離党者が相次ぐ東京維新。今度は港区議会の榎本茂、白石さと美、根本ゆう3区議が先月23日に離党していたことが判明した。榎本区議は昨年6月の区長選で新人候補だった清家愛区長を当選に導いた実績がある。しかし東京維新側は「無所属候補を応援したこと」を理由に同区議を厳重注意したこともあった。(写真は阿部司東京維新代表、本人のXより)
崩壊寸前か東京維新 大田区議、渋谷区議が離党 そして…
春は卒業シーズン。東京維新でも党を〝卒業〟していく議員が続出している。昨年12月、鈴木妃呂子大田区議が党内でセクハラを受けたとして離党したことも記憶に新しい。
直近では渋谷区議会のWebサイトによると4月1日、星野愛区議が維新区議団から自民党会派入り、また同維新区議団の久世恵美区議が無所属になったことを発表。その結果、「日本維新の会渋谷区議団」は会派が消滅した。
2023年の統一地方選で東京維新所属議員は増加したのが一転、議員たちが見切りをつけ始めたようだ。
そして今度は港区議会でも離党者が出た。ある党重鎮によれば「港区保守系議員団」(5名)で日本維新の会所属の榎本茂幹事長、白石さと美区議、根本ゆう区議が先月末に離党届を提出していたという。
榎本区議は政策肌で尖閣諸島問題に関心を寄せるなど自民党議員よりも保守政治家らしいとの定評がある。本来ならば日本維新の会の理念と合致する人物だが離党に至ったようだ。

昨年4月に行われた〝狂乱〟の衆院東京15区補選の動揺が残る6月2日の港区長選挙。榎本区議らが擁立した清家愛区長(無所属新人)が自公推薦で6選を目指す武井雅昭前区長を破って当選。港区では初の女性区長であり快挙には違いない。
日本維新の会にとっても公認、推薦ではなくても、所属議員が推した候補が区長になったことは本来は名誉だろう。しかも維新が与党会派になり、自民公明会派が野党化した点も評価されていいはずだ。
ところが先の関係者はこんな内幕を明かす。
「無所属の清家区長を応援したということで榎本区議は厳重注意処分を受けたのです」
公認ではなくても結果的に区長に維新の政策を採用させたのだから、党にすればむしろ好都合ではないか。党の成果と誇ればいいのに反党行為として受け止めた。不思議な考え方である。こうした場合、仮に自民党ならば自前の候補でなくても陣営に引き込む狡猾さがある。
その点、維新は稚拙で一部の〝好悪〟だけが判断材料になっている気がしてならない。これまで当サイトは数々の維新のスキャンダルや内紛をレポートしてきたが、政治理念や政策の対立というよりは私的な感情が影響していた。
榎本区議はベテラン議員だが、東京維新の会内では役職に就いていない点も悪意を感じてしまう。
3月23日に離党届を提出していた

3区議の離党はまだ公式的には発表がない。東京維新の会に確認すると「取材依頼を書面でお送りください」ということで確認中だ。
そこで榎本区議本人を直撃すると「離党は事実です。3人で離党届を先月23日に提出しました。会派の港区保守系議員団はそのまま続けます」と認めた。
「維新八策を達成することが目標であって党内の権力闘争に巻き込まれたくないという思いがありました。離党と言っても東京維新とは喧嘩別れという訳ではなく政策については協力し合える部分は協力するということですね」(同)
ただでさえ戦力ダウンの東京維新が3名もの区議を失ってしまった。党是の「身を切る改革」は改革どころか単に身を切っているようにしか見えない。
前出党関係者が解説する。
「2023年9月、港区議会で榎本茂区議が無断で共同会派を設立したということで『党員資格停止処分(3ヶ月)』が下されました。しかし小野泰輔衆院1区前支部長も出席した会合で了承が得られていたので、実際には“無断”ではありません。ところが〝書類による報告がなかった〟という理由での処分ですよ。一方で若手には残って欲しいのでしょう。そのため4月に入って東京維新は白石、根本両区議と面談したようです。維新に残るよう慰留したと思われます」
強引な処分理由もこれまでの除名、離党勧告騒動で見聞きしてきたものだ。新人議員または女性議員にとって今の維新に魅力があるとは思えない。大田区、渋谷区、そして港区と短期間で離党が続くのは異常事態だ。
「低迷しているとは言えまだ『日本維新の会』の看板で議員になれる人はいます。そんな人からすると他の議員が行動を起こすと〝オレも同じことをしなきゃならんのか?〟〝面倒臭い〟と煙たく思うようになるのです。しかも榎本区議には若手2区議が同調したことも面白くなかったと思いますよ」(元維新議員)
足の引っ張り合いも見慣れた光景。改革というフレーズを随所で掲げてきた政党にしては全く先進的ではない。あるいは日本維新の会が特殊な立ち位置にいることが原因かもしれない。与党ではないが、その他野党よりは政権に近いポジションにいられる。このような環境の中で現状維持を望む議員にすれば改革肌議員は逆に厄介なものだ。
一時期は石丸伸二氏率いる地域政党「再生の道」との連携を模索した時期もあったが決裂。その一方で相次ぐ離党。都議選、参院選も控えるが東京維新の好材料がまるで見つからない。