曲輪クエスト(338) 佐久市香坂

カテゴリー: 曲輪クエスト | タグ: 古村, 長野 | 投稿日: 2023年11月8日 | 投稿者: 宮部龍彦

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By 宮部龍彦

信州の部落を研究するために重要な書籍がある。それが柴田道子の『被差別部落の伝承と生活』で、1968年から1970年の信州の部落の様子が記録されている。最近、文庫として復刻もされており、部落の地名が書かれていることから人気を博している。

今回訪れた佐久市香坂の部落について、も少しだけであるが触れられている。

本書によれば、小諸の加増から別れたものと伝わるそうである。加増は東信で最も有名な部落であり、ほとんどの世帯の名字が高橋である。小諸、佐久の部落で高橋が多いのは、やはり加増にルーツがあるからだろう。

また、菊池山哉は次のとおり記している。

○三井村は香坂川に沿ふて、山間遥かに香坂峠まで二里続く。部落は二里の間各沢々に点々として存在する。この曲輪はかかる数多い部落の咽喉を扼する。乃ち山から匍ひ出した尾根を切り通して県道は通る。その切り通しを俯瞰して曲輪は構えて居るので、三井全村の人々は、否でもこの関所を通らなければならない。他は一望の水田である。実に曲輪として関屋として典型的の地形である。然し三井村の人を監視したわけではない。他から入り来る人を三井村の為めに監覗したものである。
○白山神。
○無い。江戸前期であらうか。六戸ばかり。

加増から分かれたのなら、当然名字は高橋であろう。その分布を検証すると、この部落は香坂の２つの村の入口にあり、関所があったとする信憑性は高い。電話帳からも6件の高橋姓が確認できる。菊池山哉の記述の「無い」は伝承はないということだが、実際は『被差別部落の伝承と生活』の通りである。

現地を訪れると、建設会社と、長野県らしい寒さに強そうな家が目に入ってきた。

これらは、見たところ市営住宅かと思ったが、佐久市のウェブサイトにはそれらしいものはなく、おそらく民間の住宅だろう。今は空き家が多いが、これらを入れると6軒よりも多くあったのでは？

部落解放同盟長野県連合会が出版した『差別とのたたかい』では13戸と記載されている。ということは、一時期はそれくらいの戸数があったのだろう。ただ、もしかすると菊池山哉が書いていたように、香坂の他の場所にも別の部落が点在していて、それらを含めた可能性もある。まだ研究の余地はあるだろう。

これは佐久市香坂同和対策集会所。

看板には佐久市香坂集会所とあるが、間違いなく同和対策集会所である。ただ、戸数からするとこれほどの集会所がなくても、誰かの家に集まればよい気もするが、周辺地域からも利用されているのかも知れない。

この農機具倉庫が気になった。というのも、何年か前にここを訪れた人によれば、この中に祠のようなものがあったというのである。しかし、現在は農機具しか入っていなかった。

ただ、その位置と佇まい。庚申塔等があることから、ここに白山神社があったと推定される。誰かに聞いてみようと思ったが、あいにく雨模様である上、人気がなかった。

さきほどの倉庫から一段高いところに遊具のある公園が整備されていた。信州の部落少戸数点在であるが、このようなところまで徹底して同和対策が行われていた。

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