自民党のドン、二階俊博元幹事長の後継者、伸康氏が挑む今回の参院選(和歌山選挙区)は二階家の存亡がかかった一戦。二階氏は新人だが父の秘書時代、中国との「パンダ外交」に携わった過去がある。ならば公約にパンダ再来を掲げてもよさそうなものだが、選挙パンフの政策や活動報告にパンダ、中国の一字もないのだ。(写真は何振良前総領事と会談する二階氏)
中国を利するだけのパンダ狂騒曲
アドベンチャーワールド(白浜町)からパンダ4頭が返還されることになり6月27日、同園で中国駐大阪総領事館との共催で歓送セレモニーを行った。当日は薛剣総領事も挨拶。同氏はSNS上では日本に対して挑発的な投稿を続けてきた人物だがこの日ばかりは友好ムード一色に包まれた。
一方、返還をめぐってはテレビ局がこぞってアドベンチャーワールドのパンダを取り上げた。まさにパンダ狂騒曲だった。パンダファンたちの熱狂を取り上げたが、そこはマスコミ。高額なレンタル料が中国に支払われている等の負の部分は報じていない。そうした現実問題とは無関係でパンダ返還に涙する日本人たち。完全に中国のパンダ戦略の手のひらで踊らされているかのようだ。
日中間の政治問題がもろに影響するパンダがいつ再来するのかは未定だが、とにかく待望の声があるのは事実。となると政治家がライフワークとしてパンダ再来に取り組み、「公約」に掲げてもおかしくない。特に二階氏にとっては宣伝材料になりそうなものだ。ところが二階氏の主張からは「パンダ」「中国」というワードが見つからない。
ベトナムとの交流は掲載してあるが…

「和歌山市内で二階氏の選挙リーフレットが配布されていました。これが面白くて活動報告のくだりで〝故・岸本周平知事直伝の朝の駅頭活動は寒い時期から欠かさず続ける〟とありますけど〝そんな姿を見たことがないわ〟と冷ややかな声も出ています」(地元記者)
次いで同記者が注目したのは中国に関した記述がないことだ。
「父、俊博氏の中国人脈は有名な話ですが、伸康氏も中国外交に関わったことはあります。ところが選挙ビラにはベトナムとの交流はあっても中国はありません」(前出記者)

俊博氏は日本ベトナム議員連盟の元会長で親交がある俳優、杉良太郎氏とベトナム交流事業を行ってきた。しかしそれ以上に、俊博氏と中国との蜜月関係は広く知られたことだろう。その後継者にしては選挙リーフレットに出てくるのはベトナム、アメリカの要人との交流だ。
また「世界とつなぐ観光と新たな産業誘致」という項目には
「韓国・ベトナム・中国と白浜空港の定期チャーター便や、格安航空会社の乗り入れを実現させ、インバウンドを和歌山へ呼び込みます」
とある。意外にも〝中国ファースト〟ではなく韓国、ベトナムの次だ。
伸康氏が会談した何総領事は粛清
この扱いは不自然だが、答えは簡単だった。関西地方の中国通が語る。
「中国関係については出しにくいのですよ。二階伸康氏が面会した中国の要人は何振良前大阪総領事。2020年に中国に一時帰国した後、行方不明になっています。一説には中国国内の再教育施設に入れられたという情報もあります」

二階氏との何振良氏との会談については2020年10月2日の記事でお伝えした。当初、この会談は二階ジュニアに花を持たせるために中国側がセッティングしたとみられた。だが後にパンダのレンタル料についての値引き交渉の場で、父・俊博氏の名代だったことが判明。パンダレンタルは政治問題、国際問題でもあるため、あくまで父の意向を伝える役目だ。要はメッセンジャーボーイというわけだが、まがりなりにも外交デビューである。
この模様は2020年9月9日、中国大阪総領事館Webサイト上でレポートされていた。しかし現在は記事は削除された(写真参照)という顛末だ。おそらく何氏は何らかの理由で粛清されたのだろう。その結果、サイト上からも何氏の存在は消されたというわけだ。それはもちろん二階氏の交遊録からも消去に違いない。
後任の薛剣総領事は非常に挑発的、攻撃的な主張をする人物だ。X(旧Twitter)では中国賛美と日米批判を続けるが、特に印象的なのは2024年10月25日、Ⅹに「全国どこからでも、比例代表の投票用紙には『れいわ』とお書きください」と投稿したことは物議を醸した。
外交官としてはかなり軽率な言動が目につく。しかしそうせざるを得ないという見方もある。一つの推測として何氏失脚というケースがあるため、反日、反米的な主張を公然と行い本国政府へ忠誠心を示しているのではないか。厄介な隣人、中国だが高官にとっても薄氷を踏む思いで日々の業務に関わっているのだろう。
その点、二階氏が中国について触れないのは政治状況も影響しているようだ。
「台湾好きの大江康弘白浜町長が脱パンダ観光を打ち出している他、県内の自民党議員の中にも親台派はいます。中国側がパンダ返還を決したのも、台湾問題を意識してのことでしょう。それほど微妙な問題だから二階氏も中国について慎重に扱ったのではないでしょうか」(前出中国通)
もっとも中国外交を選挙リーフレットに掲載したところで有権者が好印象を抱くことはないだろう。政界の大物の後継者ならば本来は二階氏が〝人寄せパンダ〟になってもおかしくはないがそんなムードもない。厳しい参院選になりそうだ。