天下の朝日新聞『落日新聞』へ転化の道⑤「ネット弁士、Dr.ナイフが論座に登場」

三品純 By 三品純

かつて『世界』(岩波書店)と並び左派論壇誌の筆頭格だった朝日新聞の『論座』は2008年に休刊。現在は論座RONZAとしてWEB上で運営されている。執筆陣は議員、有名ジャーナリスト、学者、評論家がズラリ。朝日新聞のサイトだけに著名なリベラル系の論者が中心だ。ところが7月26日にツイッター上の“インフルエンサー ”(影響力を与える人物)である「Dr.ナイフ@knife900」が執筆陣に加わった。朝日新聞と言えばネットの匿名投稿、ネット言論に対して批判的だったはずだが、まさかのハンドルネーム起用!? SNS上では愛読者からも落胆の声と失笑が飛び交うが、ちょっと待ってほしい朝日新聞さん、いよいよ混迷を極めていない?

新聞メディアはインターネット言説に対して批判的に報じることが多い。特に最近では「ネトウヨ」というスラングをごく普通に紙面で使用するようになった。一つには業績悪化、部数減がネット普及によるものという新聞社側の怨念がネット批判に向かわせているかもしれない。

それから新聞記者とは難関大学出身者で占められ厳しい競争を勝ち抜いて入社した人々だ。「ペンは剣より強し」というが下手な剣よりもペンの方が強大な権力と影響力を持つ。ペンの使い方で合法的に人や企業を葬ることができるのはご承知の通り。ところがネット普及により誰でも自由に言論活動ができるようになった。自分たちが苦労して得たペンをどこの馬の骨とも分からない者たちが論じ、批評する。新聞社が時折、ネット表現に対して制限をかけるような論陣を張るのは一種の「刀(言論)狩り」と言うべきだろう。つまり帯刀(言論活動)ができるのはあくまで武士階級=既存メディアということかもしれない。

新聞のネット批判は怨嗟と階級意識に満ちている。中でも朝日新聞とネットの相性は最悪だと思えてならない。1989年のいわゆるKYサンゴ事件こと「朝日新聞珊瑚記事捏造事件」など現在でもネット上で再三、蒸し返されている。

またネット黎明期を飾る出来事として2002年に起きた「赤井邦道あかいくにみち事件」も印象的だ。同年12月23日、朝日新聞関東版の読書欄の「声」にて西東京市在住の赤井邦道という人物の投書が掲載された。「サッカー中継 韓国リーグも」と題した投書にはワールドカップで韓国がベスト4になったことを受けて韓国サッカーを礼賛し「Kリーグの試合中継が見たい」というもの。ところがこの人物が2ちゃんねるのマスコミ板の常連で赤井邦道とはそのハンドルネームをもじったものということが発覚。つまり朝日新聞がいかにも好みそうな投書を創作して“ 釣った”のである。

あるいは吉田証言誤報、こういった現象もネットユーザーらによる文献の掘り起こしが大きい。「ネットで真実」とは口が裂けて使いたくないがネット上での資料、文献の掘り起こしで既存メディアの報道のファクトチェックが進んだのは紛れもない事実だろう。朝日にとってネットは間違いなく苦々しい存在である。

それからもう一点、左派活動家にとってもネットはもちろん目障りだ。例えば戦後、朝鮮人が起こした阪神教育闘争、神奈川税務署員殉職事件、あるいは部落解放同盟の八鹿高校事件が拡散されたのもネット影響力は見逃せない。

いかにも一般市民や弱者に寄り添い取材をした体を取った記事を掲載したとしてもネットユーザーによって「活動家」「政党関係者」と晒されてしまう。この現象もネット社会ならではだろう。ところがそんな既存メディアもネット害悪論を展開するわりにネットに依存している。新聞と言えばツイッターなどSNSで話題の現象をそのまま記事化しているではないか。#検察庁法改正法案に抗議しますなどはその最たるものだろう。

要するにネット言説であっても自身らにとって都合の良い内容ならば賞賛し、反対ならば「排外的」「悪質」という。それほどネットに対して嫌悪感があるならばそもそもネット利用をしなければよい。当の論座もネットによって生きながらえている。物事は全て是々非々だ。光もあれば影もある。自分たちの価値判断で善悪を判断するのはとても民主的な態度とは思えないが、この居丈高な態度が今のマスコミ不信をもたらしたに違いない。

ハンドルネームに宿る人格的価値(笑)

左派メディア、あるいは左派の面々がネット批判をしてきた一つに「匿名性」がある。要するに実名でなく匿名でモノを言うのが卑怯というのだろう。しかし弊社にもSNSを介して匿名で中傷、罵倒してくる左派と思しきユーザーは少なくない。そんな人が人権活動をしているというから驚く。

匿名で発言することに左右の立場は関係がない。もとをただせば「ネット右翼」というのも保守団体、保守層がネットに依存してきたことが発端だろう。しかしネット依存というのは左派も同様だ。元来、低俗の権化のように扱われてきた「ワイドショー」だが、素人コメンテーターの冗長な演説を著名な左派の文化人、学者、ジャーナリストまでが拠り所にし狂喜している。これは知的行為なのか?

そしてさらに驚くのが表題のSNSユーザーの論座起用である。“日本のクオリティペーパー”と自負する朝日新聞がツイッターで政権批判を展開するDr.ナイフ@knife900を論座の執筆陣に加えた。Dr.ナイフとはツイッター上でインフルエンサーとされるユーザーだ。素性や経歴などは一切明かされていない。またこれといった独自情報があるわけではない。シンパ的に評するならば“ 小気味いい批判精神”と言ったものだ

福島の風評被害を拡大させたとの批判の根強い朝日新聞の連載記事『プロメテウスの罠』の執筆者、鮫島浩氏はDr.ナイフ起用を大絶賛だ。

この通り大絶賛。鮫島氏は氏素性をご存知なのだろうか。なぜ彼が「貴公子」と言えるのか謎だ。単にプロフィール画像を見ての判断なのか。もしかしたら高齢者かもしれないし、あるいは女性のなりすましかもしれない。「政治を鋭利に切り取り華麗に解析するツイートは政治記者を凌駕する」とあるがならば政治記者はよほどレベルが低いのだろう。あるいは政治記者以上の情報をツイッターユーザーが提供できるのならばいよいよ新聞不要の時代である。

「ハンドルネームに宿る人格的価値」というくだりはもう冗談としか思えない。それ以上に「名刺の肩書で生きてきた」とは自身に向けられた言葉だろうか。この起用については様々な意見が飛び交う。新規読者の開拓とネット言論の充実を図ろうとした論座担当者のネットリテラシーの低さの発露。これが真相としか思えない。

保守派の論客であっても朝日新聞というブランドに対して「羨望」の念を持ってる人は少なくない。「朝日文化人」という響きは実は自分自身の中にもどこか甘い響きがある。ところがネット言論に擦り寄るためにハンドルネームに寄稿させるという事実はむしろ朝日ファンの方がショックが大きいかもしれない。

保守論壇誌にもペンネームで寄稿する書き手はいる、という反論があるかもしれない。その通りだが、しかしそもそも保守論壇は全く「ネット社会」「ネット文化」を否定していない。というよりもネット草創期から利活用、依存しておりむしろネットとともに歩んできたと言ってもいい(この点ももちろん問題はあるが)。あるいは保守系の放送番組でもネットで注目された人物を起用するということは決して珍しいことではない。

ネットで活動するブロガー、あるいはユーチューバー、こういった類の人々はいつか一般メディアでデビューしたいと願う人もいるだろう。そういう意味でDr.ナイフの論座寄稿はかつてならば二階級特進と言えるかもしれない。本来ならば、だ。しかし単純に論座と朝日新聞の価値とハードルが下がった証左といった方が正確だろう。

もちろん新しい論調、新しい風を取り込むという方針自体は決して誤りではない。しかし問題は内部の意識だ。過去、当サイトでもたびたび引用してきた『大阪朝日旧友会報』。同紙昨年7月に掲載された後藤雅隆社長の挨拶を見ると「デジタル活用」自体には積極的に取り組む姿勢だ。

しかしこうも言っている。

「ネットメディアやSNSは多くの価値を生み出してはいますが、ジャーナリズムの役割を担うことはできません」

代表者が同じ紙面でデジタル活用を訴えておきながら、その一方でネットメディアやSNSではジャーナリズムを担えないという。正確に綿密に取材された事実であるならば紙媒体であろうが、ネット配信であろうが変わらない。「事実は一つ」のはずだ。要は彼らにとっての「事実」とはあくまで新聞紙に印字されたもの限定なのだろう。紙媒体と戸別宅配制度に対する哀れなほどの執着と「ネット活用に手を焼く」もどかしさがこうした矛盾を起こしたと見る。

この通り、代表者自らがSNSは「ジャーナリズムの役割を担うことはできない」という。ならばDr.ナイフの役割とは何だろう。ジャーナリズム云々ではなくて単なる意見稼業、PV稼ぎということか? 

なんともモヤモヤした思いだ。しかし同号渡辺社長の次に掲載されている藤井龍也大阪本社代表の話に答えがあるように思えた。

森友・加計問題をはじめ安倍政権は様々な失策を積み重ねていますが、内閣支持率はなかなか30パーセントから調査によっては35%の岩盤を下回ることがありません。ネット社会が到来して、自分の気に入った情報しか見ない人が増え、マスメディアの影響力を低下させたのではないかと、分析する人がいます。新聞は今や30代は3人に1人、40代は2人に1人しか読まれていません。

新聞を読まないが故に安倍政権の支持率は落ちないのか、とも読み取れる。これも恨み節としか思えないが気になったのは「ネット社会が到来して、自分の気に入った情報しか見ない人」の箇所。そもそもSNSユーザー自体が「自分の気になった情報しか見ない」という層が多いはずだ。Dr.ナイフを支持する層そのものではないか。

関心がある人はご一読されると良いが初めて投稿された記事、はじめまして、Dr.ナイフです。を見ても、何やら自己啓発風でもあり「青年の日の主張」以上の要素を見出せなかった。しかしツイッター上に群がる人々にすれば重厚なルポや論考よりも「僕らにも変革できる」という根拠のないアジテーションの方が消費しやすいだろう。つまり「自分の気に入った情報しか見ない人」を論座に取り込もうというわけだ。

それからこの間、アンチ、ウオッチャーという人々がツイッター上で批判的な意見を投稿している。つまりアンチ狙いによるアクセス数稼ぎも見込める。しかしあの起用がどういう狙いであれ、繰り返すがDr.ナイフの特進というよりも朝日新聞の権威が失墜したとしか言いようがない。また「落日新聞」に近づいた!?

さて今回のDr.ナイフ起用について朝日新聞にその目的や理由、あるいは渡辺社長自身がSNSやネット言論を否定的に見ているのにDr.ナイフ起用は矛盾していないか。こうした質問状を送ってみたが、「回答は差し控えさせていただきます」(朝日新聞広報部)ということだった。

予想通りの反応と言えばそれまでだが、それにしても思う。現場の記者たちはプライドがないのだろうか。もし彼らにジャーナリズムという気概があるならば匿名のツイッターユーザーに紙面を提供するなら俺に書かせろ! これぐらいの反発があって当然のはずだが…。

カテゴリー: 社会 | タグ: | 投稿日: | 投稿者:
三品純

三品純 について

フリーライター。法政大学法学部法律学科卒。 月刊誌、週刊誌などで外国人参政権、人権擁護法案、公務員問題などをテーマに執筆。「平和・人権・環境」に潜む利権構造、暴力性、偽善性を取材する。

天下の朝日新聞『落日新聞』へ転化の道⑤「ネット弁士、Dr.ナイフが論座に登場」」への7件のフィードバック

  1. アバターQP

    Dr.ナイフてw
    名前が中2臭プンプンすぎるw
    「斬るぜ!」ってか?w
    (本当に中学生だったりして?)

    返信
    1. 三品純三品純 投稿作成者

      論壇に切り込む的なイメージでしょうか。
      他の執筆陣もナイフと署名が並ぶのって抵抗があるはずなんですが

      返信
  2. アバター

    わざわざ嫌いな朝日を隅から隅まで舐めまわしてるのか。スカートの中を一生懸命覗くすけべジジイと変わらんな。お前らの大好きな産経と黒瀬に射精してればいいってどっちも匿名でアンケート捏造マスゴミの没落官製メディアか…そりゃ朝日を舌で舐め回すわな。新聞ですらないんだから後者産経と匿名光饅頭黒瀬ネトウヨ芸人ツイッタラーは
    三品くんは真面目に精神病院通ったほうがいいよ。確実に脳に障害あるんじゃない?前頭葉か短期記憶に傷がある。相手をハレンチと罵りながら自分は大便撒き散らしながら全裸で陰茎しごくとか気持ち悪い。あまりにもネトウヨダブスタすぎて可哀想になってくる。社会から疎外されてオウムに走ったカルトみたいだね

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  3. アバター

    がちな世界

    確かに障害者的にガチだな
    あまりにも頭が悪すぎてだれも近づかずネトウヨ障害者部落みたいになってるのが笑う
    こういう奴らが石投げて部落笑ってんだよな

    悲惨の一言
    あのカスゴミ産廃にすら自分は取り上げて貰えず拗ねてんのかなこのオッさん
    双極障害者が名前明かしたからなんだよって話。だーれも三品、鳥取ループ、二匹の障害者ネトウヨヒトモドキなんて知らねえよ?

    返信
    1. 三品純三品純 投稿作成者

      真っ昼間にそんなコメントを連投するアナタのメンタルや生活状況は
      大丈夫でしょうか?
      それから人を腐す場合はもっとボキャブラリーを増やすこと。
      障害者的という中傷は止めた方がいいですよ。

      返信

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