「ポリティカル・コレクトネス」が喧伝されて以来、「朝田理論」に着目する人が散見される。特にLGBT政策が推進される中で「朝田理論」を引用し、現況を危惧する当事者も少なくない。朝田理論とは、部落解放同盟中央本部第2代中央執行委員長・朝田善之助が構築した概念。「差別か否かは被差別者が決める」「部落民にとって不利益なことはみな差別」という論理で部落解放運動の精神的支柱と言ってもいいだろう。そして部落問題に限らず朝鮮総連、朝鮮学校支援者、フェミニスト、LGBT…この種の活動家にも波及したのではないか。人権闘争においては「遺産」というべき概念だ。しかもこの人物、「理論」だけではなく「現ナマ」という遺産も残していたようだ。それが和歌山市の子ども会補助金である。
和歌山市の子ども会はジュニア解放同盟
ご承知の通り、当サイトは和歌山市の芦原地区連合自治会長事件を報じてきたが、同時に同県政・市政にも関心を持っている。特に子ども会交付金については不透明な点が多く、長らく県・市議会でも追及されてきた。昨年、著者も関係文書の情報公開を行ったところ黒塗りで一部公開という結果。ところが市内の読者、メディア関係者らから「情報公開の方針が変わったから再度、請求してみては?」「ブロガーが一部を公開している」との意見が寄せられた。
紹介された和歌山市公文書データベースというサイトを見ると確かに平井子ども会分は領収書等、かなり詳細な資料が公開されていた。
資料を見てまず驚いたのが平井子ども会会長名が「池田清郎」と明記されていたこと。この人物、池田清郎部落解放同盟中央執行委員・和歌山県連合会執行副委員長だ。写真の文書は子ども会交付金1017万1278円について返還の申し入れだ。昨年、地区名は黒塗りだったが市政関係者によれば
「ご存知と思いますが“ 特別な地域を類推すること”を理由に長らく子ども会の地区名は非公開でした。しかし2月、報道でもあった子ども会交付金の不正使用の一件でこれ以上、隠せないとなったのです」
と内情を明かす。
公金を投じながら「非公開」という理屈は「矛盾」という他ない。裏返せば「非公開」にしなければならない差別的な事業を市が率先して行っているということになる。
先の人物が指摘した不祥事の概要は以下、わかやま新報記事を引用する。
https://rokaru.jp/news/47131 わかやま新報2月20日
子ども会交付金が長年、不正使用されてきたのだ。長らく疑問視されても、全くメスが入らなかったタブー案件。5年という長期間とは言え数百万円を要する講師や人権教室とは「さぞや特別な指導」と思いきやこれが実態がなく架空請求というわけだ。また職員の処分について冷ややかに見るのは市政ウォッチャー。
「市は返還させてから不祥事を発表したんですよ。すでに返還済みという理由で処分を減じようという訳だから呆れますよね」
妙なところで知恵が働くのもまた行政。しかしそんな機転が利く和歌山市が不透明な請求を見抜けなかったのか。領収書や伝票一式を見るとさらに驚く。先述した通り平井子ども会は1017万1278円の返還が求められたが、その内訳が興味深い。
和歌山市子ども会はジュニア解放同盟
票の見方は左の「領収書差替金額」が請求額。それに対して使途が認められたのが「領収書あり対象経費」というわけだ。平成25年分を見てもらいたい。一円たりとも認められなかったということになる。その他の年度は19~24万円分の領収書は認められたようだが、その大部分が返還対象になっていた。
では同年の内訳をみると
狭山学習会、狭山中央集会、これが子ども会の活動? どう見ても「ジュニア部落解放同盟」という存在だ。しかも子ども会単位で解放新聞が20部、部落解放(雑誌)が5部が必要とは到底思えない。子ども会の名を借りた解放同盟への協力金というべきものだ。これが2017年(平成29年分)までほぼ同一内容の決算報告である。逆に気になるのはどの項目ならば認められたか、だ。例えば狭山集会、人権学習会の動員の場合、県内は認められて、県外への参加経費は認められない、このような違いがあるのだろうか。
平井子ども会を管轄する平井児童館館長によれば今年から配属されたから分からない、とした上で「おそらく県内外ということではありません」との説明。いずれにしても明確な基準があると思えないが…。
それから奇妙なのは領収書だ。
解放新聞の領収書を見ると「解放新聞社和歌山市局支局長 藤本哲史」とあるが、同氏は部落解放同盟和歌山県連執行委員長。そして反日ビラを配布していた(和歌山市、解放同盟に 忖度して 国旗国歌拒否教育を容認! 参照)杭ノ瀬子ども会の会長である。子ども会を媒介した解放新聞への協力金としか思えないのだが、もう一点注目してもらいたいのは「額」と「書式」だ。
例えば人権啓発研究集会の参加費領収書を見ると、解放新聞領収書といい発行者情報が妙にリアルではないか? この参加費2名8千円は間違いないと思う。なぜなら弊社両名も何度か参加したことがあるから。全国大会の場合、おおかた1名4千円だ。一方、解放新聞の領収書の端数が税込みなのか端数まで表示されている。
館内のクリーニング・修繕の場合「消耗品を購入した」という割に額がとてもキリがいい。
地区見回りアドバイザーに40万円が適正なのか理解に苦しむが、これまた妙にキリがいい数字。いかにも表計算ソフトで作成した急ごしらえ風の領収書だ。ならばその講師的なアドバイザーとは一体誰のことか知りたいものである。
さて同市教育委員会に説明を求めると「報告通りです! 会議が始まるから切りますよ」という具合。昨年から和歌山市に対して取材を続けているがあまりにぶっきらぼうな対応だった。
また解放同盟和歌山県連に対して池田氏からの説明を求めたが「今、裁判中でしょ! …駄目ですわ」と取材拒否。確かに示現舎と解放同盟は係争中にしても、子ども会の話は別問題のはずだが…。
このような取材結果を市政関係者に伝えたところ意外な人物の名前が出てきた。
「和歌山市の子ども会は歴史的に解放同盟が活動の受け皿になると決まっているんです。朝田善之助さんの時代に解放同盟が和歌山市の子ども会を運営することになりました。当時の朝田派の影響力は圧倒的でしたから、市も認めざるを得なかったのでしょう」
杭ノ瀬子ども会会長が藤本委員長、平井子ども会会長が池田副委員長ら幹部が会長を務める辺りも“ そのまんま”としか言いようがないが
「鳴神の会長は解放同盟ではないと聞いていたけど、部落解放企業連合会(企連)の方でした。同じことでしょって(笑)」(同)
というケースも。さらに朝田派時代から続くということは
「たまたま5年分が発覚しただけの話。それよりはるか前から不透明な公金が投入されていたのは明白です」(同)
という指摘は単なる推測の域ではあるまい。それにしても朝田派が暗躍した頃の制度を今現在まで垂れ流してきたのは運動体以上に市の怠慢という他ない。当時、熾烈な要求闘争があったのが目に浮かぶようだ。和歌山市子ども会、まさに朝田善之助の大いなる負の遺産である。