【熱海市 土石流】“元所有者 ”天野二三男氏 インタビュー(後編)

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By 三品純

前回に続き熱海市伊豆山の開発業者、旧新幹線ビルディング元代表、自由同和会神奈川県本部前会長の天野二三男氏のインタビュー。後編では天野氏が関わった解放運動について、またマスコミが報じない天野氏の反論を取り上げる。特に太陽光発電施設(メガソーラー)の工事は注目してほしい。(タイトル画像は自由同和会31回全国大会。部落差別解消推進法を主導した門博文前衆議院議員の左隣に天野氏)

自民党との関係、伊藤玄勝氏について聞いてみた

2007年8月7日、熱海市議会建設公営企業委員会の温泉水道課長の答弁「新幹線ビルディングそのものがですね、同和系列の会社でございまして」によって伊豆山開発はタブー感が高まった。本来は議事録のごく一節に過ぎないが、答弁を忠実に報じた報道機関はただの一社もない。天野氏自身もマスコミが後手に回っていることを指摘したのは印象的だ。では天野氏はどのように「同和」と関わってきたのか。その原点に迫る。

ー天野さんご自身は部落出身なんでしょうか。

私は部落じゃないよ。部落出身者じゃないと同和団体をやってはいけないというのがおかしいでしょ。若い頃、東京に行った時に狭山闘争という運動をやっていたから“これはなんだ? ”って思った。そんな頃に伊藤玄勝(僧侶、自由同和会神奈川県本部初代会長)に出会って解放運動に関わることにしたんだ。独学したり、賎民研究の第一人者、網野善彦先生(歴史学者、1928~2004年)に師事したり、神奈川大学院でも人権問題について勉強した。働きながらだけどね。あの頃は立派な先生がたくさんいたなあ。

天野氏の恩師、網野善彦氏。毎日新聞2004年4月23日号

ー伊藤玄勝さんはどんな方でしたか。

伊藤さんは戦時工場で指を失ったんだよ。だからタバコを吸う時はこう(小指と親指で挟む)吸うんだ。もともと全日本同和会神奈川県連合会の事務局長をやっていたと記憶している。そういえば面白い事件があるから教えてやるよ。

ーぜひお願いします。

「みなとみらい糾弾事件」というのだけど知らない?

ー分かりません。いつ頃の話でしょうか?

平成2年頃だったかな。みなとみらいができた頃に全日本同和会が会場を貸してくれって申請したんだ。ところが「空いてません」って断られた。そこで別の団体名で申請したら今度は借りられた。だから「同和団体だから貸さなかった」ということで人権侵犯として神奈川県を相手に大糾弾会を開催したんだ。

ーそんな事件は初耳ですよ。

「みなとみらい糾弾事件」を報じる新聞記事。『朝日新聞 横浜版』1991年10月15日

これは新聞記事になったから調べてごらん。すごいものだよ。県職員200人近くを相手にしたからマイクを使ってね。「夜道に気を付けろ」なんて怒号も飛び交った。ちょうどその時期に、ゲンちゃん(玄勝氏)が不祥事を起こした。

ーどんな不祥事でしたか。

住宅融資は分かる? いわゆる同和融資がまだ盛んな時期でね。それ以前は無利息で、みんなバカバカ借りたから利息が2%になったの。といっても住宅金融公庫の場合は9%だよ。すごいだろ。宝くじに当たったようなものさ。融資申請すると団体が手数料をもらうという流れなんだけど、だいたい一件につき約180万円だと聞いたな。それをゲンちゃんがポッポ(着服)した。ゲンちゃんのポッポ事件だ(笑)。それから(伊藤氏と)対立する人が会長になった。つまり権力闘争に負けて、ゲンちゃんが全日本同和会を出て神奈川県同和会を作ったんだよ。

ー自由同和会神奈川県本部の前身ですね。

それから神奈川県同和会から自由同和会(当時、全国自由同和会)への加盟問題になったんだ。加盟が認められるまで一年半ぐらいかかったんじゃないかな。神奈川県内では全日本同和会の力が強すぎて本来、全国自由同和会は全国対応団体なのに神奈川県は対応していないんだ。だからうちは県からの助成金や融資制度はできなかった。伊藤玄勝も知名度はそこそこあったけど、集金能力はないからオレが活動資金を貸した。原資? そりゃ(天野氏の)事業収入だね。全国的に組織力を拡大しないといけないということで、バスをチャーターして東北地方のキャラバン隊をやったよ。善波学(監査)や古谷誠(副会長)がまだ20代の頃だ。青年部の連中を集めて自民党本部から出発した。

ー自民党というと土石流が起きた後、これまで接触された国会議員も沈黙しているようですが冷たいものですね。

そんなケツの穴が小さいことはいわない。誰がどう離れてくっつくかなんて自由だから。これからいろいろ証明していけばまた人が寄ってくるよ。

ー甘利明さんも自由同和会神奈川県本部と懇意でしたか。

甘利さんは自由同和会というより伊藤玄勝と仲良くしていたけど、オレはよく知らないんだよ。いろいろな噂は流れてきたけど“ それは別にいいじゃないか”という程度のものだった。

ー甘利さんにお金を渡したという右翼団体幹部の一色武氏はご存知ですか。

それもよく知らない。誤解されているんだけど、オレはヤクザや右翼と関係していないよ。だってそんなモノを使わなくても自分で問題解決できるからね。だけど(民族派右翼の)大石恭輔さんとは仲が良かった。でも別に何か頼みごとをするわけじゃない。

ーそれから八木橋聖一事務局長は自民党本部で紹介されたと聞きましたが?

それも違うよ。八木橋の方からオレんところに来たんだ。インターネットに詳しかったり役立ちそうな男と思ったから仕事をしてもらったんだけど。

ーなるほど。話を戻しまして自由同和会神奈川県本部のことですが、会長になったのは? 実は私は天野さんが反伊藤派の支部をたくさん作って解任したと元社員から聞いたのですが。

(関係者が声をかける)記事を拝読していますが、その点だけは違います。伊藤さんの不祥事が原因でしたので。

会長なんて金ばっかりかかって大変だぞ。年間約600万円は使っていた。本来は小谷(裕明)副会長が会長になるはずだったけど、中央本部が“神奈川なら天野がいいじゃないか ”という話になった。ところがその頃、人助けのつもりが御殿場にトラブルに巻き込まれて活動自粛中だったんだよ。このままだと神奈川は廃止になるかもしれないから一時的に「会長代行」という形をとった。一年半後に「役目は終わった」と思って辞表を出したが理事会が受け付けないんだ。そこで代行をとって「会長」になったというわけね。

ー中央本部では総務委員長を務められました。以前もお聞きしたんですが、自由同和会のある関係者が「うちは熱海市と長野県に投棄できる場所がある」と周囲に漏らしているという話を聞きましてね。この点についてもう少し詳しく教えてもらえませんか。

熱海市ってことはないよ。長野なら分かるな。風間かざま(長野県長野市風間)だよ。“かざまかふうまかどっちだ? ”といった記憶があるね。地権者名簿をもらったらやたら風間さんという苗字が多かった。出資したけどあの計画はどうなったのか分からない。出資金を返してもらいたいよ(笑)

ー関西地方のSさんという役員が音頭をとったという話を聞きましたが違いますか。

違う。あれは中央本部が中心になってやったはずだ。

メガソーラーには甘い行政とマスコミ

弁護士らを交え独自に検証を続ける天野氏。特に太陽光設置工事を重視していた。

以上が天野氏の“ 同和運動史”である。天野氏は同和を利用した行政交渉を否定する。だがここまで行政の対応を鈍らせるのは「同和」以外の要素があるだろうか。そうした疑問は払拭できない。

著者はこれまで天野氏の不可解な土地取引、疑惑を報じてきたが一方で土石流事件について行政の姿勢やマスコミ報道に疑問を持っている。現在、熱海市土石流と並行して「宗教法人平和寺本山」(伊豆市)の不法投棄事件を取材しているが、関係者から入手した是正措置や行政指導の記録をみると熱海市土石流発生後、静岡県の指導が非常に厳格化しているのだ。

つまり外部に「行政の指導不足」との指摘を受けないように、と県が躍起になっている可能性がある。もう一点、不可解なのが太陽光発電施設の設置については行政の検証も報道も非常に甘い。そういう視点で以下を読み進めてもらうと、問題点が鮮明になるだろう。

ーところで今、複数のメディアからインタビューを受けていると思いますが、私は違和感を抱いています。

なにが?

ー事実関係に触れていなくて「私はやっていない」とか「知らない」とかそんなのばっかりでしょ。天野さんが具体的に何をいっているのかさっぱり分からなくて。

そうなんだよ。あれじゃあこっちが言い訳ばっかりしているみたいじゃないか。NHKもSBS(静岡放送)も「第2編、第3編で放送する」と説明したけど、放送していない。これじゃあ印象崩しだよ。

ー自分が疑問を抱くのはメガソーラーの設置工事なんです。

そこを聞いたら驚くぞ。行政はひっくり返る。

ーその点について取材の時に説明や反論をしましたか。

してるよ。だけど書かないからさ。まず簡単にいうよ。もともと伊豆山造成工事について実行行為者は千場せんばね。造成工事の未完成については契約書に明記して麦島善光氏に売却した。その後、8年間、麦島氏は行政から是正工事を求められながらやっていなかった。ところが是正しないうちにグランド工事を始めた。しかもこのグランド工事の許可は見当たらない。それどころかソーラーの許可を0・81haで申請したが、実際に行った森林伐採と土削り工事はそれ以上行われている。ではその木はどこに行ったのか、またその泥は私が計測をすると5万m3に達するが、その泥はどこにいったのか。それが土砂崩壊につながったというのが結論です。

ーなるほどやはりその部分を注目していましたか。あのグランドが謎なんですよ。都市計画法の開発許可や、森林法上の林地開発許可が必要なのに指導が行われていません。

それから太陽光発電の設置工事を見てくれ。2017年1月10日だ。「市が現地調査を実施。上記届出に記載されている伐採期間前に、施工者M社が工事に着手していたことを現地にて確認したため、市が、伐採の中止を指導」とあるだろ。

ーはい。

次に同年5月26日だ。「市が現地調査を実施。太陽光発電施設の設置工事の施工者M社が当該行為による発生残土について、伐採届を提出することなく付近の沢に捨てていることを確認」とある。1月に伐採中止を指導といっておきながら5月まで何をしていたんだ? つまり1月の段階で“ もう工事をやっちゃえよ”ということじゃないか。

ー本来は森林法違反のはずですがね。

是正、是正ってオレのところにはよく来たよな(笑)。そういうことを指摘するメディアはほとんどないよ。長周新聞ちょうしゅうしんぶん「メガソーラー、森林伐採…山の乱開発が土砂崩落を誘発 熱海市伊豆山の土石流災害の背景にあるもの」はいい記事だった。ぜひ読んでみてくれよ。

ーありがとうございました。

昨年7月以来、手探りで始めた熱海市土石流取材だが、初めて天野氏に面会することができた。今後、百条委員会も控え新事実が浮かび上がるだろう。しかし注視したいのは、行政が関わる事件では特定の人物に責任転嫁する事態が起きることだ。そうではなく事実の解明に向けて今後も取材を続けるのでぜひ注目していただきたい。

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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【熱海市 土石流】“元所有者 ”天野二三男氏 インタビュー(後編)」への1件のフィードバック

  1. 匿名

    地元紙、静岡静岡では本日(2/26)朝刊のシリーズ記事「残土の闇・第7階」で、初めて「同和」というキーワードを使用しています。地元紙なので、もっと頑張って良い記事を書いて欲しいところです。

    返信

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