本サイトの過去記事、「高市早苗を支援した“安堵町第２の町長”」では自由民主党安堵町支部長、部落解放同盟安堵支部長である平山亘氏のことを取り上げた。平山氏は農地を不正に転用したとして2020年に懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。その後、平山氏は解放同盟支部長の役職は降りたものの、自民党支部長の役職に留まり、再び権勢を取り戻しつつあるという。

そして、その曰く付きの土地が外資企業の巨大物流センターになっているというので、現地を訪れた。

安堵町大字岡崎にあるホームセンターのコーナン、その向こうに見える窓の少ない建物が今年の4月に完成した物流施設、「LF奈良」である。アメリカ・シカゴに本社のあるC&W社による施設だ。なお、コーナンの土地も、元は平山氏が買い上げた農地である。

関西地方の不動産事情に詳しい、ある不動産業者によると、「平山亘は反社扱い。本人はヤクザじゃないけど、亡くなった兄が南一家の組長だったから。ただ、コーナンはそういう点ではゆるいから売れたんじゃないか」とのこと。

ただ、コーナンはともかく、LF奈良の土地はまさに農地の不正転用の舞台となった曰く付きの土地。外資と言えどそう簡単に売れるものではなかったはずだ。そこで土地の登記簿を確認すると、2016年に平山氏が土地を取得し、2017年には平山氏が社長をしていた平山観光株式会社の土地になっている。その後、2019年12月4日に奈良県内の不動産会社D社に移転し、2020年9月14日に東京都六本木が住所となっている「奈良中央ファシリティ2合同会社」を介して、現在は三井住友信託銀行株式会社の所有になっている。

D社に所有権が移転したのは、まさに農地法違反の刑事裁判の真っ最中。D社に移転したのは、直接平山氏の会社との取引をしないようにすることで売りやすくするためで、「奈良中央ファシリティ2合同会社」は、売却による利益を分散することで、税を圧縮するために一時的に作った会社だろうと先の不動産業者は推測する。そして、三井住友信託銀行の所有になったのは、C&Wが土地を所有するのではなく、銀行が所有した土地を貸し付けるという条件で土地の取得資金を調達したことが考えられるという。

LF奈良はテナント方式で、様々な物流会社が入居している。「安堵町大字岡崎367番地10」で検索してみるとそのことが確認できるだろう。

安堵町は高市早苗衆議院議員の選挙区なので、高市早苗事務所が土地取引に関与したのではないかとの噂もあったが、高市事務所は否定した。登記簿に名前のあるD社にも聞いてみたが「全く的はずれな話」ということだった。

ただ、取材の過程で分かったのは、平山氏が未だに自民党支部長の役職に留まっていることだ。行政関係者は次のように語る。

「本人は解放同盟の支部長を降りて、息子が継ぐみたいです。町役場では農業委員会とか町の役職も全部降りましたが、何も変わってないですよ。相変わらず町は何かある度に平山の顔色をうかがっています」

また、今年になって平山氏が町の役職に復帰しかけたが、町民からの抗議で町がそれを引っ込めたということもあったそうだ。

自民党関係者によれば、平山氏は高市氏が奈良1区から安堵町のある奈良2区に鞍替えした時点で、既に自民党安堵町支部長だった。有力な地元の社長という認識で、平山観光のウェブサイトに掲載された写真は、たまたま町内行事で一緒になった時の写真なのだという。

平山氏を自民党支部長から降ろさせないのかと聞くと、自民党の組織体制上、それはできないということであった。

そして、これはD社も引き合いに出していたのだが、平山氏は2016年に農業振興への貢献が認められて旭日双光章を受章している。叙勲を受けた者なら問題などないはずだという、水戸黄門の印籠のようなものだ。3年以上の懲役か禁錮に処せられたら勲章を剥奪されるが、平山氏の農地法違反事件はそれには該当しない。

農地法違反事件には、実はもっと多くが関与していたのだが、町は下っ端のおとなしそうな職員を差し出すことでお茶を濁した。結果的に平山氏本人も比較的軽い刑で決着した。有罪判決を受けた町職員も、犯罪だという認識はなかったという。そもそも、警察はなぜ、よりによってそのような微罪で摘発したのかと関係者は不思議がっていた。