佐久の部落を研究するうちに分かってきたことは、部落は本村に付随し、本村への人の出入りを監視できる場所に置かれることが多いことだ。今回訪れた場所も、竹田と隣の下平の入口となるような場所にある。

昭和初期には7戸との記録がある。『差別とのたたかい』では1967年の時点で12戸とされている。『差別とのたたかい』によれば、解放同盟長野県連の執行委員に根岸竹田の伊坂という人物がいたことが分かる。

他に参考となる資料としては、1978年に解放出版社から出された『被差別部落 ここに生きる人びと Ⅰ農山漁村』がある。これによれば、当時今井嘉太郎という人物が解放同盟竹田支部長だったことが分かる。この資料では10世帯34人の部落だと書かれている。

また、部落には伊坂建設という土建会社があり、住人が土方仕事をしていたことが書かれている。

しかし、貧しい部落という雰囲気はなく、豪邸がある。

いかにも長野県らしいデザインの家が建っており、ことごとく伊坂である。

竹田と下平という集落の入口にあることが分かる。立地からすると、監視の役目として置かれたことが推定される。伊坂という名字は高野町の伊早坂に通じるところがあるし、実は支部長だったとされる今井という名字も高野町と縁のある別の部落にも見られる名字である。

こちらが佐久市岸野集会所。例によって本当の名称は岸野同和対策集会所である。

中にこたつと座布団がある。このような集会所の需要について考えたところ、大学生時代に自治会館を借りて宿泊したことを思い出した。このような同和対策集会所も、もしかすると地元の人に頼めば格安で泊まれるのではないだろうか？

そして、ここにも白山神社がある。

鳥居が傾いて、草木に埋もれているが、これもまた味わいだ。

木札には平成14年に改修されたことが書かれている。

斜面にある部落のすぐ近くにセブンイレブンがある。そして、もう少しだけ先には高速道路のインターと、農協の直売所がある道の駅がある。申し分のない立地ではないだろうか？

これで見どころはひと通り巡ったかと思ったが、念のため周囲を歩いていると…

台地の下に墓が見える。

こじんまりとした納骨堂のある、今まで見たことのない形式の墓地だ。ほとんどの名字が伊坂なので、ここが部落の墓地であろう。

古い墓石も残っていた。禅定門、禅門尼という戒名が見える。いわゆる「差別戒名」らしきようなものは見当たらなかった。