関西生コン「ヤドチョウ」たちの裁判

三品純 By 三品純

全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(以下、連帯)の武建一委員長らが恐喝未遂、威力業務妨害罪などを問われている裁判。関西生コンをめぐる事件は複数に及ぶが、湖東協組事件(大津地裁)、大津協組事件(大津地裁)、宇部三菱大阪港SS・中央大阪生コン事件(大阪地裁)の3つの公判が進行中だ。各裁判所には傍聴のため連帯活動家、関連企業社員、支援者らが大量に動員される。このため傍聴するにも抽選が必要だ。5月8日、大津地裁で武委員長ら3名の湖東協組事件第16回公判があり、初めて傍聴券を得ることができた。もちろん本公判だけでは連帯の全貌はつかめないがそれでも彼らの活動手法の一端が垣間見えた。

公判は10時からだが、すでに8時頃から大津地裁は物々しい雰囲気だ。 生コンで働く労働者は歴史的にヤクザ、同和、朝鮮人が多く、その頭文字をとって「ヤドチョウ」と呼ばれてきた。地裁に集まった関係者が部落民か朝鮮人なのかは知らない。だが任侠風を醸し出す男はたくさんいる。彼らは自分たちと「異なる者」をすぐに嗅ぎ分ける。これは部落解放同盟、左翼団体全般に言えることではあるが――――。

大津地裁前、抽選券が配布される前から活動家たちが大挙する。

地裁前で写真を撮影していると「今、写真撮ったやろ」「動画を撮ったか」。こう複数の男が取り囲み絡んでくる。

「スマホを見たらあかんの?」

「動画を撮影したように見えたもんで」「俺らにそういう口をきかん方がええよ」

万事、この調子だ。一部報道、ジャーナリスト、文化人たちは関西生コンをめぐる事件を労働者の弾圧という。しかしごく普通の感覚、一般常識を持ち合わせているならば彼らはただの“労働者”とは思えない。ともかくこうした関係者約200人が集まる中でなんとか傍聴席68人の中に滑り込んだ。

フジタ社員、滋賀県警組織犯罪対策課が証言に

法廷に武被告が入廷してくる。武は傍聴席に「大丈夫だ」と言わんばかり微笑みかけた。すると「委員長!」と声援が飛ぶ。基本的に法廷内でプラカード、横断幕の類はもちろん、声援も禁止行為なのだが。一般紙の記者の姿は確認できなかったが、『週刊金曜日』の記者は傍聴席に来ていた。公判に際して弁護団から追起訴があり、被告の拘留期限が長期化していることについて裁判官に抗議がなされた。それから午前、午後に分けて被害にあった大手ゼネコンのフジタ社員、滋賀県警組織犯罪対策課の警察官、連帯の元組合員らが証言台に立った。証人になったフジタ社員は実際に現場で連帯に対応した人物。このため安全面に配慮し「遮へい」が行われた。

遮へいは証言者のプライバシー配慮はもちろんこうした動員がかかるような裁判の場合、傍聴席から「睨む」「ガンたれる」などのプレッシャーで証言者が委縮しないための措置だ。このような時の心理的圧力は弊社が身をもって知っている。

フジタ社員からは連帯活動家による抗議活動が語られた。連帯の活動家たちは新名神高速道路(京都市八幡市)のフジタ美濃山東工事作業所を訪れ、ビラまき、工事作業への抗議を行っていた。社内では活動家が来ることは共有され、抗議に来ると担当者が現場で対応する形だ。担当者は「連帯記録一覧表」「連帯時系列」の2つの資料を作成し、対応した時の記録をつけていた。連帯の活動家が現場に押しかけるのは担当者の間で一種の「申し送り事項」になっているかのようだ。それほど社内では警戒していたのだろう。

そしてここに連帯の抗議手法のポイントが垣間見えた。主に活動家たちは作業場について指摘をしてくる。その指摘は様々だ。工事現場には水路があるがそこに汚泥が溜まっており、フジタが出したものではないか? また運搬用のトラックに張られたワイヤーに点検テープがあるかなど。つまり労働安全衛生法に基づいた安全措置、あるいは環境対策がなされているかなどを指摘してくる。

弁護団からは安全対策や環境配慮を指摘することは正当な行為ではないかとの指摘があった。もちろんどんな会社であろうが、工事現場における安全性のチェックは十分に行われるべきだ。しかしそれを連帯が介入すべきことなのか? もし彼らの指摘が正当だとしても執拗に活動家が来訪して、まるで威圧するような行為を行うべきなのか。もちろんこの辺りの行為は今後、裁判でどう認定されるか分からない。しかしたかが裁判の傍聴券の抽選に、あれだけ威嚇してくる人たちが本当に環境配慮、安全配慮で作業場に訪れていたとはどうしても思えない。

動員はLINEを使って呼びかける

連帯の活動の特徴として「動員力」にあると思われる。例えば洞爺湖サミット(2008年)の時に札幌市内に複数の関西生コンのミキサー車が動員され抗議デモに加わっていた。関西からわざわざ北海道までやってくるのだから行動力と動員力は数ある労働組合の中でも抜きん出ている。関西地方を中心にネットワークはとても広いが、それをつなげるツールの一つが「LINE」だ。

滋賀県警組織犯罪対策課の警官や元連帯の活動家が証言に立ち、その連絡手段が語られた。LINEの画面がスクリーンに表示される。

「このアイコンは何を意味しますか」

高齢の弁護人が証拠として提出されたLINE画面の写真を指してこう証人に尋ねる。一瞬、裁判官も傍聴席も頭上に「アイコン?」とクエスチョンマークが浮かび上がった。どうやらアイコンとは「スタンプ」のことを意味しているらしい。裁判官からも「アイコンではなくてスタンプ」との指摘があった。通常、機種変更した時、あるいは無料配布されたスタンプが期限切れになった時、×の表示がされる。どうやら弁護人はそれが気になった模様。今時の裁判らしいと言えばらしい。

連帯はLINE上で「ブロック三役」というグループを作成。このグループトークに行動計画などの連絡事項が投稿されるのだ。三役とは「ブロック長」「書記長」「副ブロック長」の3つを指すという。活動の呼びかけは県をまたがり、滋賀県の湖東ブロックから大阪市内のブロックに向けて応援、支援が要請された。元組合員である証言者は過去、実際にグループトークに参加していたという。この中では抗議現場の写真、動員の指示、ビラまきや、動員メンバーの選別などが行われていたということだった。ただLINEの連絡の場合、「警察に筒抜けだから」という理由で控えるようにとの指示もあったそうだ。

ともかくこれだけの証言だけでは連帯の行為について正当、不当を問うことはできないが、いずれしても広域的に動員が呼びかけられていたことはよく分かった。ほぼ一日かけて得た事実関係は以上のようなものだ。最後は活動家たちが地裁前にずらりと勢揃いし、拘置所に輸送されるであろう武被告らの護送車を見送った。

「委員長―」と大津地裁前に木霊する。これじゃまるで“ おやっさん”を見送る任侠だ。そんな風に思いながら地裁を後にした。翌日9日の公判についても傍聴券を求め大津地裁を訪れたが、残念ながら抽選に漏れてしまった。やはり同日も大勢の活動家がやってきて傍聴券に並んだ。改めて動員力の凄さを物語っていた。

一方、5月15日には大阪地裁で 宇部三菱大阪港SS・中央大阪生コン事件の第2回公判が行われていたが、地裁前公園では連帯の活動家ら150人が座り込みを決行。また連帯とは対立関係にある大阪広域協組の関係者も裁判の傍聴に訪れたというがそれでも傍聴席は連帯が3対1の割合を占めたという。

公判終了後、被告らの見送りを待つ。
護送車が出発すると「委員長―」「がんばれー」との声が飛ぶ。

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