2020年8月から11月に行われた大村秀章愛知県知事へのリコールで愛知県選挙管理委員会に提出された署名の約8割に不正があった事件。署名を主導した「愛知100万人リコールの会」元事務局長の田中孝博被告の公判が今日、名古屋地裁で2年ぶりに開かれる。沈黙を貫く田中被告の活動当時を追跡調査した。
「反日プロパガンダ」罪作りの 企画展
2019年に開催された「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が「反日プロパガンダ」だとして愛知県・大村秀章知事に責任を問う声が起きた。
2020年に高須クリニック院長・高須克弥院長らの発案で「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」が結成。県下でリコールのための署名活動が開始された。しかし大規模な署名偽造が発覚し、同会・田中孝博事務局長(当時)らが地方自治法違反容疑で逮捕されるという悲惨な顛末だ。
あいちトリエンナーレ、またリコール問題については当サイトも過去、報じている。
「あいちトリエンナーレ2019」は慰安婦問題を象徴する少女像が出展され総監督・津田大介氏らの政治イデオロギーが込められていた。展示された「平和の少女像」は「SNS推奨」マークがつけられた点からしても炎上狙いは明白だ。同展は「情の時代」と銘打ったものの、展示物は明らかに挑発狙い。
「あいちトリエンナーレのあり方検証委員会」が「個人の解釈によるSNS投稿は、さらに作品の意図とは無関係な、美術に関心のない人々を巻き込み、彼ら個人の思想・心情を訴えるために利用され、いわゆる「炎上」を招くことにつながった」と報告している。
保守層が怒るのも無理はない。
とはいえ到底、実現不可能な県知事リコールという手法を選ぶ必要があったのか。当サイトも指摘した通り、保守派によるフェスティバルと化してしまった。
加えてリコール活動が特定個人の選挙活動、名簿の個人情報狙いだったという証言も見逃せない。何より署名活動をリードするはずの田中被告が自身の選挙活動に利用したと考えられる。
謎の 名駅前駐車違反
捜査段階から沈黙を貫き、2021年9月の初公判でも真相を語らなかった田中被告。改めて当時の活動を追うと不可解な行動が見えた。その一つが2020年10月、名古屋駅前の駐車違反だ。
この前後についておおまかな流れをまとめておく。
●8月25日、リコール署名活動が開始。
●9月25日、KKRホテル名古屋で記者会見を開催。
同日、高須氏、百田尚樹氏、デヴィ・スカルノ氏が名古屋駅前で大村知事のリコールを訴えた。
●10月15日時点で集まった署名は18853筆。
●10月18日、田中被告が「約38万7千筆の署名が集まった」とリコールの会事務所で虚偽報告。
同日深夜、署名水増しのための名簿をワゴン車に乗せて田中妻、次男が佐賀市に出発。
●10月25日、首長選があった4市1町を除き署名活動が終了。
佐賀市出発の行先とはいわゆる「佐賀ルート」と呼ばれる署名分の作業現場。名古屋市内の広告代理店がアルバイトを募集し佐賀県青年会館で署名偽造の作業が行われた。
当初、勢いが良かった署名活動だが、あまりにもハードルの高さに受任者、ボランティアのモチベーションが下がっていく。このため同会の末期は“グダグダ ”。
「熱心なボランティアが姿を消す一方でリコールの会事務所で“ガラの悪い ”若者がたむろするようになった」(元協力者)
こんな状況だから結局、街頭で集まった署名はわずか18,853筆。提出期限11月4日を前にしてこの数字はショックも大きかったことだろう。
一方、10月末から田中被告の行動が不可解だったと関係者は証言する。その一つが名駅前での駐車違反なのだ。
佐賀で何らかの 緊急事態が起きたか?
10月23日、田中氏はスタッフの車を借りて外出していたという。元関係者は「名駅(名古屋駅)で突然、車を乗り捨てて鉄道を使ったのでしょう。持ち主のところに放置違反として警察から納付命令書が送られてきたのですが、田中氏に理由を聞いても説明はありませんでした」と明かす。
放置した場所は名古屋駅前だ。駅構内の待ち合わせスポット「金時計」は目前。名古屋市に土地勘がある方ならばお分かりだろう。こんな場所に車を放置するというのは普通では考えられない。
先の関係者はこう推測する。
「周囲では(名簿の作業をする)佐賀で緊急事態が起きたため田中氏自らが現場に向かった可能性があります」
作業上のことで指示に行ったのか、または佐賀での名簿の偽造作業を知らなかったので確認に行ったのか、複数の証言があった。しかし田中被告の立場で署名偽造を“ 知らない”というのも考えにくい。とにかくこの時期に何らかの異常事態が発生したようだ。
10月27日に 大阪で 自動車事故
不思議な事態は続く。先の関係者が差し出した書面は驚く他ない。同年10月27日に田中被告は大阪府内で自動車事故を起こしていたのだ。
ところがリコール活動で大阪は無関係だ。リコールの会事務局長としての立場で大阪にいる理由がない。あるとすれば「選挙活動」だろう。
同日には大阪都構想に関する討論会、維新の支部長先任者発表などが行われた。田中被告も不正が発覚する前は日本維新の会衆議院愛知5区選挙区支部長だ。自身の政治活動、選挙関係で大阪にいたというのが専らの見方である。同時期は署名数が足らずに関係者にとっても絶望的な状況。それでも必死な受任者たちがいた。そんな中で田中氏の動きは妙だ。リコールの会が田中被告自身の選挙活動の延長だったとすれば悪質すぎる。
「あの人(田中被告)はあいちトリエンナーレなんてなんとも思ってないですよ(笑)」(元サポート役)といった関係の証言は多々、聞いた。こうした田中被告の姿勢はリコールの会頓挫を象徴するようだ。
昨年3月に田中被告次男が懲役1年3月、執行猶予3年の有罪判決、妻は不起訴処分。すでに世間の関心も薄れたが、今からでも田中被告には当時のことを隠さず証言してもらいたい。
https://www.chunichi.co.jp/article/787605 今日二年ぶりに裁判が。
#88f8be67e1724259177faa0b4be68988
田中被告は確か大阪維新推薦で選挙出馬の予定があったはず。となると大阪に居る理由が出来る。