自民党外国人政策本部の「安全保障と土地法制に関するプロジェクトチーム(PT)」は9月24日、重要施設周辺や無人の国境離島における土地取得の規制強化を求める提言案をまとめた。土地の取得前に国が審査し、リスクがあれば許可しない制度を提案。秋の臨時国会での重要土地等調査法改正を政府に求める方針だ。一方、価格高騰が続く都心のマンションについては、外国人による取得や短期転売への具体策が見えてこない。(写真=対馬)
取得後の利用監視から取得前の審査へ
提言案の核心は、防衛施設周辺などの土地について、取得後の利用を監視する現行制度から、取得前に国が審査し、必要なら取得を認めない制度に進めることだ。実現すれば少なくとも安全保障上の規制は大きく変わるだろう。
提言案が取得前の規制を求める背景には、ドローンを使った攻撃への警戒がある。
重要施設の近くに取得した土地が、ドローンの集積や発進の拠点として使われれば、取得後に利用状況を調べるだけでは対応が遅れかねないという考えだ。
このため、施設周辺おおむね1キロの土地を許可制の対象とし、面積によって対象から除外しないことを提案している。
提言案をもとに内容と予想できる効果を整理してみた。

最も実効力がありそうなのは「取得前の許可制」と言えそうだ。小さな土地でも拠点に使えるという想定から面積要件を外し、所有権が移る前に審査する構想である。規制の方向としては具体的で、現行制度の穴を埋める効果が見込めそうだ。
昨今、外国人、特に中国人による重要施設付近の土地取得が問題になっており「外国資本」の制限を期待する声は少なくない。ただし注意点もある。国籍だけを理由に一律に取得を禁じる提案ではないのだ。
対象となる区域では国籍を問わず事前申請させ、取得者の属性や利用目的、具体的なリスクを審査する。提言案自身も、国際約束との整合性と、不許可事由に当たっても安全保障への支障が明らかにない場合の例外を挙げていた。
そのため、制度が確立しても「外国人による日本の土地購入全般」が止まるわけではない。指定された施設周辺や離島で、懸念のある取得をどれだけ事前に把握・阻止できるかが重要になるだろう。
一方、マンション規制は検討段階
提言は防衛施設や国境離島の土地購入については効果が期待できそうだが、マンション規制についてはどうか。
日本は外国人の土地・建物所有に対する規制が世界的にも非常に緩く、登記も円滑に行えるため、資金の逃避先として選ばれやすいという構造的な背景がある。
しかしPTとしても問題意識は持ち、対策として税制上の措置を挙げたが、防衛施設や国境離島のような明確な規制ではない。
実需を伴わない投機的取引は日本人、外国人を問わず抑制すべきであり、昨年11月以降、一般社団法人不動産協会により、売買契約に際して「引き渡しまでの売却活動の禁止」を求める等の取組が導入されているところである。現時点では契約に反して短期転売を行うような事例は確認されていないが、当該取組の導入企業の拡大を期待するとともに、政府においても、業界任せにせず、不動産ベース・レジストリの整備を待つことなく、外国人等と類推される者によるマンション取得調査の実施・分析を継続すべきである。その結果や不動産協会の取組の結果、海外制度・施策の内容や効果の調査も踏まえながら、早期の税制上の措置を含め投機的取引抑制に向けた取組を講じることを強く求める。
ただし、外国人による不動産取得の規制について諸外国の制度を紹介しており、規制について何らかの必要性は認識しているようだ。
カナダでは外国人による都市部の居住用不動産の取得を時限的に制限し、シンガポールでは外国人によるマンション取得時に追加印紙税の納付を義務付け、オーストラリアでは外国人が保有する物件が賃貸市場に提供されていない場合、空室税を支払う必要がある。
このような事例が紹介されていた。外国人のマンション規制について「排外的」と捉えるむきもあるかもしれない。だがカナダやオーストラリアのような移民政策の推進国ですら制限する制度があるのだ。
日本の都心ではマイホームを購入するのが非常に困難になり、「住むための家」が投機対象として扱われていることへの反発が強まる。こうした弊害をどう解消していくのかについてもPTには、より踏み込んだ議論を求めたい。
笠佐島のような有人島はどうなる?今後の課題は…

全体的にはまだ課題も多そうだ。許可制は重要施設周辺にも及ぶが、離島について対象に挙げられているのは、主に『無人の国境離島』だ。 したがって、本州周辺の離島を、その「離島である」という理由だけで許可制の対象にする提案ではない。
「国境離島以外の離島」については所有者のいない島は国有財産台帳への登録を進め、そうでない島も所有実態を把握する提言案にはある。実態調査というだけで、許可制という強い規制ではないことに要注意だ。
また外国政府の影響下にある者や法人の実質的支配者を審査する構想も盛り込まれた。法人の実質的支配者の把握や、取得後の支配者変更時の届出などを求めているが、確認方法と不申告を見抜く体制は、これからの制度設計に委ねられるだろう。
国内企業が取得した後に土地や事業権が譲渡されたり、企業の支配者が変わったりする場合も想定される。メガソーラー建設などは最たるものだろう。こうした変化を国が継続して把握できるかが課題だ。
重要施設周辺の土地規制案としては70~80点、外国人による土地取得全般への対策としては50~60点ではないだろうか。安全保障上の土地取得規制には効果がありそうだ。だが外国人による不動産購入全般の抑制策ではないことは今後の課題だろう。
また事前審査というならばどのような基準で不許可とし、法人の実質的な支配関係をどう確認するのか。制度の実効性は、今後の法案設計にかかっている。



