静岡県で盛り土の悪夢が再び! 台風15号の影響で24日深夜、浜松市と掛川市で土砂災害が発生。しかも浜松市の土砂崩れは家屋敷地の盛り土が原因とみられ約3世帯が被災した。盛り土家主はごく普通の高齢女性…。数年前から浜松市に相談が寄せられたが、住民らの不安は的中してしまった。
緑恵台周辺は 岩盤だから自然災害は ありえない!?
盛り土被害は全国的な難題、課題である。それにしても静岡県内では盛り土由来の土砂災害が多すぎやしないか。今回の被災地は浜松市天竜区緑恵台。土砂崩れの原因は盛り土の可能性大だ。昨年の熱海市土石流の原因解明はまだ半ば。その最中の発災だから改めて盛り土の危険性を示したのである。
熱海の災害を受けて昨年、国交省は全国の盛り土調査を実施したが、再び被害を出してしまった。
一部では被災地・天竜区緑恵台周辺にメガソーラーが多数、設置されていることから発電施設と盛り土の因果関係を指摘する声も起きた。
山を削り覆うように乱立するメガソーラーと盛り土は“セット ”のイメージが強い。
当初、緑恵台もメガソーラーとの関連性を勘繰ったが事情は異なった。
浜松市天竜区。元は旧天竜市など旧北遠5市町村が浜松市に吸収合併された地域だ。その名の通り付近には天竜川が流れる。その昔は「暴れ天竜」と恐れられ度々、水害を招いた。明治の実業家、金原明善は治水工事に尽くした人物だ。現在でも郷土に尽くした偉人として顕彰されている。
昨今の企業、実業家が山を削りメガソーラーを乱造することを考えると一層、金原の偉業が引き立つ。
緑恵台は遠州鉄道西鹿島駅から北に約3・5㎞の位置にある高台の住宅地だ。浜松市中心部からはかなり離れる。
緑恵台の入り口付近に来るとメガソーラーが視界に入った。その直下には住宅があるがもし地滑りでも起きたら…。不安ではないのか。しかし地元住民の反応は予想外だった。
「山が崩れる? まずありえませんよ。この辺りは岩盤だから地震でもたいして揺れません。だから(土砂崩れは)自然災害とは考えにくいです」
蛇行した道を歩きながら山の斜面を見ると確かに岩山ということが分かる。被災地付近の住民はこう話す。
「10年前に土が盛られたと報道がありますよね。でも5年ぐらい前まで土砂を積んだトラックが来て、リフトから直接、土を落とした記憶があります。車両のナンバー? それは控えていませんが、藤枝市の業者という話を聞きました」
被災者が語る 恐怖の一夜
被災した家屋は3軒。流木が壁に当たった家屋もあるから正確には4軒ということになる。土砂が寸前で止まり家屋自体は無事だった比嘉薫さん夫妻が現場にいた。夫妻が語る発災当時の状況はまさに悪夢。
「24日午前0時15分頃、今まで聞いたことがない山鳴りと衝突音がしました。表に出ると隣の佐藤さん宅が崩れ道路まで押し出されていました」
比嘉さんの自家用車にも土砂や隣家の車が押し寄せた。家屋に土砂が達しなかったのは不幸中の幸いとしか言いようがない。
すぐにレスキュー隊を呼んだが救助を待つ余裕はなかった。
「佐藤さんの家屋内に9歳のお子さんが残されていました。もう“ 死を覚悟”で崩れた家屋に佐藤さんと入ってみると流れてきた大木とテレビ台にお子さんが挟まれていました」(比嘉さん)
まだ土砂が動くような音が聞こえてきたという。「シュー」とガス漏れの音がする。その恐怖は計り知れない。
レスキュー隊の到着は午前1時半。発災から約1時間後だ。レスキュー隊も最善を尽くしたであろうが、到着の遅さは否定できない。
救出活動が終了したのは午前2時。警察からは「危険だからここから離れた方がいいです。ただし警察としては指示はできません」との説明を受けたという。
倒壊した佐藤さん宅の上に、もう一軒別の佐藤さん宅がある。いずれも住むのは無理だ。
マスコミ的な行政の吊し上げは控えたいところ。ただし“ 杓子定規”な対応と思えてならない。
「市と区の人が訪問したので“助けてもらえることはありますか ”と質問すると“ 今すぐそういうこと(支援が)あるわけではありません”という回答でした。避難場所として市施設を提供できると言いますが、会議室のような場所なんです。調理器、寝具、日用品もないから過ごすのは無理ですよ」(比嘉さん)
そこで自治会長の仲介で空き家を借り佐藤さんらは避難しているという。倒壊した家屋が再び崩れる可能性があるから、早々に撤去工事が必要だ。それに雨が降れば、二次被害も起こりえる。
ところが
「市からは“民有地だから立ち入ることができません ”との説明でした」(比嘉さん)
という対応も疑問だ。311東日本大震災でも同様の問題が起きたが、家の柱一本でも「財産権」が生じるため行政の撤去作業は容易ではない。法律の壁は厚い。
とは言え、多くの災害を経験してもこうした問題が解消されていないのだ。
「残土受け入れます」看板を 設置した人物とは
緑恵台は岩盤が強く土砂崩れの可能性は低いという。まだ発災原因について公的発表はないが、盛り土が原因なのは火を見るよりも明らか。
被災家屋上部に崖がある。その上の家屋敷地(写真参照)の盛り土が崩れたという。本来の敷地はコンクリート擁壁までだった。
近隣住民はこう明かす。
「鈴木さんという一人暮らしのおばあさんが“敷地を広げたい ”ということで盛り土を始めたのです。3年ほど前までは“ 残土を受け入れます”といった看板が掲げられていました」
しかし自治会長らの要請もあり看板は撤去。浜松市にも相談が寄せられたが、盛り土は事実上“放置状態 ”だった。
先述した通り、盛り土と言えば“背景がある ”人物が関与しがちだ。有り体に言えば反社組織とも無縁ではない。
ではこの高齢女性も何らかの事情持ちか?
「気さくなおばあちゃんという感じ。ホンダのビートを乗り回す元気な方でした」(同前)
土の搬入自体は止まったが、盛り土の危険性は残る。熱海市土石流の影響もあり、地元では不安視する声もあったが案の定、最悪の事態が起きてしまった。
ところがこの高齢女性は現在、健康上の理由から介護施設におり、家屋は親族が管理している。女性宅を訪問したが、門が施錠されており気配がない。
土砂崩れの原因が同家の盛り土だと特定された場合、果たして責任、補償能力があるのか? 被災者が公的支援の対象になるのかそれも未知数だ。
加えて個人宅が残土受け入れとはどのような手続きが行われたのか。また復旧工事についても聞いてみたい。
対応に当たる天竜区役所まちづくり推進課土木管理グループによれば
「現在、警察の捜査の関係上、詳細は控えさせて頂きます」
との説明だった。
加えて盛り土の行為者も気になる。熱海市の場合は神奈川県内の業者による搬入が指摘された。しかし都内、神奈川県内の業者が土砂や建設残土を浜松市天竜区まで運搬するのは考えにくい。となると静岡県中部、西部の業者の可能性が高まる。
“日本一厳しい盛り土条例 ”という方針の下、今年7月1日から新県土採取等規制条例が施行されたが、過去の盛り土には無力だ。
被災世帯の救済策はもちろん県内の危険個所を再度、調査・点検が必要だろう。無論、役所特有のアリバイ仕事ではなく実効性を伴うやり方で、だ。
Softbankですね。
開示請求の結果をお楽しみに。