2023年、自民党の政治資金パーティー収入の一部が各議員側に還流されながら、収支報告書に不記載、過少記載が表面化した。また一部の都道府県議会でも発覚したが、岐阜県議会・恩田佳幸県議もその一人だ。還付金の不記載が報じられたが、使途について関係者から疑問が寄せられている。恩田氏は来春の山県市長選に立候補する意向だが、政治資金問題に加え、威圧的な言動に対する反発も強く、「もう許せない」との声が相次ぐ。(写真=恩田氏)。
武藤容治県連会長の秘書を怒鳴る!

今年3月20日、朝日会館(岐阜県山県市)で開催された恩田佳幸県議(44、山県市選挙区)の「在職10周年感謝の集い」。30代で県議になった順風満帆の政治キャリアである。
年齢的に若手の恩田氏だが「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ではないようだ。
会合の終了後、自民党岐阜県連会長、武藤容治衆院議員の秘書をこう叱責した。
「なんで報告してこんのや!」
周囲にはまだ党関係者が残っており、一同あっけにとられた。だが地元・山県市の党員らにすれば珍しい光景ではない。
「もし恩田氏が市長になったら〝一人一台、ICレコーダーが必要だ〟と戦々恐々です」(同市職員)
市内には恩田氏のポスターが無数に貼られ、目抜き通りである国道256号(高富街道)沿いでも次々と視界に入る。これでは〝恩田回廊〟だ。
お世辞にも評判が芳しくない恩田氏。それでも来年の統一地方選では山県市長選に出馬する意向だ。
「市長なんてやらせたらアカン」(党関係者)、「あの人が市長なら美山支所(遠方の勤務地)でええわ」(市職員)といった厳しい声が聞かれた。ここまで周囲を萎縮させる恩田氏はどのような人物なのか。
市議選で1700票獲得「公明党ですら1200なのに」
恩田氏は2012年、29歳の時に山県市議選で1745票を集めトップ当選。選挙にはみんなの党・渡辺喜美代表が応援演説に訪れた。
当時、恩田氏は桜内文城・元衆院議員、薬師寺道代・元参院議員の秘書を務めていたと公言していた。だがその経歴は現在のプロフィールから確認できない。薬師寺氏の関係者によれば「ボランティアやインターンのような立場ではなかったか」ということだ。
最近では「〝永田町周辺をウロウロしていた〟 と話している」(元支援者)という話にスライドしたようだ。
だが新人候補ながら渡辺氏を応援に呼べたことは有権者にも一目置かれただろう。
「山県は公明党ですら1200~1300票なんですよ」(地元政治通)
という背景を考えると恩田氏の快挙といってもいいだろう。このため市職員には「1700票をとったからな」と誇示するようになった。すると地元政界の力関係が崩れていく。
「林宏優・市長(2011年~現職)を応援する地元有力者の『誕生の会』に恩田君も参加するようになったんや。市長が1期目の途中になぜか〝恩田君を市長に〟という話が出てきたから周囲もビックリ仰天。〝だったらアンタらは何のために林さんを応援したんや〟と怒って会を離れた人もいたよ。それでも恩田君の後援会長だけは残ったけどね」(前出元支援者)
議員経験も浅く、行政経験もない、ましてや県議として地元に金や事業を引っ張ったわけでもない。そんな恩田氏を担ごうとした地元の有力者の判断も疑問だ。
そして2015年4月、統一地方選の県議選で初当選した。以降、県議選で3回当選し、来年の統一地方選では市長選を目指す。
「彼は前回(2023年)の市長選も意欲満々でした。ところが岐阜自民のドン、猫田孝県議に〝せめてもう一期待ったらどうや〟と説得されました。支援者からも〝仮に市長を3期やったとしても50歳そこそこやろ。その後の人生をどうするんや〟と呆れられていましたね」(自民党員)
それが現在では誰も「ノー」と言えない状況になった。恩田氏の政治資金問題でもそれははっきり見て取れた。
パー券キックバックをNHKも報じたがその後は…
政治パーティーの還流金不記載問題は自民党を揺るがす大問題になった。それは恩田氏も無縁ではない。
2023年12月11日、NHK NEWS WEBは「自民党県連の政治資金パーティー 一部支部が還付金を記載せず」と報じた。
記事によれば県連の収支報告書には2回(令和2年、令和4年)のパーティーで1億3300万円余りを36支部に支出したと記載。ところがこのうち岐阜支部、北方支部、可児市支部、そして山県支部が不記載だったという。
恩田氏が代表を務める自民党山県市支部は約338万円の還付金のうち約250万円を記載していなかったとの指摘を受けた。だがこの報道だけでは不十分だ。
不記載は訂正によって形式上は修正可能だが、それで説明責任まで果たされたことにはならない。実際、指摘を受けた県議らは、自身の後援会に入った還付金を支部に戻す処理を行った。
これは当然のことだ。ところが山県支部の場合、還付金の大半は「恩田よしゆき後援会」に収められたままだ。
そこで取材で入手した収支報告書を掲載する。




令和2年度、4年度分の報告書と取材したデータをまとめて表にした。

令和2年(2020年)に県連から受けた還付金は172万円(振込日=同年11月27日)ということが判明している。
また令和4年(2022年)の還付金は166万4千円(振込日=同年11月18日)だ。
令和2年分の修正前は「政経文化セミナー還付金」39万円との記載がある。ところが修正後は交付金が172万円でさらに恩田よしゆき後援会に133万円が支払われた。
また令和4年分についても修正前の「政経文化セミナー還付金」は48万円。ところが修正後は還付金が166万4千円で恩田よしゆき後援会に118万4千円が支払われていた。
恩田よしゆき後援会への還付金総額は251万4千円。だが使途は明らかになっていない。また通常、パーティーは2年に1度開催されチケットは1枚2万円が相場。県議だけではなく市議や党員も販売しており通常は販売者にも還付金を分配するという。ところが販売しても還付金が分配されていない党員もいた。
表を見ても分かる通り還付金の7割が恩田氏の後援会に入ったが、配分は誰が、どのような基準で決定したのか。
報道でも不記載が指摘された当時、内外から批判が殺到した。さすがに恩田氏も「無視」というわけにはいかない。そこで2023年12月18日の支部臨時役員会で謝罪文を提出した。

ところが全く謝罪になっていないという批判を受けて翌年、もう一度、謝罪文を郵送で送った。再提出した謝罪文を読んでみても内容は同じだ。なぜ同一の謝罪文を送付したのか関係者も首を傾げた。

政治資金収支報告書に不備があったことは認めたが、なぜ不備が生じたのか、誰に責任があるのか、資金が実際にどう動いたのかについて、具体的な説明はない。謝罪文を読み解くとこういう主張だ。
恩田氏の主張→ 県連からの還付金は、山県市支部と県議会議員個人の政治団体で収入計上していた。
訂正した理由→いったん山県市支部で全額を収入に計上し、他の政治団体への支出も同支部で計上する必要があったため、報告書を訂正した。
結局のところ、外部からの指摘を受けて初めて訂正に動いた格好だ。本来であれば謝罪文に還付金の金額と資金の流れを明示し、説明すべきではないか。しかも、令和2年、令和4年の双方で同様の不記載と訂正が生じた点は不自然だ。
それどころか肝心の恩田よしゆき後援会に支払われた251万4千円の使途は藪の中だ。
問題はこれだけではない。

会計監査には「古川雅一」「寺町祥江」という両担当者名がある。古川氏は山県市議会議長、寺町氏は副議長で、両氏とも恩田派の市議なのだ。

通常、監査には地域の会社役員や税理士など、議員本人から一定の距離を置いた人物が就くことが多い。現職議員を監査役に据えれば、会計処理に問題が生じた際、政治的にも法的にも巻き込まれるリスクがあるためだ。ところが山県支部は市議が監査。しかも現在は議長、副議長である。
なぜ議員が監査を務めるかと言えば単純に引き受け手がいないのだ。
「Fさんという地域住民が監査、会計を務めていたけど〝もうやっとれん〟と支部を離れたのです。しかも自民党員まで辞めたのだからよほどのことがあったのでしょう」(自民党員)
誰の目にも「なぜ2年度にわたり過少計上が起きたのか」「監査担当者は何を確認していたのか」という疑問が浮かぶだろう。それは〝お手盛り監査〟と評しても決して言い過ぎではないはずだ。
疑問点はまだ続く。
選挙対策費でバス代は簗前農相と同じでは?
令和2年の報告書をみると支出の部「選挙対策費」にバス代等として15万2426円が計上されている。同年に大きな選挙はなかったが「選挙対策費」でバス代というのが疑問だ。
バス代を巡っては、簗和生前農相が「予算カット発言」に加え、有権者向けシャトルバスの問題で辞任に追い込まれた。恩田氏のケースが直ちに同じとは言えないが、少なくとも「選挙対策費」に計上されたバス代については、用途や利用実態を具体的に説明する必要があるだろう。
令和4年の場合は定期大会バス代、セミナーバス代と名目が記載されており、しかも項目は活動費である。
ところが選挙対策費でバス代というのは謎だ。こうした点を踏まえると、令和4年には「選挙対策費」という項目が消え、より具体的な費目へ振り分けられていることも気になる。問題意識を受けた会計処理の見直しだった可能性も否定できない。
なお簗氏はバスについて「出陣式会場」と、別途用意された「臨時駐車場」の間を往復させ、車で来場した支持者らを移動させたと国会で答弁した。簗氏は10月13日の予算委員会で、シャトルバスの借り上げについて選挙管理委員会から「問題ない」との回答を得たと説明。ところが翌日、「収支報告書の作成に関する照会だった」と答弁を修正した。「合法」か「違法」かの確定的な判断はないが、グレーゾーンな行為である。
では恩田氏は選挙対策費のバス代についてどう説明するのだろうか。(続)



