった時と同じように、坂越健二事業課長のゴム印が押してある。市役所はこの時点で橋南地区の自治会の不正を知っていたはず。複数の自治会の不正支出を認めたとあれば背任罪にあたるのではないか。
文中の「橋南地区のある自治会」というのが「津市港中路町自治会」なのだ。田邊氏は1月、同自治会関係者他、坂越健二環境事業担当参事兼環境事業課長(当時)を刑事告発したが、坂越氏は刑事事件にはなっていない。
関与した職員について前田氏に確認すると
「担当は坂越さんでした」
と話す。申請当時の状況については
「相生町自治会長事件の時に市の対応がおかしいので役所で意見をしたところ、市側から“ 他の自治会でも同じ申請ができる”というので補助金申請をしました。私も反省したからすでに補助金を返還し、罪を認めましたけど職員が責任ナシというのはおかしいでしょ。検察の調書でも裁判でも市側の話は全く問題にならなかったしね」
証言からすると抗議してきた前田氏を“ 懐柔”とばかり補助金申請を導いたようにも映る。それに先の松下元人権担当理事が有罪判決を受けたことを考えれば坂越氏が問題にならないのも妙だ。
現在は環境事業課から異動した坂越氏に確認すると
「不正を見抜けず決済印を押したのは反省しています。刑事告訴されなかった理由は分かりません。また(前田氏を懐柔するため)ごみ箱補助金を申請させたというのも違います。制度として説明しただけです」
と応じた。トラブル続きのごみ箱補助金制度だが、現在もまだ継続しており今後も不正の温床にならなければいいが…。
また津市港中路町自治会をめぐっては表面化していないが、自治会費の横領で紛糾しており津市と自治会長問題は難題が続きそうである。
「津市役所の闇」に掲載されているLINEのやりとりでも
「空き店舗補助金は1/3補助で50万円限度のため、見積書については、150万円限度でもらってください」
と言っているのも同じことでしょうか?
同じだと思われます。
差額をご査収くださいっていう意味でしょう。
顧問弁護士による「調査実施案件 調査結果報告書」を一通り目を通したけど、ゴミ箱・掲示板・集会所・防犯灯・空き店舗いずれも市職員が補助金詐取を持ち掛けたことは一切記載されてないですね。
市役所お手盛りの調査だからこういった表記になるのも仕方ないけど、田邊氏の主張も一理あるかと
そこは前田氏に取材を依頼しているので証言をお待ちください。
市の職員が「(田邊氏と)同じこと(補助金申請)ができる」と持ちかけられたそうです。
前田証言次第で田邊本の裏付けができます。
こんなセコい犯罪が表沙汰になること自体が、闇の深さを物語っておりますな。