【広島市】市営住宅の 駐車場料金問題で 裁判が起こされた

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By 宮部 龍彦

筆者が既に訪れたことがある、広島市西区都町みやこまちの改良住宅の駐車場収益を巡って、7月17日広島地方裁判所で裁判が起こされた。提訴したのは改良住宅の住民で、改良住宅の自治会と駐車場管理組合の会計書類等を開示せよというもの。

背景にあるのは、過去に筆者が紹介した三重県伊賀市や、大阪府大東市の例と同様、改良住宅の空きスペースの駐車場収益が不適切に処理されているのではないかという疑惑である。

提訴した住民によれば、駐車場料金は1区画あたり2台までは毎月1,000円、3台目からは2,000円だという。少し前までは1, 2台目は1,500円だった。それが64区画あるので、年間で百数十万円程度の収益がある。

問題はその収益の行方。収益から駐車場の白線を引き直すといった維持管理費用を捻出するのだが、支払金額を証明する領収書や、積み上げてきた収益の残高が分かる預金通帳を住民でもほぼ見せてもらえないという。

また、自治会と駐車場管理組合は別団体のはずだが、度々駐車場管理組合の会計が自治会に組み入れられている。共用部分の照明やエレベーターの電気代も自治体の負担で、それが大きな金額になっているが、自治会費が安い分、足りない分が駐車場の収入で補填されている。

また、自治会の会計から駐車場のライン引きの費用が出ていることもある。自治会と駐車場管理組合の会計が事実上ごっちゃになっている状態だ。

提訴した住民は過剰に支払われた駐車場代があればその返還、あるいは今後の支払いが不要であることの確認をすることも検討したが、そもそも今支払っている駐車場代が適切に遣われているのか、金額が妥当なのかが分からなければ先へ進めないので、まずは会計書類等の開示を求めたということだ。

ただ、訴訟に至る前に、今まで自治会に積み立てられていた、1,000万円程度の貯金が居住年数に応じて返金されたという。

この駐車場料金については、他にも問題がある。写真から分かる通り、市営住宅の場所は広島市の市街地の真っ只中である。駐車場料金は住民にとって負担ではなく、逆にむしろ安すぎるのである。近隣の月極駐車場の料金は1万円前後が相場なのだという。

別の住民は次のように語る。

「この市営住宅は高齢化していて、もう車に乗らないのに、一人で3つも区画を借りて、それを月に8,000円で近所に貸しているような人がいる。(駐車場管理)組合の会計については私もおかしいと言ったことがあるけど、結局よく分からないままです」

事実とすれば、3区画分で毎月2万円くらいの差益を得られる計算だ。

市営住宅なので、駐車場の土地は、当然市の土地なのだが、市から住民に無償で貸し出されているという扱いになっている。住民と市との関係であれば、駐車場は無償で使えるというのが建前である。しかし、事実上は駐車場代が徴収されている。また、市の財産で個人が収益を上げられてしまうとすれば問題が大きいだろう。

しかし、駐車場が同様の扱いになっているのは都町の改良住宅に限った話ではないようだ。例えば隣の福島町にも多数の改良住宅があるが、ある住民はこう語る。

「福島町の市営住宅も自治会管理で月に500円ですよ。一昔前なんてタダで、その代わりに管理せずに放ったらかしだから荒れ放題でした。うちの自治会の場合は会計報告はしっかりしているし、又貸しというのは聞いたことはないですね」

また、ある市議によれば、「原爆スラム」として知られる基町もとまちの市営住宅も駐車場を住民が管理しており、そちらは月3,000円であるという。ただし、こちらも会計は行政側もチェックしていて都町のような問題は聞かないということだ。

なぜこのようなことになっているのか。市によると、昔は駐車場にお金を払うという概念がなくて、市営住宅の敷地内に適当に停めるような状態だったという。それがいつしか市営住宅の敷地を住民に無償で貸して、住民に管理してもらうという方式になったという。これは改良住宅に限ったことではなく、広島市内の市営住宅ではしばしばあることなのだそうだ。

当然、市としても問題を認識しており、いずれは市が直接管理し、それに伴って駐車場料金も周辺の相場に近いものに変える方針だ。しかし、一部の市営住宅ではそれが実現しているものの、遅々として進まないのが現状ということである。

今回問題となった改良住宅でも、実は半分以上は市が管理する附設駐車場になっており、その利用料金は月額8,400円で周囲の相場に合わせたものになっている。

提訴した住民によれば、市議会議員に相談しても「都町は特殊だから…」と、なかなか正面から取り上げてもらえないということだ。

本サイトの読者ならご存知の方が多いと思うが、福島町・都町の改良住宅は同和対策で建てられたものである。今回のことは“同和案件”と言えるのか? 古くからの住民に「特殊な事情」について、聞いてみると、声を潜めて意外なことを話し始めた。

「ここはもともと川だったから。私は近隣から来たけどね、ここに住んでいる人はほとんど朝鮮人だよ。福島町が原爆で更地になって、朝鮮からたくさんの人が移ってきたの。同和というのもあったけど、だからそういうことなのかは分からん。あとは、ヤクザは多かったよ」

そこで、都町に対する、あまり触れてはいけないというようなイメージが出来上がってしまったということが考えられる。ただ、自治会や駐車場の会計については、今回提訴した住民の他にも、在日コリアンの住民から問題提起されたことも過去にはあったという。

ただ、注意していただきたいのは、広島市においては本来は無償の駐車スペースで料金が徴収されているのは、同和対策の住宅に限らないということだ。

また、駐車場を市が管理するようになれば確実に駐車場料金が上がるはずで、住民がこのような裁判を起こすことに金銭的な得があるとは考えにくいが、今まで曖昧にされていた部分がはっきりするのであれば、興味深い裁判だろう。

なお、最初の口頭弁論が8月22日10:22に広島地裁で開かれる予定である。事件番号は令和6(ワ) 822号。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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