【深層レポート】三重県津市の闇 相生町自治会長問題(4)

示現舎取材班 By 示現舎取材班

津市相生町の田邊哲司自治会長が市役所や市議会に不当な介入を続けてきた問題。今回は、田邊会長による議会への介入のさらなる詳細と、田邊会長が津市に影響力を持つようになった背景をさらにレポートする。

道の駅店員へのクレームを市議会で質問

田邊会長の息がかかった市職員、議員、市民は様々だが、福田慶一議員もまたよく浮上する名だ。話は今年の3月3日の定例会に遡る。この時に同議員は津市河芸かわげ町の「道の駅津かわげ」についての質問に立った。

同施設は「山のもの 海のもの 津のもの すべてそろう かわげの丘」をコンセプトに2016年に開業した。施設内では農水産物の直売、お土産売り場、レストランが併設された他、各種イベントなども催され県外からも観光客が訪れる。昨年9月には来場者が300万人を突破したというが、なぜかこの施設を問題視した。少し長いが質問内容をそのまま転載する。

本当に道の駅に来ていただいた方々が、満足していらっしゃるのでしょうか。先日、市民の方から、正月に道の駅津かわげを訪ねていたときに、非常に不愉快な経験をしたとの御相談がありました。お聞きしましたところ、市民サービス第一、お客様満足が第一あるべき物販施設において、市民を小ばかにしているような上から目線で、従業員並びに管理者の接遇があり、年始から大変気分を害されたそうです。相談いただいた方によると、自分たちだけではなく、まずほかのお客様方にも、自分たちが経験した客を客とも思わない接遇をしている可能性が大いにある、そのことが、津の損失ではないかとも心配をされておられました。また、津市の公の施設であり、公共性・公平性が尊重されるべき道の駅で、このような接遇が行われていることに、甚だ憤慨をされておられました。(中略)「市としては、この事業者の理解をどう把握されているのでしょうか。また、これからどう指導されていくお考えなのか、お伺いをいたします」と

例えば指定管理者である企業の不祥事、あるいは会計上の不正、食品偽装、衛生上の問題、こうした点で問題が発覚したらこうした質問も納得がいく。しかし「市民を小ばかに」「上から目線」の従業員の接遇が問題だという。議会で取り上げるにしては、あまりにも些末な問題である。

次いで福田市議は市の指定管理者の事業者選定、入札方法などについて問うた。それに対して回答したのは河芸総合支所長。

今回、道の駅津かわげにおいて、お買物途中のお客様から、食事をしたいがレジを通さなければいけないかとのお尋ねがレジ担当者にあり、その際の従業員並びに駅長の不適切な接遇により、お客様に大変不愉快な思いをさせてしまいました。誠に申し訳ございませんでした。道の駅津かわげは、地域の連携機能として、津の海の物から山の物が一堂にそろい、お買物などを楽しんでいただく施設でもあり、お客様へのサービスが重要視される施設であります。今回のことは、このサービスが大切となる物販施設において、最も基本となる接遇マナー教育が従業員に徹底されておらず、お客様の立場に立った親切で分かりやすい対応、接遇をできなかったことが要因でございます。対応した従業員、駅長はもとより、所管する総合支所といたしましても、指定管理者に対して、お客様に対する接遇や対応の確認及び指導が不十分であったと反省をしており、今回のことを教訓に、指定管理者に対し、接遇マナー教育をより一層徹底し、再発防止を強く求めました。

お買物途中のお客様から、食事をしたいがレジを通さなければいけないかとのお尋ねがレジ担当者にあり」とあるが、レジでどなたかがゴネたのであろう。それに対してご丁寧にも議会で市幹部が謝罪する。それにしてもなぜ突然、道の駅が餌食になったのか。市関係者は苦笑する。

「田邊さんは自分が道の駅を運営をやりたくなったのですよ。そこで子飼いの議員である福田市議を使って質問をさせました」

テレビでも取り上げられ大勢の観光客を集め、パン・デザート類、ご当地グルメなどにはいわゆる「映え」を狙った若者たちも訪れる。そんな人気施設の運営に関わりたくなったのだろう。そこで福田市議を使って市に揺さぶりをかけてきたというのである。

議長から田邊に現金を「相場は30万円」

議長職をめぐっても一部の議員と市幹部は奇妙な動きをした。副議長職をめぐる田邊会長の圧力についてはすでに前記事や動画などでお分かりいただけるだろうが、並行して議長職に対しても不可解な事態が起きていた。強いて言えば「あられ事件」とでも言うべきだろうか。津市議会ではおそらく知らぬ者はいないだろう。

岡前議長が辞任した後、後任選びは難航した。というのは必ず面倒ごとになるからやり手がなかったのである。そんな中で公明党議員団の加藤美江子市議が手を挙げた。市議会関係者によれば「加藤市議は経験豊富でとにかく膿を出し切る、という意気込みでした。またご主人が弁護士という点もいざという時の強みがあったかもしれません」と評価する。

就任した7月3日のこと。「この日、田邊から加藤氏の自宅に花束が届いたのです。どんな程度のものか分かりませんが、とにかくものすごく立派なものだったと聞いています」(前出関係者)

花束が後援者からのものなら分からない話でもないが、加藤市議は田邊会長と何ら付き合いがない。ただ議長選挙と花の御礼が必要だと知らされ辻美津子議員(会派/市民クラブ)に付き添われ、あられなどの贈答品を持って挨拶に行った。

しかし田邊会長からは「挨拶が遅い」「わしゃ親からこんな教育は受け取らんぞ!」こんな風に突き返されたという。

そしてある議員はこう声を潜める。

「いわば仲裁役の辻議員が“最初だけでいいから現金を持っていった方がいい。相場は30万円やから ”と耳打ちしたそうです。ところが加藤さんは“ 法律家の女房がそんなことできるか”と突っぱねたのです」

正面から田邊会長に「ノー」と言った稀有な例だが、そのせいで加藤議長おろしが始まるのだ。

それからしばらくたち8月20日、とにかく議会内がギクシャクしていることから加藤議長の発案のもと議員懇談会を開催することになった。開催前からどこからともなく議員らに「欠席しろ」との圧力がかかったという。また外部からも圧力もあった。

すでにネット上でも噂になっているが、懇談会の中止を求めようと大日本皇國会、鳥居町自治会長の田中茂喜氏が「懇談会の開催に対する抗議状」を提出した。この人物、田邊会長が代表を務める「行政調査会」の会計責任者だ。

田中氏は同日付けで「懇談会の開催に対する抗議状」を提出した。これも田邊会長の意を受けたというのが専らの見方。そこで、田中氏を直撃した。

「田邊さんの片腕? 年に一回ぐらいしか会ってない。行政調査会もあれは名前を貸しただけだしね。名前だけの団体なんだから。それにコロナの中で懇談会なんか控えてくれって言うたらあかんのですか。他の右翼団体でもコロナ問題で街宣やったりしとるに。本当に仲間とか言われるのはおかしい。確かに同じ中学(東橋内中学校)の先輩後輩ということもあるから。そういうお付き合いはあるけど圧力とかなんとかっていうのは関係ない。ありませんよ。田邊さんがやったことについて聞きたい? 本当にそれ以上のこと分からんから。それにこっちは行政調査会と大日本皇國会と動画(田邊のヤジ動画)が関連付けられて、本当に迷惑してるよ」

田中氏は田邊会長との関係を否定した。同氏はコロナ対策を理由に挙げるが、懇談会自体、混乱した議会を立て直すのが狙い。議会の円滑な運営上、開催の理由は大いに成立する。もし田中氏が密室の協議を異論を挟むならば田邊会長が職員や議員を議会の会議室に集めることもやめさせるべきだろう。

こんな横やりがあったもののなんとか34市議中23市議が集まった。ただ“加藤おろし ”は終わらない。

懇談会当日、田邊会長の号令で田矢議員、福田議員、盆野ぼんの明弘副市長、荒木忠徳総務部長らが集められた。そこで、こんなやり取りがあったという。

「田矢、福田、懇談会やるって聞いとったんかい!」(田邊会長)

両氏とも「知らなかった」と答えたという。もちろん懇談会のお知らせは前市議にいっている。知らぬはずはない。そしてここで議会事務局長が公務員としての矜持を見せた。

「こんな任意の会議で(事務局長が)手伝ってええんか」

こう迫る田邊会長に事務局長は「任命権者の議長に言われたことをやるのは当然です」と敢然と反論した。

さらに後日、田邊会長は加藤議長が御礼品を持ってきたことを「有権者を買収した。あれは違法だ。告発すべきことだ。告発しないのは公務員の服務違反じゃないのか」と訴えた。しかし事務局長は「告発すべきことではない」と突っぱねたのだった。「当たり前」と言えばそれまでだが、副市長、部長級までが田邊会長にへりくだる中で抵抗する人々がいたのは津市政最後の良心といったところか。

津市大門商店街商業協同組合長

田邊会長は2014年11月の教育長室での恫喝案件を期に市役所に影響力を持つようになったのだが、当初は今ほどに目に余る行動はなかったという。それがさらに影響力を増し行動がエスカレートした背景を説明する上で、津市大門商店街商業協同組合のことは欠かせない。実は田邊会長は同組合の理事長という顔も持っている。

田邊会長は、2016年5月に同組合の理事になった。これは、田邊会長が当時の津市大門商店街商業協同組合理事長だった近澤ちかざわ正浩氏に、フードバンクを立ち上げるので運営に協力して欲しいと持ちかけたことが発端である。

2017年4月9日毎日新聞より

商店街のために市役所から様々な補助金を引っ張ってきた実績があり、市役所に顔が利くと評判の近澤氏という協力者を引き入れ、田邊会長は2017年1月に「NPOフードバンク三重」を設立した。この動きと並行して、田邊会長が市役所の職員を自身の店に通わせる等、市役所への影響力を強めることになった。

ただ、この時点では田邊会長は近澤氏に様々なことをお願いする立場。言ってみれば近澤氏のほうが田邊会長よりも上の立場だったと言える。また、近澤氏が2016年10月に暴力団排除の取り組みにより三重県警から表彰されていたという経緯があったためか、田邊会長は暴力団との関係を表に出すことはしなかった。

しかし、2018年3月に事態が急転する。近澤氏が自動車でひき逃げ事件を起こし、逮捕されてしまった。当然、近澤氏は大門商店街商業協同組合の理事長を続けることはできなくなった。そこで代わりに理事長に就任したのが田邊会長というわけだ。

当時を知る人物によれば、ここでもまた一悶着あったという。近澤氏が勾留されている間、組合の事務局から複数の銀行口座の通帳が見つかったことを理由に、田邊会長が近澤氏が市の補助金等を横領していたと言い出したのである。そのことで、近澤氏が津市から告発され、三重県警に捜査されたのだが、最終的には嫌疑不十分として立件されなかった。

近澤氏については「警察から表彰されていたので警察が忖度したのでは?」と前出の人物が言うが、いずれにしてもこの一件で近澤氏と田邊会長の立場は完全に逆転し、田邊会長は商店街組合の理事長という立場も獲得することとなった。それ以降の田邊会長は暴力団との関係を隠すこともせず、ますます行動をエスカレートさせた。

「近澤と一緒にやっていた時は近澤が押さえていたが、それがなくなったからタガが外れたのでは」(前出人物)

前出のフードバンクについても、市関係者によれば田邊会長が市役所との関係を強めるために作られたのではないかという。そして、そのアイデアを出したのは市職員であり、設立の手続きにも市職員が関わっているという証言がある。とすると市職員が田邊会長に加担してしまったために、田邊会長の要求を拒めなくなっていったことが想像できる。

現在フードバンク三重の代表者である中川美佐理事長は実は元市役所職員であり、田邊会長の店で働いていたことが副業にあたると告発され、市役所を辞めた経緯がある。そして、フードバンクの副理事は田矢議員の妻。このことからも、田邊会長がフードバンクを通じて市役所や市議会への影響力を強めたことをうかがい知ることができる。

(次回に続く)

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