1921年3月の『香川県社会事業概要』によれば「池田村大字池田字北條」に44戸、270人の古村があった。1921年刊の『小豆郡誌』は、大正4年(1915年)末の「池田村大字池田北條」を49戸、298人と記している。
現在地は香川県小豆島町池田にあり、「浜条」の一部である。海に近い古村には、解体間近の古い公営住宅と、新しいアヴァンギャルドな公営住宅が建っている。

畑の向こうに住宅と山並みが見える。集落に入る道の脇には、オリーブの木が植えられている。
ところで、最近不可解なことがあった。国立国会図書館デジタルコレクションの『香川県社会事業概要』と『小豆郡誌』が突然、国立国会図書館内限定資料とされてしまった。ついこの間までログインなしでも見られた気がするのだが。
遂に国立国会図書館まで魔の手が伸びたのか。

『小豆郡誌』には「細民部落」という章があり、こう説明されている。
古来穢多ト称シテ(第三章寛永七年第五章天保九年家数参看)一般士民ノ相歯セザル特種部落アリ一種卑賤ノ業ヲ営ムヲ常トス明治維新ニ際シ穢多非人ノ称ヲ廃シ一般臣民ト等シク国民ノ権利ヲ附与セラレ誠ニ聖代ノ余沢ナリ然ルニ従来賤業ニ慣レ且ツ貧困裡ニ暮セシ彼等ニ在リテハ斯ノ如キ恩遇ニ浴ストモ遂ニ向上発奮ノ域ニ進ムハ素ヨリ不可能ノコトタルノミナラズ一般士民モ直ニ同等ノ交際ヲナスヲ欲セザルモノノ如シサレバ自他倶ニ新民ト称エテ陽ニハ一般臣民ト隔テナキカ如キモ陰ニハ旧来ノ冷遇ヲ与ヘテ改ムル所ナカリキ爾後何時トハナク新民ノ名漸ク消滅シテ特殊部民ト称セシガ近来細民トシテ取扱ヲナスニ至レリ
抑往時穢多ヲ蔑如セシ由来ヲ繹スルニ或ハ外国ヨリ帰化セシ人種ナリトノ説アルモ淵崎村黒田部落ニ蔵スル古文書ニ左ノ記事アリ

「淵崎村黒田部落」のクエストは次回なので、続きは次回ということにしておこう。

ここも早くから同和事業がされたのだろう。かなり古い団地形式の改良住宅である。人気がない上に、火事の形跡まである。

小豆島町では、改良住宅は古いままにしておくのかと思ったが、近くの空き地では何かを建てるためなのかボーリング調査をしている。その向こうには何やらアヴァンギャルドな建物が見える。


ストリートビューで2年前の状態を見ると、ここには改良住宅があった!過去写真だと香川県特有のソーラーニコイチも見える。まさに今、古い改良住宅を新しく建て替えている最中なのだ。

ところで前回、橘の古村の記事を見た方からお便りを頂いた。以前、瀬戸内海で大規模な密漁事件があり、海上保安庁から大勢の捜査員が橘部落を急襲して、密漁者を一斉逮捕したことがあったという。古村では潜水密漁を生業としている者がおり、エンジンを強化した船に潜水具を積んで瀬戸内海各所に出かけ、ナマコ・アワビ・サザエを密漁し、私がクエストした橘のあの海岸近くの業者が買い取って関西の市場に卸していたという。

こちらは「小豆島町 城山会館」。同和施設である。町の隣保館条例に、池田1123番地3の隣保館として載っている。

密漁の件を調べてみると本当だった。2020年(令和2年)第六管区海上保安本部10大ニュースに、橘地区の悪質ナマコ密漁グループへの取り締まりを敢行したとある。暴力団との関連も書かれている。小豆島の古村と言えば暴力団が多いと聞いた話ともリンクする。普段は土建屋をやって、暇な時に密漁をしていたようである。

最初は民間の団地かと思ったのだが、公営住宅である。考えてみると、ここに民間でこのような住宅を建てても採算が取れないだろう。

こちらは北条教育集会所、町の固定資産台帳には池田1192-4の施設として記録されている。

この施設については、その設置の経緯について1980年代に共産党が批判している。部落問題研究所『部落』415号では、池田町の部落の住職が、寺を取り壊して仏間を併置した教育集会所を建設しようとする部落解放同盟の要求を受け入れ、これに反対した檀家には法事や葬儀を勤めることを拒否しているという問題が提起されている。
当時は部落解放同盟がいわゆる「町田発言」や「差別戒名」を足がかりに宗教界を糾弾する一方で、解放同盟が宗教的な差別に加担しているのではないかという文脈である。

ここに祠があるのは、寺があった名残だろう。仏間も見たかったが、集会所は閉まっていた。

隣には稲荷神社がある。おそらく、境内社だったのであろう。

これはいかにもバブル期のデザインの住宅だ。ただし、改良住宅ではなく、教職員住宅である。

近辺の住民に聞いてみると、今は浜条と言っており、北条とは言わないという。ただ、浜条全体が古村ではなく、その一部が古村という関係のようである。
ここでも、古村については皆が知っているが触れてはいけないという感覚をひしひしと感じた。


アヴァンギャルドな住宅は既に2棟あるようで、さらに増えるようである。



町の改良住宅管理条例施行規則には、池田地区の住宅として昭和46年度(1971年度)から昭和58年度(1983年度)の建設分が載っている。形式から見ると、これは昭和50年代初頭のものだろう。


その改良住宅団地の一角に、仮設トイレと工事の看板が。


看板には「住宅の解体工事を行っています」「北条地区改良住宅解体工事(D工区)」とある。工事期間の表示は令和8年11月30日まで。
町が4月1日現在で公表した2026年度の工事発注見通しにも、同じD工区の解体工事が載る。対象は補強コンクリートブロック造の2階建て4棟、8戸で、建物と外構などを解体する計画だ。資料では第1四半期の入札、工期約5か月の予定とされている。現場の看板によって、この工事が実際に進められていることが分かる。
人気がないと思ったら、すぐに解体されるということなのだ。

住宅のすぐ先は砂浜になっている。


平日に探訪したのだが、学校帰りの子供なのか、友達を連れて釣り竿を持って突堤を歩いているのが見えた。

仕事さえあれば、住むには良い場所なのだが、小豆島では古村に限らず高齢化しているのみならず、とにかく仕事がないそうである。




>香川県特有のソーラーニコイチ
矢崎総業の太陽熱温水器「ゆワイター」かな?
西日本だから朝日ソーラーかも?
「朝日ソーラーじゃけえ、のう」by菅原文太