多くは “体毛の 濃さへの悩み” アイヌ生活相談事業は 必要か

カテゴリー: アイヌ利権とは何か, 社会 | タグ: , , | 投稿日: | 投稿者:
By 宮部 龍彦

アイヌのための「生活相談充実事業」というものがある。これは2016年から厚生労働省の予算で行われている、アイヌの人々を対象とする相談事業である。例えば2021年度の予算は578万5000円で、公益財団法人人権教育啓発推進センターに委託されている。

その相談内容の多くは、生活苦や毛深さといった、アイヌに特化した行政の相談事業として必要なものなのか、疑問符が付くものである。相談件数の実績は2021年度で610件であり、1件あたりの費用は1万円近い。しかも、その件数についても同じ人が繰り返し相談しており、相談員が知人に相談を依頼しているという疑惑まで持ち上がってきた。

アイヌの相談員に 相談できる アイヌのための 専用ダイヤル

最近、同和問題に関連する施設を訪れると、アイヌのための相談窓口の連絡先が書かれたチラシを目にすることがある。

10年ほど前のことだが、我々は北海道のアイヌに関連する地域を探訪し、その成果を「アイヌ探訪」という本にまとめた。その当時の経験では、特にアイヌに限って生活に困っているとか、悩みを抱えているという実態は目につかなかった。

仮にそうであったとしても、生活上の悩みは地元の役所や福祉団体に、雇用についての問題はハローワークに相談できる。したがって、「アイヌ専門の相談員に相談できるアイヌのための専用ダイヤル」というのは、一般的な相談窓口とは異なる特別なものである。

そこで、その具体的な実績はどの程度なのか、公益財団法人人権教育啓発推進センターが厚生労働省に提出した実績報告書を情報公開請求して確認してみた。

公開された実績報告書から明らかになったのは、全体で610件の相談があったという事実だ。このうちアイヌ以外からの相談が74件、無言電話が47件で、結果的にアイヌからの相談は489件であった。相談内容は「その他」を除けば最も多かったのが「生活苦」で154件、次に「身体(病気、脱毛)」で116件、「職場の問題」で57件、「人権差別」が20件と続く。

2番目の相談内容は興味深い。報告書には「「身体」に関しては体毛の濃さについての悩みが多く寄せられた」と記載されている。アイヌの人々は毛深いというステレオタイプがあるが、毛深い人が多いのは事実だ。しかし、アイヌ研究者である故・河野本道氏によれば、「全ての人が毛深いわけではなく、アイヌに限らず日本列島を北に行くほど毛深い傾向がある」という。それにしても、体毛の悩みについては、アイヌの相談員よりも脱毛クリニックや脱毛サロンに聞く、あるいは高須幹弥チャンネルを見る方が有益であろう。

「人権差別」という用語も独特だ。具体的な内容としては、「自分自身が直接差別された」というわけではなく、「テレビ番組でのアイヌ差別発言に対して、学校でアイヌの文化や歴史について教育を行ってほしい」という要望が多かったという。これは具体的には、2021年3月12日の日本テレビの朝番組『スッキリ』で、脳みそ夫が「あ、犬」と発言し、それが謝罪を求められる事態になったことに対するものだろう。

そして、アイヌからの相談のうち351件が北海道からで、全体の92.8%が匿名での相談だった。61.7%が男性で、51.7%が60代、職業は57.5%が無職であった。

同じ人が 何度も相談している?

ここまでくると、様々な疑問が浮かんでくる。大部分が匿名の電話での相談で、どうやって相談者がアイヌであるかを判断しているのか。相談が来る度に「あなたはアイヌですか?」と聞くわけにもいかないので、相談の内容から相談員が主観的に判断しているものだろう。

また、これも自己申告であろうが、相談者の属性が北海道在住の無職男性に偏っている。

偶然ではあるが、この情報公開請求を行った同時期に筆者が記事にした「公益財団法人人権教育啓発推進センターが茨城の「部落解放愛する会」に糾弾されていた」件があり、推進センターの内情を知る機会があった。

内情を知る人物はこう語る。

「病気や体毛に関する悩みが一番多いとなっていますが、それは同じ人が、同じ日に、何回も同じ事でかけているからでしょう」

実際、アイヌ生活相談充実事業は同じ人が何度も電話相談をしており、かけた回数で件数がカウントされるということなのだ。筆者が厚生労働省に確認したところでは、相談実績の件数が「延べ人数」であることを認めた。正確に言えば、ほとんどが匿名相談なので、実際の人数は把握できないというのだ。なお、委託者である厚生労働省側が把握している情報は、実績報告書に記載されていることが全てということだ。

確かに、北海道在住のアイヌの無職男性が体毛の悩みについて何度も相談すれば、報告書通りの結果になるはずだ。

「必要のない事業だと思います。わざわざ東京の推進センターに電話相談する人なんて、普通に考えればいないでしょう」(同前)

さらに、相談事業の問題点について次のように語る。

「相談員はアイヌ団体に関わっている方なのですが、相談件数が少ないと、事業がなくなってしまう可能性もあるので、知り合いに電話してくれるよう一部の相談員が自発的に依頼していたようです。相談員自身の遅刻連絡の電話まで相談件数に入れたことがあって、それはさすがにやり過ぎと言われていました。ただ、それがここ数年も同じ状況なのかは分かりません。毛深いとの相談もあるようですが、一方で「アイヌなんていない」という指摘をするために電話する人もいるようです」(同前)

実績報告書によれば3人のアイヌ相談員が対応しているとのことだが、「アイヌ相談員」をどのように確保するのかと言えば、アイヌ団体に頼ることになる。想像してみて欲しいが、一般の職員同様に相談員を公募したところで、何の団体もバックにない人を、確かにアイヌだと認定することは難しいので、必然的にそうなってしまう。結果として、3人の相談員はそれぞれ別団体ではあるが、アイヌ団体に所属しているという。

アイヌ団体は、概ねアイヌに対する政策を推進して欲しいという立場になることから、確かに利益相反の問題が出てくる可能性があるだろう。

これらの問題について、推進センター対して質問したところ、次の回答を頂いた(太字が推進センターの回答)。

  1. 相談者数について:繰り返しの相談が含まれていることは理解しています.ただし、延べ人数ではなく実際の相談者数(重複を除いた)はいかほどでしょうか?

(回答)
相談を受ける際に氏名は伺っていないため、実人数については集計が出来ないことから把握しておりません。

  1. 相談員の依頼について:相談員が知人に相談を依頼していると伺っております。これは事実でしょうか?

(回答)
御質問いただいた件は、事実ではありません。

  1. 相談員自身電話の扱いについて:相談員自身の遅刻連絡も相談数としてカウントしているとの疑惑があると伺っております。これについてはどのように認識していますか?

(回答)
相談件数のカウントは、相談を受けた際に作成する「相談記録」をカウントしております。そのため、相談件数に相談員の遅刻連絡は含まれておりません。

推進センターの回答について、前出の人物に感想を聞いてみたところでは「日報を公開せずに、よくデタラメな回答ができるな。(相談員が知人に依頼していることについて)センターの職員はみな知っていると思いますが。強気ですね」ということだ。

なお、同様の事業は2019年から公益社団法人北海道アイヌ協会「アイヌ施策広域相談事業」として北海道でも始まっており、北海道の一部の市町村では以前からアイヌ生活相談員が配置されており、二重三重行政となっている状態だ。

厚生労働省からの予算は、ほとんど相談員の人件費となっているため、推進センターにとって大きな収益にはなっていないが、一方で事実上はアイヌ団体構成員の雇用確保になってはいないだろうか。

参考資料 生活相談充実事業実績報告書

宮部 龍彦 について

ジャーナリスト、ソフトウェアアーキテクト。信州大学工学部卒。 同和行政を中心とする地方行政のタブー、人権ビジネス、個人情報保護などの規制利権を研究している。「ネットの電話帳」管理人。

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