捕鯨の町、太地町でくじらと戯れる

カテゴリー: 社会 | タグ: , | 投稿日: | 投稿者:
By Jun mishina

くじらが日本の食卓に戻ってくる!? すでにご存じの通り今年7月、31年ぶりに商業捕鯨が再開になった。70年代から起きた欧米活動家による反捕鯨運動によって商業捕鯨は中止に追い込まれ、調査捕鯨についてもシーシェパードなど過激な環境保護団体の妨害を受けてきた。今後も欧米豪などの反捕鯨国からの圧力は予想されるが、まずは商業捕鯨再開を祝したい。ということで捕鯨の町、和歌山県東牟婁郡太地町の「くじらと出会える海水浴場」でくじらと戯れてみた。

「反捕鯨」というキーワード。おそらく国際的環境NGO「グリーンピース」を連想する人も多いかもしれない。グリーンピースの抗議活動に興味を持ったのは1999年、環境展でのこと。ちょうど知人に出展者がおりグリーンピースの目撃情報を聞かされた。当時、松下電器のブースに突如、グリーンピースの活動家たちが来訪し展示品などに「NON ECO」などと書かれた無数のステッカーを貼り出した。ブースはステッカーだらけだ。理由は、グリーンピースが推奨するノンフロン冷蔵庫の技術を松下が採用しなかったことである。

自身の意に沿わないものは集団で押しかけ屈服させる。部落解放同盟や左翼団体でもありがちな光景だ。もっとも「直接行動」という点では環境団体はよりエキセントリックかもしれない。80年代、日本の水産関係の役人が国際会議会場付近でペンキをかけられたなどのトラブルはニュース映像などでもよく見かけた。太地町に対しても執拗に反捕鯨の活動家の妨害、抗議は相次いでおり、今後も予断を許さない。

鯨肉窃盗事件が発生した時の事務局長・星川淳氏。左は活動家の高遠菜穂子氏。

対してグリーンピースジャパンの反捕鯨活動についてはここ数年、おとなしいというか「無風」の印象だ。以前は環境展のような抗議行動があったのにこのところ「直接行動」というのは全く聞かない。同団体HPを見ても原発問題、気候変動、海洋ゴミ、反プラスティックなどのテーマが中心で「捕鯨問題」の項目が乏しい。 一つには福島原発事故による原発問題がメインテーマになったことがあるかもしれない。 どうも反捕鯨と直接行動というイメージは「シーシェパード」に移行したようだ。

若者のナントカ離れではないが、グリーンピースジャパンの捕鯨離れは2008年の「グリーンピース宅配便窃盗事件」が原因ではないかと推測する。同事件ではグリーンピースジャパンの活動家2名が逮捕された。当時、調査捕鯨船「日新丸」の乗組員が鯨肉を横領し自宅などに宅配しているという情報を同団体が入手した。そこで活動家が配送会社のターミナルに侵入し、日新丸乗組員の荷を奪ったという事件だ。

グリーンピースジャパンの弁護士は横領を摘発するための活動、表現の自由を持ち出した。要するに日新丸、またその所有者である日本鯨類研究所の不正を摘発するためなら許されるという理屈だ。結果は2011年に有罪判決が下されている。

当時は各種の抗議集会が開かれ、活動家の救済を訴えていた。ところで『週刊宝石』(光文社)の人気コーナー「あなたのオッパイ見せてくれませんか?」を覚えている人はいるだろうか。抗議集会ではよくこの企画を担当していた女性が司会をしていた。もちろんグリーンピースジャパンの協力者、支援者である。そんな彼女ですらターミナルに忍び込んだこと自体は批判的に見ていた。一般の会員の間でも「盗み出すのは問題だ」という人は少なくなかった。会員は富裕層が多く実生活では穏健な人々だ。そうした人にとってみると「直接行動」は抵抗があるのだろう。

またこのような運動体の活動家が事件を起こした場合、翼賛会的で異論は許されないという雰囲気があるもの。意外なことに集会中、とある支援者が当時の事務局長、星川淳氏に「やりすぎではないか」という趣旨の質問をしていた。ところが星川氏は活動家に非はない、告発のためなら許される、こんな反論をしていた。ならば逆に我々が環境団体の問題点を暴くため事務所に忍び込んでも容認されるのか。そういう話ではないだろう。

環境活動家、人権活動家にも共通するが居丈高な態度、傲慢さを星川氏から感じたものだ。おそらくこの一件で捕鯨問題から距離を置いた活動家、支援者は少なからずいたはず。もちろんグリーンピース自体、反捕鯨の立場は変わっていない。かつてほどヒステリックではないが国内にも反捕鯨の活動家は存在している。従来は、鯨が絶滅するという種の保護という立場から反捕鯨を訴えたものだがそれもデータが十分ではない。そのせいかこのところは海の大型生物は水銀が蓄積しているという「食の安全」の視点を取り入れている。いわゆる「種子法」「遺伝子組み換え食品」反対運動の中にひっそりと反捕鯨活動家も混じっていることもあり面白い。

夏休みにピッタリのイベント

商業捕鯨再開になってから初の太地町訪問だ。言うまでもなく太地町にとっても重要な決断だった。同町は商業捕鯨再開を受け三軒一高さんげんかずたか町長名で声明を出している。

31 年振りの大型鯨類を対象とした商業捕鯨再開を心から嬉しく思っております。昨年 12 月、IWC(国際捕鯨委員会)からの脱退を発表した際の官房長官談話は、「科学的根拠に基づいて水産資源を持続的に利用するとの基本姿勢の下」、商業捕鯨を再開するとしておりました。この基本姿勢は、これまでの太地町の歴史、そして、これからの太地町のまちづくりの方針と合致するものであり、心強く思っております。今後は、より一層、捕鯨関係者、くじらにゆかりのある地域、諸外国、国や県などが一丸となり、捕鯨業全体を応援して盛り立て、「くじらの恵み」を多くの人々が享受できるよう、これを機に国際間、地域間の連携をさらに強めていきたいと考えております。

ハナゴンドウが二頭泳いでいる。

この通り喜びと賛同の意思が込められた内容になっている。同町によると商業捕鯨再開を受け声明発表後も特に抗議活動などは起きてないという。実際に太地町を散策しても実に平穏だ。さて今回のお目当ての場所「くじら浜海水浴場」は太地町立くじらの博物館の先にある。例年「くじらに出会える海水浴場」として博物館で飼育しているくじらを一日に11時、13時各15分ずつ浜で開放する。その時にくじらと泳ぐことができるのだ。

入り江にはくじらが囲われているいけすが浮かんでいる。浜からいけすまでざっと40mぐらいだ。水深は深いところで5mといったところ。泳ぎに自信がない人は不安かもしれないが、なにしろ幼児ですら浮き輪を使って到達しているから普通の大人ならまずいけすにたどり着けると思われる

水中用カメラがなくて残念ながら水中の様子がお伝えできないのが残念だが、とりあえずは雰囲気だけでも感じてもらいたい。泳いでいるのはハナゴンドウという種類で非常に大人しく人間にもよくなつく。くじらと泳げるのは日本でもこのくじらの浜だけだからぜひ体験してほしいイベントだ。

浜全体。中央部に浮かぶのがいけすだ。

実際にくじらが開放されるとスタッフがカヌーで入り江内を誘導してくれる。決して追っかけて泳いではいけない。浜全体をまんべんなく回ってくれるからどこかに浮いていれば必ずくじらと遭遇できるだろう。

捕鯨船展示場。北洋・南極海捕鯨で活躍した第一京丸が陸揚げされている。

Jun mishina について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

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捕鯨の町、太地町でくじらと戯れる」への5件のフィードバック

  1. 十六島

    海原壱一の鯨御殿は現在どうなっているのでしょうか? 見に行きませんでしたか。

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    1. 三品純 投稿作成者

      ごめんなさい、純粋に太地町めぐりなんです。ただ和歌山は二階さんのことも含め再チャレンジしたいことがあるのでまたレポートさせてください。

      返信
  2. 957Cayenne

    一昨年家族でハナゴンドウさんと戯れてきました。そのときは鯨さんよっぽど遊びが楽しかったのか、プールに戻らずに一時間以上一緒に泳いでくれました❗感動的でしたよ。

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    1. 三品純 投稿作成者

      ご経験者ですか。本当にあそこは感動的で自分の中ではパワスポ化しているのです。

      返信
  3. クジラくん

    捕鯨反対派ですが、違法行為はいかんね。
    法治国家、かつ民主国家。クジラをとりたい人が多ければどうしようもない。
    個人的には反対ですがね。
    #254645d9e088730c84ccbfbd8c12803d

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