前回に続き国民民主党幹事長代行、岸本周平衆議院議員の和歌山県知事立候補問題。岸本氏は本日、和歌山市内で正式に出馬表明する予定だ。表面的には野党の現職議員が知事選出馬というニュースに過ぎない。しかし内情を検証するに、自民党の狡猾さが際立つ点にニュースバリューがある。ここ数年、野党共闘や一本化(候補者の)が叫ばれ選挙協力が進むが残念ながら自民の戦術に比べると“ 児戯”に等しい。その内幕をレポートする。(写真は2018年和歌山県知事選で仁坂知事の応援演説に立つ岸本氏)
国民和歌山県連総会「もう勝手にせえ」
自民党シフトが取沙汰される国民民主党は、同党筆頭副代表、舟山康江参議員議員(山形選挙区)が自民党から協力を打診されても拒否した。一方で同党が2022年度予算案を賛成したことについて共産党などが反発を強める。自民党への対決姿勢を示したいが、その他野党とも差別化を図りたい国民民主党は複雑な立ち位置にある。
20日、岸本氏の知事選出馬が一般メディアでも報道され同日、開催された同党定例記者会見で榛葉賀津也幹事長が舟山氏、岸本氏に関する質問を受けた。
「(知事選は)地元の自民党を含めた県民からの待望論があるのは承知しています。一喜一憂していたら(政治の世界は)心身がもたない。岸本先生はよく考えて大人の言動、対応をされると思います」
などとコメントしたが、榛葉幹事長から明らかに苛立ちが感じ取れた。地元記者も榛葉幹事長の発言を聞いて驚きを隠せない。
「自分より10歳上の岸本氏に“大人の言動、対応 ”と辛辣な物言いです。逆に榛葉幹事長の動揺が伝わってきますね」
過去記事でも指摘した通り、そもそも岸本氏は二階元幹事長とウマがあい、一時は二階派入りが囁かれたことも。和歌山一区では過去、いずれの選挙でも自民党・門博文前衆議院議員を退けた仇敵に違いないが、岸本氏は特異な立場にある。
榛葉幹事長のコメント「地元の自民党を含めた県民からの待望論」がそれを物語る。本日23日、ダイワロイネットホテル和歌山(和歌山市七番丁)で出馬表明が行われる予定だが、しかし前日から国民民主党和歌山県連、後援会は紛糾したという。関係者はこう打ち明ける。
「21日に同党県連の総会で岸本さんから説明がありました。岸本氏が離党するということは県連の消滅を意味しますから大荒れでしたね。円満? いや、もちろん議員は承服できませんよ。“ もう勝手にせえ”と吐き捨てる議員もいました」
また翌日22日は後援会の総会を開催。
「不満を持つ支持者もいましたが、強引に押し切るという形で質疑応答もなし。最後は拍手で幕引きという“しゃんしゃん(形式的で白々しい様)総会 ”でした(笑)」(前同)
自民党総取りの無残な顛末に?
岸本氏周辺によれば「早朝にも報道機関にペーパー(取材案内、関係資料)が投げられると思います。記者会見は13時予定だからもう少し後でもいいのですが、とにかく早く送って出馬を押し切ってしまおうという狙いでしょう」という。
一方で仁坂吉伸知事は今のところ出馬意向を明言していない。衆議院議員としては当選回数も多く、実績がある岸本氏だが現職の壁は厚い。仮に自民党が担ぎ出したとしても勝算は不透明だ。しかし地元政界関係者は「全く関係ない。自民にとってダメージがない」と一笑に付す。
「自民党が岸本さんを担いだというよりも過去、門前衆議員議員が一度も勝てなかった岸本氏を一区から追い出せたというのが正確ですよ。仁坂知事と自民党県連が対立しているといっても手打ちはいつでもできます」(同)
つまり党利党略上で岸本氏を知事選に“ 向かわせた”というのだ。
「その証拠に門氏は6月5日に市内で決起集会する予定です。もちろん岸本氏が辞職した後の衆院補選を想定したもの。このタイミングで6月に決起集会を準備していたということはつまり岸本知事選挑戦が党内で規定路線だったという意味でしょう」(同)
ただでさえ衆院小選挙区が一減する中で衆参入り乱れて選挙区の調整という問題がある。その中で岸本氏が国政から離れるのは勿怪の幸いなのだ。
さらに皮肉な結果だと苦笑するのは先の政界関係者。
「昨年の総選挙では“ 自民党候補(門博文)を落とせ”ということで共産党、立憲民主党、れいわ新選組が協力して岸本氏を応援したんですよ。事実、比例復活できないほどの惨敗でした。ところが岸本氏が一区を離れたとなると他に有力者はおらず、まず門氏の当選は固いでしょう。野党共闘で応援した岸本氏の県知事選で再び自民党議員が返り咲くなんて。結果論ですが、間接的に野党共闘が門氏を応援した格好ですよ(笑)。これは岸本氏に反発が起きるでしょうね」
いざ知事選になっても野党票は厳しいかもしれない。
改めて自民党の狡猾さ、エグさを感じずにはいられない。野党共闘といっても「反自民」でつながった脆弱な関係。それに野党の選挙戦術といっても奇異なパフォーマンスと特定の支持層に向けた甘い演説。本気で政権交代を目指すならばそれこそ“大人の言動と対応 ”をしてみては?
和歌浦漁港の朝市「しらすまつり」で挨拶する岸本氏。左端に芦原連合自治会長事件、金井克諭暉氏の還暦パーティー発起人を務めた他、二階元幹事長のツーショット写真にも登場した良誠工業・中山勝裕社長の姿が。なにやらキナ臭い。
世耕さんが衆議院に鞍替えって無いのでしょうか。二階さんでは?引退しても影響力持ちたいんですかね。
津市、熱海市の記事読ましていただいてます。