関市議会は18日から一般質問が始まったが映画『名もなき池』をめぐる追及は注目だ。答弁したのは新原光晴氏に近いとされてきた今井田和也産業部長。今後の課題として同氏は「チェック体制の強化」などを挙げたが具体的な方策は見えてこない。それどころかイロハ社の杜撰な提出書類を見極められなかったのは失態だ。(写真は板取地区イロハカフェ前の新原氏=読者提供)
関市議会で『名もなき池』が追及
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一般質問で答弁した今井田産業部長は関市映像作品撮影事業審査会の審査員でもある。つまり『名もなき池』(旧名はもん)を推した一人。同事業の補助金で製作された『怪獣ヤロウ!』(株式会社ファニーパンドラ)はこちらはヒット作になった。しかし審査会での評価はファニーパンドラが次点。作品内容を精査した上で、適正な審査が行われたのか疑問だ。
18日、田中巧市議が『名もなき池』の問題点と総括について質問。
今井田氏は「プロポーザル審査に用いた関市事業補助金の募集要綱において詳細な取り扱いの規定が不足していたことだと考えられ結果的にトラブルの要因の一つになったと推察されます」と説明。
次いで19日、北村隆幸市議が会計のチェック体制について問うと「1年目の実績報告書につきましては 映画撮影のロケ案などの進捗状況を常に確認しており補助金交付対象者が審議を重んじて映像作品撮影事業を履行したと認識していましたそのため提出された書類を疑うこともなく内容を確認し適正であると判断しました」と今井田部長は述べた。
また撮影現場ではトラブルが続出しているにも関わらず2期目に1千万円を概算払いで支出したことについても問われた。同市では別事業で概算払い問題化しており、なぜ教訓にしなかったのかというのが質問の趣旨だ。
今井田氏は「概算払いが問題化したのは本事業の2年目となる時期であり課題などは共有していたものの同時期に 進行している事業であったことからその教訓を事業に反映することが難しく対応できませんでした」と答弁。市側も〝当惑している〟といった様子がうかがえる話しぶりだった。
しかし疑問が残る。新原氏の知人によれば
「新原氏は〝振込先を書いたらすぐ1千万円が入金された〟と言っていました。一方で、恵水さんに対してはまだ手元に1千万円は振り込まれていないと説明していましたよ」
と証言する。事実とすれば「教訓」どころか「ザル」と表現する他ない。
関市に限らず補助金をめぐる不祥事やトラブルが横行するが公金の扱いが粗雑なのは否めない。問題はすでに1期目の交付の段階で、新原氏の撮影体制を危ぶむ声があったにも関わらず関市が見抜けなかったという点だ。
怪しいクラウドファンディング
1期目の2023年5月18日にイロハ社が関市に提出した収支予算書を再掲する。クラウドファンディングの項目には800万円との記載。
また収入明細書には予定としてクラウドファンディングが1800万円集まると報告した。企業協賛金としては約430万円と計上。いずれも関係者は即座に「嘘」と断言する。真実ならば明細を見せてほしい。


1期からのウォッチャーはこう証言する。
「新原氏はクラウドファンディングサイト『キャンプファイヤー』で寄付を募っていました。クラウドファンディングと言っても〝寄付〟というより〝押し売り〟でしょう。映画の出演権やエンドクレジットに協力者の個人名を掲載等に値段をつけて権利を販売するのです。ところが補助金問題が取沙汰されるようになるとこっそり削除されていました」
しかし1期目の段階で早くも「怪しい」と看破したウォッチャーらがサイトのスクリーンショットを保存していた。



寄付をすると「リターン」として様々な特典が付与される。寄付というよりも映画製作を切り売りしているかのようだ。もちろんクラウドファンディングには「購入型」で寄付を募る形式がある。だが映画の趣旨に賛同した、または新原氏を支持した寄付者が一体、何人いたことか。
しかも800万円どころか予定では1800万円が集まると関市に報告していた。実際の金額は全く遠く及ばない。「財務状況は好調だと見せておかないと関市から金が引っ張れないという思惑でした。キャンプファイヤーで集まった約100万円のうちいくらかはイロハ社や新原氏が入れたものです」(元スタッフ)
キャンプファイヤーで集まった金額は外部からでも確認可能だ。しかも「クラファンには関市役所の人が〝私たちも応援しています〟という風に掲載されていました」(ウォッチャー)という証言は見逃せない。
つまり市側もクラウドファンディングで集まったのは116万4500円だと把握できたはずだ。どちらにせよクラウドファンディングの報告自体が「虚偽」であるのは明らかだ。さらに悪質な手口が判明した。
関係者「請求書の誤りがそのまま関市に報告されていた」
ある時はシン・ベートーヴェン、『ライオンキング』のシンバにちなんで自身を「新場」と名乗る。また昔はF2レーサーだったと周囲に吹聴する他、地域創生プロデューサーとの肩書も持つ。ベートーヴェンのコラ画像を使用し、顔出しを避けるのも〝身バレ〟防止のためなのだろうか。
主演の伊達直斗を新原氏に紹介した実業家Ⅿ氏も「いつもトラブルを起こしているから素性を知られたくないのでしょう。名刺ですら本名は書いていません」と一笑に付す。
報酬をもらっていない関係者が大多数の中で、撮影を担当したB社など複数の会社、個人が関市から調査書が送付された。スタッフや協力会社がイロハ社側に送った請求書の中に水増しが確認されており、そのことを調べるための調査書である。
報酬もない上に、行政から聞き取りを受けるとはまさに泣きっ面に蜂。イロハ社と新原氏は多くの人に損害を与えてしまった。各氏が沈黙する中である関係者X氏の証言は重要だ。
「実は関市役所が私に送付した調査書が住所違いで届かなかったということがありました。そこで関市の方にどの住所で送ったのか確認したところ番地が違っていました。なぜだろうと思いましたが、誤った住所を聞いてピンときましたよ。以前、別件の仕事でイロハスタンダードに請求書を送ったことがあります。その時に請求書の住所の番地を間違えて記入してしまったのです」
皮肉にもそれが請求書偽造を裏付ける証拠と言える。
「イロハ社側が住所違いの請求書を流用して作成したと思われます。間違った住所もそのまま掲載されていたというわけです。言い訳できないと思いますけどね」(X氏)
では誤った住所付きの偽請求書の作成者は一体、誰なのか? 請求書偽造問題に詳しい市関係者の話。
「新原氏かあるいはイロハ社代表の系谷瞳氏かそれは分かりません。ただし以前の取り引きで出入金の窓口は系谷氏でした。新原氏が主導的な立場には違いありませんが、系谷氏が何も知らないということはないと思いますよ」
もはや偽造私文書行使の疑いどころか詐欺同然のやり口ではないだろうか。
同関係者の誤った住所が表記された請求書について関市観光課に聞いたが――。
「以前もお話しました通り、刑事告訴中のことですのでコメントは控えます」
市としてはこう言わざるを得ないだろう。「現在、職員たちの事情聴取が行われています。一方で豊岡のイロハ社店舗はジブリグッズが撤収され、事実上の閉店状態。イロハ社は八方塞がりといったところですが、新原氏は妙に余裕な様子なんですよ。いつも通り、岐阜市の自宅と板取地区の店舗を行き来しています」(前出市関係者)
名もなき池騒動も新原氏が主導的な役割を果たしてきたのは事実。だが関市への報告書等は全てイロハ社・系谷瞳社長の名で提出されたものだ。新原氏が本当に余裕とすれば「責任者は系谷」と考えてのことだろうか。