【番外編】 “疑惑の砲弾” 『週刊文春』甘利明金銭報道の 裏に天野二三男がいた!

By 三品純

ゲス不倫、センテンススプリング、オフホワイト・・・時には社会現象にもなる「文春砲」こと『週刊文春』。今や新聞社、テレビ局あるいは野党までが同誌の後追いに甘んじ「文春報道を当事者に質問する簡単なお仕事です状態」に堕した。政治、芸能、事件あらゆる分野でスクープを放ちその餌食になった著名人は多数。2016年、甘利明内閣府特命担当大臣(当時)の金銭授受問題を報じ、甘利氏を辞任に追い込んだのも文春報道だ。甘利氏失脚から5年。現在、熱海市土石流報道が社会の関心事だが、実は渦中の新幹線ビルディング社長、自由同和会神奈川県本部前会長・天野二三男氏と甘利スキャンダルに「因縁」があったのはご存じだろうか? 

文春砲のターゲットにされた 甘利明元内閣府特命大臣

新聞は記者の感想文と役所の発表、テレビは芸能人の居酒屋政治談議、共通するのは色付き活動家の一人語りを垂れ流し。マスメディアが「報道」を忘却した中で、週刊誌とりわけ『週刊文春』は調査報道のけん引役だ。文春といえば著者の世代だと「疑惑の銃弾」と題された保険金目当ての殺人事件「ロス疑惑」報道でその名を知った。渦中の三浦和義氏(故人)は殺人罪などで逮捕され、2003年に無罪を勝ち取る。当時の文春報道について著者にこう語っていた。『昭和・平成 日本「怪死」事件史』(宝島社)より。

実は後になって入った情報なんですが、当時、警視総監が参院選に出馬しようとしたらしいんだけど、女性スキャンダルを文春につかまれていたらしくてね。文春がスクープしようとしたら、警察から『待った』が入ったわけです。つまり、警視総監の記事を差し止めてくれたら“ ロス疑惑”っていう良いネタを提供するから、警視総監のことは記事にしないでくれという取引がされたわけです。

「疑惑の銃弾」の裏には警察との取引があったと打ち明けた。しかし取材先との駆け引きは文春に限らずありえることだし週刊誌は何も正義や道徳を説く存在でもない。ただ「権力にも刃を向く文春砲」的なイメージとまた異なる実相が透けて見える。良心を問うとか陳腐な話をしているわけではない。より大きな取材対象、より刺激的な話を求めるのは雑誌のあり方として当然のことだからだ。

週刊文春をめぐるサイドストーリーを紹介したが、次に2016年のスクープ記事を示す。

政界激震スクープTPP立役者に重大疑惑 「甘利明大臣事務所に 賄賂1200万円を渡した」 実名告発(同年1月28日)
甘利大臣事務所の嘘と「告発」の理由(同年2月4日)
甘利大臣辞任スクープすべての疑問に答える(同年2月11日)

報道内容をかいつまんで説明すると、千葉県白井市の会社役員・一色武氏が甘利氏に対して総額1200万円を渡してた。その見返りに一色氏の会社と独立行政法人都市再生機構(UR)との間で発生した土地トラブルの解決を求めたというもの。一色氏側の資料、証言をもとに構成されている。甘利氏サイドとの生々しいやり取りなど読みごたえがある記事だ。音声データが多数とあるのも特徴的だった。

当の甘利氏自身は一色氏側について「先方は最初から隠し録音をし、写真を撮ることを目的とした人たち」と語ったという。もちろん一色氏自身も怪しい。しかしながら甘利氏自身は迂闊で、経緯はともかく金銭授受の事実は否定できない。特命大臣職を辞したのはその証左。

下手をすると「陰謀論」というそしりを受けるかもしれない。甘利氏が軽率なのは大前提。が、あまりによく出来すぎた話ではないか。

絵に描いたような胡散臭い業者が甘利明という有力政治家に接近し、金を渡して「土地トラブル解決」を求める。しかも詳細な記録が残っている。

相手はURという巨大組織との土地トラブル。対抗する力があるのは大物政治家、あるいは“アレ ”だ。アレとは説明不要。「同和」である。甘利氏はかつて「人権擁護法案」の推進派議員であり、自由同和会の会合にもよく出席していた。力の条件は揃う。しかしこのところ全く同団体との交流の痕跡が見つからない。天野二三男氏‐一色武‐自由同和会神奈川県本部、この三者関係は根底部分でつながっていたのだ。

国際人権教育推進センターは 神奈川本部と同一組織

自由同和会、全日本同和会ともに自民党の支持団体であることは以前も指摘した。「天野さんは牧島かれんさん(衆議院議員・神奈川17区)の街頭演説によく行っていました」(地元住民)。「団体名は書いてないが牧島さんの政治資金収支報告書には全日本同和会神奈川県連合会会長の名がある」(事情通)といったところ。

自民党と同和会系2団体の関係をご理解頂けと思う。その上で本論に戻ろう。

先の文春スクープはいうまでもなく新聞各紙も後追いした。甘利氏はTPP交渉という重責を任されるほどの実力者。あるいは業界団体からの政治資金でもたびたび指摘を受けてきた。いわゆる利益誘導型政治家の象徴的に扱われる人物だ。例によってマスコミも後追いした。

それから甘利氏は先述した通り、自由同和会の会合にも出席していた。こと地元、自由同和会神奈川県本部とは密な関係。

さて一方、文春の甘利スクープは支持者だけではなく一部メディア関係者の間でも「怪しい」との声が起きた。ここはライバル誌・週刊新潮の記事を『告発者・一色武氏は“元・右翼団体構成員”〈「甘利大臣」をハメた情報源の正体(1)〉』を引用しよう。新潮記事は「甘利大臣をハメた」と大胆な表現を用いたのが印象的。

元国会議員を使っても、うまく行かなかったURとの交渉。そこで、一色氏が目を付けたのが、現役閣僚の甘利氏だった。元幹部が続ける。「彼は、右翼団体の他に『政府認定特定非営利活動法人(NPO)国際人権教育推進センター副理事長』の名刺を持っていた。実は、このNPOの前理事長は、甘利さんの父親(故・甘利正代議士)の元秘書で、甘利さんとも昵懇でした。一色は、前理事長に何度も“甘利さんを紹介してもらえないか”と頼んでいたそうです。甘利さんに信用してもらおうと、ここの副理事長の肩書を利用しようとしたのでしょう」

太字部分に注目。「国際人権教育推進センター」という“いかにも ”な団体が出てきた。なぜかこの筋の人々は「センター」という用語を好む。弊社YOUTUBE上の「神奈川県人権啓発センター」名もその意趣返しである。一色氏は同団体副会長職の名刺を持ち歩いたという。現在、同センターを検索しても有力な情報は出てこない。そこで横浜地方法務局平塚出張所に提出した登記簿を見てほしい。

「二宮町二宮861番地の1」とはかつての全国自由同和会神奈川県本部事務所、「岩崎建材株式会社」の所在地である。理事に伊藤克已という名があるがこの人物が理事長。また自由同和会神奈川県本部の女性部長、飯高美奈子氏や伊豆山地区開発に関わった天野関係企業の社員で同本部役員もいた。

国際人権教育推進センターとは自由同和会神奈川県本部と同一組織なのだ。

そして理事長の伊藤克已氏の正体が面白い。天野氏知人の話に驚いた。

「伊藤克已とは伊藤玄勝さんのことなんです。玄勝は法名で、本名が克已さんですね」

伊藤玄勝氏とは自由同和会神奈川県本部の初代会長で僧侶。その後、天野氏から会長職を奪われた人物だ。このいきさつについては過去記事を参考に。国際という名を冠したのには意味があるのだろうか。例えば部落解放同盟の場合は、反差別国際運動(IMADR)という国連機関専門のロビーイング組織がある。神奈川県本部も本格的な国際活動を企図していたのか、と思いきや――――

「そんなオーバーな組織じゃないです(笑)。神奈川県本部といっても任意団体だから銀行口座を持つのが難しくて。ところが特定非営利活動法人なら口座が開設できるというので設立したんですよ。一色武さんが副理事長? それはないです。まず自称と考えた方がいいでしょうね」(同前)

その点は天野関係企業の元関係者が詳しい。

「勝手に会や関係組織の名刺を使う人はいましたよ。だから神奈川県本部の機関誌でも名刺使用を厳格化したという呼びかけがあったでしょ」

なるほど。確かに名刺使用についてアナウンスがあったのを思い出した。

一色氏は右翼団体との関与も指摘された上、 国際人権教育推進センター の名刺を持つ。エセ同和行為を働くには十分な条件が揃った。

一色氏、文春への情報提供は 甘利氏への報復か?

天野氏‐一色武‐自由同和会神奈川県本部、この三者関係はどうつながってくるのか。前出の天野氏知人はこう明かす。

「伊藤玄勝さんは甘利明さんの父、正さん(元衆議院議員、自民党→新自由クラブ)と懇意にしていました。玄勝さんが秘書? 私には秘書というよりも“ 知恵袋”という存在に見えましたね。明さんも可愛がってもらっていたと思います。正さんは新自由クラブに移籍した後、選挙も苦労していたんですよ。そこで地域社会、行政、企業にも顔が効く玄勝さんに頼ったわけですね。同和の看板? それはもちろんあったと思いますよ」

人によっては甘利氏と伊藤玄勝氏は「親戚同然」という証言もあった。それほど関係が深い両氏。

「だから明さんは自由同和会神奈川県本部と交流があったというよりも、同本部・伊藤玄勝会長と懇意にしていたといった方が適切なのです」(同前)。

他方、一色氏は会社業務のために有力な政治家のバックを求めていたという。

「新潮の記事の通り」とは先に紹介した天野関係企業の元関係者 。

「一色さんはたびたび県本部の事務所に来ていましたね。“ 天野二三男というやり手がいて同和を利用できるし、甘利氏とのルートもある”と聞きつけたそうです。新潮の記事には『前理事長に何度も“甘利さんを紹介してもらえないか”』とありますが、ここでいう前理事長とは伊藤玄勝(克已)さんですよ。自民党有力者でなおかつ同和の看板も利用できる天野さんを紹介するように頼んだのです」

しかし伊藤氏はすでにこの当時は県本部の「閑職」。加えて甘利氏も「伊藤会長」だから同本部と交流してきたわけで、天野氏に義理はない。とはいえ甘利氏も相応に一色氏と交流したが、一色氏にすれば「(甘利氏は)思ったほどいうことを聞いてくれない」という不満があったという。先の元関係者は続ける。

「不満を持った一色さんがスキャンダルを画策した訳です。録音から面会記録まで完璧にデータが揃っているでしょ。甘利氏を落とす気満々ですよ」

繰り返すが週刊誌報道は「きれいごと」ではない。本質的には電車の中吊り広告に顔が出せる著名人が標的で、より知名度がある人物ならば尚歓迎。こういう論理の元で動いている。つまり「事実」であれば情報の出所は特に問題視しないものだ。この通り、怪人物からの情報だが、この場合甘利氏側の脇が非常に甘いという他ない。ただ粘り強い取材だとかそういう性質の報道ではなかった。

危うい文春砲、用意されたスクープ?

文春の甘利スクープは自由同和会神奈川県本部の内部事情と関係していた。そんな怪しげな情報に乗った週刊文春。それでも現役閣僚を辞任に追い込んだわけだから評価されたのは当然のこと。ただ内部の眼は少し異なるようだ。

文藝春秋関係者もこう声を潜める。

「文春リークス(タレコミ窓口)といっても情報提供者側が写真、音声、動画、数字(資料)を全部揃えないと(記事は)やらないんですよ。今や新聞社やテレビ局よりも文春に、という人は多いから様々な情報がもたらされます。確かに情報がハマれば大スクープになりますが、記者の取材力は逆に落ちるかもしれませんね」

それでも社会的に大きな報道を続けられるのは事実。しかし結局のところ情報提供者からお膳立てというわけだから丹念な情報収集と言い難い。

マスコミ各社の報道も日々疑問を感じている。当サイトも長らく報じる「津市相生町自治会長事件」の取材時のこと。敬和地区という同和地区住民が問題の自治会長、田邊哲司氏について新聞社に相談に行ったというが、その対応に呆れた。

「田邊という自治会長が滅茶苦茶なことをしているから記事にしてくれないか? と頼んだところ相手方が“それは証拠がありますか ”とか“事実ですか ”というのです。その事実関係や証拠を調べるのがあなた方の仕事じゃないかと思いました」

もっとも文春あるいは新潮ならば数日のうちに大方の情報は掴むものだが、新聞の場合はあくまで行政、警察発表ありき。このため週刊誌、特に週刊文春にスクープが集中するのだろう。

強力な週刊文春だが熱海市土石流問題ではその“砲弾 ”も不発気味。同誌2021年7月22日号「熱海「盛り土」所有者“名古屋の錬金術師”の正体」では天野氏について「いわくつきの業者」と指摘するに留まり、現在の所有者である麦島建設をクローズアップしていた。

小田原市関係各所からは「甘利氏スクープの関係上、文春は天野案件を避けた」との声も少なくない。著者もその推測はやぶさかではないと考えていた。他誌記者によれば

「5年前の記事で配慮するようなあまい編集部ではないと思いますよ。単純に麦島建設の麦島善光氏の方が絵になるという判断ではないでしょうか。麦島氏は過去、横領や脱税などたびたび問題を起こしていますから」

との解説もうなずける。

それにしても先の2021年7月22日号の記事は文春にしては「緩すぎる」としか思えない。平素は政治家、芸能人の人生を狂わせかねない報道をしているのに、だ。そこで同誌編集部に過去の一色氏と自由同和会神奈川県本部の関係を説明した上で、天野氏に言及しなかったのは甘利スクープが関係しているのか? などの質問状を送付。また甘利氏側には「ハメられた」という認識があるか、また伊藤玄勝氏とどういう交流があったのか、について聞いてみたが双方とも回答はない。

文春砲と称えられる週刊文春が天野氏言及を避けた背景については伝説の記事になぞらえ「疑惑の砲弾」という顛末にしておこう。

今回は天野案件のサイドストーリーで「番外編」ということでお伝えしてきたが、今後も引き続き天野案件を追跡していく。

【番外編】 “疑惑の砲弾” 『週刊文春』甘利明金銭報道の 裏に天野二三男がいた!」への1件のフィードバック

  1. キラーT

    天野案件の情報は、天野ニ三男の被害者がよく知っています。
    メディア、雑居は、何処まで 天野の闇、小田原の闇暴いてくれるのか?
    被害者が苦しみ、加害者が笑う制度をいつまで容認するのでしょうか。

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