コロナ禍で裁判所も ソーシャルディスタンス

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By 宮部 龍彦

6月2日、全国部落調査事件の第12回弁論準備手続が行われた。これは本来4月4日に行われる予定だったのだが、ご存知の通り直前に首都圏でコロナウイルス感染者が急増して政府が緊急事態宣言を発令。

示現舎側は前々日に裁判所に対して弁論準備手続きを延期するよう上申書を提出しており、前日には裁判所は中止を決定。本件だけではなくて別の民事事件も手続きが中断されており、中止の判断は上申書の提出とは無関係だったと思われる。

そして、緊急事態宣言の解除とともに裁判が再開されたわけだが、裁判所からクラスターを出さないために感染予防対策は続けざるを得ないため、今回の弁論準備手続は電話会議による異例なものとなった。

裁判所はIP電話にかけられない?

全国的に緊急事態宣言が発令されたことにより、破産や一部の民事保全手続のような緊急性の高い事件を除いて、民事事件が中断された。影響は刑事事件にも及び、示現舎がウォッチしているいくつかの事件も軒並み公判期日が延期された。しかし、これらも緊急事態宣言解除後、徐々に再開されている。

全国部落調査事件も改めて6月2日に期日が指定されたのだが、延期されただけでなく、その方法も電話会議によるという異例なものであった。

弁論準備手続は、公開法廷で行われる口頭弁論とは異なり、以前から電話会議は認められている。ただし、それは裁判の当事者が地理的に離れた場所に住んでいる場合、当事者の負担を減らすために行われるものだ。そのような趣旨のものなので、当事者全員が電話会議での参加ということはできず、原告被告のどちらか一方が裁判所に出頭することが条件となっている。

全国部落調査事件では多数の原告は全国各地に散らばっているものの、訴訟代理人が東京におり、被告である示現舎も東京の通勤圏内にある。このような状況で、感染症防止対策を理由として電話会議が認められるのは異例なことと言えるだろう。今回は原告側の訴訟代理人から代表者が1名だけ裁判所に出頭し、他の当事者は電話での参加となった。

しかし、ここで意外な問題が露呈している。実は筆者は裁判所にSkypeの電話番号にかけることを提案した。手続きには筆者と三品の参加が求められているのだが、Skypeのグループ会話機能を使えば、2人が遠隔地にいながら会話に参加できるからである。

当然、裁判所としてもそれを認めない理由はないはずなのだが、裁判所に技術的な問題により断念せざるを得なくなった。裁判所書記官が言うには、裁判所の電話はIP電話につながらないというのである。全てのIP電話につながらないわけではないようだが、試しに裁判所からSkypeの電話番号にかけてもらったところ、やはりつながらないということだった。

昨今は電話会社がIP電話への切り替えを進めており、企業でも市外局番の付いた従来の固定電話の番号に代わって、050で始まるIP電話専用の電話番号を代表電話に使うことにも抵抗がなくなりつつある時代。裁判所がIP電話にかけられないというのは、いつまでも許されることではないだろう。

仕方がないので、携帯電話のスピーカーフォン機能を使ったのだが、裁判所からかかってきた電話はなんと非通知設定。非通知での着信を拒否していた場合はどうなるのだろう。また、裁判所からの電話だと偽って詐欺をすることも比較的容易なように思われる。

口頭弁論はソーシャルディスタンス

今回の弁論準備手続の議題は、口頭弁論を再開して行われる証人尋問である。裁判所としては被告2名に加えて原告2名、それに加えて「部落解放同盟関係人物一覧」「全国部落調査」との関係について証言する原告側の証人最大6名、合計で最大10名に対して尋問を行う方針が示された。

その趣旨は、被告は2名だけなので当然のことで、原告2名は代表者と、そして反訴被告となっている川口泰司氏は必須ということである。そして、次の累計に属する原告の証人を指名することとされた。

  1. 解放同盟関係人物一覧に氏名と役職が掲載されているが、以前からそのことを公言している
  2. 解放同盟関係人物一覧に氏名と役職が掲載されているが、以前からそのことを公言していない
  3. 解放同盟関係人物一覧に本人の情報は掲載されていないが、親族の情報が掲載されている
  4. 全国部落調査に掲載されている地名に現住所や本籍地があり、部落出身ないし解放同盟員であることを公言している
  5. 全国部落調査に掲載されている地名に過去の住所や本籍地があり、部落出身ないし解放同盟員であることを公言している
  6. 全国部落調査に掲載されている地名とは直接関係していないが、親族が関係している

ここから、裁判所がどのような判決を書こうとしているか、何となく見えてくるかも知れない。

そして、証人尋問は公開法廷で行われるのだが、ここで問題となるのが感染症防止対策である。東京地裁のいわゆる大法廷では通常100名の傍聴人を入れられるのだが、間隔を開けて座らせるため、現在は30人に制限されている。また、以前の口頭弁論では原告席に直接参加を希望した原告がぎゅう詰めになっていたのだが、今の状態ではさすがにそれは出来ないということである。

裁判所としては、発言する当事者とは2メートルの間隔を空けること、そうでない当事者とも1メートルの間隔を空ける方針であることが明らかにされた。傍聴席も当事者席もスカスカの状態で裁判が行われるので、どうしても希望者全員参加はできないというのである。

そこで出された方針が、傍聴券で入れる一般傍聴席は15名程度、その他を特別傍聴席として原告被告双方の関係者に割り振る。直接参加できる原告も相当減らす必要があるということだ。解放同盟側は50名程度が直接参加あるいは傍聴席に座ることを希望していると明らかにされたが、到底それは無理ということだ。

なお、示現舎側もおそらく数名程度は特別傍聴席を確保できるので、傍聴熱望の方は、ぜひ6月15日までにご連絡いただきたい(希望多数の場合は抽選します)。

原告側の提出文書は次のとおりである

準備書面18・19.pdf
準備書面20.pdf
証拠説明書353-359.pdf
阿久澤麻理子意見書2.pdf

被告側の提出文書が次のとおりである

上申書-R2-4-6.pdf
尋問事項書_三品純-R2-4-1.pdf
尋問事項書_宮部龍彦-R2-4-1.pdf
準備書面12-R2-4-1.pdf
準備書面13-R2-5-26.pdf
証拠説明書-R2-4-1.pdf
証拠説明書-R2-4-6.pdf
証拠説明書-R2-5-26.pdf

双方の主張についての解説は「神奈川県人権啓発センター」チャンネルで行う予定なので、ぜひチャンネル登録していただきたい。

裁判に深い関心を持ち、全ての裁判資料をご覧になりたい方は示現舎の問い合わせフォームからご連絡いただきたい。

次回弁論準備手続は7月20日14:00を予定している。

証人尋問の日程は、次のとおりである。

8月31日
9月14日
9月21日

なお、今後コロナウイルスの第二波、第三波が来ると言われているため、状況の変化により、再び証人尋問の日程が変わる可能性がある。

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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