【和歌山県】仁坂知事5選断念! VS 二階俊博“ に・に戦争”は痛み分け

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By Jun mishina

和歌山県・仁坂吉伸知事が5選出馬断念。今年12月に任期満了を迎える仁坂知事は「慣例により議会で表明する」との意向を示しており注目が集まった6月定例会。6月15日、5選目の県知事選に出馬せずと明言した。地方のイチ県知事の動向に色めきだつのは“政界のドン ”自民党・二階俊博元幹事長の後継者問題に影響するからだ。すでに知事選に出馬表明した岸本周平衆議院議員も相まって衆参入り乱れた壮絶な玉突きゲームが展開されようとしている。しかも二階ジュニアも絡むから面白い!

火種を残した 仁坂知事の不出馬表明

穏やかな風貌だが…。

五選目をめぐる仁坂知事の意志表明に地元政界関係者、マスコミが注目する。出馬の有無に関わらず知事の意向次第で地元国会議員の玉突きゲームも変わってくるからだ。

それぞれ思惑や予想が錯綜する中、前日14日の『産経WEST』が出馬断念と報道。しかしこの一報に追随したメディアはない。なぜなら産経がいわゆる“とばし ”で「出馬濃厚」との予想が強かった。「反仁坂の自民党県議や県幹部が産経にリークして知事を揺さぶった」(県関係者)という証言はつまり知事の心理が直前まで揺れたことを示す。

出馬説、そして知事の動揺には根拠がある。

まず仁坂知事の人間像に触れておきたい。仁坂知事は東大卒のエリート官僚出身、人気アニメのあのフレーズ風に言えば「見た目は大人、頭脳は明晰」、ただ内面がしばし「大人げない」と揶揄され、スマートな風貌に反して実は激情家である。

迎えた15日、自民党県議団・谷洋一県議からの質問に対し、仁坂知事は多選の弊害などを理由に「今季限りとさせていただきたい」と述べた。口調こそ穏やかだが「内心ははらわたが煮えくり返ったのではないか」と知事支援者は観ずる。

「10日に自民党・秋月史成県議からIR誘致を議会で否決された点について質問があったんですが…」と先の支援者は事情を説明する。こういう話だ。

同県議は当選2回目の若手。仁坂知事の答弁後、秋月県議は

「敗軍の将、兵を語らずという諺があります。私はそのように思います」

こう切り捨てた。

「仁坂知事からすれば当選2回目の小僧っ子がっ!と怒ったに違いありません。勝気な知事だから五選を果たして逆襲するというのは十分、予想できました」(前支援者)

敗軍の将とは辛らつな表現だ。しかし秋月県議のいわんとすることも一面理解できる。先の県関係者は「そりゃ言われますよ」と苦笑し、敗軍の将発言の“伏線 ”を説明する。

「和歌山県HP『知事からのメッセージ』(5月10日)の『和歌山IR否決のその後』なんですよ。どこの自治体でも首長のコラムや主張があると思いますがおおかた“ 政治理念”や“ 祭りやイベントが成功した”とか無難な話でしょ。ところが仁坂知事はズラズラとIR否決への恨み言を述べたのです」

議会で反対票を投じた議員の方々はそれぞれ信念をもって議決権を行使されたわけですから、それぞれに反対理由があるでしょうから、それが間違っているとは誰も言えません。ただそれぞれ支援者の方々や県民全体に対して、なぜ反対をされたのか、おそらく多くの方々から説明を求められると思いますので、それにお答えされたらいいと思います。(一部引用)

長い文章だった。言葉を選んだ文面なのは伝わるが、反対派への怨念に満ちた気がしてならない。秋月県議の質問は単純明快に表現すれば「普通、県HPで知事個人の恨み節を書くかぁ?」というものだ。

「だからその辺りが大人げないっていうんですよ。さらに意味深長と囁かれるのが6月9日の『友は裏切らない』というメッセージです。これまた恨み節を思わせる内容で(笑)」(前出関係者)

私が今までお付き合いをいただいてきた人の中には、いわゆる「大物」として世の中で尊敬されている人がいます。名を挙げるのは憚(はばか)られるので挙げませんが、そういう人に共通の生き方を挙げよと言われればそういう人は「友を裏切らない」人だと思うということです。(一部引用)

次期知事選への意向を表明する直前に「友は裏切らない」との表題。知事選と無関係のはずがないというのが関係各氏の一致した見方。一見は、友情を説いたコラムだが、人間関係で何らかの亀裂が生じたがゆえにこう綴ったという。

「ここで言う大物とは、対立関係にあった二階俊博元幹事長だと思われます。知事と二階氏は対立していたから意趣返し的な意味で“友 ”と暗示したのでしょう。裏切り云々について実は下宏しもひろし副知事を指したと推測されています」(前出関係者)

下副知事は本来、盟友に違いないが、仁坂知事との間に不和が生じたという。その原因は国政人脈も絡む。

「安倍首相のブレーン、本田悦朗元内閣官房参与を副知事に抜擢しようとした際に下さんに全く相談していなかったんです。5選目について質問した谷県議と下さんは地元が東牟婁郡で同郷。その縁から質問を依頼したのではないか、と」(地元記者)

年下県議に「敗軍の将」とバッサリやられ、自民党会派への恨みも募る。知事の人柄を熟知した関係者にすれば「五選を果たしてリベンジ」というシナリオがよぎったが、すでに孤立化した仁坂知事は意欲を喪失した。それが5選断念の内幕である。

自民党の玉突きゲームに 二階ジュニアがどう絡む?

「仁坂知事が5選目断念」

胸をなでおろしたのはすでに知事選へ出馬表明した岸本氏だろう。さすがに現職の壁は厚い。一方で、長らく衆院選和歌山一区で当選し続けた岸本氏が国政から離れる。ただでさえ3区から2区に議席が一減する和歌山選挙区の候補者にとってはありがたい話。

県内には大臣経験がある世耕弘成、鶴保庸介両参議院議員がおり、両氏も衆院選への鞍替えを狙う。本来ならば岸本氏は辞職し知事選に備え、それに伴い補選が行われるはずだった。ところが

「一票の格差訴訟で和歌山が対象地域に含まれており、最高裁の判決が出ない以上、補選が開けないのです」(前出地元記者)

県選挙管理委員会にも確認したが、公職選挙法33条の2の7項に「訴訟の出訴期間又は訴訟が係属している間は、行うことができない」と規定され、同法に沿って言えば補選は来年4月とみられる。

補選があれば鶴保氏の転身、または落選中の門博文氏が再挑戦というのもありえた。実際に門氏は6月5日に結束式を開催しており、意欲満々。

ただし「自民党側は一票の格差訴訟を“ 知らんかったとちゃうか”という憶測もあります」(同記者)と囁かれアテが外れた可能性もある。

加えて岸本氏の背中を押したのが自民党県議団というのは周知の事実。しかし出馬表明で

「後継(和歌山一区)は民主党系が望ましい」

との見解を示しており、「自民の言いなりにはならないというメッセージ」(旧民主系議員)という見方が強い。

そこで密かに名が浮上しているのが

「朝日新聞出身で和歌山大学経済学部の足立基浩教授ですよ。若いし町おこし事業でも実績があります。仮に足立教授が岸本氏の後継者になった場合、不祥事が報じられてきた鶴保・門両氏よりもイメージが良い。自民党候補は間違いなく苦戦します」(前出記者)

一区は長年、岸本氏が死守した地盤。状況も民主系に有利だ。

となると長年のライバル・岸本氏が一区を離れても単純な玉突きでは収まらない。

しかもここに来て二階氏の意向や影が見えないのも不思議だ。本来は鶴の一声で方針が決まるはずだが…。

「すでに幹事長職ではないから和歌山県政のドンとは言え選挙への影響は間違いなく落ちています。後継者問題だけが気がかりで三男(伸康氏)にどう継がせるのかが専らの心配事なんですよ。二階王国の三区が消えた以上、さすがに衆院選挙区は難しい。世耕氏か鶴保氏に衆議員議員に転身してもらい、伸康氏を参院選挙区に送り込めば最良のシナリオでしょうね」(全国誌記者)

伸康氏と言えば二階氏と関係が深い大阪中国総領事館に名代として派遣されたのは以前、報じた。二階幹事長、三男秘書が 大阪中国総領事館で 受けた「恩返し」

父親の中国ルートも引き継ぐ?

この通り、三男に花を持たせ政界挑戦へ準備を続けてきた。ただし長男・俊樹氏、次男・直哉氏の処遇も父親としては悩ましい。さすがの政界のドンもすでに県選挙区全体を考える余裕がないのだ。

対立関係にあったとされる二階ー仁坂両氏。二階氏にすれば仁坂知事の5選断念は“してやったり ”かもしれないが、自身の後継者問題が残る。という意味ではこの二階、仁坂の「に・に戦争」は痛み分けといったところだろうか。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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