岸和田市・永野耕平市長が性行為を強要した女性から提訴された問題。市議会は20日、賛成多数で不信任決議案を可決したが逆に市長は24日、議会に解散を通知した。同日、夫人同伴の市長会見も話題になったが永野市長だけが悪玉かといえば疑問だ。騒動の背後にある市長‐府議‐女性のドロ沼三角関係は見逃せない。

やはりマスコミ報道は疑うべし！

性被害を訴えた側の主張のみを優先する報道。マスコミにありがちな〝告発有理〟といった定番の現象だ。岸和田市・永野市長は性行為強要について今年11月24日、女性に謝罪し500万円を支払うことで和解。確かに市長も軽率だ。しかし取材を進めてみると単純に永野市長だけが悪者とは言い切れない。そこにはとある府議と女性を交えた三角関係があったのだ。

非常に複雑な問題である。そうはいっても到底、市長を擁護できない。かといって問題の全貌を報じないマスコミ報道にも疑問が残る。

では何が起きたのか。永野市長と女性の関係を時系列で説明しよう。永野市長は2019年頃から政治活動で知り合った女性X嬢と交際し関係は約1年半続く。2021年、X嬢が永野市長から強制性交を受けたと大阪府警に被害届。不起訴になったものの翌年6月、X嬢は2200万円の損害賠償を求め大阪地裁に提訴。そして今年11月の和解に至る。所属する日本維新の会からも批判が噴出し永野市長は3日付けで離党届を提出し8日に受理された。

20日には異例ともいえる夫人同伴の記者会見に応じて、「当初から夫婦で対応しておりました」などと語った。不祥事の釈明会見に夫人を同席させたのはあたかも〝内助の功〟を演出した格好。だが夫人への同情も含めて、永野市長への反発は強まったとしか思えない。

一方、議員にすればこの年の瀬に失職だからたまらない。いわば市長スキャンダルの〝とばっちり解散〟といったところだ。ところが取材を進めていくと永野市長悪玉論とは異なる実相が見えてきたのだ。実は数年前から前田府議に対する告発文が府議会、岸和田市議会で共有されてきた。告発文には市長スキャンダルを読み解くいくつかのカギがある。

永野市長‐前田府議‐女性の三角関係&不倫

『デイリー』によると20日、夫人同伴の会見で永野市長はX嬢との交際終了後、大阪府議とX嬢に関する情報が情報が入ったので、その上で「（大阪府議の）奥さんの相談に乗っていました」と説明したという。不思議なことに「府議」と言及したのは『デイリー』のみ。府議が問題のキーパーソンなのだが、なぜマスコミは避けるのだろう。

ではこの府議とは一体、誰か。

「日本維新の会所属の前田将臣（のぶみ）府議です。もとは永野市長の〝弟分〟といった存在でした」（市関係者）。2017年に岸和田市議、2019年大阪府議選で当選し現在2期目を迎える。そんな前田府議は一見、好青年風で性格も控え目というのが周辺の評価。

「もともと公認をめぐって遠藤敬衆院議員が別の候補を推したのですが、永野市長が前田府議を猛プッシュしたのです。それから前田府議は複雑な生い立ちで児童福祉施設で育って奨学金で大学へ行きました。ところが奨学金の返済に困って永野市長が肩代わりをしたのです。また選挙資金も永野市長が援助していました」（知人）

後に市長の会見で判明することになるが正しくは永野市長の妻から前田府議に貸していたもの。

市長がいうところ前田府議は「家族同然」の存在でありかねてからの盟友。ところが両氏の間に亀裂が入った原因がX嬢をめぐる三角関係&不倫というわけだ。

永野市長とX嬢の交際は2019年から約1年半。その後で前田府議と交際することになる。交際とは聞こえがいいが妻帯者の両氏にとっては「愛人」だろう。

ところがこのX嬢は前田府議に〝乗り換え〟してしまった。いわば兄貴分である永野市長とは恋敵になる。周辺では「X嬢が二股をかけていた」という証言もあるが、ともかく市長‐府議‐X嬢という三角関係ができあがった。市議、有権者らにすれば怒りよりも脱力感すら覚えるかもしれない。

X嬢は市内の府営住宅住まい。その近所に逢引き用マンションを借りていた。下記の写真は2022年3月頃、市内の100円ショップで撮られた前田府議とX嬢。この後、二人でマンションに向かったという。

しかも前田府議はX嬢を自身の秘書に採用した。

以下は令和3年度の前田府議の政務活動費収支報告書。この２番目がX嬢の給料だ。不倫相手を秘書に雇うのは市民感覚からすれば違和感を覚える。だが違法とまではいえない。また一部の市民からX嬢が休職中も給料を支払われたとして返還を求める声もあるが「正式な診断書があれば休職中でも給料は支払われます」（市関係者）。

この一件で前田府議を追及するのは難しい。だが自身の交際相手を秘書にするというのは議員モラルに反しないか。それに日本維新の会の党是である「身を切る改革」の精神はどこにいった？といいたくもなる。

永野市長からの借金も仲違いの原因

前田府議の政務活動費収支報告書（令和3年分）からは永野市長との関係が垣間見える。もともと前田府議に対する告発文には自身の後援会会長・永野洋司氏が経営する永野設備工業株式会社に政務活動費でエアコン工事を発注したことが問題視された。

確かに報告書には同年9月15日にエアコン代として同社に支払った7万7千円の領収書が添付。つまり関係者への利益誘導ではないか、という指摘だ。

これに対して同社・永野社長に問うたところ「関係者と言えばそうですが、大手家電会社より弊社の方が安いので弊社でご購入いただいたという経緯がございます。何か問題がございますでしょうか」という回答だ。

確かにこの点も違法とはいえないし、利益誘導というほど高額でもない。ただX嬢との関係について後援会長としての所見を問うたが回答はなかった。

余談だが同社長は市長と同じく永野姓だから、親戚関係を疑う声もあったが「『永野』は岸和田市三田町で多い苗字なんですよ。市長は地元由来の永野とは違います」（前出市関係者）という。

さて、ここで問題なのは「エアコン工事」の時期である。妙なことに前田府議は翌1月28日に宝電設工業株式会社に再びエアコン設置を発注。13万2千円の領収書（令和3年分）が添付されている。

この短期間のうちに二度も政務活動費からエアコン工事というのも妙だ。「エアコンが設置されていない事務所を普通、借りるかね」（地元住民）という疑問も頷ける。しかも2021年9月から2022年4月まで使用していた事務所から5月から新事務所に移転。

どうやらこの事務所が市長との接点のようだ。

地元政界関係者の話。

「市長妻が前田府議に約250万円を貸したのですが返済が滞ったのです。そこで市長は相場よりも高額な家賃の事務所を前田府議に用意して回収しようとしました。このため前田府議は新しい事務所に移転したのです。どちらにしても前田府議が経済的に困っていたのは事実ですよ」

◎解決金500万円についての永野夫婦の思い

当初、裁判所からは100万円で解決してはとの提案があったが、女性Ａと前田府議からは1000万円支払えとの返答があった。…

— 永野耕平 （岸和田市長） (@qohey4251) December 25, 2024

この辺りが単純に永野市長を悪玉とするのが悩ましいところなのだ。さらに話は続く。

「妻を記者会見に同席させたように永野市長は不倫すれども離婚の意思はありませんでした。ところが前田府議はX嬢に入れ込んでしまったわけです。となるとX嬢としては〝本気〟になった前田府議を選びました。ただ市長と交際していたというのはX嬢にとっても前田府議の手前、体裁が悪い。そこで強制性交として無理やり関係を持たされたと主張したのではないでしょうか」（同前）

永野市長がX嬢と前田府議に支払った和解金は500万円。市長妻から前田府議が借りたのは約250万円。そしてそのうち高額な賃貸料で少なからず回収されていたと考えられる。この和解金とは前田府議の「逆回収」という見方もできよう。早い話が「取り返したれ」といった心境だろうか。

繰り返すが市長が不倫関係にあったのは事実であり、それ自体は首長として不適切である。しかし背景をみると前田府議、X嬢の行動も大いに疑問だ。つまり三方のスネに傷があるという点をご理解頂けただろうか。

X嬢との関係について前田将臣事務所に質問状を送ったが返答はない。また「大阪府議会議員　前田将臣事務所　秘書のMと申します。事務所にお電話いただいておりましたのでかけ直しをさせていただきました」とショートメールが送られてきたが、改めて質問状について確認したがその後の反応はなかった。

永野市長は曲がりなりにも記者会見に応じて自身の行為を説明したが、前田府議からは特に説明、声明といったものは聞かない。先の告発文にはX嬢と交際する以前にも別の女性との交際があったと指摘されていた。前田府議の過去、素行については今後も何らかの形で追及されることになるだろう。

それにしても再び、維新絡みの騒動―――。

筆者も一昨年から日本維新の会の不祥事、スキャンダルを報じてきたが、まさか首長・府議を交えた三角関係&不倫を報じるとは予想さえしなかった。そして本年最後の記事を維新で締めるわけだ。なんとも日本維新の会の惨状を物語っている気がしてならない。