【津市相生町 自治会長事件】田邊哲司著『津市役所の闇』を ファクトチェック【後編】

カテゴリー: 津市相生町自治会長事件 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By 三品純

前回に続き津市相生町自治会長事件の当事者、田邊哲司氏の『津市役所の闇』(タイムズ出版)のファクトチェック。津市長、幹部、しかも自身のイタい話も晒した内容に「津市役所内ではベストセラーです」(市議)というのはうなずける。特にかつての取り巻き職員にすれば紛れもなく衝撃の一冊だ。ネットで入手可能の議事録や最終報告書を転載する辺りに“やっつけ感 ”も漂うが生々しいLINE画像など随所に見どころはある。ツボをおさえればじわじわくる、かも!?

安く見られた市長が選ぶ市政10大ニュース

テニスコートオープン&野球場リニューアルと一つ違いって…。

津市の広報誌『広報つ!』(令和4年1月1日)毎年恒例の「津市長が選ぶ! 市政の10大ニュース」。津市自治会事件は4位。しかもフィーチャーしたのは、事件そのものではなく「津市公正公平な市政の確保に関する条例」を制定だった。

随分とお安く見られたもの。何ら権限がなく田邊氏と面識すらない職員までが処分された。もとは一部幹部職員の癒着で発生した事件であり、一般職員にすれば“ とばっちり”である。もちろん憤る市民の少なくない。このランキングはそうした怒りや嘆きを踏みにじるものだ。

企画の担当部署は政策財務部政策課。10大ニュースの選定プロセスについて同課はこう説明する。

「新聞記事などから目立ったニュースをピックアップして市長に提出してランキングを決めてもらいます」

選定自体は政策課だが、最終的には前葉市長の決定事項だった。市民の眼にはどう映ったかぜひご意見を頂戴したいものだ。

年明けには市議選が控える津市。昨年から紛糾した自治会長事件は市議選にどう影響するだろう? そして本題に入る。

緊急質問は否決、来年の一般質問で取り上げられるか?

田邊氏からの反撃。それは暴露本だけではない。『爆サイ.com』への投稿などが「名誉棄損」であると弁護士を通じて謝罪金200万円を請求された他、また発信者情報開示請求を受けたケースもある。担当する弁護士のプロフィールには「情報セキュリティスペシャリスト」「データベーススペシャリスト」とあり、ネットのトラブルを専門分野にしていた。といっても弁護士へ依頼するにも資金が必要だ。7月28日の公判、田邊氏への本人尋問で弁済金(約1200万円)は自費で支払い、貯えはないと証言した。

ところが弁護士に依頼できるのは不思議。田邊氏は裁判官から生計について質問された際、「車の販売」と「親の貯金」と証言。「貯え」「原資」の説明は答えに窮した印象だ。

そういう状況の中での出版。本書の評価はさておき津市役所の動揺は隠せない。12月21日の議会運営委員会で本書についての緊急質問(60分)が提案された。しかし翌日の本会議で緊急質問は否決。来年の一般質問で取り上げられる可能性はある。過去の関係について前葉市長はどう答えるのか注目だ。提示された「証拠」は市幹部、市職員にとって少なからずダメージだが、かといって田邊氏有利とはいえない。その最たる例が松下康典市民部人権担当理事とのLINEだ。なお弊舎内で本書の価値について検証した結果、「編集作業は粗いが貴重な文献」で一致した。なぜなら同和地区の自治会長と市職員のLINEなどまずお目にかかることはない。

上に示したのは、加藤議長の辞職勧告を求める怪文書に関する画像。田邊氏と松下康典人権担当理事のLINEのやり取りだ。一見、市側に不利なようだが、地元関係者の間ではむしろ田邊氏に“ツッコミ状態 ”だという。以下の記述は重要だ。

怪文書がさんざん出回って、私がやっているかのように言われたが、加藤議長や藤本副議長に関する怪文書は、松下人権担当理事が作っている。

確かに松下氏が「作成しました」とある。ところが勘が働く人なら即座に矛盾点を見抜くだろう。「私がやっているかのように言われた」と田邊氏は反論するも、「ご依頼の文書」とある通り田邊氏の意思で作成されたのは一目瞭然。一市民の要求、それも怪文書作成の補助をしたというのは職分を超えた行為だが、田邊氏の関与は事実。当の松下理事に聞いてみると

「ラインを公開した意図は分かりません。係争中(市と田邊氏の民事訴訟)のためコメントは控えます」

と苦慮した様子だ。本書では他職員とのLINE画面も公開されている。しかし一市民と携帯電話の通話のやり取りならばまだしもLINEというのは違和感を覚えた。一般論として市職員と市民はLINEを交換するものだろうか。

「普通はしません。そういう意味でも(田邊氏は)特別なことだったと思います」(松下理事)

外部の視点からすれば「市側も甘い」という指摘はありえることだ。しかし「市民部人権担当理事」という職は“同和の窓口 ”でありなだめ役という性質も考慮しなければならない。つまり他職員でも起こりえた事態だ。市関係者の話。

「実は盆野明弘副市長が別の職員を同理事に据える意向でした。ところが田邊氏の推薦で松下さんが同職に就いたのです。ご本人は当初、固辞したので気の毒な面もあります」

同理事職は肩書きこそ立派だが、有り体にいえばノーといえない“お客様苦情係 ”。激務だ。

津市は自治会長事件の温床になった人権担当理事と地域調整室を廃止する。同職廃止が即、正常化に繋がると断言できないが、「職員‐市民」を逸脱した関係は少なからず是正されるだろう。

それから本書で一番、ターゲットになった橋本英樹理事のLINEも面白い。「派閥の会長」「会社の会長」「経団連の会長」…。世に会長は多数いるが、「自治会長」がここまで持ち上げられるのも珍しい。

この通り、田邊氏をサポートした職員たちも本書では攻撃対象。今後、交流することもないだろう。結局、彼らをつなげたものは「同和地区の自治会長」に対する恐怖と委縮に過ぎない。この点を否定する人がいれば他にどのような要素があるのか説明してもらいたい。

JAZZ飲み会、ひまり→小梅の内幕

JAZZ閉店日に訪問した青木謙順県議(右)と田邊氏(左)

自治会長事件で象徴的に語られるスナック「JAZZ」。弊社も手探りで始めた取材の中で最初に聞いたのは「JAZZ」というスナックがあり同店が田邊氏と職員の社交場になっているということだ。

あるいは田邊氏が実質的なオーナーである「ラヴィアンローズ」(津市大門)も市職員と無関係ではない。

開店祝いに増田被告からの花輪も。

地元では田矢修介市議が記念に配る風船を用意したとも囁かれたが本人に確認したところ

「開店のお祝いとして、お花の代わりに私の妻がささやかなバルーンブーケを贈った事実はございます」

との回答だった。

やはり田邊氏への本人尋問で繰り返し「JAZZは自身の経営ではない」と証言したが、田邊氏の経営だからこそ青木県議(写真)も訪問したわけだ。

事件に関心を寄せてきた市民や読者ならば「JAZZ」あるいは「小梅」の名は聞いたことがあるだろう。当サイトでも何度も取り上げた。しかし本書ではもう一店、別の飲食店が紹介されている。

知り合いの女性が店をやりたいというので世話を焼いた。改装費と家賃補助が市役所の商工観光振興部から出る。但し、三年間は借りた物件を使用するのが条件だった。店の名は「ひまり」。ところが店をやらせた女性は男グセが悪く、店の客とすぐに出来てしまい、トラブルが続いた。この店はわずか一年半で閉店に追い込まれた。市から補助金を出したので、あとも引き続きやってくれと、商工観光振興部長の松田千秋から言われた。南勇二と橋本英樹も後押しをした。店の名を「小梅」に変え、JAZZを閉店してNがやることになった。

Nとは田邊氏の親密女性、フードバンク三重理事長だった中川美佐氏。

「ひまり」の後にオープンしたのが小梅である。ひまり主人は「知り合いの女性」とあるが、もちろんただの知り合いではない。

「ひまり主人は田邊氏の元交際相手なんですよ。しかし別れ話をきっかけに店をやめろというわけです」(事情通)

「ひまり」は百条委員会でも取り上げられた。百条委員会の主力は公明党会派。特に青山昇武市議の追及は凄まじかった。その一つが「商業振興事業補助金」(改装限度額は150万円、賃借料補助は補助率3分の1)に関するものだ。

2017年11月、田邊氏は同女に店を持たせる目的で「津市中心街商業振興会」を立ち上げ、「商店街等活性化推進事業補助金」を得た。現在は津市から返還を求められている。

「商工観光振興部長の松田千秋から言われた。南勇二と橋本英樹も後押しをした」とある通り、3名は同店を訪れて女性に圧力をかけ田邊氏の意向を伝えた。つまりは次の店は「小梅」にするということだ。松田部長(当時)らの訪問は、百条委員会で青山市議が指摘した。

百条委員会では「元交際相手」とまでは言及されなかったが閉店理由は「(女性個人の)トラブルが続いた云々」ではない。当の松田氏は現在、ビジネスサポートセンター(津市あのつ台)に転任。南氏が無事、退職し橋本理事は現在も本庁に在籍する。当時の状況や本書に関する所見を求めたが「係争中なので控えます」ということだった。

飲み食いに1千万円を使った…原資は?

「金」にまつわる話。これも避けて通れない。この記述に注目した。

ほぼ毎日で年間約二〇〇万。南勇二や橋本英樹を併せると、五年間で一千万円は使っている。夜を含め、彼らとの飲み食いに使った店は、全部田邊さんからいただきましたと証言してくれる。

5年1千万円という莫大な出費。しかし裁判でも生業について明確な説明ができず車の販売と親の遺産だけという懐事情でこれほどの大盤振る舞いができるものか? あるいは公共事業をめぐり坂倉水道から得た和解金700万円といった金銭は「収入」ではないのだろうか。

仮に職員が1千万円にも及ぶ供応を受けたならば確かに問題だ。ところが「原資」はどこから出たのか? この点については明確ではない。

一つ手がかりになるのはやはり本人尋問。ごみ箱補助金の使途について「22万円」を南、橋本、松下(正直)、岡部(真也)4氏との飲食費用に充てたと証言した。同じく本人尋問では相生町自治会会計の増田幸年氏に3万円渡したと証言。しかし本書では

補助金の一部は会計の増田幸年にも渡っている。補助金を出金する都度、必ず二~三万円の金を「すみません」と言って持っていった。

この点も証言とは異なる。確かに増田氏は会計だから事情聴取は受けたが少なくとも私的流用という証言は聞かない。

本来はこうした裏取りも三重タイムズが行うべきだが、田邊証言のみを根拠にした。書かれた側も反論しないだろう、という前提で制作されたと推測する。

なんとももやもやした読後感だが、単純に田邊氏に転嫁するというのも確かに無理がある。明らかな公文書偽造を役所側が看過してきたというのは「怖かった」では済まされない。結局は長年、津市と相生町を中心とした敬和地区の歪な関係が「自治会長事件」として露見したのである。

田邊氏をよく知る元幹部、元友人らから聞いた証言が忘れられない。以前も紹介したが

「田邊は“ 役所の連中は面白いで。頼みもせんことを勝手にやってくれる”と笑っていた」

このことは津市に限らず日本の行政全体に共通する「忖度文化」としかいいようがない。田邊氏を恐れたことは心情的に理解できるが反面、市側が必要以上の対応をしたのもまた事実。そういう風潮が読み解けるという意味では本書『津市役所の闇』は迷著であり、名著である。もし津市以外の自治体職員が本件を対岸の火事と考えたならば大間違いだ。なぜならもし勤務先が「津市役所」だったら、本書で名指しされ、LINEが晒されたのはアナタだったかもしれない。

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【津市相生町 自治会長事件】田邊哲司著『津市役所の闇』を ファクトチェック【後編】」への3件のフィードバック

  1. 匿名

    田邊氏と面識もない若い職員が処分されることに腹が立つ。
    市長選が待ち遠しい。

    返信
  2. 匿名

    市の職員の正義感の無さが一番の問題。
    役人にメスを入れる点では良い事案。

    返信

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